木内克

没年月日:1977/03/08
分野:, (彫)

彫刻家、新樹会会員木内克は、3月8日急性肺炎のため、東京都荒川区の関川総合病院で死去した。享年84。明治25(1892)年6月27日、水戸市に生まれ、同45年水戸中学五年生在学中の夏、帰省中の東京美術学校彫金科教授海野美盛の指導を受けた。大正3年海野と相談し彫刻に専念することを決意、この年朝倉文夫の彫塑塾に入る。同5年第10回文展に「平吉」が初入選、以後出品を続け、同9年には第2回帝展に「手」を出品した。翌10年ヨーロッパに留学、ロンドンからパリへ移り、パリではグラン・ショミエール研究所へ通い、ブールデルの指導を受ける。同11年からサロン・デ・ザンデパンダンに出品、翌12年にはブールデルの推薦で第1回サロン・デ・チュイルリ展に「ギタリスト」を出品(昭和3年まで毎年出品)、同13年からサロン・ドートンヌにも出品した。また、昭和2年にはパリ郊外の陶芸家ラシュナルのアトリエで初めて陶芸を試み、この年藤田嗣治原勝郎らとラシュナルの展示会に招待出品、同5年頃からギリシャのアルカイック彫刻に心をひかれテラコッタの技法を修得する。同10年12月帰国し藤沢市に居住、翌11年第23回二科展に「女の顔」「女のトルソ」「猫」を出品、特待を受け、翌年会友に推挙された。また、この頃から同16年までマジョリカを制作、同15年東京上野桜木町33番地の朝倉文夫分塾に転居した。同16年二科会を退会、文展無鑑査となる。戦後は、同23年第2回新樹会展に招待され、「猫」「首」「マスク」などの滞欧作多数を出品して注目を集め、同26年に新樹会会員となった。この年第1回サンパウロ・ビエンナーレ展に「婦人坐像」を出品、また「臥像」で第3回毎日美術賞を受けた。以後新樹会展に出品を続けるとともに、選抜秀作美術展(第1~9回招待出品)、現代日本美術展、日本国際美術展、国際具象派美術展などに出品、同40年の第1回現代日本彫刻展には16点を出品した。同45年、「木内克の全貌」展(茨城県立美術博物館)を開催、同年紺綬褒章を受け、また第1回中原悌二郎賞を受賞した。翌年の春、ローマに出かけ蠟型ブロンズの制作を試み、ギリシャ、パリを経て帰国、この年『わたしのどろ箱』(求龍堂)を刊行した。同47年木内克をテーマにした映画「土くれ」と「木内克とその作品」が完成、文部省芸術祭記録映画部門の最優秀賞に選ばれた。また、同年勲三等瑞宝章を受賞。同49年『定本木内克』(現代彫刻センター)を刊行、東京と大阪で刊行記念展を開催し、茨城国体のためのモニュメント「女神像」を完成、また『エーゲ海に捧ぐ』(UNAC TOKYO)を刊行した。テラコッタの彫刻に素朴で力動感みなぎる独自の作風を示したが、晩年は大胆にデフォルメされた裸婦像も手がけた。
主要出品目録
1916 第10回文展「平吉」(初入選)
1917 第11回文展「老い」「動揺」
1918 第12回文展「パンツ」
1920 第2回帝展「手」
1922 サロン・デ・ザンデパンダン「猫」「立像」
1923 サロン・デ・ザンデパンダン「顔」「猫」(木彫)第1回サロン・デ・チュイルリ展「ギタリスト」
1924 サロン・デ・ザンデパンダン「女の首」、サロン・ドートンヌ「わたしの家族」
1925 サロン・デ・ザンデパンダン「女立像」
1926 サロン・ドートンヌ「猫」「立像」
1927 サロン・デ・ザンデパンダン「男のトルソ」
1928 サロン・デ・ザンデパンダン「猫」
1936 第23回二科展「女の顔」「女のトルソ」「猫」(特待)
1937 第24回二科展「女」「鬼の首」(会友)
1938 第25回二科展「犬」
1940 第27回二科展「トルソ」
1942 第5回文展「2602年」
1946 新日本美術展(朝日新聞社主催)「猫」(受賞)
1947 第3回日展「女と布」
1948 第2回新樹会展(東京・日本橋、三越)「猫」「首」「マスク」など滞欧作(招待)
1949 第3回新樹会展「牧神の午後」「坐」「波」「トルソ」「ひだり」「動き」(1948年作)(特別出品)
1950 第1回選抜秀作美術展(朝日新聞社主催)「アクルピ」(招待)。第4回新樹会展「立像」「伏せる女」「トルソー」「裸婦」など。木内克彫刻小品展(銀座松坂屋)「アマゾーン」「おどり」など。
