日本美術学校再開

1994年04月

1916年に東京・早稲田に設立され、1988年に閉校するまで林武、瑛久など数多くの作家を輩出した日本美術学校が、12日、埼玉県大宮市で再開された。同校は戦後、大学への移行措置をとらなかったことから経営悪化に陥り閉校したが、学校再建委員会を兼ねた校友会が中心となり、学校法人佐藤栄学園の出資により再開されることとなった。修了年限2年の専門学校で日本画、洋画、彫刻の3科が設置され、定員は40名。今後デザイン科の設置も予定されている。

日本文化芸術振興賞受賞者決定

1994年04月

日本の伝統文化や現代芸術の保護・振興、国際交流の促進等を目的とした「日本文化芸術財団」(会長・瀬島竜三観光政策審議会会長)が設立した「日本文化芸術振興賞」の第1回の受賞者がこのほど決定。美術関係では、伝統文化部門で唐紙師の千田長次郎・堅吉父子が受賞し、若手を対象とする助成金の伝統芸術部門では左官の杉森義信が、現代芸術部門では建築家の妹島和世が対象者に選ばれた。

「モードのジャポニスム」展開催

1994年04月

19世紀の西欧で流行した日本趣味の衣服への反映を跡づける「モードのジャポニスム」展が5日から京都国立近代美術館で開催された(~6.19)。18世紀から現代までの衣装130点、テキスタイル、アクセサリー30点が展示され、日本の着物が18世紀のオランダで男性の部屋着として着用されていたこと、20世紀の女性の衣服におけるコルセットの不使用、ゆとりの重視に与えた影響などが示される興味深い展観となった。

鎌倉市に鏑木清方の遺品寄贈

1994年04月

幕末・明治期の風俗を描いた作品や美人画で知られる日本画家鏑木清方の旧作や遺作・遺品が、長く画家の住居のあった神奈川県鎌倉市に寄贈されることとなり、4日寄付目録が手渡された。寄贈される遺作・遺品は現在横浜美術館が保管し整理を進めている。「一葉女子の墓」「朝涼」等の代表作を含む日本画26点、下絵、日記、写生帖などあわせて数百点におよぶ作品・資料が寄贈されることとなり、鎌倉市はこれらを保管、公開する記念館を設立したいとする遺族の意向を汲んで積極的に検討していく予定である。

厳島神社の修復完了

1994年04月

1991年9月の台風19号で大被害を受けた安芸の宮島の厳島神社(広島県佐伯郡宮島町の能舞台、能楽屋などが修復を終え、5日に完工式を行なった。国、広島県、宮島町が文化財補助事業として修復したもの。本社の朝座屋(ルビ あさざや)や島に点在する摂社、末寺の復旧のめどはまだ立っていない。

足利市立美術館開館

1994年04月

栃木県足利市のJR足利駅前に2日、足利市立美術館(遠藤武幸館長)が開館した。市街地の区画整備事業の中核施設として、11階建て複合ビルの地下1階から地上3階までの延べ床面積3729平方メートルの美術館として設立され、同市に寄贈、寄託された両毛地域ゆかりの作家の作品を中心に収蔵。年一回の自主企画展のほか、他館との共同企画による巡回展を中心に行なっていく予定で、開館記念展は「印象派とフランス近代絵画の系譜」展(4.2~5.29、東京新聞主催)。

斎藤記念川口現代美術館開館

1994年04月

1970年代以降の日本の現代美術品を収集・展示する私立美術館「斎藤記念川口現代美術館」(須賀忠治館長)が2日、開館。美術篤志家の斎藤規子の「美術を通じて公益に資したい」とする意志を受けて、親戚関係にあたる株式会社ローザ社長、同社専務で彫刻家の建畠覚造らが中心となり、平成元年2月に準備室を発足。現代作家の作品を収集することにより、美術活動を支援していく方針で、今後は収蔵コレクション展を中心に開催していく予定である。開館記念展は「土屋公雄―来歴―」(4.2~5.29)。 

第50回日本芸術院賞受賞者発表

1994年03月

芸術の各分野で大きな業績のあった人に贈る日本芸術院賞の平成5年度(第50回)の受賞者は洋画家の芝田米三(67)(第61回独立展出品作「楽聖賛歌」に対して)、彫刻家の吉田鎮雄(63)(第25回日展出品作「遊憩」に対して)、工芸家の井波唯志(71)(第25回日展出品作「晴礁」に対して)、書家の栗原蘆水(62)(第25回日展出品作「菜根譚一節」に対して)に決定。また日本芸術院賞・恩賜賞第一部美術の受賞者には日本画家の白鳥映雪(81)(第25回日展出品作「菊慈童」に対して)が選ばれた。授賞式は5月30日東京上野の日本芸術院会館で行なわれた。

