美術品のオークション会社誕生
1971年12月美術品の大衆化にともなってわが国にも外国並みに一般の美術愛好家を対象としたオークション形式による作品売買の制度の設立が期待されていたが、日本美術品競売株式会社が銀座の著名な七画廊の共同経営によって発足し、5日銀座の日本洋画商ホールで水彩、素描、版画を対象とした第1回オークションが催された。セザンヌ、ゴーガン、浅井忠、梅原竜三郎から池田満寿夫まで136点がセリにだされ、うち78点4,779万余円が取引された。
美術品の大衆化にともなってわが国にも外国並みに一般の美術愛好家を対象としたオークション形式による作品売買の制度の設立が期待されていたが、日本美術品競売株式会社が銀座の著名な七画廊の共同経営によって発足し、5日銀座の日本洋画商ホールで水彩、素描、版画を対象とした第1回オークションが催された。セザンヌ、ゴーガン、浅井忠、梅原竜三郎から池田満寿夫まで136点がセリにだされ、うち78点4,779万余円が取引された。
福岡県粕屋郡の宇美八幡宮で筑前国四王寺跡経塚群出土品として一括して重文に指定された19件のうち、経筒など14点が盗まれていることが20日発見された。此等は戦前に太宰府の四王寺跡から出土し、昭和15年に国宝(旧)に指定されていた。
27日昭和46年度の欠員補充投票の結果第一部(美術)は日本画家橋本明治、山口華楊(いずれも日展所属)に決定した。書は松本芳翠(日展)であった。なお第三部(演能)の新会員に決った荻江露友は前田青邨夫人である。
16日より1月23日まで東京国立西洋美術館で、1月29日から3月15日まで京都市美術館で、毎日新聞創刊百年記念事業の一環として、同社、スペイン政府、国立西洋美術館、京都市の共催でスペイン近代の画家ゴヤの展覧会が開かれた。油彩39点、版画56点、素描55点と、特別陳列として晩年の自邸「聾の家」に描いた「黒い絵」のシリーズ14点が原寸大写真に復原して出品された。「裸のマハ」、「着衣のマハ」が注目の的であったが、極めて珍らしい初期の小品なども出品された例の少ない興味深い展覧会であった。なお外国美術の紹介は近年ますます旺んになり、1月のジュネーヴのプティ・パレ美術館展(日本橋・高島屋)、4月のソ連所蔵名品百選展(東博、京博)、5、6月のニューヨーク近代美術館所蔵水彩素描展(国立西洋美術館)、7月のルネ・マグリット展、9月のペルシャ美術展(日本橋・東急)、マリー・ローランサン展(新宿・伊勢丹)、10月の現代ドイツ美術展(東京国立近代美術館)、ローマ・バロック展(国立西洋美術館)、ルノワール展(池袋・西武)、デヴォンシャ公爵家の所蔵する「巨匠デッサン展」と近世英国興隆展(日本橋・三越)、ルオー展(吉井画廊、京都市美術館)、モロー展、ブールデル展(セントラル美術館、大阪・フジカワ画廊等)、11月のボルドー美術館展(神奈川県立近代美術館)などがその主なものであり、百貨店や画廊の主催する現代作家展は他にも数多く開かれた。
本年度の美術関係の文化勲章受章者は志野および瀬戸黒の重要無形文化財技術保持者である陶芸家荒川豊蔵に決定し、27日発表された。
文化財保護審議会は29日、民家を中心に25件の建造物を重要文化財に指定した。その中には岐阜県白川村の合掌造り民家「旧遠山家住宅」、重文の建造物としては日本最北端になる北海道留萌郡小平町のにしん漁の番屋「花田屋番屋」など民家21件、岐阜県吉城郡神岡町の瑞岸寺薬師堂、奈良法隆寺境内にある旧富貴寺羅漢堂、福岡市の福岡城南丸多聞櫓などが含まれている。
明治・大正・昭和の三代にわたって浮世絵の伝統に基く美人画で親しまれてきた鏑木清方の自選大回顧展が8日から20日まで銀座・松屋で開かれた。毎日新聞社が明治2年以来その創刊百年記念を兼ねて主催するものであり、代表作77点が陳列された。
日本彫刻史の中で最も変化に富む平安時代の彫刻の仏像・神像・仮面併わせて約140点を一堂に展観した大展覧会が東京国立博物館において10月13日より開催された。出品は近畿地方はもとより東北、九州、佐渡などの諸地方から従来東京では未公開の作品が多数一堂に展示され、力強い表現が多くの人々を魅了し盛況のうちに11月28日に終了した。