1951 第2回選抜秀作美術展「トルソ」(招待)。(第9回展まで毎年招待出品)。第5回新樹会展「手をつく女」「手を上げる女」「手のあるトルソ」「臥像」(第3回毎日美術賞)など。第1回サンパウロ・ビエンナーレ「婦人坐像」
1952 第3回選抜秀作美術展「寝ている女」(第5回新樹会展)。毎日美術賞7作家自選展(東京・上野、松坂屋)「臥像」など12点。第6回新樹会展「猫」「裸婦A」など。日本現代美術展(文部省主催)「寝ている女」
1953 第4回選抜秀作美術展「猫」(第6回新樹会展)。近代彫塑展「西洋と日本」(東京・国立近代美術館)「トルソ」。第7回新樹会展「裸婦」「うずくまる」など。
1954 第5回選抜秀作美術展「横向き臥像」「坐像」「トルソー」。第1回現代日本美術展(毎日新聞社主催)「女坐像」「見つけたポーズ」。第8回新樹会展「裸婦ASF」など。
1955 第6回選抜秀作美術展「見つけたポーズ」(第1回現代展)。第3回日本国際美術展(毎日新聞社主催)「女」「おとな」。第9回新樹会展「手をつく女」「腰かけた裸婦」など。
1956 第7回選抜秀作美術展「立っている女」。第2回現代展「女」「寝ている女」。第10回新樹会展「女と布」「寝ている女」など。「日本の彫刻・上代と現代」展(東京国立近代美術館)「女の顔」「トルソ」「女と布」「見つけたポーズ」
1957 第8回選抜秀作美術展「女」(第2回現代展)。第4回国際展「女」、第11回新樹会展「女」「坐像」「手を上げる女」
1958 第9回選抜秀作美術展「坐像」(第11回新樹会展)。第2回国際具象派美術展「手のあるトルソB」。第3回現代展「手のあるトルソ」「実験作」、第29回ヴェネツィア・ビエンナーレ「見つけたポーズ」「手のあるトルソ」など5点。第12回新樹会展「首」「手のあるトルソ」「裸婦A・B」など。
1959 「戦後の秀作」展(東京国立近代美術館)「見つけたポーズ」。第5回国際展「婦人坐像」、第13回新樹会展「坐像」など。
1960 第3回具象展「小品」、第4回現代展「トルソ」、第14回新樹会展「寝ているトルソ」「女A・B」
1961 第6回国際展に「婦人立像」、第15回新樹会展「立っている女」「女と猫」など。「近代日本彫刻の流れ」展(東京国立近代美術館)「女の顔」
1962 第5回現代展「坐像」(優秀賞)。第16回新樹会展「裸婦」など。
1963 第7回国際展「足のあるトルソ」、第17回新樹会展「人間立像」「裸婦」
1964 「滞欧作とその後」展(東京国立近代美術館)「女の顔」「猫」「寝ている女」など。第5回具象展「裸婦」、第18回新樹会展「コロナ・レリーフ」。「近代日本の名作」展(東京国立近代美術館)「女」
1965 第8回国際展「コロナ」。第19回新樹会展「椿姫」など。第1回現代日本彫刻展(宇部野外彫刻美術館)に作品16点。
1966 第7回現代展「布をもったポーズ」、第20回新樹会展「女のトルソ」「ねむり猫」など。
1967 第9回国際展「微笑」、第21回新樹会展「聖母マリアの像」「天女」など。
1968 第8回現代展「露柱」、第22回新樹会展「自刻像・生活」「露柱」。
1969 第9回現代展「坐像」、第23回新樹会展「人魚」。「日本近代彫刻の史的展望」(宇部野外彫刻美術館)「手をつく女」「アルカイックな首」など。
1970 第24回新樹会展「女人誕生」。
1971 第25回新樹会展「マリア」「飛天」。
1972 第26回新樹会展「エーゲ海に捧ぐ」。
1973 第27回新樹会展「人魚」、「近代美術史におけるパリと日本」展(東京国立近代美術館)「女」。
1974 第28回新樹会展「ツルの首」。
1975 第29回新樹会展「鶴」「裸婦」
1976 第30回新樹会展「裸婦A」「テラコッタ1」など。

出 典:『日本美術年鑑』昭和53年版(256-258頁)
登録日:2014年04月14日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「木内克」『日本美術年鑑』昭和53年版(256-258頁)
例)「木内克 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/9568.html(閲覧日 2024-03-29)

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