日本芸術院新会員決定

1994年11月

日本芸術院(犬丸直院長)は、18日、今年度の会員補充選挙を行い、新たに10氏を会員とすることを内定、美術関係からは、日本画家福王寺法林、松尾敏雄、洋画家芝田米三鶴岡義雄、彫塑の雨宮敬子が選ばれた。日本芸術院の定員は、120人だが、これで会員数は111人となった。この内定は、総会の承認を経て、12月15日付で文部大臣から発令された。

「古都京都の文化財」を世界遺産条約による文化遺産登録を決定

1994年12月

ユネスコ主催の第18回世界遺産委員会(タイ、プーケットで開催)は15日、京都市、宇治市、大津市の17社寺、城を一括して、世界遺産に登録することを決定した。自然遺産と文化遺産として、登録は国内5件目となる。一括登録されるのは、賀茂別雷神社、賀茂御祖神社、教王護国寺、清水寺、醍醐寺、仁和寺、高山寺、西芳寺、天龍寺、鹿苑寺、慈照寺、龍安寺、本願寺、二条城(以上京都市)、平等院、宇治上神社(以下宇治市)、延暦寺(大津市)。国宝の建築物38棟、特別名勝の庭園8ヶ所、重要文化財の建物160棟を含む。 

サントリー学芸賞

1994年11月

財団法人サントリー文化財団が、政治・経済、芸術・文化、社会・風俗、思想・歴史の4分野において優れた研究や評論活動をした研究者、評論家に贈るサントリー学芸賞の今年度の受賞者が決定。うち芸術・文学部門では、玉虫敏子(靜嘉堂文庫美術館主任学芸員)の『酒井抱一筆 夏秋草図?風―追憶の銀色』(平凡社刊)、今橋映子(筑波大学文芸・言語学系専任講師)の『異都憧憬 日本人のパリ』(柏書房刊)、尹相仁(漢陽大学校文科大学助教授)の『世紀末の漱石』(岩波書店刊)の三人に決定した。授賞式は、東京丸の内のパレスホテルで行われた。

第6回倫雅美術奨励賞

1994年11月

優れた美術評論や美術史研究、創作活動に贈られる、河北倫明夫妻の基金による倫雅美術奨励賞の第6回受賞者が決定。美術評論・美術史研究部門で東京大学助教授佐藤康宏の『湯女図―視線のドラマ』(平凡社刊)、滋賀県立陶芸の森学芸員三浦弘子の「熊倉順吉とその仲間たち―近代思潮とクラフトデザイン」(同館展覧会図録)、創作活動部門(今回は、彫刻・立体造形が対象)に井田彪の「Circulation―93―air to air」に決定。授賞式は、赤坂プリンスホテルで12月2日におこなわれた。

サントリーミュージアム〔天保山〕開館

1994年11月

サントリー株式会社は、創業九十周年記念事業のひとつとして、大阪港にサントリーミュージアム〔天保山〕(大阪市港区海岸通1-5-10)を完成させ、3日開館した。安藤忠雄の設計による同館は、延床面積12,400平方メートル。ロートレック、ミュシャ、カッサンドル等のポスター約8,000点を所蔵。開館記念展として、「美女100年―ポスターに咲いた時代の華たち」を開催。 

佐倉市立美術館開館

1994年11月

千葉県の指定文化財である旧川崎銀行佐倉支店を復元、利用した佐倉市立美術館(千葉県佐倉市新町210)が、16日に開館。同美術館は、地上5階、地下2階で、展示室面積が835平方メートルの施設となっている。常設展示のほかに、企画展示室、市民ギャラリーが併設されている。16日からは、市制四十周年記念展として、「チバ・アート・ナウ’94―Paper’s Splendor」が開催され、12月17日からは、佐倉市と友好関係にあるオランダより、アムステルダム国立博物館所蔵の160点を中心にした開館記念特別展「海を渡った浮世絵展」を開催。

