古都税問題で市と対象寺院会議が合意

1987年11月

京都市の古都保存協力税の制度化をめぐって対立してきた市側と金閣寺、銀閣寺などを含む対象寺院会議は25日、懸案となっていた税未納分を寺院側が「あくまで寄付金として支払うが市が税と解釈しても関知しない」ということで合意に達した。

大阪で5世紀の建物群跡発掘

1987年12月

大阪市教育委員会、大阪市文化財協会は14日、同市東区法円坂町の難波宮跡の下層から5世紀の大建物群が発掘されたと発表した。柱穴跡などから推定して倉庫であった可能性が強く、東西各6棟、計12棟が確認された。同地は仁徳天皇の難波高津宮であったと推定されており、仁徳朝の正倉であった可能性もある。 

建仁寺で火災

1987年11月

20日午前1時20分頃、京都市東山の建仁寺の塔頭、両足院の庫裏付近から出火。木造平屋一部二階建て延べ630平方メートルのうち書院180平方メートルを全焼、庫裏250平方メートルを半焼するなど2棟300平方メートルを焼いて、午前2時40分ごろ鎮火した。同寺の所蔵になる絵画等は焼失をまぬかれたが、京都府が名勝に指定している池泉式庭園が大きな損害を受けた。

江戸城内障壁画下絵発見

1987年11月

江戸城内のふすま、杉戸、壁を装飾していた障壁画の小下絵264巻が、東京国立博物館に保存されていることが明らかになった。狩野養信を中心とする江戸狩野派の絵師たちによって描かれたもので、天保10(1839)年に再建された西の丸と弘化2(1845)年に再建された本丸の小下絵が大半を占め、「大奥」に平安王朝絵巻が描かれている点など従来知られていなかった城内の様子をうかがわせる資料として注目される。

重要文化財新指定(建造物)

1987年11月

文化財保護審議会(斎藤正会長)は13日、建築物関係の重要文化財として笠間稲荷神社本殿、旧東京音楽学校奏楽堂を含む6件7棟を、重要伝統的建造物群保存地区に島根県大田市大森銀山を新たに指定するよう中島文相に答申した。これで建造物の重要文化財は2007件3247棟、重要伝統的建造物群保存地区は26ケ所となった。

目黒区美術館開館

1987年11月

都内で6番目の区立美術館として14日、目黒区美術館(加藤貞雄館長)が開館。地上3階地下1階建て、総床面積4059平方メートルで、区によって設立された目黒区立芸術文化振興財団に運営され、近現代美術、特に日本人作家が海外で制作した作品を中心に蒐集する。

サントリー学芸賞決定

1987年11月

62年度サントリー学芸賞が4日発表され、美術関係では伊藤俊治『ジオラマ論』が受賞した。

盗難名画密売事件解明

1987年11月

19世紀フランスの画家カミーユ・コローの「夕暮れ」「帽子をかぶった少年」などルーブル美術館から貸し出されていた5点が、3年前フランスのスミュール・アン・オクソワ市立美術館から盗まれ日本で密売されていた事件の全容が、5日までに警視庁によってほぼ解明された。国際的窃盗・密売ルートが浮かび上がり、海外からの美術品輸入が急増している中で日本を市場として繰り広げられた事件として波紋を投げかけた。

日本の水墨画展

1987年10月

鎌倉時代後半から江戸時代までの日本の水墨画約170件を展観する大規模な展覧会が、東京国立博物館で行なわれた。(10.13~11.23)周文、雪舟ら観による国宝、重文が多数出品され、意義深い展となった。

ジェリコー展

1987年10月

フランス、ロマン主義の画家テオドール・ジェリコーの画歴を油彩35点を含む約190点の作品で跡づける大規模な展観が、31日より12月20日まで神奈川県立近代美術館で開かれた。同展は京都国立近代美術館(63.2.2~3.21)、福岡市美術館(3.24~4.24)を巡回した。

