建造物重要文化財新指定

1988年11月

文化財保護審議会(斎藤正会長)は18日、建造物関係の重要文化財として、北九州市のJR門司港駅本屋など10件20棟を、また重要伝統的建造物群保存地区として、京都市上賀茂と徳島県脇町南町の二地区を選定するよう、中島文相に答申した。これで建造物関係の重要文化財は2020件3272棟、重要伝統的建造物群保存地区は28地区となった。

第1回北野美術館大賞決定

1988年11月

長野市の北野美術館が創立20周年を記念して創設した「北野美術館大賞」の第1回が決定。同賞は長野県出身或いは在住者を対象とし、河北倫明陰里鉄郎岩崎吉一が審査にあたった結果、大賞に日本画家原宣夫「浅間」、洋画家青木一美「高曇りの日」がそれぞれ選ばれた。

第42回毎日出版文化賞

1988年11月

第42回毎日出版文化賞が決定。美術関係から、島田修二郎・入矢義高監修『禅林画賛』が特別賞を受賞し、11日贈呈式が行なわれた。

ふくやま美術館、高麗美術館開館

1988年11月

福山城公園内に3日、総事業費約35億円をかけてふくやま美術館(福山市西町2-4-3)がオープン、開館記念展として3日から12月4日まで「20世紀絵画への流れ」展を開催した。 またこれに先立つ10月25日、李朝陶磁、高麗青磁などのほか、木工、石造品や生活用具など約1700点を所蔵する財団法人高麗美術館(京都市北区紫竹上岸町15)が、開館した。

「抽象彫刻の形成期1945~1960」展開催

1988年11月

戦後の混乱期の中で形成されていった抽象彫刻表現を辿る展覧会が、3日から12月11日まで練馬区立美術館で開催された。今日の抽象彫刻の中核をなす現存作家10人の初期作品にスポットを当て、約50点の作品と、’60年代以降の作品についての写真パネル約50点が展示された。

川崎市民ミュージアム、東高現代美術館オープン

1988年11月

従来の観賞形式主体の美術館の概念をこえた新傾向の施設として、博物館、映像センター、イベント空間などの機能も備えた川崎市民ミュージアム(川崎市中原区等々力3049-1)が、1日開館した。等々力緑地内に総事業費約150億円を投じ、菊竹清訓設計、延床面積1952㎡、地上3階・地下1階の建物は、展示、学習、研究の3部門に分かれている。作品収集も、川崎市に関する考古・民俗・歴史資料や、写真・ビデオ・映画・漫画など現代社会の文化を総合的に捉えようとする方針がとられており、ユニークな活動が各方面から注目を集めている。 また最新の現代アートを紹介する美術館として、株式会社東高ハウスの設立になる東高現代美術館(東京都港区北青山3-5-28)が、8日開館した。ロフト感覚をとり入れた館内には音響設備も設置され、新しいタイプの美術館として注目されている。

ワシントンで「大名美術展」、ケルンで「密教美術展」開催

1988年10月

昭和58年のレーガン・中曽根会談で日米間の文化交流促進が話し合われて以来、5年をかけて準備が進められてきた「大名美術展」(文化庁・国際交流基金主催)が、30日から平成元年1月23日まで米国ワシントンD.Cのナショナル・ギャラリー・オブ・アートで開催された。武士文化の創造と発展を辿る企画のもとに、国宝7件、重文110件を含む328件が展示され、昭和56年にロンドンで開催された「江戸大美術展」をしのぐ規模の日本美術展となった。 またこれに先立ち、自由都市700周年を祝う西ドイツ・ケルン市では、9月23日から11月28日まで、ケルン市立東アジア美術館で「密教美術展」が開催された。日本側の主催は東京国立博物館で、これに奈良国立博物館が協力、重文43件を含む98件が出陳された。日本仏教では禅宗が広く海外で紹介されてきたが、密教の紹介としては初の企画となった。

サントリー美術館大賞第1回、サントリー学芸賞第10回決定

1988年10月

陶磁や金属、木、竹、漆、ファイバー、ガラスなどを対象に、工芸の活性化と21世紀の工芸創作を目的に本年新設されたサントリー美術館大賞の第1回受賞者が決定。日本作家13名、外国作家3名の招待作家の中から、フランスの陶芸家クロード・シャンピ「箱・彫刻」が大賞に選ばれた。同招待作品によるサントリー美術館大賞展’88は、25日から12月4日まで、サントリー美術館で開催された。 また第10回サントリー学芸賞に、芸術関係から、松木寛『蔦屋重三郎-江戸芸術の演出者』が選ばれた。

文化勲章、文化功労者決定

1988年10月

政府は、28日の閣議で昭和63年度の文化勲章受章者5名、文化功労者13名を決定した。美術関係では、文化勲章に彫塑の円鍔勝三(本名勝二)、考古学の末永雅雄が、文化功労者に日本画の佐藤太清、洋画の鈴木信太郎、料理研究家で湯木美術館館長の湯木貞一が、それぞれ選ばれた。文化勲章の伝達式は11月3日皇居で、文化功労者の顕彰式は11月4日東京霞ケ関の国立教育会館で行なわれた。