第25回中原悌二郎賞

1994年10月

北海道旭川市ゆかりの彫刻家中原悌二郎を記念して同市が創設した中原悌二郎賞の第25回の授賞作に、加藤昭男の「何処へ」が、また優秀賞に「SUMMIT」がそれぞれ選ばれた。

第6回国華賞

1994年10月

東洋美術研究誌『国華』が日本、東洋の美術に関する優れた論考に贈る国華賞の今年度、第6回受賞者が九州大学名誉教授で、長崎純心大学教授平田寛の『絵仏師の時代』(中央公論美術出版、平成6年2月刊)に決定。古代から中世にいたる絵仏師の系譜を、その制作実態から幅広く論じた点が評価された。顕彰式は、21日、東京築地の朝日新聞社新館、浜離宮ホールでおこなわれた。

雪舟特別展開催

1994年10月

昭和48年山口県立山口博物館で開催されて以来、絶えてなかった雪舟等楊の展覧会が、大和文華館で6日より開催。近年、活況を呈しているといわれる雪舟研究をふまえて、雪舟が生まれた時代と環境のなかに置き戻して、見直そうとする試みであった。代表作のひとつにあげられる「秋冬山水図」(国宝、東京国立博物館蔵)をはじめとする雪舟の作品と、かれの弟子たちの作品、またかれが影響を受けたとされる中国画等の関連資料を加えた約60点が出品された。 

連続シンポジウム「美術(bi-jutsu)―その近代と現代をめぐる10の争点」開催

1994年09月

同月から、平成8年秋まで近、現代美術の諸問題をめぐる10回にわたる連続シンポジウムが開催される。(主催:日仏会館、シンポジウム「美術」実行委員会)企画責任者は、イザベル・シャリエ(神戸大学講師)、木下長宏(京都芸術短期大学教授)。第一回は9月24日に、東京日仏会館においておこなわれ、「美術における近代と現代」(イザベル・シャリエ)、「美術史学の近代と現代」(佐藤道信、東京芸術大学助教授)の二講演のあと、木下長宏司会による討議がおこなわれた。以後、約二ヶ月に一回、東京と関西で交互におこなわれる。

没後100年記念 高橋由一展開催

1994年08月

明治初期洋画を代表する高橋由一の没後100年を記念する回顧展が、27日に神奈川県立近代美術館を皮切りに開催。今回の回顧展は、近年の高橋由一研究の成果を反映して、新発見の「墨水桜花」(個人蔵)、初期肖像画の基準作となる「小幡耳休之肖像」(福富太郎コレクション蔵)等の作品や、これまで未公開の関係資料なども展観され、定説化されつつある画家の実像に再検討を加える契機となった。同展は、以後、香川県文化会館、三重県立美術館、福島県立美術館を巡回。 

高岡市美術館開館

1994年09月

富山県高岡市の高岡市美術館は、高岡文化の森内に移転し、新築され、9月16日に開館(富山県高岡市中川1-1-30)。同美術館は、昭和26年に開館、金工、漆芸で知られる同市の伝統工芸を中心にした、これまでの収集、展示方針から、この移転、新築を機に企画展示を中心にした活動をおこなうことになった。新美術館は、地上二階、塔屋一階、企画展示室三室、常設展示二室等をそなえ、開館記念展として、「フランス近代絵画―光と色彩の流れ」展が開催された。 

PARIS 1874 1874年―パリ「第1回印象派展」とその時代展開催

1994年09月

印象派という呼称がうまれる契機となった1874年、パリで開かれた「画家、彫刻家、版画家などによる“共同出資会社”第一回展」を再現、今日的な視点から見直そうとする展覧会が、20日国立西洋美術館で開催。同展には、辛辣な批評によって印象派という言葉が生まれたモネの「印象、日の出」(マルモッタン美術館蔵)をはじめとして、今日印象派とよばれる画家たちの作品はもとより、現在ではその名前さえ忘れ去られようとしているサロン系の作家たちの作品もあわせて出品され、この第一回展に出品した作家たちのひろがりが示されるとともに、当時のパリの美術界の実相が理解できる展覧となった。