文化勲章文化功労者決定

1987年10月

昭和62年度の文化勲章・文化功労者が28日決定し、美術関係では、日本画家の池田遥邨が文化勲章受章者に、書家の金子鴎亭、洋画家の高田誠、評論の谷川徹三、彫金家の帖佐美行、鋳金家の蓮田修五郎が文化功労者に選ばれた。文化勲章伝達式は11月3日に皇居で、文化功労者顕彰式は11月4日に東京霞ケ関の国立教育会館で行なわれた。

東京芸術大学100周年展

1987年10月

明治20年東京美術学校ならびに音楽学校として設置されてから今年で100周年をむかえる東京芸術大学は、記念事業実行委員会(藤本能道委員長)を組織し一連の記念事業の運営にあたった。美術関係では1デザイン・建築、2現職教官作品、3指定美術品、4日本画・彫刻、5油画・工芸の5つの展観が行なわれ、このほか同大学陳列館で貴重図書が展示された。日本近代美術の流れをうかがわせる展観として注目され、東京展(10.2~25)ののち全国に巡回した。

曽我蕭白展

1987年10月

江戸時代中期の異色の画家曽我蕭白の国内にある優品を網羅した展覧会が10日より11月11日まで三重県立美術館で開かれた。大胆、奇抜な画境を示す?風、襖ほか約80点が出品され、11月18日より12月13日まで練馬区立美術館に巡回した。

高松宮家より文化財1800点、文化庁に寄贈

1987年09月

鎌倉時代から江戸時代前期にかけての歌集等の写本類1659点、天皇、親王の着用した装束類98点、平安、鎌倉期を中心とした刀剣類73点が高松宮家から文化庁に寄贈された。これほど多数の文化財が宮家から寄贈されたのは初めて。装束、刀剣類は10日より20日まで東京国立博物館で、書籍類は10月6日より同月25日まで国立歴史民俗博物館で一般公開された。

奈良県明日香村で日本最古の大庭園跡地発掘

1987年09月

奈良県立橿原考古学研究所は10日、同県明日香村の島庄遺跡で7世紀のものと見られる大庭園跡が発掘されたと発表した。飛鳥川から水を引いて池、浮島をつくっており、日本庭園の原型と考えられる上、『日本書紀』などにあらわれる蘇我馬子邸の庭園とも考えられ、古代史上の重要な発見となった。

5回ヘンリームーア大賞展

1987年08月

抽象彫刻を対象として隔年に行なわれているヘンリー・ムーア大賞展の第5回目の受賞作は、ヘンリー・ムーア大賞にヘスス・マヤゴイティア「垂直な空間」、特別優秀賞に常松大純「脱皮考 地→空」、松本憲宜「蜃気楼-Ⅱ」、マルゴット・ザンストラ「乱動」と決まり、優秀賞にルイジ・マイノルフィ「巨大な町」、フランソワ・モルレ「網目の球体」ほか8点、彫刻の森美術館賞8点、美ケ原高原美術館賞10点が選ばれた。同展は24日から10月31日まで美ケ原高原美術館で開かれた。

生誕100年小出楢重展

1987年08月

日本の裸婦を独特の作風で描いた洋画家小出楢重の生誕100年を記念する展覧会が29日より神奈川県立近代美術館で開催された。油彩、ガラス絵、素描を含む130点が出品され画家の生涯と画業を再評価する展観となった。同展は群馬県立近代美術館、兵庫県立近代美術館を巡回した。

3回本郷新賞、第18回中原悌二郎賞決定

1987年08月

60年61年に設置された野外彫刻を対象とする本郷新賞第3回受賞作に塚脇淳「地上より」(兵庫県三田市城山公園)が、北海道旭川市により贈られる中原悌二郎賞第18回受賞者に大成浩(「風の塔No.8」)、優秀賞に笹戸千津子(「若き立像86」)が選ばれた。

杉山寧展

1987年08月

初期の作品から近作まで素描も含め約120点を展観する日本画家杉山寧の大規模な回顧・新作展が、東京国立近代美術館(18~9.27)開催された。昭和46年に個展が開かれて以来の本格的な個展として注目された。

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