記念物関係文化財指定

1988年10月

文化財保護審議会(斎藤正会長)は28日、史跡5件、名勝1件を、新たに国の文化財として指定するよう中島文相に答申した。史跡には、沖縄・波照間島の下田原城跡など、名勝には兵庫県城崎郡日高町の旧大岡寺庭園などが指定され、これで史跡は1277件、名勝は253件となった。

「没後100年記念狩野芳崖-その人と芸術」展開催

1988年10月

明治21年に狩野芳崖が歿してから100年になるのを記念し、22日から11月20日まで山種美術館で70余点の作品による展覧会が開催された。引続き、共同企画ながら作品選定とカタログ作成は各館独自の構成により、平成元年1月5日から2月12日まで下関市立美術館で(126点ほか関連資料)、2月28日から4月2日まで京都国立博物館(144点ほか関連作品資料・作品)で、それぞれ「没後100年狩野芳崖展」が開催された。これら3会場ともに、アメリカのボストン美術館、フィラデルフィア美術館からの里帰り作品も出陳された。

日本文化デザイン会議、デザイン大賞決定

1988年10月

和歌山県那智勝浦町を中心に行なわれている“日本文化デザイン会議’88熊野”は、21日、日本文化デザイン会議賞3名、2団体を決定。国際文化デザイン賞に、ファッションデザイナー三宅一生が選ばれた。授賞式は、最終日の22日に行なわれた。

「動きの表現」展開催

1988年10月

多彩な表現を見せる現代美術の中で、動きそのものへの関心を示す作品を集めた「動きの表現」展が、8日から12月11日まで埼玉県立近代美術館で開催された。20世紀全体を視野に入れ、絵画、彫刻、写真、ビデオアートなど広い分野の作品約80点が、5セクションに分けて展観された。

ダダと構成主義展

1988年10月

ともに今世紀初頭、ヨーロッパとアメリカに起こったダダイズムと、ロシアに起こった構成主義の、共通性とその内容をさぐる「ダダと構成主義展」が8日から11月13日まで東京池袋・西武美術館で開催された。両要素の同時代作家間における影響と反映、それ以降の抽象芸術運動への継承について、造型要素と構成の点にスポットを当て5つのセクションに分けて展観された。

「写実の系譜Ⅲ明治中期の洋画」展開催

1988年10月

“写実の系譜”シリーズとして、第1回「洋風表現の導入-江戸中期から明治初期まで」、第2回「大正期の細密描写」と開催してきた東京国立近代美術館で、その第3回として「写実の系譜Ⅲ・明治中期の洋画」が、8日から12月4日まで開催された。今回は明治20年代から30年代に焦点をあて、約100点の作品が展観された。

中国人留学生、在日中国美術家展開催

1988年10月

都内に住む中国からの留学生は1万数千人で、美術や音楽を専攻する芸術家も数百人にのぼっている。そうした有志により昨春、在日中国芸術家協会が結成され、現在会員も約80人を数えるが、同協会による第3回在日中国美術家展が、8日から15まで中野文化センターで開催された。こうした動きの中で、百貨店や映画館などでの中国関係の催しも活発に行なわれ、日中友好の企画が相次いだ。

藤ノ木古墳石棺開棺

1988年10月

3年前に未盗掘の石室と家形石棺が確認された奈良県斑鳩町の藤ノ木古墳は、第1次調査で石棺周辺に鞍や鐙、轡などの馬具が既に確認されていたが、周倒な準備を経て8日、1400年ぶりに石棺が開棺された。ハイテクを駆使した1ケ月の調査の結果、大刀、沓、冠帽、玉などの装身具や染織などが確認され、考古学史上、画期的な調査となった。

京都府京都文化博物館オープン

1988年10月

京都文化を総合的に紹介する財団法人京都文化財団の京都府京都文化博物館(京都市中京区三条高倉)が、1日開館した。同館は、平安遷都1200年記念事業の一環として、総事業費約82億円をかけて昭和61年より準備が進められてきたもので、重要文化財に指定された旧日本銀行京都支店(元平安博物館)の建物を復元した別館と、隣接する本館の2棟からなる。歴史展示や美術工芸展示、旧商家町並の再現展示、映像、貸展示室などから構成される。

茨城県近代美術館開館

1988年10月

昭和22年大洗町に県立美術館として開館して以来、31年水戸市の県立図書館内、41年茨城県立県民文化センター内に県立美術博物館として開館と、移転を繰り返してきた茨城県の美術館が、1日、千波湖畔に茨城県近代美術館として独立、開館した。総事業費58億円をかけ、延床面積10,501㎡。開館記念展として、1日から11月6日まで「モネとその仲間たち」展を開催した。また美術館敷地内に、付属敷設として中村彝のアトリエも復元された。

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