愛知県陶磁資料館再開館

1994年07月

昭和52年開館以来、活動をつづけていた愛知県陶磁資料館(同県瀬戸市南山口町234)は、平成3年から、施設の大幅な拡充整備のため改修工事を行なっていたが、この程完成し、6日に完成記念特別展「東洋陶磁名品展」を開催、全館開館した。新たに整備されたのは、本館、陶芸館、古窯館、庭園であり、本館の場合は、展示スペースが、367,502平方メートルとなり、従来の約2倍となった。この本館を中心に全国の古窯陶磁作品や現代陶芸作品を展示していくことになった。

和歌山県立近代美術館再開館

1994年07月

和歌山県民文化会館内にあった和歌山県立近代美術館は、和歌山市内の和歌山大学教育学部跡地に移転、8日に再開館(和歌山市吹上1-4-14)。黒川紀章の設計による新美術館は、地上二階地下一階、美術館部分の延床面積は、12,000平方メートル。開館記念展として、「美術館に行こうCOLLECTIONS!近代美術/100年」、「大正のまなざし―若き保田竜門とその時代」が開催された。

中原悌二郎記念 旭川市彫刻美術館開館

1994年06月

旧陸軍の将校用の社交場として、明治35年に建てられた木造二階建ての洋館建築・旧旭川偕行社(重要文化財)を修復し、新たに中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館(同市4区1条1丁目)が、1日に開館した。同美術館には、生涯で25点の彫刻を制作し、そのうち現在12点しか残されていない中原悌二郎の全作品を収蔵するとともに、石井鶴三等、中原と縁のある彫刻家の作品を収集している。また、昭和45年に制定された、優れた現代彫刻を顕彰する中原悌二郎賞受賞作家の作品も収蔵し、第1回受賞の木内克から、昨年の第24回受賞の江口週作品も、あわせて展示される。

第46回ヴェニスビエンナーレ、第22回サンパウロビエンナーレの概要の決定

1994年07月

国際交流基金において、1995年開催のヴェニス・ビエンナーレとサンパウロ・ビエンナーレの日本側の企画概要とコミッショナーが相次いで発表された。6月30日、ヴェニス・ビエンナーレの日本館の展示企画の概要がコミッショナーに起用された伊東順二(美術評論家)より発表された。「WABI+SABI=SUKI」をキーワードに、現在の日本の創造的分野とする伝統、デザイン(風俗)、テクノロジーを代表する写真家荒木経惟、日本画家千住博、C・G作家河口洋一郎、美術家崔在銀、建築家隈研吾の5名が選出された。つづいて、7日、サンパウロ・ビエンナーレのコミッショナーに本江邦夫(東京国立近代美術館企画・資料課長)が起用され、遠藤利克、辰野登恵子、黒田アキの3美術家が選出されたことが発表された。この席上、同コミッショナーより、ヴェニス・ビエンナーレの「日本的な」企画案に、強い批判がだされ、これを契機に国際的な場における日本の現代美術の位置をめぐる論議がおこった。また、この後、ヴェニス・ビエンナーレに選出された荒木経惟が辞退し、11月にかわって美術家日比野克彦が起用されることになり、展覧会名も「WABI+SABI=SUKI」から、「数寄:複方言への試み/SUKI:the sense of multi vernacular」に変更されたことが発表された。 

「運慶快慶とその弟子たち」展開催

1994年05月

鎌倉彫刻の本流である「慶派」の造形を、平安時代末期から南北朝時代まで、主要な慶派仏師15人による66件の作品で展観する「運慶・快慶とその弟子たち」展が、28日より7月3日まで奈良国立博物館で開催された。王朝社会の崩壊と武家の台頭といった社会変革を背景に、一派をなしつつも個性的表現を行なった仏師たちの作品が、近来30年の調査・研究の成果をふまえて展観され、充実した企画となった。

to page top