法隆寺の仏像台座から墨画、墨書
1992年10月法隆寺は29日、金堂阿弥陀如来像(重文)の台座から、鳥羽冠を被った正装姿の墨書人物画が発見されたと発表した。さらに11月1日までに釈迦三尊像(国宝)の台座側面に描かれている四天王像中の持国天の下絵が見つかり、2日までには、同台座に使われている部材から干支年や行政機構名を書いた墨書文字30字が確認された。干支は聖徳太子が死去する前年の西暦621年を示しており、美術史的資料としても家政組織を知る歴史資料としても重要な資料として注目を集めた。
法隆寺は29日、金堂阿弥陀如来像(重文)の台座から、鳥羽冠を被った正装姿の墨書人物画が発見されたと発表した。さらに11月1日までに釈迦三尊像(国宝)の台座側面に描かれている四天王像中の持国天の下絵が見つかり、2日までには、同台座に使われている部材から干支年や行政機構名を書いた墨書文字30字が確認された。干支は聖徳太子が死去する前年の西暦621年を示しており、美術史的資料としても家政組織を知る歴史資料としても重要な資料として注目を集めた。
京都市東山区の妙法院は29日、明治末期と昭和15年の寺宝目録に記載されながら、その後所在がわからなくなっていた円山応挙の「波濤図」?風6曲1双が、50年ぶりに確認されたことを発表した。同?風は、11月1日から10日まで同寺で公開された。
スペイン・バルセロナの郊外カネット・デ・マール市に27日、日本文化センター(fax001-343-794-1231)がオープンした。かつて通産省が行なったシルバーコロンビア計画にヒントを得た同市の市長が、技術を持つ日本人の移住や長期滞在を奨励し、市民との文化交流を図るため計画を進めてきたもので、同市にはすでに日本から複数の芸術家も移り住んでいる。
政府は20日、今年度の文化勲章5名、文化功労者15名を発表した。美術関係者では、書家青山杉雨、日本画家佐藤太清が文化勲章に、陶芸家浅蔵五十吉、国際日本文化研究センター所長梅原猛、洋画家田村一男、宮大工棟梁西岡常一が文化功労者に、それぞれ選ばれた。文化勲章受章者は、前年度までの文化功労者の中から選ばれるが、これで文化勲章受章者は264(うち現存66)名、文化功労者は471(現存45)名となった。
日本東洋美術の優れた研究に対して贈られる国華賞の第4回受賞者が決定。国華特別賞に宮地昭『涅槃と弥勒の図像学-インドから中央アジアへ』(吉川弘文館)、国華賞に佐藤康宏「蕭白新論」(『新編名宝日本の美術27』小学館)、岸文和「延享二年のパースペクティヴ-奥村政信画〈大津絵〉をめぐって」(『美術史』132)が、それぞれ選ばれた。贈呈式は、20日東京築地の朝日新聞社で行われた。
同じタイトルの2つのモネ展が、同時期に開催された。1つは、パリ・マルモッタン美術館所蔵の「睡蓮」等を含むモネ作品43点に、19人の印象派作家を加えた計66点からなる展覧会で、13日から11月15日まで東京新宿・三越美術館で開催、以後呉市立美術館、福岡市美術館を巡回した。もう1つは、モネ作「ラ・ジャポネーズ」やルノアール、セザンヌなどボストン美術館の所蔵品61点からなる展覧会で、17日から’93年1月17日まで東京渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで、引続き兵庫県立近代美術館で開催された。
明治5年の創立以来120周年を迎えた東京国立博物館では、13日から11月23日まで、463点の名品による特別展「日本と東洋の美」と、東洋館特別展示室で288点の歴史資料による特別展観「目で見る120年」を開催した。また7月31日には、同館主催の夏季講座の最終日に「博物館の在り方」をテーマとしたシンポジウムを開催、パネリスト8名による博物館への提言や注文ののち、全体討議を行った。
16世紀末から17世紀にかけて朱印船貿易によって造られた日本町の町並みが唯一現存する、ベトナム中部の古都ホイアンの町並みを保存しようとする動きが、ベトナム、日本の双方で本格化している。1990年ベトナム政府が「古都ホイアン保存国家委員会」を発足させ、日本の外務省も同年両国の文化交流として「ホイアン国際シンポジウム」を現地で開催、さらに今年9月昭和女子大学国際文化研究所調査団によって、文化的価値と修復保存の緊急性が確認された。文化庁も7月に調査官を派遣して保存対象住宅の調査を始めており、来年から修復保存作業を具体化させる予定。
雪村の優作、関連資料98点を集めた「雪村-常陸からの出発」展が、3日から11月13日まで茨城県立歴史館で開催された。同館の新規開館の特別展として行われたもので、雪村の優品を一堂に展観する充実した内容の企画となった。
