読売アンデパンダン展中止
1964年03月昭和24年から毎年この月に開催されていた読売新聞社主催のアンデパンダン展が、昨年の15回展をもって今春から中止された。去る1月12日主催者側からの一方的通告によって突然その歴史が閉じられたので、殊に若い世代の作家や批評家たちの間で種々の論議を呼び波紋をおこした。
昭和24年から毎年この月に開催されていた読売新聞社主催のアンデパンダン展が、昨年の15回展をもって今春から中止された。去る1月12日主催者側からの一方的通告によって突然その歴史が閉じられたので、殊に若い世代の作家や批評家たちの間で種々の論議を呼び波紋をおこした。
文化財保護委員会では27日、新たに国宝、重要文化財の指定を発表した。国宝に指定されたのは、美術工芸品が紙本墨画「蓮池水禽図」(俵屋宗達筆)、兵庫県小野市浄谷町浄土寺の木造阿弥陀如来および両脇侍立像など14件、重要文化財49件、建造物で国宝1件(明王院本堂・広島県福山市草戸町)、重要文化財12件の合計76件の指定をそれぞれ決めた。
超党派による芸術振興国会議員懇談会(略称・芸術議員連盟)が誕生して、26日芸術諸団体の関係者を招き結成式を開いた。芸術家ならびに関係諸団体との意見の交換をおこないながら政府を督励し芸術文化(文学、美術、音楽、舞踊、映画、演劇、造園その他)の振興と保存をはかるとともに、その国際交流を推進することを目的としている。今後の推進母体として、会長・中曽根康弘、理事長・麻生良方ら20名近い顧問、役員が決まつている。
文化財保護委員会の専門審議会第四分科会は25日「重要無形文化財の保持者」として新たに4名を認定することを決め答申したが、27日同保護委定例会で正式決定した。工芸部門では、鋳金の高村豊周が認定された。なお同時に指定以外の無形文化財の中で伝承者が少なくなっているものが「技術の記録作成などをすべきもの」に選定され、「磁器大物成型のろくろ技法」奥川忠右衛門(佐賀県西松浦郡有田町2473)がきめられた。
文部省は、演劇・映画・美術など8部門にわたる昭和38年度(第14回)芸術選奨の受賞者に8名、1団体を選出、14日決定した。なお授賞式は21日行なわれた。美術部門では、海老原喜之助(洋画)、菊竹清訓(建築)の両名が受賞した。海老原は、第31回独立美術展に出品した「雨の日」と、38年7月、三越でひらいた回顧展で、“現代画家として発らつとした精神と感覚をあらわし、独自の作風をしめした”ことに対し、菊竹は、38年竣工した出雲大社の「庁の舎」(ちようのや=社務所)で、“古代日本の造形意欲を生かしながら、近代的な鉄筋コンクリートの組み立て構法を用いた。このほか独創的な作品を発表して美術建築界に貢献、アメリカの汎太平洋建築学会賞も受けた”ことが授賞理由となつた。
文化財保護委員会の手で解体修理が進められている中尊寺金色堂の梁や柱は、現地での修理が困難なため、東京国立文化財研究所の工作アトリエに運ばれ、松田権六を中心とする漆工芸専門家の手により慎重な手当を受けることとなり、3日平泉をたち、5日東京に到着した。
ヨーロッパ、アフリカ等では数多く出土しながら、日本には見られなかった石核握りづちが茨城県那珂郡山方町の段丘で発見され、2日、東京経済大学井尻正教授らが現地調査におもむいた。
来る6月に開幕する「第32回ヴェネチア・ビエンナーレ展」に出品される斎藤義重とオノサト・トシノブの作品が、国立近代美術館で21日から3月1日まで披露された。なお同ビエンナーレには他に堂本尚郎(在パリ)、豊福知徳(在ミラノ)の2人も参加するが、それぞれ現地から直接作品をヴェネチアに送るため国内展示はされなかつた。因みに今回のコミッショナーは嘉門安雄が担当した。
