重文の仏像2体焼失
1986年12月23日、滋賀県守山市の天台宗東門院が火災で全焼、本堂内に安置されていた国の重要文化財の十一面観音像と毘沙門天立像の2点が焼失した。
23日、滋賀県守山市の天台宗東門院が火災で全焼、本堂内に安置されていた国の重要文化財の十一面観音像と毘沙門天立像の2点が焼失した。
近年欧米でとみに高まっている日本の近現代美術への関心を反映し、日本の近現代芸術の総合展として「前衛芸術の日本展」が、9日から翌年3月2日まで、パリのポンピドーセンターで開催された。同展には、造形芸術を中心に、建築、デザインなど関連各分野を網羅した総計750件が展示され、日本の近現代美術紹介の展覧会としては最大規模の展覧会となった。
昭和59年以来、財団法人松井文庫(細川護貞理事長、熊本県八代市)の依頼により、同コレクションの調査を進めている熊本県立美術館は、これまでに室町時代の歌人三条実隆直筆の連歌「伊庭千句」など重文級の作品10数点を確認した。調査は10年がかりの予定で、これまで調査を終えた作品は全体の1割の約600点。今後の成果に期待が寄せられている。
文化財保護審議会(斎藤正会長)は14日、建造物関係の重要文化財として、山形市の旧松応寺観音堂など4件5棟を新たに、また奈良県長谷寺鐘楼など9棟を追加指定、宮崎県日向市の差々津伝統的建造物群を保存地区に指定するよう、塩川文相に答申した。これで重文指定の建造物は1993件3222棟、重要伝統的建造物群保存地区は23地区となった。
日本芸術院(有光次郎院長)は19日、今年度の会員補充選挙の結果、新会員に6名を内定。美術関係から、日本画の大山忠作、洋画の菅野矢一、彫塑の三坂耿一郎が選ばれ、12月15日付で文部大臣より発令された。
約2万点の日本美術コレクションを所蔵する大英博物館に、日本美術品を常設展示する日本ギャラリーが新設されることになり、募金運動が始まった。同館およびイギリス国内、日本国内から総額500万ポンド(約12億円)の資金が集められる。平成元年完成の予定。
大阪府交野市の八葉蓮華寺で昭和58年に発見されその後重要文化財に指定された快慶作阿弥陀如来立像から、7日までに白描画などの胎内納入物が取り出された。納入品は、諸物の名前を書いた巻物一巻と、阿弥陀経や般若心経などの10数点の文書のほか、快慶あての手紙3点で、快慶あての書状の表面の余白や裏面に不動明王や陵王などの白描画が描かれていた。
昭和61年度の文化勲章受章者5名、文化功労者10名が、28日の閣議で決まった。美術関係からは、文化勲章に洋画の荻須高徳(故人)、文化功労者に日本画の片岡球子、小松均、洋画の高光一也がそれぞれ選ばれた。文化勲章伝達式は11月3日皇居、文化功労者顕彰式は4日国立教育会館でそれぞれ行なわれた。
写実的表現という問題意識のもとに日本の近代美術を考える「写実の系譜」シリーズの第2回として、「大正期の細密描写」展が、30日から12月7日まで竹橋の東京国立近代美術館で開催された。岸田劉生、速水御舟、京都の日本画の3部門に分け、139点を展示、日本の近代美術の発展における大正期の意義を考える上にも好企画となった。
藤田嗣治の生誕100年を記念した「レオナール・フジタ展」が、31日より11月25日まで新宿・小田急グランドギャラリーで開催された。ヨーロッパに所蔵されている油彩54点、水彩・デッサン・版画の計57点が出品され、初期から晩年にいたる全貌が展観された。同展は引き続き各地を巡回した。
文化財保護審議会(斉藤正会長)は21日、記念物関係の文化財として、銅剣358本を出土した弥生時代の荒神谷遺跡など、特別名勝2、史跡8、名勝2、天然記念物1の計13件を新たに指定するよう、塩川文相に答申した。これで国の記念物関係文化財は、2418件となった。
一昨年2月より旧館をとり壊し約50億円をかけて工事に着手していた京都国立近代美術館の新館が26日オープン。新館開館記念特別展として「京都の日本画1910-1930」展を開催した。同展は、国画創作協会を中心とする大正から昭和初期の京都画壇の日本画の動向を、59作家149点の作品から追ったものであるが、丹念な作品調査と資料探査に支えられ問題提起に富む質の高い展覧会となった。
スペインの巨匠エル・グレコの展覧会が、18日から12月14日まで上野の国立西洋美術館で開催された。スペイン各地、ルーブル美術館、エルミタージュ美術館などから、各期の代表的油彩画約50点が出品され、グレコの全貌をうかがう好機となった。
明治初期洋画の代表的作家五姓田義松の生涯にわたる作品を集めた初の展覧会が、18日より11月30日まで神奈川県立博物館で開催された。油彩画、水彩画、デッサンのほか、書簡や履歴書などの資料も合わせ約300点に及ぶ展示は、五姓田義松の再評価を喚起する好企画となった。
狩野山楽のあとの京狩野を背負った画家狩野山雪の展覧会が、10日から11月16日まで奈良・大和文華館で開催された。代表作のほか、初公開の29件を含む45件が展示され、山雪研究に重要な視点を提示する好企画となった。
川合玉堂の歿後30年を機に、玉堂の初期から晩年にいたる代表作120点を集めた展覧会が、17日より11月16日まで岐阜県美術館で開催された。また同じく歿後30年を記念し、玉堂の作品約2350点を収録する画集『川合玉堂』全2巻の編集も進行中で、昭和62年8月刊行の予定。
昭和55年冷泉家で確認された藤原定家自筆の日記「明月記」54巻について、文化庁は2日、永久保存と公開に向け、冷泉家時雨亭文庫による補修作業を全面協力することを明らかにした。この作業は10年をかけて行なわれ、予算総額は1億4千万円。修理の終わった時点で、現在の重要文化財から国宝に格上げする予定。
昭和天皇の在位60年を記念した日本美術名宝展が、23日より10月19日まで東京国立博物館で開催された。古墳時代から江戸時代にいたる絵画、彫刻、工芸、書跡の各分野の作品約200件が出品され、約半数が国宝、その他のほとんども重要文化財という質の高い作品が集められた。同展は引き続き、京都国立博物館で開催された。
桃山期を代表する画家のひとり海北友松の展覧会が、10日から11月9日まで滋賀県大津市の琵琶湖文化会館で開催された。障?画などの代表作のほか、海北友雪の作品や資料など計70点が展示され、スケールの大きい充実した展観となった。
浮世絵の大コレクションを収蔵する米国のボストン美術館で、浮世絵の版木514枚を調査した結果、北斎の代表作の絵本三部作「東都勝景一覧」「絵本東都遊」「絵本隅田川両岸一覧」の版木も含まれていることが明らかとなった。版木が保存されていること自体稀であるのみならず、極めて良好な状態で保存されていた。