明治24年に完成した日本ハリストス正教会東京復活大聖堂(東京神田、通称ニコライ堂)の大がかりな改修工事が始まった。関東大震災のため昭和初期に行なわれた改修工事以来、60余年ぶりとなる今回の改修工事は、約13億円をかけ平成10年末に完成の予定。国の重要文化財のため工事費の9割強が、国と都によって補助される。
日本文化デザインフォーラム(黒川紀章代表)は、今年度の日本文化デザイン大賞受賞者に、優れた日本文化論や日韓文化交流に尽くした韓国の文芸評論家李御寧を、日本文化デザイン賞に三重県鳥羽市の海の博物館、東芝(日本語ワープロ1号機作成グループ)、中国コンクリート工業(生き物に優しい側溝の開発)をそれぞれ選出した。
日本の芸術文化をリードしてきた上野の山の文化施設が、共同のイベントとしてそれぞれ催し物を開催する「上野の山文化ゾーン連絡協議会」が設立された。参加したのは21の関連文化施設と企業で、会長は東京芸術大学学長平山郁夫、事務局は台東区役所企画部に置かれた。具体的には、10~11月の美術館等各施設の催しと講演会をリンクして開催。毎週木曜午後のみ開館している当研究所の黒田記念館も、10月20日から11月1日まで連続して特別公開された。
旭川市が国内の優秀な彫刻家に贈る中原悌二郎賞の第23回受賞者が19日決定。中原悌二郎賞に掛居五郎「立つ」、同優秀賞に石井厚生「時空・61」がそれぞれ選ばれた。
地方自治体の指定文化財は、現行の文化財保護法では補助対象とされていないが、自治体によるそれらの文化財の買い上げや修復・復元、周辺整備などの事業を援助するため、自治省は「地域文化財保全事業」に着手することになった。今年度は、沖縄県那覇市の旧首里城守礼門保存修理など2県64市町村の76事業が、支援事業の指定を受けた。また来年度には、地方自治体に寄付をした個人を住民税で優遇する「ふるさと寄付金控除制度」の創設を計画。さらに文化を地域活性化の起爆剤にしようとする自治体の文化振興活動を支援するため、美術館・博物館への企画運営面での支援などの制度的整備も検討していく予定という。
1980年中国新彊ウイグル自治区のタクラマカン砂漠で発見された約3900年前の古代ロプ・ノール人の女性のミイラが、8日から11月29日まで国立科学博物館で開催された「楼蘭王国と悠久の美女」展で公開された。同展は、日中国交正常化20周年を記念して開催されたもの。
人類共有の財産として世界的な自然・文化遺産を保護する「世界遺産条約」への日本からの登録候補地を検討していた環境庁と文化庁は、4日、屋久島(鹿児島県)、白神山地(青森・秋田県)、法隆寺地域の仏教建造物(奈良県)、姫路城(兵庫県)の4ケ所を、世界遺産委員会(事務所パリ)に推薦することを決定した。同条約は、1972年ユネスコ総会で採択され、現在124ケ国が加盟し、358ケ所が登録されている。締結国は指定遺産の保全を義務づけられる一方、世界遺産委員会は基金で遺産の修復などを行なう。
第2次大戦後の現代美術の動向に深く係わった美術批評家土方定一の活動を通して、美術批評と現代美術の関係を洗い直そうとする「アーティストとクリティック・批評家土方定一と戦後美術」展が、15日から9月13日まで三重県立美術館で開催された。同館の開館10周年記念展として企画された展覧会だが、現代美術における制作に対する批評の役割を問い直す斬新な視点の企画となった。
美術界を紛糾させた昭和10年の松田改組に焦点をあてた展覧会が、14日から10月6日まで東京都庭園美術館で開催された。洋画壇を中心に、同時期のアジア美術も含めた70点が出品され、昭和初期の洋画を国内外の情勢を絡めた国際的視野から捉える企画展観となった。
文化庁とアメリカ合衆国スミソニアン研究機構、アーサー・サックラー・ギャラリーとの共催による「古代の日本 Ancient Japan」展が、9日から11月1日まで、ワシントンDCのアーサー・サックラー・ギャラリーで開催された。旧石器時代から飛鳥・奈良時代にいたるまで、国宝3点、重要文化財83点を含む258点の発掘遺物によって、仏教受容以前の日本文化の歴史を総合的にたどることができるように構成された。1979年にカナダ、アメリカ合衆国で日本の考古展「Image and Life」展が開催されたが、海外でのこのような総合的な考古展は初めてで、入場者は9万1千人にのぼり、大きな関心を集めた。
フランス人の収集家フィリップ・バロスが集めた明治末年から昭和初期の日本の絵ハガキ3000点の中から、約650点を選んで展観した「絵はがき芸術の愉しみ展-忘れられていた小さな絵」が、29日から8月23日までそごう美術館で開催された。欧米での日本美術コレクションは、根付や浮世絵など生活感あふれる美術工芸品を集めたものが多いが、絵ハガキコレクション展も、そうした視点を示すユニークな企画となった。