若林奮作品をめぐる審理開始
1997年05月8日、東京・日の出町のゴミ処分場予定地内にある若林奮の作品「緑の森の一角獣座」をめぐる審理が、東京千代田区の日比谷公会堂ではじまった。これは処分場建設に反対し、トラスト運動を展開する住民らに賛同した作家がトラスト地に庭の形をとった作品を制作、その後東京都収用委員会が住民らと処分建設を急ぐ事業者の双方から意見を聞くべく開いたものである。審理の結果、住民側が敗れた場合は作品は破壊される可能性があり、産業社会に抵抗する作品のあり方が問われることとなった。
8日、東京・日の出町のゴミ処分場予定地内にある若林奮の作品「緑の森の一角獣座」をめぐる審理が、東京千代田区の日比谷公会堂ではじまった。これは処分場建設に反対し、トラスト運動を展開する住民らに賛同した作家がトラスト地に庭の形をとった作品を制作、その後東京都収用委員会が住民らと処分建設を急ぐ事業者の双方から意見を聞くべく開いたものである。審理の結果、住民側が敗れた場合は作品は破壊される可能性があり、産業社会に抵抗する作品のあり方が問われることとなった。
2日、太平洋戦争で学徒出陣し、戦死した画学生の遺作を集めた“無言館”が開館(長野県上田市東前山300)。同館は信濃デッサン館館長の窪島誠一郎氏が、当時の東京美術学校の学籍簿を頼りに全国を回って作品を集めるという、多大な労のもとに開館の運びとなった。
25日、ファッションをテーマとした日本初の美術館である神戸ファッション美術館が開館(兵庫県神戸市東灘区向洋町中2-9-1)。同館は展示スペースのミュージアムと20世紀初めからの主要ファッション書籍集を収集する図書館、人材交流のセミナー室等のリソースセンター、多目的ホール等からなる。また“神戸ファッション産業復興支援センター”として、阪神大震災で被害を受けた中小ファッション企業への支援も行う。
19日、デジタル技術の進歩とともに、形態を変えつつあるコミュニケーションを主眼に、科学技術と芸術文化の対話を試みるNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)が開館(東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー4~6階)。同センターは、新しい表現に挑むアーティストを支援するためのプログラムを展開するほか、電子図書館等の施設を備える、次世代型ミュージアムである。
文化財保護審議会(西川杏太郎会長)は18日、正倉院正倉など2件を国宝に、重要文化財に司馬江漢筆「相州鎌倉七里浜図」等51件を、史跡5件、名勝1件を新たに指定するよう小杉隆文相に答申した。正倉院の国宝指定は、「古都奈良の文化財」の世界遺産への推薦に伴う措置で、宮内庁が所轄する皇室用財産の国宝指定は初めて。
12日、タイルに関する歴史や技法等を展示・公開する“世界のタイル美術館”が開館(愛知県常滑市奥栄町1-130)。世界有数のタイル収集家の一人、山本正之氏のコレクションでオリエント、イスラム、イギリス等世界25ヶ国のタイル約6,000点を収蔵し、そのうち800~1,000点を常設展示する。
日本芸術院(犬丸直院長)は24日、芸術の各分野で顕著な功績があった人に贈る平成8年度(第53回)の日本芸術院賞受賞者を内定した。恩賜賞・日本芸術院賞の第1部(美術)受賞者には寺島竜一(78)(日展出品作「アンダルシア讃」に対し)、日本芸術院賞には日本画の中路融人(78)(日展出品作「映像」に対し)、彫塑の雨宮淳(59)(日展出品作「韻」に対して)、工芸の河合誓徳(69)(日展出品作「行雲」に対して)、書の甫田鵄川(73)(日展出品作「菜根譚」に対して)が選ばれた。授賞式は7月14日に東京・上野の日本芸術院会館で行われた。
23日、宇都宮市の市制100周年記念事業で計画された“うつのみや文化の森”の主要施設の一つとして、宇都宮美術館が開館(栃木県宇都宮市長岡町1077番地)。“地域と美術”“生活と美術”“環境と美術”を作品収集のテーマとし、岡田新一設計による美術館建物は地上二階地下一階の低層構造で、展示室三室のほかに講義室、ミュージアムショップ、レストランなどが設けられている。開館記念展は「20世紀美術の冒険―セザンヌ、ファン・ゴッホから現在までアムステルダム市立美術館コレクション展」(23~5月18日)。
