第25回中原悌二郎賞
1994年10月北海道旭川市ゆかりの彫刻家中原悌二郎を記念して同市が創設した中原悌二郎賞の第25回の授賞作に、加藤昭男の「何処へ」が、また優秀賞に「SUMMIT」がそれぞれ選ばれた。
北海道旭川市ゆかりの彫刻家中原悌二郎を記念して同市が創設した中原悌二郎賞の第25回の授賞作に、加藤昭男の「何処へ」が、また優秀賞に「SUMMIT」がそれぞれ選ばれた。
昭和48年山口県立山口博物館で開催されて以来、絶えてなかった雪舟等楊の展覧会が、大和文華館で6日より開催。近年、活況を呈しているといわれる雪舟研究をふまえて、雪舟が生まれた時代と環境のなかに置き戻して、見直そうとする試みであった。代表作のひとつにあげられる「秋冬山水図」(国宝、東京国立博物館蔵)をはじめとする雪舟の作品と、かれの弟子たちの作品、またかれが影響を受けたとされる中国画等の関連資料を加えた約60点が出品された。
同月から、平成8年秋まで近、現代美術の諸問題をめぐる10回にわたる連続シンポジウムが開催される。(主催:日仏会館、シンポジウム「美術」実行委員会)企画責任者は、イザベル・シャリエ(神戸大学講師)、木下長宏(京都芸術短期大学教授)。第一回は9月24日に、東京日仏会館においておこなわれ、「美術における近代と現代」(イザベル・シャリエ)、「美術史学の近代と現代」(佐藤道信、東京芸術大学助教授)の二講演のあと、木下長宏司会による討議がおこなわれた。以後、約二ヶ月に一回、東京と関西で交互におこなわれる。
印象派という呼称がうまれる契機となった1874年、パリで開かれた「画家、彫刻家、版画家などによる“共同出資会社”第一回展」を再現、今日的な視点から見直そうとする展覧会が、20日国立西洋美術館で開催。同展には、辛辣な批評によって印象派という言葉が生まれたモネの「印象、日の出」(マルモッタン美術館蔵)をはじめとして、今日印象派とよばれる画家たちの作品はもとより、現在ではその名前さえ忘れ去られようとしているサロン系の作家たちの作品もあわせて出品され、この第一回展に出品した作家たちのひろがりが示されるとともに、当時のパリの美術界の実相が理解できる展覧となった。
富山県高岡市の高岡市美術館は、高岡文化の森内に移転し、新築され、9月16日に開館(富山県高岡市中川1-1-30)。同美術館は、昭和26年に開館、金工、漆芸で知られる同市の伝統工芸を中心にした、これまでの収集、展示方針から、この移転、新築を機に企画展示を中心にした活動をおこなうことになった。新美術館は、地上二階、塔屋一階、企画展示室三室、常設展示二室等をそなえ、開館記念展として、「フランス近代絵画―光と色彩の流れ」展が開催された。
明治初期洋画を代表する高橋由一の没後100年を記念する回顧展が、27日に神奈川県立近代美術館を皮切りに開催。今回の回顧展は、近年の高橋由一研究の成果を反映して、新発見の「墨水桜花」(個人蔵)、初期肖像画の基準作となる「小幡耳休之肖像」(福富太郎コレクション蔵)等の作品や、これまで未公開の関係資料なども展観され、定説化されつつある画家の実像に再検討を加える契機となった。同展は、以後、香川県文化会館、三重県立美術館、福島県立美術館を巡回。
和歌山県民文化会館内にあった和歌山県立近代美術館は、和歌山市内の和歌山大学教育学部跡地に移転、8日に再開館(和歌山市吹上1-4-14)。黒川紀章の設計による新美術館は、地上二階地下一階、美術館部分の延床面積は、12,000平方メートル。開館記念展として、「美術館に行こうCOLLECTIONS!近代美術/100年」、「大正のまなざし―若き保田竜門とその時代」が開催された。
昭和52年開館以来、活動をつづけていた愛知県陶磁資料館(同県瀬戸市南山口町234)は、平成3年から、施設の大幅な拡充整備のため改修工事を行なっていたが、この程完成し、6日に完成記念特別展「東洋陶磁名品展」を開催、全館開館した。新たに整備されたのは、本館、陶芸館、古窯館、庭園であり、本館の場合は、展示スペースが、367,502平方メートルとなり、従来の約2倍となった。この本館を中心に全国の古窯陶磁作品や現代陶芸作品を展示していくことになった。
国際交流基金において、1995年開催のヴェニス・ビエンナーレとサンパウロ・ビエンナーレの日本側の企画概要とコミッショナーが相次いで発表された。6月30日、ヴェニス・ビエンナーレの日本館の展示企画の概要がコミッショナーに起用された伊東順二(美術評論家)より発表された。「WABI+SABI=SUKI」をキーワードに、現在の日本の創造的分野とする伝統、デザイン(風俗)、テクノロジーを代表する写真家荒木経惟、日本画家千住博、C・G作家河口洋一郎、美術家崔在銀、建築家隈研吾の5名が選出された。つづいて、7日、サンパウロ・ビエンナーレのコミッショナーに本江邦夫(東京国立近代美術館企画・資料課長)が起用され、遠藤利克、辰野登恵子、黒田アキの3美術家が選出されたことが発表された。この席上、同コミッショナーより、ヴェニス・ビエンナーレの「日本的な」企画案に、強い批判がだされ、これを契機に国際的な場における日本の現代美術の位置をめぐる論議がおこった。また、この後、ヴェニス・ビエンナーレに選出された荒木経惟が辞退し、11月にかわって美術家日比野克彦が起用されることになり、展覧会名も「WABI+SABI=SUKI」から、「数寄:複方言への試み/SUKI:the sense of multi vernacular」に変更されたことが発表された。
