サントリー学芸賞決定

1993年11月

財団法人サントリー文化財団が、政治・経済、芸術・文学、社会・風俗、思想・歴史の4分野において優れた研究や評論活動をした研究者、評論家に贈るサントリー学芸賞の平成5年度の受賞者が決まった。うち芸術・文学部門では、木下直之(兵庫県立近代美術館学芸員)の『美術という見世物-油絵茶屋の時代』(平凡社刊)、杉田英明(東京大学教養学部助教授)の『事物の声 絵画の詩-アラブ・ペルシャ文学とイスラム美術』(平凡社刊)、馬渕明子(日本女子大学人間社会学部助教授)の『美のヤヌス-テオフィール・トレと19世紀美術批評』(スカイドア刊)の三人に決定した。授賞式は、12月6日東京会館で行なわれた。

第5回倫雅美術奨励賞決定

1993年11月

優れた美術評論や美術史研究、創作活動に贈られる、河北倫明夫妻の基金による倫雅美術奨励賞の第5回受賞者が決定。美術評論部門で妹尾克己(岡山県立美術館)の「国吉康雄の『祭は終わった』について」(『美術史六つの断面』所載 美術出版社刊)、美術史研究部門で前川公秀(千葉県立美術館)著『水仙の影-浅井忠と京都画壇』(京都新聞社刊)、創作活動部門で洋画家池口史子が受賞した。授賞式は12月3日赤坂プリンスホテルで行なわれた。

縄文遺跡から絵画、装飾品発掘相次ぐ

1993年12月

6月に鹿児島県指宿市大園原遺跡で高床式建物の最古の絵画土器片が発見されたのをはじめ、7月に兵庫県神戸市西求目塚古墳から7面の三角縁神獣鏡、8月に大阪府柏原市船橋遺跡から4種の絵を描いた縄文晩期の土器片、12月に千葉県長柄町の長柄町横穴墓群から全国初の五重塔線刻壁画が発見された。縄文期の豊かで独特の美意識をうかがわせるこれらの作例は、従来の縄文文化観を再考させることになった。  

高知県立美術館開館

1993年11月

昭和62年に構想され、その後建設がすすめられていた高知県立美術館(高知県高知市高須353-2、運営は県の外郭団体高知県文化財団があたる)が、3日開館した。「南の人と自然」を美術館創設のコンセプトにおき、コレクションは大きく三部門にわけられ、「路上の花束」(1935年)をはじめとするマルク・シャガールの油彩画4点、版画を中心としたドイツ表現主義と80年代の新表現主義の作品、それに山脇信徳今西中通ほかの郷土関係の美術家の作品からなり、所蔵作品は、寄贈をふくめ約1900点になる。開館記念展は、同日から23日まで、「ark of ART 美術の方舟」を開催した。

日本芸術院新会員決定

1993年11月

日本芸術院(犬丸直院長)は19日、今年度の会員補充選挙を行い、新たに4氏を会員とすることを内定、美術関係からは、洋画家藤本東一良、書家小林斗?が選ばれた。日本芸術院の定員は120人だが、これで会員数は107人となった。この内定は、総会の承認を経て、12月15日付で文部大臣から発令された。

第5回世界文化賞決定

1993年10月

財団法人日本美術協会が主催し、芸術の分野で世界的な業績をあげた芸術家に贈られる世界文化賞の第5回受賞者に、建築家丹下健三、画家ジャスパー・ジョーンズ(米国)、彫刻家マックス・ビル(スイス)らが選ばれた。授賞式は、28日東京元赤坂の明治記念館で行なわれた。

宮内庁三の丸尚蔵館開館

1993年11月

昭和天皇が亡くなられた後、皇室から国に寄贈された美術品類約6700点余を保存、調査・研究と一般公開を行なう宮内庁三の丸尚蔵館(東京都千代田区千代田1-1)が、皇居内に3日開館した。収蔵された書画、工芸品はこれまで「御物」であったため、文化財としての指定はされていなかったが、平安時代以降近代にいたるまでの美術史上価値の高い作品が多くふくまれている。宮廷文化の伝統を紹介する、開館記念特別展「宮廷文化の華」が、同日より12月19日まで開催された。

文化庁創設25周年記念特別展

1993年10月

文化庁の創設25周年を記念した特別展が、東京国立博物館で「やまと絵-雅の系譜」展(13日から11月23日)、京都国立博物館で「黄檗の美術-江戸時代の文化を変えたもの」展(5日から11月7日)として、それぞれ開催された。また、当文化財研究所の黒田記念館は、所蔵する黒田清輝の作品を19日から31日まで特別公開した。

竜安寺の襖絵、メトロポリタン美術館で公開

1993年10月

室町時代に細川勝元によって建立された竜安寺は、江戸時代寛政の大火(1797年)で西源院を除いて焼失した。この西源院の襖絵は、再興した本坊に移されたが、明治28(1895)年神仏分離による仏教迫害のあおりをうけて、71面すべてが売却された。今回、公開されたのは昭和8(1933)年に大阪で公開されて以来、行方が不明になっていた8面で、22日から翌年4月24日まで同美術館の日本ギャラリーで公開された。

