東京芸術大学新学長決定

1989年11月

東京芸術大学は16日、藤本能道学長の任期満了に伴い学長選挙を行ない、日本画家で同大美術学部長の平山郁夫を第6代学長に選出した。文部省に上申の後、閣議の了承を経て就任し、任期は12月21日より4年間。

細川護立コレクション、熊本県立美術館に寄贈

1989年11月

旧肥後藩主細川家第16代当主細川護立の収集になる近代日本美術を中心とする作品のうち、遺族より79点、細川コレクションを収蔵する財団法人永青文庫より17点、計96点が熊本県立美術館に寄贈、寄託されることとなり、7日、贈呈式が行なわれた。

第13回現代日本彫刻展(宇部)大賞決定

1989年10月

野外彫刻コンクールとしては我が国で最も長い歴史を持つ現代日本彫刻展は第13回目をむかえ、「光と大地」をテーマに招待作家10名、公募入選作家10名による20作品の中から各賞の選考が行なわれた。大賞は山根耕「つなぎ石-作品3」が受賞した。

文化庁、在外日本美術品実態調査へ

1989年10月

文化庁は明治時代以降海外に流出した日本美術品の所在、および状態の調査を行なうため、欧米に専門家を派遣する方針を固めた。作品の修復などについても海外援助、協力を行なっていく。文化庁がこうした事業を実施するのは初めて。

文化勲章、文化功労者決定

1989年10月

平成元年度の文化勲章受章者と文化功労者が27日の閣議で決定、発表された。美術関係では、文化勲章受章者に日本画の片岡球子、洋画の吉井淳二、彫刻の富永直樹、文化功労者に日本画の岩橋英遠、洋画の森田茂、漆芸の佐治賢使が選ばれた。今回の受章を合わせて文化勲章の受章者は全体で246(現存者62)人、文化功労者は426(同127)人。決定、発令は11月3日に行われ、文化勲章伝達式は同日皇居で、文化功労者の顕彰式は同6日東京霞が関の国立教育会館で行なわれた。

昭和美術展望の試み

1989年10月

平成時代の幕明けを契機として、昭和年間の美術活動を回顧、展望する展覧会、出版が相次ぎ、日本近代美術に新しい視坐を投げかけるものとして注目された。展覧会では、識者の推薦をもとに選ばれた「昭和の日本画100選」「昭和の洋画100選」展が、朝日新聞社の主催で行なわれ、出版では各10年代ごとに編年的に編集された『昭和の美術』(毎日新聞社)のほか多彩な視点で昭和美術をふりかえる試みがなされている。

日本文化デザイン会議、最終回

1989年10月

「’80年代の日本社会をデザインする」ことを趣旨として、1980年に始まった日本文化デザイン会議が、最終回を迎えた。同会議は、デザイン、建築、文学、評論、哲学などの第一線で活躍する人々が集まり、シンポジウム形式で行なわれ、これまで地方都市で開催されてきた。最終回の今回は、12日から14日まで千葉県の幕張メッセで、こけら落としを兼ねて開催され、過去最大の規模となった。

「室町時代の美術」展

1989年10月

室町文化の複雑な諸相を400件の美術工芸品によって多角的に紹介する「室町時代の美術」展が10日から11月19日まで東京国立博物館で開催された。「将軍と武家」「宮廷と貴族」「唐物とその影響」「唐物数寄から侘び数寄への展開」「禅林」「芸能」「生活と信仰」の7つのテーマに分け、従来の室町文化観に再考を促す契機となった。

飯田市美術博物館開館

1989年10月

旧飯田城二の丸跡地に、芸術、人文科学、自然科学の総合的な展示、社会教育施設として飯田市美術博物館が8日、開館した。鉄骨・鉄筋コンクリート地下1階地上2階、延床面積3813平方メートル中、美術関係施設は菱田春草の業績を顕彰する春草記念室(283㎡)、市民ギャラリー(169㎡)、展示室2室。伊那という土地にゆかりのある自然、文化を多角的に扱っていく方針である。

セゾン美術館、奈良そごう美術館開館

1989年10月

百貨店に関連する美術展覧施設の増加が著しい中で、昭和50年から活動を続けてきた東京池袋の西武美術館が移転新装して総面積1452平方メートルのセゾン美術館として27日に開館。また、奈良に進出したそごう百貨店内に奈良そごう美術館が開館(総面積約921平方メートル)。開館記念展は「百寿記念奥村土牛展」(10.2-16)で、近代日本画の展観を中心に行ない、収集活動もしていく方針である。

第1回前田寛治大賞決定

1989年10月

洋画家前田寛治の郷里倉吉市が、若手洋画家の活動の振興を目的として昨年度設立し、3年ごとに贈られる前田寛治大賞受賞作が、応募24画家44点の中から選ばれ、松原政祐が受賞。佳作賞に滝純一、吉岡正人、井上秀樹、田村能里子が選ばれた。

