本データベースは東京文化財研究所刊行の『日本美術年鑑』に掲載された彙報・年史記事を網羅したものです。
現在、2019年/平成31(令和元)年まで公開しています。(記事件数5,450 件)
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1995年03月 日本芸術院(犬丸直院長)は23日、芸術の各分野で顕著な業績のあった人に贈る日本芸術院賞の94年度(第51回)の受賞者を発表した。第一部(美術)では恩賜賞・日本芸術院賞を洋画の織田広喜(80)(二科展出品作「夕やけ空の風景」に対して)が、日本芸術院賞を日本画の上村淳之(61)(創画展出品作「雁金」に対して)、書の高木聖鶴 (71)(日展出品作「春」に対して)、建築の柳沢孝彦(60)(「郡山市立美術館」および一連の美術館・記念館の建築設計に対して)が受賞することとなった。受賞式は6月5日東京上野の日本芸術院会館で行われた。
1995年03月 16世紀ネーデルランドの巨匠ピーテル・ブリューゲル父子をはじめ、ブリューゲル一族の作品47点とネーデルランド絵画39点をあわせて展示し北方ルネサンスの精華の一端をうかがう「ブリューゲルの世界」展が東京池袋の東武美術館で28日から開かれた(-6.25)。ピーテル・ブリューゲル(父)の作品の多くは海外持ち出し禁止の指定を受けているため、本展への出品作のほとんどが日本初公開となった。
1995年03月 19世紀フランスの幻想的な画家ギュスターヴ・モローの油彩、水彩、素描など約150点を展観する大規模な展覧会が国立西洋美術館で開催された(21-5.14)。画家が生前に自宅を改造して設立したモロー美術館からも多数の作品がもたらされ、「世紀末芸術」の優品を鑑賞できる充実した展観となった。
1995年03月 現代美術を専門とする大規模な美術館として19日、東京都現代美術館(江東区三好4-1-1)が開館した。開館記念展は「日本の現代美術1985-1995」展(3.19-5.21)で荒木経惟、遠藤利克ら、現代作家18人の作品を個展形式で、総計約100点展示し、過去十年間の日本美術の動向を展観しようとするものであった。
1995年03月 芸術の各分野で昨年一年間に優れた業績を上げた人達に贈られる1994年(第45回)芸術選奨の受賞者が6日文化庁から発表された。美術部門では文部大臣賞に彫刻家井上武吉 (64)(石彫個展「my sky hole ’94 森」に対して)、写真家薗部澄(73)(写真集『冬日本海』などに対して)、新人賞に洋画家野又穫(39)(「ニュー目黒名<画>座」展に対して)が選ばれ、評論等の部門では美術史家鈴木杜幾子(49)(著作『ナポレオン伝説の形成』に対して)が新人賞に選ばれた。受賞式は22日東京の赤坂プリンスホテルで行われた。
1995年03月 近年の社会経済情勢の変化にともない課題となっている近代の文化遺産の適切な保護を図るため、平成6年9月文化庁によって設置された「近代の文化遺産の保存活用に関する調査研究者会議」の調査研究の成果を受け、6日、「史跡名勝天然記念物指定基準」(昭和26年文化財保護委員会告示第二号)の一部が改正された。この改正により指定対象の分野が拡大され、また各分野の例示が近代の遺跡を含むものとなるよう、用語が改められた。
1995年02月 これまでに優れた作品を発表してきた中堅具象画家の業績を顕彰する小山敬三 美術賞の第10回目の受賞者は宮崎進(72)に決定した。受賞式は3月16日、東京・六本木の国際文化会館で行われた。
1995年01月 日本初の写真・映像の総合的専門美術館として「東京都写真美術館」が21日、恵比寿ガーデン・プレイスに開館した。90年の暫定開館以来、4年余の活動を経て、このたび本格的に開館したもの。建物は地上4階地下1階で、常設、企画、映像の3展示室、収蔵庫のほか、プリント・スタディー・ルーム、図書閲覧室、保存科学研究室、情報検索システム等を備えている。1970年前後に盛り上がった写真専門美術館開設への運動を受けて79年に設立された「日本写真美術館設立促進委員会」(渡辺義雄 代表)の活動が実を結んだもので、日本の写真・映像作品の保存、展示のみならず、それらの活動の総合的センターとしての役割が期待されている。開館記念展は「写真都市TOKYO」展(1.21-3.31)。
1995年01月 17日に兵庫県南部を襲った震度7の地震とその後の火災のため、多くの社寺、美術館・博物館の建物とその所蔵文化財が損壊した。文化庁は25日、大震災による文化財被害についてまとめ、国宝・重要文化財の被害は京都から島根まで9府県にわたり、128件に及んでいると発表。府県別件数の最多は京都府の54件であった。こうした被害に対し、文化庁は東京国立文化財研究所内に「文化財救援委員会」を設置し、また、震災に対する文化財の保存および展示対策の検討に入るなどの対応策をとった。美術館・博物館のなかには公共施設として避難所となったものも多く、同地の美術館活動が旧に復するには時間がかかりそうである。