第5回国華賞決定

1993年10月

日本東洋美術の優れた研究に対して贈られる国華賞の第5回受賞者が決定。成瀬不二雄(大和文華館)「司馬江漢の肖像画制作を中心として-西洋画法による肖像画の系譜-」(『国華』1170)、竹内順一(五島美術館)「茶碗三題と乾山焼制作年代について」(『国華』1169)、山下裕二(明治学院大学)「夏珪と室町水墨画」(『日本美術史の水脈』ぺりかん社)が、それぞれ選ばれた。贈呈式は、21日東京築地の朝日新聞社で行なわれた。

室町時代の雪舟流展

1993年10月

雪舟とその弟子達の作品を展観し、雪舟から雲谷派の間をつなぐ「室町時代の雪舟流」展が山口県立美術館で22日から開かれた(~11.21)。個々の画家研究によって編まれてきた観のある室町時代の水墨画史を、雪舟の作り上げた画風の継承という視点からとらえ、イメージの伝播という今日的な問題をも提起する展観となった。

「現代絵画の一断面 『日本画』を越えて」展

1993年09月

国際化の進む社会の中で「日本的なもの」とは何かが問われ、美術の分野でも「日本画」とは何かを問う「現代の『日本画』と『日本画』的イメージ」展(~2.23、O美術館)などが本年開かれたが、従来の「日本画」の枠にとらわれずに、現在、日本で制作している気鋭の新進作家の80年代から90年代の作品約90点を展示する「現代絵画の一断面 『日本画』を越えて」展が28日から東京都美術館で開かれた(~11.24)。現代美術の方向を探る展示として注目された。

第24回中原悌二郎賞決定

1993年09月

北海道旭川市ゆかりの彫刻家中原悌二郎を記念して同市が創設した中原悌二郎賞の第24回の授賞作に、江口週の「繋がれたアーチ」が、また優秀賞に湯村光の「起源」がそれぞれ選ばれた。

「描かれた歴史」展

1993年09月

幕末明治期の歴史意識の高まりを反映し、西洋で最も高く評価される「歴史画」を日本に受容する過程を示す絵画、写真、彫刻、書籍等約120点で展観する「描かれた歴史」展が兵庫県立近代美術館で18日から開かれた(~10.24)。美術を社会、政治、教育等多方面と関連づけて考える意義深い企画となった。同展は10月30日から12月5日まで神奈川県立近代美術館に巡回展示された。

「国画創作協会回顧展」

1993年09月

大正7年に新進気鋭の日本画家たちによって京都で結成され、画界に新風を巻き起こした国画創作協会の創立75周年を記して、本格的回顧展が京都国立近代美術館で28日から開催された(~11.7)。同展出品作のなかで現在所在が確認できるものほぼ全点にあたる約90点が出品され、充実した展観となった。同展は東京国立近代美術館に巡回した(11.16~12.12)。

第18回吉田五十八賞決定

1993年07月

建築の吉田五十八賞の第18回受賞作品に、新居千秋設計の「水戸市立西部図書館」(茨城県水戸市堀町)が選ばれた。なお、同賞を主催する吉田五十八記念芸術振興財団は、経済的な理由と役員の高齢化にともない吉田の意志を理解し選考にあたることができる人が少なくなったため、11月11日に表彰式をおこなった後、解散することになった。

「日本とヨーロッパ:1543-1929」展

1993年09月

文化庁、国際交流基金、ベルリン・フェスティバル公社の共催による「日本とヨーロッパ:1543-1929」展が、12日から12月12日まで、ベルリン市のマルティン・グロピウス館で開催された。重要文化財15件、重要美術品6件を含む179件(絵画37件、工芸品12件、歴史資料40件、近代美術90件)とヨーロッパの美術館等が所蔵する日本美術作品をあわせて400件をこえる作品が出品され、展示は時代別に大きく三部から構成された。第一期は、ヨーロッパ人が初めて日本に鉄砲を伝え、またキリスト教の布教をはじめた、いわゆる「南蛮文化」の時代で、1543年から1639年まで。第二期は、1639年から1853年までの鎖国の時代、第三期は、1853年から1929年までの、開国から近代化のすすむ時代であり、ヨーロッパと日本とのむすびつきが歴史的に、かつ総合的にたどれるように展示がされた。

「再制作と引用」展

1993年09月

インスタレーション等の出現によって顕在化してきた美術における再制作と、従来から作品制作の手法として用いられてきた自作、他作の引用をテーマに現代美術作品約60点を展示する「再制作と引用」展が18日から東京の板橋区立美術館で開かれた(~10.24)。作品のオリジナリティーの問題、美術品の価値基準の問題等を提起する展観となった。

第1回フジサンケイビエンナーレ現代国際彫刻展

1993年07月

昭和59年にはじまった具象彫刻の「ロダン大賞展」と抽象彫刻の「ヘンリー・ムーア大賞展」が今年から同展に統合され、その第1回展が美ケ原高原美術館で開催された。(16日~10月30日)コンクール部門では、9日に最終審査が行なわれ、大賞にメルヴィン・エドワース(米国)の「アサフォ・クラ・ノ」、ロダン賞にはビリー・リー(フランス)の「寺院」、ヘンリー・ムーア賞にはジャン・スザンヌ(フランス)の「間隙」、特別奨励賞にはフィリップ・キング(イギリス)の「月光の中の太陽」が、それぞれ選ばれた。

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