松伯美術館開館

1994年03月

上村松園、松篁、淳之の三世代の日本画家の作品を収蔵・展示する松伯美術館が奈良市登美ヶ丘に22日に開館。近畿日本鉄道株式会社が、松篁、淳之両氏により上村家三代の作品の寄贈を受け、近鉄の寄付による10億円を基金に設立され、故・佐伯勇近鉄名誉会長旧邸の敷地内に建てられている。建物は鉄筋コンクリート(一部鉄骨)地上2階地下1階、延べ床面積約1520平方メートル、総事業費は約14憶円。寄贈された作品は草稿、写生等を含めて92点で、松園の作品3点、下絵61点、松篁の作品は20点、淳之の作品は8点となっている。

静岡県立美術館にロダン館完成

1994年03月

静岡県立美術館にフランスの彫刻家オーギュスト・ロダンの代表作「考える人」「地獄の門」などを展示するロダン館、通称ロダン・ウィングが22日開館。総工費34億1600万円、鉄筋コンクリート一部鉄骨造り2階建て、延べ床面積約3000平方メートルの建物内に、ロダンの作品のほか、カミーユ・クローデル、ブールデルらの弟子の作品などを展示する。同館のロダン・コレクションは国立西洋美術館の50余点に次ぐ我国最大規模のものである。

第44回芸術選奨受賞者発表

1994年03月

芸術の各分野で昨年1年間に優れた業績をあげた人に贈られる芸術選奨の受賞者が9日、文化庁から発表された。美術部門では彫刻家土谷武(67)(「土谷武展」特に「植物空間」シリーズに対して)、陶芸家中村錦平(58)(「東京焼・中村錦平展―メタセラミックスで現代をさぐる」に対して)が受賞。また新人賞には写真家大石芳野(49)(写真集「カンボジア苦界転生」に対して)が選ばれた。授賞式は17日、東京・上野の日本芸術院会館で行なわれた。

第37回安井賞展開催

1994年03月

故・安井曽太郎を記念し、若手具象洋画家の育成、現代美術の振興を目的に1957年に設立された安井賞(主催・財団法人安井曽太郎記念会、毎日新聞社、セゾン美術館)の第37回目の受賞者発表が昨年12月21日に発表されたのを受けて、4日から東京の有楽町アートフォーラムで「安井賞」展が開催された(~3.28)。全国の推薦委員から推薦された223作家による365点の作品の中から入選作45点が選ばれ、「安井賞」は本田希枝「漂流者」、「佳作賞」は木津文哉「岐」が受賞した。同展はセゾン美術館の後、下館市文化ギャラリー、尼崎市総合文化センター、いわき市立美術館、尾道市立美術館、秋田市立千秋美術館、福岡県立美術館、帯広市藤丸に巡回した。 

第16回マルコポーロ賞受賞者決定

1994年02月

イタリア文化の普及に尽くした著作に与えられるマルコ・ポーロ賞(イタリア文化会館主催)の第16回目の受賞者は、小佐野重利『記憶の中の古代』(中央公論美術出版)に決定した。

「日本画の抽象」展開催

1994年02月

「日本画」とは何かを問う動きが高まるなか、西欧の抽象画に学び、日常的な視覚から遠くはなれる試みを行なった大正後期から1960年代までの日本画70点を集めた「日本画の抽象」展が11日から東京・大崎のO美術館で開かれた(前期~2.23、後期2.25~3.9)。一般に、伝統との結びつきを強調されがちな日本画の分野で、技法、様式の可能性を広げようとした作品群が並び、「日本画」の定着を再考させるとともに、制作の新たな展開を促す展観となった。

「戦後日本の前衛美術」展開催

1994年02月

戦後日本の前衛作家約100人による約200点の作品を「真夏の太陽に挑む:具体」「復讐の形態学:読売アンデパンダンと1960年代の社会的プロテスト」等、9セクションに分けて展示する「戦後日本の前衛美術」展が、5日から横浜美術館で行われた(~3.30)。米国からアレキサンドラ・モンローがゲスト・キューレイターに招かれ、その調査・研究によって日本の美術活動の自律性に注目すべく構成された。同展は同年9月から翌95年1月までニューヨークのグッゲンハイム美術館でも、内容を多少変更して展観され、日米の視覚の差異をうかがう意味でも興味深い企画となった。