文化財保護審議会(西川杏太郎会長)は21日、重要文化財に明治生命保険本社本館など歴史的建造物8件を、また、伝統的な町並みを保存する「重要伝統的建造物群保存地区」1件、登録文化財52件を新たに指定するよう小杉隆文相に答申した。明治生命保険本社本館の指定については、近代文化遺産の保存策として対象を終戦時まで拡大するのに伴うもので、昭和期の建造物では初の重文指定となる。
芸術の各分野で昨年一年間に優れた業績をあげた人々に贈られる芸術選奨の受賞者が、13日文化庁から発表された。美術関係では彫刻家江口週(64)(個展「記憶の解体 忘れられた廃屋から」などに対し)、洋画家三尾公三(73)(個展「心承空間への誘い 三尾公三展」に対し)、美術史家武田恒夫(71)(著作『狩野派絵画史』に対して)が芸術選奨文部大臣賞を、建築家村上徹(47)(公共建築「庵治町役場」に対し)が芸術選奨新人賞を受賞した。
平成九年度の文化庁予算は、前年七月に文化庁がとりまとめた「文化立国21プラン」に基づき、前年度比10.4%増 の828億円とすることと決まった。新規事業としては、国内外の芸術家を招へいし、地域に一定期間滞在、創作活動等を行うことにより、高度で独創性にあふれた芸術文化の創造を図るアーティスト・イン・レジデンスに1億200万円、これまで十分な保護措置が講じられてこなかった近代文化遺産の保護施設の充実に4200万円などが計上されている。
文化財保護審議会(西川杏太郎会長)は21日、静岡県の「明治宇津ノ谷隧道」や宮崎県の「黒北発電所」など66の建造物を文化財建造物に登録するよう小杉隆文相に答申した。
優れた作品を発表してきた中堅の具象画家に贈られる小山敬三賞の第12回目の受賞者は立軌会会員の福本章に決定した。また、「美術文化の国際交流事業に対する援助」により財団法人清春白樺美術館財団に140万円が贈られることとなった。
平面美術の分野で国際的に通用する若手作家を支援するVOCA賞が小池隆英「undercurrent」に贈られることになった。またVOCA奨励賞には上田奈保、善住芳枝、曽根裕、東郷靖彦の4名、選考委員特別賞に第1回VOCA賞受賞の福田美蘭が選ばれた。
10日、旧都庁跡地に東京国際フォーラムが開館(東京都千代田区丸の内3-5-1)。アメリカの建築家ラファエル・ヴィニオリの設計による同館は4つのホールとガラスホールからなる総合文化情報施設で、コンサート、演劇・舞踊、シンポジウム、企画展など多彩な催しが開かれる。また施設内には国内外の美術作家50人による134作品が設置されている。
優れた芸術活動をした個人・団体を顕彰する1996年度(第38回)毎日芸術賞は六氏に贈られることとなった。美術関係ではグラフィックデザイナーの杉浦康平(『井上有一全書業』など一連のブックデザインに対して)、画家の野見山暁治(「野見山暁治展―その、動く気配の一瞬の形を」に対して)が受賞した。また今回は特別賞が一氏に贈られ、建築家の篠原一男(作品集『篠原一男』の刊行と一連の建築業績に対して)が受賞した。贈呈式は14日、ホテル・インターコンチネンタル東京ベイで行われた。
“具象絵画の芥川賞”として多数の人材を輩出してきた安井賞展(主催=財団法人安井曽太郎記念会、毎日新聞社、セゾン美術館)の第40回目の選考委員会が11日に開かれ、安井賞は柳田昭(48)の「水温む頃」、佳作賞は上川伸(37)の「THE WALL “Main Stream: type D”」、特別賞に安達博文(44)の「虹の境界」に贈られることとなった。なお、同展は、具象に限定したコンクール展が現在の美術動向にそぐわないとの声も強まり、記念会理事会が「(同展は)すでにその使命を達成した」として、平成9年開催の第40回で幕を閉じることが11月15日に発表されている。
メキシコのメリダで開かれていた第20回世界遺産委員会は、日本が推薦していた広島市の原爆ドームと広島県宮島町の厳島神社を世界遺産に登録することを6日決定した。
日本芸術院(犬丸直院長)は22日、今年度の会員補充選挙を行い、あらたに9人を新会員に内定した。美術関係では洋画の奥谷博(62)、彫塑の橋本堅太郎(66)が選ばれた。総会の承認後、12月15日付で小杉隆文相が発令する。
文化財保護審議会(西川杏太郎会長)は15日、東京大学の安田講堂、小岩井農場本部事務所など119件の建造物を登録文化財とするよう小杉隆文相に答申した。主に近代以降の建築物の保護のため、10月施行の改正文化財保護法で新設された文化財登録制度を適用した初答申となった。