第11回倫雅美術奨励賞受賞者決定
1999年12月新鋭の美術評論家や美術史家を顕彰する倫雅美術奨励賞(同基金)の第11回目の受賞者は、「美術評論・美術史研究部門」に、佐藤道信(東京芸術大学助教授)の著作『明治国家と近代美術』、沼田英子(横浜美術館学芸員)の「世界を編む」展の企画及びカタログ中の論文が選ばれた。
新鋭の美術評論家や美術史家を顕彰する倫雅美術奨励賞(同基金)の第11回目の受賞者は、「美術評論・美術史研究部門」に、佐藤道信(東京芸術大学助教授)の著作『明治国家と近代美術』、沼田英子(横浜美術館学芸員)の「世界を編む」展の企画及びカタログ中の論文が選ばれた。
2日、モロッコのマラケシュで開かれていたユネスコの世界遺産委員会は、日本政府が推薦した「日光の社寺」(栃木県日光市)を世界遺産に登録することをきめた。国内の世界文化遺産としては、8件目、自然遺産を含めると10件目となる。
天皇陛下御即位10年を記念して、「皇室の名宝―美と伝統の精華」展が、14日から東京国立博物館で開催された。同展は、御物のほか、宮内庁、東京国立博物館、奈良国立博物館に保管されている考古遺物、宸翰及び書、絵画、工芸品、さらに中国絵画及び近代絵画まで、211点によって構成されたもので、各時代において皇室が芸術の守護者、推進者としての役割を担ってきた足跡を紹介する内容であった。
近代日本における「前衛」表現を、ヨーロッパ・アヴァンギャルド芸術の受容と影響という視点からだけではなく、その自律的な展開と同時代のヨーロッパ芸術との交錯という視点からとらえなおそうとする同展が、23日から京都国立近代美術館で開催された。絵画、彫刻、工芸、デザイン、建築、写真、美術教育など多岐にわたる出品作約290点によって構成され、同時代の「前衛」を再考する機会となった。(会期、翌年1月23日まで。以後同展は、水戸芸術館現代美術センターに巡回。)
日本文化が近代欧米に与えた影響など東西交流についての優れた研究に贈られる同賞の第20回目の受賞者が公表された。受賞作は、クリストフ・マルケ(フランス国立東洋言語文化研究所助教授)の『Ebis』誌98年冬期特別号「H・チュルヌスキ その政治・経済活動と東洋美術蒐集」の編集・出版、鈴木弘子(筆名・桂木紫穂 総合美術研究所主任研究員)の「印象派から二十世紀への絵画名品展」(明石市立博物館、98年)図録所収の論文「『画商の使徒』テオ・ファン・ゴッホとカミーユ・ピサロ」、また同特別賞は深井晃子(神戸女子大学教授)の「モードのジャポニスム」ロサンゼルス展(98年)ニューヨーク展(98・99年)の企画に対して贈られた。
サントリー学芸賞(サントリー文化財団)の第21回目の受賞者が28日に公表された。美術関係では、「芸術・文学部門」で佐藤道信(東京芸術大学助教授)の『明治国家と近代美術』(吉川弘文館)が選ばれた。贈呈式は、11月24日、東京丸の内の東京会館で行われた。
故岡本太郎(96年歿)の作品約2,000点を収蔵、展示する川崎市岡本太郎美術館が、同市多摩区に完成し、30日に開館した。同作家が、生前に同市に寄贈した作品を保存、公開することを目的に建てられたもので、施設は地上一階、地下一階で展示面積約5,000平方メートル、正面広場には約30メートルの彫刻「母の塔」が立つ。
日本芸術院(犬丸直院長)は、平成11年度の会員補充選考を行い、新会員7名を内定し、15日付けで発令した。第一部(美術)では、日本画の佐藤国男(77)、同じく山岸純(69)、洋画の島田章三(66)、工芸の大樋年朗(72)が会員となった。
頼朝没後800年を記念した同展が、23日から神奈川県立歴史博物館で開催された。同展は、源頼朝にゆかりのある寺社の美術資料をはじめ、頼朝が鎌倉に建立した永福寺の調査の成果や自筆の古文書を展示するとともに、各地につたわる頼朝像を一堂にあつめ、いまもなお日本人のなかに生きつづけるイメージを検証する機会となった。
