国宝重要文化財新指定
1957年11月文化財保護委員会では二二日、建造物四、彫刻二、工芸品七、書跡三、考古一の新国宝と重文一七八の指定を決定した。今回の国宝には奈良と鎌倉の二大仏が含まれている。
文化財保護委員会では二二日、建造物四、彫刻二、工芸品七、書跡三、考古一の新国宝と重文一七八の指定を決定した。今回の国宝には奈良と鎌倉の二大仏が含まれている。
昨年一二月設定された安井賞(三二年度版参照)の選考委員会が、一四日国立近代美術館で開かれ、第一回の受賞作品は春陽会々員田中岑「海辺」と決定した。なお授賞式は故人の命日である一二月一四日に行われた。
一一日の衆議院文教委員会でさきに日展問題等を追求した社会党高津正道委員から今度国立近代美術館の経理につき追求があり、報道関係にも取上げられるところとなつた。しかし調査の結果は経理上の不正は事実無根なることが分り、一四日の同委員会で、文部省当局によりさきの発言を全面的に否定する釈明を行つた。
日本経済新聞社では五日から一七日まで日本橋三越に於て蕪村の名品約六〇点を陳列展観した。
日展参加団体である新世紀美術協会では、その会員の一部である田沢八甲、長屋勇、横山義雄らは日展審査の不明朗を理由に脱退した。新らたに同志と新協美術会を結成して同月第一回創立会を開催した。
明三三年六月イタリア、ベニスで開かれる第二九回ビエンナーレ国際美術展に、日本の代表作家を選考する国際美術協議会が、四日外務省で開かれ、次の六名が決定した。 絵画-岡田謙三、福沢一郎、前田青邨、川端竜子 彫刻-木内克、辻晋堂
毎日新聞社主催の第二五回産業美術振興運動「一九五七年商業デザイン作品募集」による入賞が決定し、三日発表された。 受賞次の通り A部門(新聞広告デザイン)総理大臣賞状並に毎日広告賞(渡欧または賞金五〇万円)明治製菓、岩永泉(デザイン)直江玲子(文案) B部門(ボスター、デザイン)通産大臣賞状並に毎日広告賞(賞金二〇万円)太陽製菓、工藤恵 C部門(コマーシャル・フォト)通産大臣賞状並に毎日広告賞(賞金二〇万円)キスミー本舗、早崎治
第一一回毎日出版文化賞は、一一点の入賞が決り発表されたが、三日同社で贈呈式が行われ著者に賞金五万円、出版社に賞牌が贈られた。美術関係では谷口吉郎著、佐藤辰三写「修学院離宮」(毎日新聞社)がある。
東寺と朝日新聞社の共催により一日から一九日まで東寺名宝展を開催した。今秋行つた秘宝調査の成果と、従来国宝重文に指定されたものを併せ陳列し一般に公開したものである。
政府は本年度紫綬褒章受章者二〇名を二九日の閣議で決定発表した。同章は学術、芸術の分野で功績のあつた者に贈られ、美術関係受章者は左の通りである。 大浦徳太郎(建造物修理)、関靖(文化財保存業務)、田中良(舞台美術)、長谷川源次郎(歌舞伎舞台装置)、藤村新治郎(仏師)
池上本門寺の五重塔は東京都内で一番古い五重塔であるが、元禄一二年現在地に移してから右に傾いていた。木造部分の腐朽がひどくなつたため、国庫の補助をえて各層屋根瓦、匂欄、扉の取替などの修理を行うことになつた。
日本ユネスコ国内委員会主催による東西文化交渉史の国際シンポジウムが、二八日東京神田の中央大学会館で開かれた。これは昨年一一月、印度のニューデリーで開かれたユネスコ第九回総会で、一〇カ年計画として東西両文化の相互影響を解明する事業として決議されたもので、その第一回の国際会議が開かれたわけである。会期は二八日から三一日まで同大学、一一月四、五両日京都大学を会場とし、二〇カ国一三〇人の学者がそれぞれ研究発表と討論を行つた。
東京国立博物館では二三日から一一月二四日まで、鎌倉室町時代の総合展として、中世文化の粋三〇〇余点を集めた中世美術展を開催した。
昭和三二年度、第一六回文化勲章並びに第七回文化功労年金受領者一一名が、二二日の閣議で正式決定し、一一月三日文化の日に皇居に於いて授賞式が行われた。当日勲章と勲記が贈られ同九日には文部大臣室で顕彰式が行われ、顕彰状と年金証書(終身毎年五〇万円交付)が贈られた。美術関係授賞者次の通り 文化勲章受領者 西山翠嶂 文化功労年金受領者 中沢弘光 柳宗悦
一水会では、日展の審査方法が不明朗であるとの理由で、同会より出ている日展審査員六名(芸術院会員として加わつている有島、石井、山下の三名を除く)のうち硲伊之助、木下義謙、高野三三男の三名は、審査員を辞退し、同時に一水会を運営する二三名の委員も之を支持して第一三回日展には出品しないとの声明を二二日行つた。 声明要旨-今年度日展第一三回展覧会一水会審査委員三名は、今回の日展鑑別の方針に対し異議があり、止むを得ず審査員を辞退する決心をした。一水会委員(二三名)は三審査委員の意見を支持し、今回の日展不出品を声明する。硲伊之助、木下義謙、高野三三男、一水会委員。
イタリア政府は最高裁長官、日伊協会々長田中耕太郎、文化財保護委員会委員矢代幸雄両名に対し、日伊文化の交流に貢献した功績により、メダリア・ドォーロ・ペール・イー・ベーネメリティ・ベラ・クルトウラ・イタリアーナを贈ると二二日在日イタリア大使館から発表した。同勲章は日本の文化勲章同様最高文化人に贈られるもので日本人の受章ははじめてである。
京都大学西南アジア研究会から派遣され、七月二二日山口県徳山から出光興産所属のタンカー日章丸で出発した京大イラン学術調査隊の一行は、約一カ月間イランの遺跡を調査し、二〇日同船で帰国した。一行は加藤一朗文学部講師を隊長に、同大学院学生二名と総勢三名によつて行われた。
京都国立博物館では開館六〇周年記念の特別展覧会として二〇日から一一月一五日まで、平安時代美術展を開催した。平安時代の代表作の殆どを網羅する豪華な陳列内容は近来稀な充実した展覧会であつた。
フランス政府は、日仏文化交流に努力した功労により勲章を贈ることになり、一七日フランス大使館で授与式を行つた。今回はとくに二九年に開催されたルーヴル展を通じ功労のあつた人々で、次の五名に贈られた。 「黒い星」三等勲章実践女子大教授坂崎坦、同国立博物館普及課長野間清六。学芸功労二等勲章国立博物館庶務部長深見吉之助、同学習院大教授富永惣一、同朝日新聞社前企画部次長足立和雄。
東京国立文化財研究所では開所記念日の行事として一四日白描やまと絵展を開催した。従来の名品に新出の資料を加えて有意義な催しであつた。