- 本データベースは東京文化財研究所刊行の『日本美術年鑑』に掲載された彙報・年史記事を網羅したものです。
- 現在、2019年/平成31(令和元)年まで公開しています。(記事件数5,450 件)
1998年05月 近代日本画のコレクションで知られる東京日本橋の山種美術館は、経営母体である財団と施設を所有する山種不動産との不和を背景に移転を余儀無くすることとなったが、これに対し同館の学芸員が美術館活動および規模の縮小に繋がると反発、21日に東京地方裁判所に財団の移転停止を求める仮処分申し立てを行った。8月には館の業務を乱すとして学芸員2名が解雇され、学芸側は同裁判所に地位保全の仮処分を申請するなど移転をめぐる対立はもつれたが、日本における私立(財団)美術館の公共性が社会的に問われるかたちとなった。
1998年04月 文化庁は、栃木県日光市にある日光東照宮など「日光の社寺」を世界遺産(文化遺産)に推薦する方針を決め、推薦の前提条件となる国の史跡に指定することを、21日の文化財保護審議会に報告した。6月末までにユネスコ(国連教育・科学・文化機関)に推薦され、来年の世界遺産委員会で登録が検討される。
1998年04月 文化財保護審議会(西川杏太郎会長)は、21日東大寺文書など国宝2件、重要文化財46件、史跡7件、名勝2件、天然記念物2件を文化財保護法に基づき新たに指定するよう町村信孝文相に答申した。
1998年04月 ケルト美術の代表的な遺品をふくむ約250点によって構成された展覧会が、東京都美術館において、18日から7月12日まで開催された。大英博物館、フランスの国立古代博物館、ドイツのライン州立博物館ほか、ヨーロッパ7国から集められた遺品は、いずれも日本初公開であり、ヨーロッパ大陸にひろく分布していた先住民族ケルト人の文化を紹介する最初の機会となった。
1998年04月 同賞は、多岐にわたる活動で戦後美術を革新していった岡本太郎の精神を継承する目的から設立された財団法人岡本太郎記念現代芸術振興財団の主催によるもので、公募作品のなかから入賞者が決定された。入賞は、金沢健一「音のかけら5」、中山ダイスケ「DELICATE1996」のいずれもインスタレーションの作品で、2日から19日まで東京渋谷区のワタリウム美術館で公開された。
1998年03月 明治31(1898)年に岡倉天心の指導のもとに、日本画の改革を目指して結成された日本美術院の創立100周年を記念して、東京国立博物館で、24日から5月10日まで回顧展が開催された。創立以前の作品から、昭和前期までの日本画、洋画、彫刻約200点が出品された。同院の展覧会から、日本の近代美術史上の名作と評価される作品の数々が生まれてきたことを、新たに確認するとともに、「日本画」といわれる絵画表現と、今日までつづく同美術団体の今後を一考させる展示であった。
1998年03月 文化財保護審議会(西川杏太郎会長)は20日、三池炭鉱宮原坑施設(福岡県大牟田市)など、9件の建造物を重要文化財に指定し、岐阜県岩村町の岩村本通りなど2地区を重要伝統的建造物群保存地区に選定するように町村信孝文相に答申した。
1998年03月 日本芸術院(犬丸直院長)は、20日、芸術の各分野で顕著な功績のあった人に贈る平成9年度(第54回)の日本芸術院賞受賞者を決定した。恩賜賞・日本芸術院賞の第1部(美術)受賞者には、松下芝堂(書家、71)(日展出品作「花下酔」に対し)、日本芸術院賞には洋画の中山忠彦(63)(日展出品作「黒扇」に対し)、彫塑の川崎普照(66)(日展出品作「大地」に対し)、工芸の今井政之(67)(日展出品作「赫窯雙蟹」に対し)が選ばれた。授賞式は6月29日に東京上野の日本芸術院会館で行われた。
1998年03月 芸術の分野で昨年一年間に優れた業績をあげた人々に贈られる芸術選奨の受賞者が、16日文化庁から発表された。美術関係では、建築家伊東豊雄(56)(「大館樹海ドーム」の設計に対し)、洋画家宮崎進(76)(個展「森と大地の記憶から」に対し)、評論家多木浩二(69)(「シジフォスの笑い」に対し)が文部大臣賞を、またグラフィックデザイナー佐藤晃一(53)(「武満徹―響きの海へ」告知ポスターなどに対し)が新人賞を受賞した。
