登録有形文化財登録の答申

2010年12月

文化審議会(会長:西原鈴子)は10日、華やかな装飾が施された外観を持つ南海電鉄難波駅のターミナルビル「南海ビル」(大阪市)や1940年に建設された鉄道橋「天竜浜名湖鉄道天竜川橋梁」(浜松市)など、28都府県の建造物209件を新たに登録有形文化財にするよう高木義明文部科学相に答申した。これで登録有形文化財は8,348件となった。

第18回VOCA賞受賞者決定

2010年12月

平面美術の若手作家を奨励するVOCA賞の第18回目の受賞者は「或る惑星」を制作した中山玲佳に決定した。VOCA奨励賞は後藤靖香と森千裕、佳作賞は熊澤未来子と澤田明子、大原美術館賞は上田暁子にそれぞれ贈られることとなった。受賞作等を展示するVOCA展2011は2011年3月14日から3月30日まで東京都の上野の森美術館で開催された。

芸術院新会員決定

2010年11月

日本芸術院(院長:三浦朱門)は29日、芸術活動に顕著な功績があったとして新たに5名を同院新会員に選出したと発表、日本画家の福王寺一彦、洋画の山本文彦、工芸の武腰敏昭、森野泰明、評論・翻訳の粟津則雄が選ばれた。12月15日付で高木義明文部科学相により発令された。

キトラ古墳壁画のはぎ取り終了

2010年11月

国特別史跡キトラ古墳(奈良県明日香村)の壁画を保存するため、2004年8月に始めたしっくいのはぎ取り作業で、壁画が描かれている可能性のある部分の作業が全て終了したと、文化庁が25日発表した。さらに同庁は辰(東壁)、巳(南壁)、申(西壁)が残存している可能性のある部分をエックス線撮影で調べた結果、壁画は確認できなかったことを翌12月15日に発表、同月24日にははぎ取ったしっくいを覆う泥を当面取り除かないまま保存する方針を、「古墳壁画の保存活用に関する検討会」で決定した。

第32回サントリー学芸賞受賞者決定

2010年11月

サントリー文化財団は10日、第32回サントリー学芸賞受賞者を発表した。美術関係では芸術・文学部門で古田亮『俵屋宗達』(平凡社)が受賞した。

第22回倫雅美術奨励賞受賞者決定

2010年11月

優れた美術評論や美術史の研究を顕彰する倫雅美術奨励賞(主催:公益信託倫雅美術奨励基金)の第22回目の受賞者が発表され、豊田市美術館の天野一夫チーフキュレーター(「近代の東アジアイメージ―日本近代美術はどうアジアを描いてきたか」展に対して)と、宇都宮美術館の前村文博学芸員(「杉浦非水の眼と手」展に対して)が受賞者となった。

正倉院宝剣、1250年ぶり確認

2010年10月

奈良市の東大寺大仏殿内須弥壇から明治時代に出土した国宝の鎮壇具のうち2本の金銀荘大刀が、約1250年間所在が確認されていなった正倉院宝物の大刀「陽寶劔」「陰寶劔」であることが判明し、同寺と元興寺文化財研究所が25日、発表した。保存修理に伴うエックス線調査で、刀身から「陽劔」「陰劔」の象嵌銘文が発見されたことによる。同大刀は光明皇后が大仏に献納した聖武天皇の遺品目録「国家珍宝帳」に「除物」の付箋があり、別の正倉院文書から759(天平宝字3)年に持ち出された記録が残るが、その後の所在は不明だった。

文化勲章受章者、文化功労者決定

2010年10月

政府は26日、2010年度の文化勲章受章者7名と文化功労者17名を決定した。美術関係では、建築家の安藤忠雄、服飾デザイナーの三宅一生が文化勲章受章者に、書家の古谷蒼韻、写真家の細江英公、漫画家の水木しげるが文化功労者に選ばれた。

「歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎」展開催

2010年11月

18世紀後半の江戸で、浮世絵の喜多川歌麿・東洲斎写楽、戯作の山東京伝、狂歌の大田南畝らの作品を巧みに売り出し、江戸文化の最先端を演出・創造した版元、「蔦重」こと蔦屋重三郎の営みを紹介する「歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎」展が3日から12月19日までサントリー美術館で開催された。江戸吉原の案内書である『吉原細見』等を手がけて経営の安定を図る一方で、人気狂歌師や戯作者の作を次々に刊行してブランド化を図り、さらには葛飾北斎や十返舎一九、曲亭馬琴など新人発掘に力を注いだ名プロデューサーぶりをうかがう企画として注目された。

国宝・重要文化財指定の答申

2010年10月

文化審議会(会長:西原鈴子)は15日、久能山東照宮本殿と石の間、拝殿を国宝に、池上本門寺宝塔など建造物9件を重要文化財に指定するよう高木義明文部科学相に答申した。これで建造物分野の重要文化財は2,374件(うち国宝216件)となった。また江戸期以降の重厚な町家が多数現存する奈良県五條市の約7haを重要伝統的建造物群保存地区に新規選定することも答申した。

第22回国華賞受賞者決定

2010年10月

日本・東洋美術に関する優れた研究を対象とする第22回国華賞は、古原宏伸『米芾「画史」註解』(中央公論美術出版)、内藤栄『舎利荘厳美術の研究』(青史出版)に贈られることが決定した。

「隅田川 江戸が愛した風景」展開催

2010年09月

東京を流れる隅田川がどのように描かれてきたかを江戸時代から近代まで跡づける「隅田川 江戸が愛した風景」展が22日から11月14日まで東京都江戸東京博物館で開催された。歴史、民俗、考古、美術といった幅広い視点から隅田川と人々の関わりに迫り、約160点の作品をプロローグ「古典から現世へ」、第一章「舟遊びの隅田川」、第二章「隅田川を眺める」、第三章「隅田川の風物詩」、エピローグ「近代への連続と非連続」の構成で展観した。東京スカイツリー建設により隅田川沿いの景観の変化が注目されている中での意義深い企画となった。

「尾張徳川家の名宝―里帰りの名品を含めて」展開催

2010年10月

尾張徳川家第十九代義親の寄付による伝来品を根幹とする徳川美術館所蔵品に、現在は他所の所蔵となっているが来歴から尾張徳川家伝来品であったことがわかる作品を加え、同家伝来の品々を集めた「尾張徳川家の名宝―里帰りの名品を含めて」展が2日から11月7日まで徳川美術館で開催された。「伝来の名品」、「さまざまな名宝」「里帰りの名品」「新たに加えられた名宝―購入品と寄贈品」の分類で、同家に伝来した武具、刀剣、茶道具、書院飾り、能面・能衣装など290点が展示され、綿密な調査成果が示されるとともに江戸文化の粋をうかがわせる展観となった。

「高僧と袈裟」展開催

2010年10月

無準師範や夢窓疎石など中国、日本の仏教史に名を残す僧侶たちが着用した袈裟を展観し、それらの仏教的、交流史的意味や染織品としての価値などを紹介する「高僧と袈裟」展が9日から11月23日まで京都国立博物館で開催された。第1章「袈裟のはじまり 律衣と糞掃衣」、第2章「天皇家と袈裟」、第3章「鎌倉仏教と袈裟」、第4章「伝法衣にみる東アジア交流Ⅰ」、第5章「道教・神道と袈裟」「6章「伝法衣にみる東アジア交流Ⅱ」第7章「袈裟と名物裂」、第8章「伝法衣にみる東アジア交流Ⅲ」の構成で、袈裟を多角的に見る意欲的な試みとなった。

第22回世界文化賞受賞者発表

2010年09月

優れた芸術の世界的創造者たちを顕彰する高松宮殿下記念世界文化賞(主催:財団法人日本美術協会)の第22回受賞者が14日発表された。美術関係では、絵画部門でエンリコ・カステラーニ(イタリア)、彫刻部門でレベッカ・ホルン(ドイツ)、建築部門で伊東豊雄が受賞した。