旧陸軍の将校用の社交場として、明治35年に建てられた木造二階建ての洋館建築・旧旭川偕行社(重要文化財)を修復し、新たに中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館(同市4区1条1丁目)が、1日に開館した。同美術館には、生涯で25点の彫刻を制作し、そのうち現在12点しか残されていない中原悌二郎の全作品を収蔵するとともに、石井鶴三等、中原と縁のある彫刻家の作品を収集している。また、昭和45年に制定された、優れた現代彫刻を顕彰する中原悌二郎賞受賞作家の作品も収蔵し、第1回受賞の木内克から、昨年の第24回受賞の江口週作品も、あわせて展示される。
高松宮記念世界文化賞(日本美術協会主催)の第6回目の受賞者5名が発表された。美術関係では絵画部門でザオ・ウーキー(73)、彫刻部門でリチャード・セラ(55)、建築部門でチャールズ、コレアが選ばれた。
鎌倉彫刻の本流である「慶派」の造形を、平安時代末期から南北朝時代まで、主要な慶派仏師15人による66件の作品で展観する「運慶・快慶とその弟子たち」展が、28日より7月3日まで奈良国立博物館で開催された。王朝社会の崩壊と武家の台頭といった社会変革を背景に、一派をなしつつも個性的表現を行なった仏師たちの作品が、近来30年の調査・研究の成果をふまえて展観され、充実した企画となった。
文化財保護審議会(鈴木勲会長)は20日、岩手大学農学部旧本館(盛岡市)など建造物8件を重要文化財に、豊町御手洗伝統的建造物群保存地区(広島県豊町)を重要伝統的建造物群保存地区に指定するよう答申した。
文化財保護審議会(鈴木勲会長)は20日、重要無形文化財保護者(人間国宝)として新たに10人を認定するよう赤松文相に答申した。美術関係では陶芸の「志野」で鈴木蔵(59)、「佐賀錦」で古賀フミ(67)、「蒟醤」で太田儔、「木工芸」で川北良造が選ばれた。後継者不足などの現状をふまえ、高度な技術の保護を強化する見地から、文化庁は今年、人間国宝の新規認定の定員を8人増やし、38年ぶりに二ケタの大量認定となった。
国立博物館、美術館、東京芸術大学などが収蔵する文化財や美術品を「日本の風俗」等のテーマで選び、地方に巡回する企画が、文化庁の主導で今秋から実施されることとなった。「地域における文化活動拠点の整備」を目標に文化庁が初めて取り組むもので、今年は全国5ヶ所で開催。教科書等に掲載されている著名な作品も出品し、美術鑑賞のすそ野を広げる方針である。
財団法人新潮文芸振興会が主催する第7回新潮4賞(三島由紀夫賞、山本周五郎賞、新潮学芸賞、日本芸術大賞)の選考会が12日に行なわれた。日本芸術大賞は、建築家安藤忠雄が「大阪府立近つ飛鳥博物館に示された建築と環境の創意ある結びつき」が認められて受賞することとなった。日本芸術大賞は第26回目をむかえるが、建築家の受賞は1980年の槙文彦以来2人目。
「秋田ふるさと村―かまくらんど」(株式会社秋田ふるさと村)の一角に20日、秋田県立近代美術館(田中日佐夫館長)が開館した。建物は地上7階地下1階、延べ面積約1万1千平方メートル。秋田県立博物館から秋田蘭画など、400点以上の作品を受けつぎ、秋田県の「美術品取得基金」や「秋田県優秀美術作品収集委員会」による収集品を含む約1200点の作品を収蔵。常設展では秋田にかかわりのある作家の作品を展示し、企画展では地域にこだわらないテーマ展示を行なっていく方針である。
文化財保護審議会(鈴木勲会長)は15日、絹本著色十一面観音像など2件を国宝に指定するよう赤松文相に答申。また絵画、彫刻、工芸品、書籍、典籍、古文書、考古資料、歴史資料の分野で計43件を重要文化財に、9件を史跡、1件を名勝に新たに指定、漆工品修理等、文化財の保存、修復のための選定保存技術に6件を選び併せて保持者6人を認定、保持者ひとりを追加認定するよう答申した。
桓武天皇の延歴13(794)年の平安遷都から1200年になることを記念し、京都では様々な行事が行なわれているが、その一環として京都国立博物館で平安時代後期を中心に、王朝文化の爛熟期の絵画、彫刻、美術工芸品約100点を展示する「王朝の美」展が開かれた(12~5.15)。平安遷都の頃を唐風文化の受容から和風文化の創出への移行期と重ねあわせ、大和絵と仮名文字が華やかな展開を見せた絵巻物を中心に、王朝人の美意識のありかたをうかがわせる充実した展観となった。
美術受容の地域による差異への関心が高まっているが、日本国内に比較して欧米での評価の高い幕末、明治期の画家河鍋暁斎の作品や愛用品など約200点を展示し、激動の時代を生きた画家の姿を浮かび上がらせる「河鍋暁斎と江戸東京」展(江戸東京博物館、12~5.15)、肉筆画14点を含む160点の作品を展観する「福島太郎コレクションによる河鍋暁斎」展(笠間日動美術館、23~5.22)が開催された。昨年末から今年2月にかけて大英博物館でも大規模な暁斎展が開かれ、近年の近代日本美術史研究の成果をふまえ、従来見のがされてきた歴史の一面を再考する動きの一環となった。