文部省は美術振興と奨励のため、年間の公募展、団体展などの発表作品のうちから優秀作品を選んで買上げを行っているが、13日38年度の優秀作日本画、洋画、彫刻あわせて11点を決定、発表した。〔日本画〕猪原大華「水草の池」、工藤甲人〔霧〕、常盤大空「西域碑」、平山郁夫「建立金剛心図」〔洋画〕青柳暢夫「未完絶筆」、麻生三郎「燃える人」、香月泰男「久原山」、島野重之「うすれ日」、杉全直「無音」、広瀬功「暮色」〔彫刻〕佐藤忠良「うずくまる裸婦」
朝日新聞社主催の第15回記念選抜秀作美術展が5日から12日まで恒例の会場、日本橋・三越本店で開かれた。今回は特に第15回を記念して去る25年から始められた各年度の秀作展出品作の中から更にこの15年を回顧する代表作49点を選び、昨年度からの選抜作品67点とともに併陳された。
昭和4年創設以来、文化、社会奉仕、体育の分野で各年度のすぐれた業績に対し贈られている朝日賞の38年度文化賞受賞者が決定、3日発表されたが、美術関係では、伊藤熹朔(長年にわたる舞台装置家としての功績に対し)に贈られた。
昭和38年度第5回毎日芸術賞受賞者が1日発表されたが、美術部門賞を独立美術協会々員野口弥太郎が受賞した。受賞の対象となったのは、第31回独立展出品作の「セビラの行列」と、昨年4月東京銀座・松屋で開いた<滞欧作品展>の出品作。
文化財保護委員会では「人間国宝」といわれる重要無形文化財保持者に対する年金交付を要求していたが、28日、1500万円が奨励交付金の形で大蔵省から認められた。現在保持者は、芸能、工芸技術合わせて51人であるが、そのうち文化功労者、芸術院会員ですでに年金を交付されている10人を除いた人々に、技術を磨き、伝承者を養成させる目的で配分交付されることになつた。
奈良国立文化財研究所が12月、京都市南区唐橋にある西寺の第3回発掘調査を行なつた結果、規模、伽藍の大きさ、創建時代において、東寺とほぼ同じであることが確認された。
文化財保護委員会は12月中旬、久能山東照宮の総合調査を行ない、刀剣、甲冑、書画など、家康以来歴代将軍の遺品約200点を調査した結果、多くの新資料、新事実が発見され注目された。
栃木県足利市にある足利氏の氏寺、鑁阿寺多宝塔の解体修理中、宝輪先端にある宝珠から仏舎利が発見された。この形式は古代インドの仏塔に見られるが、日本では他に例がなく注目される。
千葉県香取郡神崎町の西之城貝塚で23日、発掘調査にあたつていた早大考古学教室の西村教授と同大学生約40人は9,000年前の同貝塚より以前と思われるタテ穴式の住居跡を発見した。西村教授の話によると、この住居跡は日本最古のものという。
東京国立文化財研究所では開所記念として11月15、16日の両日にわたり研究所において稀観絵巻物展を催し、敦煌出土の十王経図巻、駒競行幸絵詞など15点を陳列した。
フランス文化省は9日、ルーヴル美術館蔵の「ミロのヴィーナス」を東京オリンピックの開かれる昭和39年に日本に貸出すと発表した。
昭和38年度文部省関係の紫綬、藍授、黄授褒章の受章者が決まり、11月5日に伝達式が行なわれた。文化財関係者は次の10氏である。石黒宗麿(70才、陶芸)、福井利吉郎(77才、日本美術史)、堀口捨己(68才、建築芸術)、山根徳太郎(74才、難波宮跡発掘調査)以上紫綬褒章、井上庄七(83才、博物館事業)以上藍授褒章、小林良太郎(71才、かつら製作)、五島敏太郎(84才、組紐製作)、杉山秀雄(71才、仏像修理)、名和嘉一郎(70才、古文書修理)、山口修吉(75才、刀剣柄巻)以上黄授褒章。