ドガ展開催

2010年09月

印象主義の画家エドガー・ドガの画業を約120点の作品で跡づける「ドガ展」が18日から12月31日まで横浜美術館で開催された。オルセー美術館所蔵品46点を中心に国内外の作品を集め、1「古典主義からの出発」、2「実験と確信の時代」、3「綜合とさらなる展開」の構成で、フランスの造形伝統を踏まえながら近代化の進む時代と向き合い、独自の画風に至った足跡が油彩画、パステル画、彫刻、写真によって示された。

「古陶の譜 中世のやきもの―六古窯とその周辺―」展開催

2010年09月

中世から現在まで続く窯として知られる瀬戸・常滑・越前・信楽・丹波・備前の六古窯と、近年の調査で明らかになった各地の中世窯の作品を集めた「古陶の譜 中世のやきもの―六古窯とその周辺―」展がMIHO MUSEUMで4日から12月12日まで開催された。戦前に現業として存在している窯の来歴が調査され六古窯が紹介されたことにより古窯への興味が高まり、今日までの発掘によって猿投、美濃・美濃須衛、渥美、湖西、伊賀、加賀、珠州のほか全国約80箇所の中世窯の存在が明らかになった成果を踏まえ、各中世窯の作品約170点を展観。窯によって異なる土、技術、造形の多様性が紹介されるとともに、中世の窯業の広がりを示す充実した展観となった。同展は茨城県陶芸美術館(2011年1月2日―3月21日)、愛知県陶磁資料館(2011年4月2日―5月22日)、福井県陶芸館(2011年5月28日―7月31日)、山口県立萩美術館・浦上記念館(2011年8月13日―9月25日)に巡回した。

「栄西と中世博多展」開催

2010年09月

1168年と1187年に二度宋に渡り、博多に日本最初の禅寺聖福寺を建立した栄西(1141-1215)の生涯と、対外交流の拠点として栄えた中世の博多について国宝、重要文化財を含む152点の作品資料によって紹介する「栄西と中世博多展」が11日から10月31日まで福岡市博物館で開催された。第一部「栄西の足跡」では風貌、信仰、茶の嗜み、塔頭建立の手腕という視点から栄西に迫り、第二部「聖福寺の創建と中世博多の繁栄」では考古歴史資料や請来美術品など、当時の舶載品によって中世の国際都市博多を浮かび上がらせた。近年、存在が明らかになった栄西史料の研究成果が反映され、充実した展観となった。

あいちトリエンナーレ2010開催

2010年08月

愛知エリアを文化芸術面でも日本や世界に貢献する地域とすることを目指して21日から10月31日まで、愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、長者町会場、納屋橋会場、名古屋城、オアシス21、中央広小路ビル等、名古屋市を中心とする複数の場所を会場として「あいちトリエンナーレ2010 都市の祝祭」が開催された。2008年3月に発表された基本構想に基づき、同年10月に「美術を中心として現代芸術の動向を国際的な視野に立って紹介すること―先端性」「都市の祝祭としての高揚感を演出すること―祝祭性」「現代美術を基軸にパフォーミング・アートをも積極的に取り込むこと―複合性」を方針とすることが決定。建畠晢を芸術監督に3年間の準備を経て、世界各国から約130組の作家が参加し、ひとつの都市で同時多発的に芸術空間が創出される展観となって注目された。

「田中一村 新たなる全貌」展開催

2010年08月

生前はほぼ無名ながら、歿後にテレビ番組で紹介され一躍脚光を浴びた日本画家田中一村(1908-1977)の回顧展が、21日から9月26日まで千葉市美術館で開催された。奄美大島に在住し、南国特有の動植物を濃密に描いた晩年の作品群に評価が偏りがちだった一村の画業を、初期の作品や資料から検討し再顕彰する企画として注目を集めた。同展は鹿児島市立美術館(10月5日-11月7日)、田中一村美術館(11月14日-12月14日)に巡回した。

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