第9回小山敬三賞決定

1994年02月

これまでに優れた作品を発表してきた中堅具象洋画家の業績を顕彰する小山敬三賞の第9回目の受賞者は新作家美術会会員の中野淳に決定し、2日、発表された。油絵海外修復技術調査研究費助成の対象者には学校法人高沢学園創形美術学校修復研究所の伊藤由美、美術文化の国際交流事業に対する助成の対象者には、東南アジアからの美術留学生を援助する機関として清春白樺美術館が選ばれた。油絵等修復技術海外研修費助成の対象者には該当者がなかった。 

’93メセナ大賞決定

1994年01月

企業および企業財団による優れた文化支援活動を顕彰する「メセナ大賞」(主催・社団法人企業メセナ協議会)の第3回目の受賞者が決定。従来強調されてきた継続性に加え、今回は「地域への貢献」と「国際性」が基準として重視されたのが特徴で、大賞にセゾングループ(セゾン美術館の運営に対して)が選ばれた。他に美術関係では財団法人東芝国際交流財団(国内および海外の美術館・博物館への助成)、フィリップ・モリス株式会社(日本美術修復計画への支援)がメセナ特別賞受賞者に選ばれた。

バーンズコレクション展開催

1994年01月

目薬の新薬開発により財をなしたアルバート・クーン・バーンズ(1872―1951)の2500点以上にのぼる美術品蒐集品のうち、質・量ともに世界最大とも言われる後期印象派の作品を中心に同コレクション中の優品80点を展観する「バーンズ・コレクション展」が、22日から国立西洋美術館で開催された(~4.3)。遺言によりアメリカ・ペンシルヴェニア州メイオンにあるバーンズ財団の収蔵品は売却・貸与、カラー複製、展示位置の改変が禁止され、公開もほとんどされていなかったが、建物の老朽化や諸設備整備に対応するため、ワシントン・ナショナル・ギャラリー東館での展観を皮切りに、パリのオルセー美術館を経て来日する巡回展が実施のはこびとなった。「幻のコレクション公開」とあって連日多数の入場者があり、美術展への関心の高まりを印象づける企画となった。

文化政策推進会議提言

1994年01月

文化庁長官の私的諮問機関で、文化振興のための統合的施策に関して検討している文化政策推進会議(会長・坂本朝一NHK名誉顧問)は、11日、国際社会の中で日本が文化創造に貢献していくための文化政策の具体的提言を公表した。提言は「文化発信社会」をめざして文化庁予算の拡大、芸術文化振興基金の財政基盤の確立、文化活動支援のための税制優遇策や個人・企業等の顕彰制度設立を求めている。このための文化庁の連絡調整体制の強化、文相と知事クラスの、国と地方の高レベル共同協議の場の設定が求められ、国際間の人的交流、情報交換の活性化のために国立美術館、博物館等の施設・機能を充実させることが要請された。また在外日本美術品の保存のために、それらに関する情報を総合的に調査・収集するほか、計画的に保存・修復を推進すること、国際的な保存修復協力の拠点として東京国立文化財研究所のセンター機能を強化すること等が示された。

「小林古径」展、「川合玉堂」展、「山本丘人」展開催

1994年01月

「日本画」が再考されてきているなか、「近代日本画の巨匠」とされてきた画家の大規模な回顧展が相次いだ。生誕110年を記念して、明治期後半から昭和32年に没するまで、歴史画花鳥画の分野に優作を描き続けた小林古径の画業を本画70点、下絵類18点によって展観する「小林古径」展が4日より23日まで東京の小田急美術館で開かれた。また、画家の生誕120年を記念し、初期から晩年までの作品70点により自然の風物を情緒豊かに描いた60余年の画業を回顧する「川合玉堂」展が開かれた(東京、日本橋高島屋、1.27―2.8、大阪なんば高島屋、2.24―3.8)ほか、3月19日からは東京国立近代美術館で「山本丘人」展が開かれ、日本画の伝統主義、画壇の権威に迎合せず、現在の創画会の前身「創造美術」の創立等、現在に至る日本画の流れに大きな足跡を残す画業が回顧された(東京国立近代美術館、3.19~5.8)。

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