1998年02月 平成10年度の文化庁予算は、前年度比1.1%減の818億8800万円とすることが決まった。経済環境の悪化と政府の財政構造改革の施策のなかで、減額となった。
1998年02月 平面美術の分野で国際的に通用する若手作家を支援するVOCA展(主催・同展実行委員会、財団法人日本美術協会、上野の森美術館)の、最高賞であるVOCA賞は湯川雅紀「無題」に決定した。奨励賞には、伊庭靖子、岡田修二、杉戸洋、太郎千恵蔵の4氏が選ばれた。
1998年02月 文化財保護審議会(西川杏太郎会長)は20日、名古屋市中区の愛知県庁、名古屋市役所の両本庁舎など、53件を文化財登録するよう、町村信孝文相に答申した。
1998年01月 優れた芸術活動をした個人・団体を顕彰する1997年度の第38回毎日芸術賞は、六氏(内1氏が特別賞)に贈られることになった。美術関係では、建築家山本里顕(岩出山中学校の設計に対し)に贈られ、贈呈式が20日、東京のコンチネンタル東京ベイで行われた。
1998年01月 文化庁は、コンピューターグラフィックス(CG)やアニメなど新しい分野の芸術作品を対象に創設した「メディア芸術祭」の初の受賞作品を決定した。アニメーション部門、漫画部門、デジタルアート・インタラクティブ部門、デジタルアート・ノンインタラクティブ部門の四部門からなり、アニメーション部門大賞に「もののけ姫」(宮崎駿監督)をはじめ、それぞれ大賞、優秀賞が決定した。授賞式は、2月2日、東京渋谷区の新国立劇場で行われた。
1998年01月 わが国の文化・社会の発展に多大な貢献をした個人・団体に贈られる朝日賞受賞者を選ぶ財団法人朝日新聞文化財団と朝日新聞社の選考委員会(委員長・松下宗之同財団理事長、同社社長)は、1997年度の受賞者6氏を決定した。美術関係ではグラフィックデザイナーの田中一光が、「日本の美意識をベースにした国際的なデザイン活動」によって受賞。贈呈式は30日、東京日比谷の帝国ホテルで行われた。これで第1回以来の同賞受賞者は373人、24団体となった。
1997年12月 新鋭の美術評論家や美術史家を顕彰する倫雅美術奨励賞(倫雅美術奨励基金主催)の第9回目の受賞者は、「美術評論・美術史研究部門」では稲賀繁美(国際日本文化研究センター助教授)『絵画の黄昏―エドゥアール・マネ没後の闘争』(名古屋大学出版会刊)、猿渡紀代子(横浜美術館学芸係長)「アジアへの眼 外国人の浮世絵師たち」展の企画とカタログ中の論文、過去3年間の活動が対象となる「創作活動部門」では、今年は彫刻・立体造形作家から選考がなされ青木野枝が選ばれた。贈呈式は9日、東京赤坂プリンスで行われた。
1997年11月 文化財保護審議会(会長・西川杏太郎)は21日、重要有形民俗文化財、重要無形民族文化財新指定について町村信孝文相に答申するとともに、近代建造物の保護を目的とした文化財登録の対象として、奥山家住宅洋館(福島県国見市)、静岡銀行本店(静岡市)など47件を村田英樹文化庁長官に答申した。
1997年11月 日本芸術院(犬丸直院長)は21日、今年度の新会員の内定者を発表した。美術関係では日本画の郷倉和子(83)、白鳥映雪(85)が選ばれた。郷倉和子は父郷倉千靭も1972年に会員となっており、親子会員では19組目にあたる。総会の承認を得て、12月15日付けで町村信孝文相が発令する。
1997年11月 政府の行政改革会議(会長・橋本竜太郎首相)が独立行政法人(日本版エージェンシー)への移行の検討対象をリストアップする資料が10日、公表され、文部省所管の国立博物館などを含む13機関・業務が挙げられていることが明らかになった。独立行政法人は、中央省庁から執行部門を切り放して国とは別の法人格を持たせるもので、業務の効率やサービスの質、透明性の向上を図ることが目的とされている。
1997年11月 サントリー学芸賞の第19回目の受賞者が4日公表された。美術関係では「芸術・文学部門」で稲賀繁美(国際日本文化研究センター助教授)『絵画の黄昏―エドゥアール・マネ没後の闘争』(名古屋大学出版会刊)、「社会・風俗部門」で港千尋(多摩美術大学助教授)『記憶』(講談社)が選ばれた。受賞式は26日、東京丸の内パレスホテルで行われた。