岡本太郎

没年月日:1996/01/07
分野:, (美)
読み:おかもとたろう

 1970年に日本で開催された万国博覧会のシンボル太陽の塔で知られた美術家岡本太郎は1月7日午後3時32分急性呼吸不全のため東京都新宿区の慶応義塾大学病院で死去した。享年84。明治44(1911)年2月26日、神奈川県川崎市に生まれる。父は漫画家の岡本一平、母は歌人・小説家の岡本かの子。大正6(1917)年青山の青南小学校に入学するが教師に反感を持ち1学期でやめ、日本橋の日新学校に入るが、翌年慶応幼稚舎に入学。昭和4(1929)年、慶応普通部を卒業して東京美術学校に入学するが半年で退学。同年、父母が渡欧するのに同行し、翌5年よりパリで一人暮らしを始める。同7年、ピカソの抽象絵画に触発され抽象画を描き始め、同年サロン・デ・シュールアンデパンダンに出品したほか、アプストラクシオン・クレアシオン協会に参加し、アルプ、ブランクーシ、ドローネー、カンディンスキー、モンドリアンらと交遊する。同協会展に「リボン」「コントルポアン」などの抽象作品を次々に発表。同年GLM社から初めての画集『OKAMOTO』が刊行される。同12年、純粋抽象へのあきたらなさも一因となってアプストラクシオン・クレアシオン協会を脱退する。同13年国際シュールレアリスト・パリ展に「痛ましき腕」を出品して純粋抽象から具象的イメージを取り込んだ画風へと展開。ブルトン、エルンストら、シュールレアリストとの交遊を深めるが、芸術家としての孤独な立場に悩み、パリ大学に入学して哲学、心理学、社会学、民族学などを学ぶ。同14年パリ大学民族学科を卒業。同年ジョルジュ・バタイユを中心にコレージュ・ド・ソシオロジーを設立。同15年、第二次世界大戦の勃発により帰国を決意し、8月に日本に着き、翌16年の第28回二科展に滞欧作を特別陳列する。翌年1月に召兵され同21年6月に復員。美術界が政治・社会の変化に緩慢な対応を示すのを批判し、絵画制作のみならず、文筆活動、講演などを通して広く問題提起を行う。同23年花田清輝らとともに「夜の会」を結成。同27年、縄文土器に衝撃を受け、その後の制作へのひとつの指針を得る。同年11月より翌年5月まで戦後はじめての渡仏。同28年サンパウロ・ビエンナーレ日本代表、翌29年ヴェネツィア・ビエンナーレ日本代表となる。同31年建築家丹下健三設計による東京都庁舎に「日の壁」「月の壁」ほかの登板レリーフによる壁画を完成し、同34年丹下との協力による制作によってフランスの「今日の建築」(ARCHITECTURE D’AUJOURD’HUI)誌の設定した国際建築絵画大賞を受賞する。その後も壁画、モニュメント等、建築と結びついた作品を数多く制作する。同38年フランス、イタリア、アメリカ、メキシコを巡遊。同39年韓国に取材旅行。同42年中南米を訪れる。同年、1970年の日本万国博覧会・テーマ展示プロデューサーに就任。翌年、国際協力要請のためパリ、プラハ、ロンドンを訪れる。同45年、大阪で行われた万国博覧会では、「太陽の塔」「青春の塔」「母の塔」を含むテーマ館を完成し、テーマ館長をもつとめた。同45年大阪そごうで「太陽・生命・歓喜-岡本太郎展」を開催。同50年代に入ると、壁画、モニュメント、タブローの制作のみならず、テレビ、映画への出演、鯉のぼりやレコード・ジャケットのデザイン、文字の画集『遊ぶ字』に見られるレタリングなども行い、多岐にわたる活動によって広く人々に知られるようになった。同53年10月、西宮市大谷記念美術館で「岡本太郎の世界-現代の神話」展が開催され、同月平凡社から全作品集『岡本太郎』が刊行された。また、同55年東京新宿の小田急グランドギャラリーで「挑む-岡本太郎展」が、平成2年生誕地川崎の川崎市市民ミュージアムで「川崎生まれの鬼才 岡本太郎展」が開催されている。著作も多く、主要なものに『アヴァンギャルド芸術』(美術出版社 1950年)、『日本再発見-芸術風土記』(新潮社 1958年)、『岡本太郎著作集』全9巻(講談社 1979-80年)などがあり、画集に『岡本太郎の全貌』(編集・山本太郎 アトリエ社 1955年)、『T.OKAMOTO』(文・瀧口修造 美術出版社 1956年)などがある。没後、岡本太郎美術館が開設されることとなった。 

出 典:『日本美術年鑑』平成9年版(343頁)
登録日:2014年04月14日
更新日:2023年09月25日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「岡本太郎」『日本美術年鑑』平成9年版(343頁)
例)「岡本太郎 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/10673.html(閲覧日 2024-04-26)

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