京都大覚寺の障壁画の代表作を模写する作業が27日から始まった。総括責任者に土居次義京都工繊大名誉教授が当り日展の松元道夫等三人で復元も兼ねた折衷模写を行ない、十ケ年計画で代表作を写し原作は収蔵庫に納めることとなった。
世界の三大聖旗の一と言われる天草四郎時貞の「陣中旗」(重文)が昭和39年頃から行方不明になっていることが判り既に海外に渡っている惧れもあると憂慮されている。また京都の教王護国寺は昭和34年頃から国宝・重文を含む50件の寺宝を文化庁(国宝十二天像)、天理図書館(国宝類聚名義抄など)、世界救世教(重文童子経曼荼羅など)、その他に経済的理由から売却していたことが明らかになった。更に図録「在外秘宝」(学習研究社)に東寺の秘本「九旺秘暦」(未指定)がニューヨーク市立図書館所蔵として紹介されて初めて売却されていたことが判り、未指定文化財の海外流出の危機が改めて強く叫ばれた。此等の文化財の売却はその量と質の高さと、連絡を受けなかった京都府教育委員会の東寺・文化庁に対する不満が伝えられて注目を集めたが、所有者の経済的内部事情と国民的視野からの文化財保護の立場との交錯による事態と、これを解決出来ない文化財購入予算の不足という現状を浮彫りにした。
5日に東京・銀座2丁目に東京セントラル美術館が鳥海青児展(画業50年記念毎日新聞社主催)とともに開館した。美術画廊彩壷堂の経営になるもので、数年前にマツダビル9階にあった同名の美術館とは別である。
鶏や花鳥魚介等を、鋭い観察眼から大胆なフォルムと構成にまとめ、装飾的画風に托して強烈な個性を主張した江戸時代の異色画家伊藤若冲の展覧会が9月15日から10月10日まで、東京国立博物館において開催された。出陳作品の中には御物「動植綵絵」30幅を始め米国からJ・プライス所蔵のものなど、鑑賞の機会があまりない貴重な作品も含まれ、近世異端の画家が再評価されつつある気運の中に貴重な一石を投じたものとして注目を集めた。
西洋美術館が昭和39年から40年にかけて購入したモジリアニのデッサン「女の顔」、ドランの油彩「ロンドンの橋」、デュフィの油彩「アンジュ湾」の3点は国際的な偽作販売者の手から購入していることが明らかで、作品の真偽の確実な決定は困難であるが今後館内での展示を行なわないということで一応の結論をえたことが18日に文化庁より発表された。この間この購入問題はジャーナリズムによって好んで取上げられたが、これを一つの機会として、従来、乏しい購入予算と調査費でまかなわれていた購入方法等に多少の改善が行なわれたことは注目してよい。
両陛下の訪欧を記念して正式訪問国であるイギリス・ベルギー・西ドイツで公開される御物、国宝、重文等20余点の国内展示が18日から22日まで東京国立博物館において行なわれた。
神社や寺院その他文化財建造物の修理保存のための技術者を確保、養成するため文化庁が設立を急いでいた財団法人「文化財建造物保存技術協会」は4月13日に発起人総会を開き、6月21日付で設立が許可され、8月1日より事業を開始した。理事長には有光次郎東京家政大学々長が選ばれた。
開館20周年を記念して鎌倉の神奈川県立近代美術館は17日から8月15日まで日本洋画黎明期を飾る高橋由一を中心として、同時代の作家の作品を含む約200点を陳列した。司馬江漢、川上冬崖、ワーグマン、フォンタネージら先輩や師に当る人々や五姓田芳柳、義松、下岡蓮杖、浅井忠など同時代者の作品と併せて日本近代化の美術における西欧との対応を再検討する優れた企画であった。
第15回シェル美術賞は「日本画の伝統を新しく開発する」というテーマで行なわれた。一等・青山亘幹、二等・西真、三等・相笠昌義、石黒直子、山岸俊治。入賞作品展は8月26日から30日まで東京霞が関ビル1階プラザホールで開かれ、ついで京都市立美術館、愛知県文化会館にも巡回された。
曽我蕭白・長沢芦雪を中心に伊藤若冲を加えて江戸の異端の画家の展覧会が6月下旬から2週間にわたり東京新宿の小田急百貨店において開催され、何ものにもとらわれない大胆で鮮烈な個性的表現が多くの人々の眼をとらえ多大の反響を呼んだ。
人間像というのは彫刻にとってはいつも古くて新しいテーマであるが、「現代世界の人間像」のテーマの下に箱根の彫刻の森美術館が主催する第2回国際彫刻展は7月1日から11月30日まで開かれた。