浅野長武訪欧
1953年07月東京国立博物館々長浅野長武は、伊太利で行われる国際博物館協議会第三回総会出席のため、一日羽田を出発した。会議の後、英仏白和等ヨーロッパ諸国を訪れ、主として博物館美術館等を視察、八月一八日帰京した。
東京国立博物館々長浅野長武は、伊太利で行われる国際博物館協議会第三回総会出席のため、一日羽田を出発した。会議の後、英仏白和等ヨーロッパ諸国を訪れ、主として博物館美術館等を視察、八月一八日帰京した。
中国に於ける考古学的調査は、北京の中国科学院(院長郭沫若)の考古研究所が一九四九年以来当つているが、最近の調査結果が齎されて反響を呼んだ。特に甘蕭省の麦積山及び炳霊寺の両石窟の発見は注目すべきもので、共に北魏様式を最古とし、石仏、壁画をもつているという。
ユネスコでは浮世絵複製を買上げ、世界各国で展覧会を開く計画をたて、日本へ依嘱していたが、文化財保護委員会の斡旋で完成、パリのユネスコ本部へ発送された。江戸初期から末期へかけての代表的なもので、発達をあとづけるよう系統的に選ばれたものに解説をつけ五〇組(五〇〇〇枚)を送つた。
来年の三月、ニューヨークのリヴァーサイド・ミュウゼアムで「アメリカ・アブストラクト・アーチスト」の第一八回展覧会が開催されるが、この展覧会に日本からも三〇点位の出品を期待する旨の招請がアメリカ抽象芸術家協会々長のモリスからとどいた。そこで長谷川三郎等が主となり、純粋抽象芸術の発展と国際交流を目的として、各団体にわかれわかれに所属している抽象派画家の結合として、日本アブストラクト・アート・クラブが結成された。
国画会絵画部の石原宏策、木内広、高松健太郎等三〇代の作家一五名によつて研究グループ国画3季会が結成された。
工業デザインについて研究討議する国際デザイン会議の第三回は二一日から二七日までアメリカ、コロラド州アスペンで開かれたが、今年から日本もはじめて参加した。代表として通産省工業技術院産業工芸試験所意匠部長剣持勇をおくつた。
海外との美術交流が盛になるにつれてその斡旋機関の不備が問題となつたが、文部省社会教育局芸術課長宇野俊郎が世話人となり、外務省、文部省、ユネスコ、国立博物館、国立近代美術館、日本美術家連盟、国際文化振興会等各関係者の懇談会が一六日開かれた。従来の国際文化振興会を強力にすることに意見の一致を見たが、その事務の積極化、円滑化をはかるために側面的援助機関としてこれら関係者により国際美術懇談会が結成され、同日発足した。
最近海外美術交流の上にも日本の版画は注目されて来たが、一三日新時代の版画の振興と国際的発達を目的として社団法人国際版画協会が設立された。理事長恩地孝四郎、常任理事品川工で会員は現在活躍中の日本版画協会々員など二〇余名である。
日本芸術院では二六日東京国立博物館で総会を開き各部長の改選を行つた。今まで欠員になつていた第一部長(美術)には和田英作が選ばれた。
毎日新聞社主催の第二回日本国際美術展はフランス、イギリス、アメリカ等一〇ケ国の参加を得て二〇日から六月八日まで東京都美術館において開催された。
国立近代美術館の昭和二七年度買入作品は日本画四点、油絵九点、彫刻一点総額五四〇万円が決定し発表された。 日本画 土田麦僊 「林泉舞妓」「写生帖およびデッサン」 村上華岳 「日高川」 稗田一穂 「奇異鳥」 油絵 黒田清輝 「舞妓」 青木繁 「日本武尊」 万鉄五郎 「湘南風景」「裸婦」 前田寛治 「裸婦」 小林徳三郎 「海」 松本竣介 「建物」 野田英夫 「サーカス」 安井曽太郎 「金蓉」 彫刻 佐藤忠良 「群馬の人」
二七日出雲大社鑚火殿より発火、拝殿、庁の舎、一九舎などを全焼、八足門を半焼した。一二日に正遷宮を終えたばかりの本殿は類焼をまぬかれた。
かねて建設中の正倉院の新宝庫はこの程完成、二一日落成会を行つた。着工二六年九月、工費五、五〇〇万円、様式は高床式の校倉型構造は鉄筋コンクリート、内部は総檜造二階建である。換気は自然換気、照明は普通電灯で五重遮断、耐震耐火であると共に、温度と湿度の調節には特別の措置がとられている。
前年一二月解体を決定した平等院鳳凰堂の修理に関し、一七日修理委員会(委員長村田治郎)が発足した。解体に先立ち装飾文様と壁画の剥落防止、本尊移屋のための仮屋の建設を行い、又壁画の模写も行う。
二七年四月発足した奈良文化財研究所は、ほぼ態勢が整つたので、一五日開所式を挙行し、本格的研究段階に入つた。所長には田沢坦が就任した。
昭和二七年度日本建築学会賞が決定し、一二日同会より発表された。 一、建築論文 ○寝殿造の研究 前橋工業短大教授 太田静六 ○構造物の風圧力に関する研究 建設技官 亀井勇 ○鉄筋コンクリート構造における内部応力の伝達に関する研究 東京工大助教授 加藤六美 ○我国における地震危険度の分布と耐震設計基準震度の研究 東大教授 河角広 二、建築作品 ○日本相互銀行本店 新制作協会々員 前川国男 三、建築図書 ○日本の建築 日大教授 吉田鉄郎
日本とフランス両国間の文化関係の発展についてお互いに便宜を与えることを定めた日仏文化協定は、一二日岡崎外相とドジャン駐日仏大使によつて調印された。パリと東京に日仏混合委員会を設け、その実施運営に期待がかけられている。
五月五日から六月一六日までインド、ニューデリーで開かれた全印度美術工芸協会主催の第二回国際現代美術展に堂本印象、阿部展也等二〇名の作品二〇点を出品した。昨年一二月より、同協会から大使館、外務省を経て日本美術家連盟に参加を要請して来たので、連盟で斡旋し、読売新聞社、外務省、ユネスコ後援により、三月三日から五日まで日本橋三越で国内展示を行つた後空路輸送した。
東京京橋のブリッヂストン美術館では映画部を新設して美術映画の制作をはじめることになつた。一昨年来次々と入つてきたフランス美術映画に刺激され、作家の制作状況や生活を小篇にまとめようとするもので、まず最初に梅原竜三郎の撮影がはじめられた。
奈良薬師寺の月光菩薩修理計画は、修理委員会の手で準備を進めていたが、四、五月分の暫定国庫補助金も決つたので、二〇日から本格的修理にとりかかつた。接着にはアラルダイドを用い内部に鉄心を入れて補強する。