1995年01月 日本近代美術の見直しの動きのあるなかで、皇室の蒐集品の一部を所蔵する宮内庁三の丸尚蔵館では同館所蔵の明治美術品をシリーズとして展観する企画の第一回目として「明治美術再見Ⅰ 明治美術会と日本金工協会の時代」展を開催した(第1期 1.4~29、第2期 2.4~3.5)。明治期に献上ないし買い上げとなった作品を多く含む展観となり、皇室と近代美術との関わりをうかがわせる興味深い企画であった。
1995年01月 優れた芸術活動をした個人、団体に送られる毎日芸術賞の第36回目の受賞者が1日に発表された。美術関係では彫刻家土谷武 (94年10月から11月まで東京のギャラリーヤマネで開催された「土谷武 展」に対して)、画家横尾忠則(1994年9月誠文堂新光社刊『横尾忠則の全ポスター』をはじめとする長年の功績に対して)が選ばれた。贈呈式は同13日東京都千代田区一ツ橋の如水会館で行われた。
1995年01月 わが国の文化・社会の発展、向上に多大な貢献をした個人、団体に送られる朝日賞の1994年度の受賞者が1日に発表になり、美術関係では建築家の安藤忠雄(53)が「人間と自然を問い直す一連の建築作品」によって受賞した。贈呈式は27日に朝日新聞東京本社で行われた。
1994年12月 ユネスコ主催の第18回世界遺産委員会(タイ、プーケットで開催)は15日、京都市、宇治市、大津市の17社寺、城を一括して、世界遺産に登録することを決定した。自然遺産と文化遺産として、登録は国内5件目となる。一括登録されるのは、賀茂別雷神社、賀茂御祖神社、教王護国寺、清水寺、醍醐寺、仁和寺、高山寺、西芳寺、天龍寺、鹿苑寺、慈照寺、龍安寺、本願寺、二条城(以上京都市)、平等院、宇治上神社(以下宇治市)、延暦寺(大津市)。国宝の建築物38棟、特別名勝の庭園8ヶ所、重要文化財の建物160棟を含む。
1994年11月 日本芸術院(犬丸直院長)は、18日、今年度の会員補充選挙を行い、新たに10氏を会員とすることを内定、美術関係からは、日本画家福王寺法林 、松尾敏雄、洋画家芝田米三 、鶴岡義雄 、彫塑の雨宮敬子 が選ばれた。日本芸術院の定員は、120人だが、これで会員数は111人となった。この内定は、総会の承認を経て、12月15日付で文部大臣から発令された。
1994年11月 優れた美術評論や美術史研究、創作活動に贈られる、河北倫明 夫妻の基金による倫雅美術奨励賞の第6回受賞者が決定。美術評論・美術史研究部門で東京大学助教授佐藤康宏の『湯女図―視線のドラマ』(平凡社刊)、滋賀県立陶芸の森学芸員三浦弘子の「熊倉順吉 とその仲間たち―近代思潮とクラフトデザイン」(同館展覧会図録)、創作活動部門(今回は、彫刻・立体造形が対象)に井田彪の「Circulation―93―air to air」に決定。授賞式は、赤坂プリンスホテルで12月2日におこなわれた。
1994年11月 財団法人サントリー文化財団が、政治・経済、芸術・文化、社会・風俗、思想・歴史の4分野において優れた研究や評論活動をした研究者、評論家に贈るサントリー学芸賞の今年度の受賞者が決定。うち芸術・文学部門では、玉虫敏子(靜嘉堂文庫美術館主任学芸員)の『酒井抱一筆 夏秋草図?風―追憶の銀色』(平凡社刊)、今橋映子(筑波大学文芸・言語学系専任講師)の『異都憧憬 日本人のパリ』(柏書房刊)、尹相仁(漢陽大学校文科大学助教授)の『世紀末の漱石』(岩波書店刊)の三人に決定した。授賞式は、東京丸の内のパレスホテルで行われた。
1994年11月 千葉県の指定文化財である旧川崎銀行佐倉支店を復元、利用した佐倉市立美術館(千葉県佐倉市新町210)が、16日に開館。同美術館は、地上5階、地下2階で、展示室面積が835平方メートルの施設となっている。常設展示のほかに、企画展示室、市民ギャラリーが併設されている。16日からは、市制四十周年記念展として、「チバ・アート・ナウ’94―Paper’s Splendor」が開催され、12月17日からは、佐倉市と友好関係にあるオランダより、アムステルダム国立博物館所蔵の160点を中心にした開館記念特別展「海を渡った浮世絵展」を開催。
1994年11月 サントリー株式会社は、創業九十周年記念事業のひとつとして、大阪港にサントリーミュージアム〔天保山〕(大阪市港区海岸通1-5-10)を完成させ、3日開館した。安藤忠雄の設計による同館は、延床面積12,400平方メートル。ロートレック、ミュシャ、カッサンドル等のポスター約8,000点を所蔵。開館記念展として、「美女100年―ポスターに咲いた時代の華たち」を開催。
1994年10月 政府は25日、今年度の文化勲章5名、文化功労者15名を発表した。美術関係者では、日本画家岩橋英遠 が文化勲章に、洋画家三岸節子 、建築家吉村順三、彫刻家淀井敏夫 が文化功労者に、それぞれ選ばれた。
1994年10月 東洋美術研究誌『国華』が日本、東洋の美術に関する優れた論考に贈る国華賞の今年度、第6回受賞者が九州大学名誉教授で、長崎純心大学教授平田寛の『絵仏師の時代』(中央公論美術出版、平成6年2月刊)に決定。古代から中世にいたる絵仏師の系譜を、その制作実態から幅広く論じた点が評価された。顕彰式は、21日、東京築地の朝日新聞社新館、浜離宮ホールでおこなわれた。