政府は、26日、11年度の文化勲章受章者と文化功労者を公表した。美術関係では、日本画家の秋野不矩(91)が文化勲章を受章、また、陶芸家の青木竜山(73)、日本画家の大山忠作(77)、彫刻家の舟越保武(86)、元奈良国立文化財研究所長で大阪府文化財調査研究センター理事長の坪井清足(77)が選ばれた。
桃山から江戸時代にいたる「きもの」に焦点をあてた同展が、19日から京都国立博物館で開催された。同展は、当時の小袖や絵画資料など225点によって構成され、服飾としての「きもの」を、流行(モード)という視点からみなおし、日本人の美意識の変遷をたどろうとする内容であった。
日本及び東洋の美術をテーマにした研究論文を対象に、平成元(1989)年に創設された國華賞(國華賞顕彰基金)の受賞者が公表された。受賞作は、須賀みほ(青山学院大学非常勤講師)の「弘安本北野天神縁起絵巻再考―系統諸本の考察から」(『美術史』146号、平成11年3月)、亀井若菜(学習院大学非常勤講師)の「サントリー美術館蔵『日吉山王・祇園祭礼図屏風』の制作意図」(『國華』1238号、平成10年12月)。贈呈式は、10月22日、東京築地の朝日新聞社浜離宮朝日小ホールで行われた。
皇太子殿下ご成婚記念として東京国立博物館に建設がすすめられていた平成館が、12日に開館した。施設は、地上3階、地下1階、延べ床面積約18,000平方メートル、2階部分に3,000平方メートルの特別展示室4室がある。開館記念として特別展「金と銀―かがやきの日本美術」を開催した。同展は、弥生時代から江戸時代までの考古資料、絵画、仏像、工芸品、書跡など276件によって、素材としての金と銀の多様な技法と表現を展観しようとするものであった。
文化財保護審議会(西川杏太郎会長)は、15日、旧青木家那須別邸(栃木県黒磯市)、旧額田郡公会堂と物産陳列所(愛知県岡崎市)など7件の建造物を重要文化財に指定するよう中曽根弘文文相に答申した。また、歴史的な街並みを保存する重要伝統的建造物群保存地区と、近代建造物の保護を目的にした登録有形文化財(建造物)に79件を指定、登録するようにあわせて答申した。
彫刻家中原悌二郎の業績を記念して、北海道旭川市が創設した同賞の第30回の受賞に、吾妻兼治郎「YU-847」に、同優秀賞に西雅秋「Innocence-Wedge」に決定し、3日、旭川市内で贈呈式が行われた。
東京芸術大学に、5日、同美術館が開館した。施設は、地下4階、地上4階、延べ床面積約8,720平方メートル、展示面積は約1,500平方メートル。開館記念展として、所蔵芸術資料約45,000点のなかから精選した作品で構成した、「芸大美術館所蔵名品展」を開催した。
旧石器時代から近代、現代までの東北地方の歴史と文化を研究、総合展示するための同博物館(宮城県立)が、9日、宮城県多賀城市に開館した。「体験できる博物館」という基本方針のもと、来館者がさまざまなかたちで参加、体験できるコーナーを設け、また「こども歴史館」などの施設がある。開館記念展として「祈りのかたち―東北地方の仏像」展を開催した。同展は、東北6県に伝えられてきた飛鳥時代後期から江戸時代までの仏像等131体によって構成され、今日まで伝承されている年中行事や民俗芸能のもとにある仏教文化を紹介する内容であった。
24日、台風18号による強風と高波により、広島県宮島町の厳島神社で、左右一対ある国宝「門客神社」のうち、豊石窓命をまつった左門客神社が倒壊した。また、高潮のため回廊全体や能舞台が水没した。
静嘉堂に収蔵された仏教美術をはじめて、まとめて公開する同展が、2日から静嘉堂文庫美術館(東京都世田谷区)で開催された。同展は、中国、朝鮮半島、日本の東アジア三国の13、4世紀の仏画の態様を比較するまたとない機会となった。
セザンヌの作品とともに、明治末年から日本に紹介され、親しまれてきたこの画家の受容史をたどろうとする同展が、11日から横浜美術館で開催された。セザンヌの作品を紹介するばかりでなく、日本人にとってのセザンヌ像を検証しようとする試みであった。(会期、12月19日まで。以後同展は、愛知県美術館に巡回。)