第1回国華賞決定

1989年10月

日本・東洋美術研究誌『国華』が本年10月創刊百周年を迎えるのを記念して創設された「国華賞」の受賞者は、松田誠一郎、泉武夫の二名に決定。また、長期の継続的研究成果に対して贈られる「国華特別賞」受賞者には、島田修二郎が選ばれた。

ユーロパリア89ジャパン開催

1989年09月

昭和34年より隔年にブリュッセルで行なわれているアートフェスティバル「ユーロパリア」は、本年日本を特集することとなり、26日より約3ケ月間美術、音楽、演劇、文学など日本文化の全貌を紹介する企画が行なわれた。美術展は、「病草紙」などの国宝を含む131点の作品により人間表現の歴史的変化、精神的背景を探る「日本美術における人間像」展のほか、現代美術、インスタレーションなど新しい潮流にも目をむけ、工芸、書など多分野におよび、従来の日本への理解に新風を送りこんだ。

第20回中原悌二郎賞決定

1989年09月

彫刻家中原悌二郎を記念し、作家の郷里旭川市の主催で行なわれる中原悌二郎賞第20回の受賞者が決定し、池田宗弘「見果てぬ夢・門出(ドン・キホーテ・シリーズから)」が選ばれた。同作品は昨年の第11回神戸須磨離宮公園現代彫刻展で特別賞となったもので、同氏の受賞は第17回優秀賞と合わせて2回目である。また、本年の優秀賞には三木俊治「行列」が選ばれた。

Bunkamura開館

1989年09月

東急グループが210億円をかけ東京渋谷に建設していた文化複合施設Bunkamuraが3日に開館。音楽用大ホール「オーチャードホール」、演劇用中ホール「シアターコクーン」、映像用のミニシアター2館と共に延床面積830平方メートルの「ザ・ミュージアム」、4ブースのギャラリーが含まれている。開館記念展は「源氏物語と紫式部展」(9.17-10.8)。

輪王寺火災

1989年09月

4日午前3時頃、東京都台東区上野公園14-3の輪王寺(石川光尚住職)の本堂付近から出火し、木造平屋建て本堂、大書院、小書院、奥ノ院、庫裏等、計650平方メートルが全焼した。同寺の国指定重要文化財「輪王寺門跡表門」は難を免れ、本堂に安置されていた都指定文化財「天海僧正坐像」(江戸初期)は、一時焼失と伝えられたが、両膝が炭化し、頭部が破損しているものの修復可能であることが後に判明した。

第4回本郷新賞決定

1989年08月

公共の広場、建築物などに設置されたモニュマン、環境彫刻を対象とする本郷新賞は、全国39ケ所64点の推薦応募の中から国松明日香「捷」(札幌「はまなす国体」シンボル)に贈られることに決定。これに伴い、同賞の主催館である札幌彫刻美術館で受賞記念「国松明日香彫刻展」(9.13-10.15)が開催された。

第2回朝倉文夫賞決定

1989年08月

過去2年間のすぐれた彫刻活動に対して贈られる朝倉文夫賞第2回の選考委員会が23日行なわれ、岡本敦生「記憶体積(アーク)」が受賞作に選ばれた。

第6回ヘンリームーア大賞決定

1989年08月

国内外の野外抽象彫刻を対象に行なわれるヘンリー・ムーア大賞展が、4日、長野県美ケ原高原美術館で開幕。招待部門の12作家12点、コンクール部門応募作品537点から選ばれた19作家19点、計31点の中で選考が行なわれ、大賞にはメキシコのフェルナンド・ゴンザレス・ゴルタサル「解体された柱」、特別優秀賞に新宮晋「星の神話」、鹿田淳史「コスミック・アーチ’89」、リック・ブース「モト・ムーアヘンリーへのオマージュ」、ライナー・クリスター「白い大きな頭像Ⅰ/84/85」が決まったほか、優秀賞7点、彫刻の森美術館賞7点、美ケ原高原美術館賞6点、上野の森美術館賞6点が選ばれた。

「ドラクロワとフランスロマン主義」展開催

1989年08月

19世紀前半のヨーロッパで芸術全般にわたってくり広げられたロマン主義運動の、フランス絵画における展開を油彩画約70点によって展観しようとする「ドラクロワとフランス・ロマン主義」展が5日より10月1日まで、国立西洋美術館で開かれた。パリ、コレージュ・ド・フランスのジャック・テュイリエの企画になる同展は「ロマン派の諸源泉」「芸術家の肖像」「死」「女性」「ドラマ」「自然」「戦い」の7セクションに分けられ、題材別にフランス・ロマン主義の動きを跡づけようとする興味深い展観となった。

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