第6回世界文化賞受賞者決定

1994年06月

高松宮記念世界文化賞(日本美術協会主催)の第6回目の受賞者5名が発表された。美術関係では絵画部門でザオ・ウーキー(73)、彫刻部門でリチャード・セラ(55)、建築部門でチャールズ、コレアが選ばれた。 

国立博物館美術館地方巡回展実施

1994年05月

国立博物館、美術館、東京芸術大学などが収蔵する文化財や美術品を「日本の風俗」等のテーマで選び、地方に巡回する企画が、文化庁の主導で今秋から実施されることとなった。「地域における文化活動拠点の整備」を目標に文化庁が初めて取り組むもので、今年は全国5ヶ所で開催。教科書等に掲載されている著名な作品も出品し、美術鑑賞のすそ野を広げる方針である。

人間国宝認定

1994年05月

文化財保護審議会(鈴木勲会長)は20日、重要無形文化財保護者(人間国宝)として新たに10人を認定するよう赤松文相に答申した。美術関係では陶芸の「志野」で鈴木蔵(59)、「佐賀錦」で古賀フミ(67)、「蒟醤」で太田儔、「木工芸」で川北良造が選ばれた。後継者不足などの現状をふまえ、高度な技術の保護を強化する見地から、文化庁は今年、人間国宝の新規認定の定員を8人増やし、38年ぶりに二ケタの大量認定となった。

秋田県立近代美術館開館

1994年04月

「秋田ふるさと村―かまくらんど」(株式会社秋田ふるさと村)の一角に20日、秋田県立近代美術館(田中日佐夫館長)が開館した。建物は地上7階地下1階、延べ面積約1万1千平方メートル。秋田県立博物館から秋田蘭画など、400点以上の作品を受けつぎ、秋田県の「美術品取得基金」や「秋田県優秀美術作品収集委員会」による収集品を含む約1200点の作品を収蔵。常設展では秋田にかかわりのある作家の作品を展示し、企画展では地域にこだわらないテーマ展示を行なっていく方針である。

日本芸術大賞受賞者決定

1994年05月

財団法人新潮文芸振興会が主催する第7回新潮4賞(三島由紀夫賞、山本周五郎賞、新潮学芸賞、日本芸術大賞)の選考会が12日に行なわれた。日本芸術大賞は、建築家安藤忠雄が「大阪府立近つ飛鳥博物館に示された建築と環境の創意ある結びつき」が認められて受賞することとなった。日本芸術大賞は第26回目をむかえるが、建築家の受賞は1980年の槙文彦以来2人目。 

重要文化財、史跡名勝、選定保存技術保持者指定

1994年04月

文化財保護審議会(鈴木勲会長)は15日、絹本著色十一面観音像など2件を国宝に指定するよう赤松文相に答申。また絵画、彫刻、工芸品、書籍、典籍、古文書、考古資料、歴史資料の分野で計43件を重要文化財に、9件を史跡、1件を名勝に新たに指定、漆工品修理等、文化財の保存、修復のための選定保存技術に6件を選び併せて保持者6人を認定、保持者ひとりを追加認定するよう答申した。

平安遷都1200年記念「王朝の美」展開催

1994年04月

桓武天皇の延歴13(794)年の平安遷都から1200年になることを記念し、京都では様々な行事が行なわれているが、その一環として京都国立博物館で平安時代後期を中心に、王朝文化の爛熟期の絵画、彫刻、美術工芸品約100点を展示する「王朝の美」展が開かれた(12~5.15)。平安遷都の頃を唐風文化の受容から和風文化の創出への移行期と重ねあわせ、大和絵と仮名文字が華やかな展開を見せた絵巻物を中心に、王朝人の美意識のありかたをうかがわせる充実した展観となった。

日本文化芸術振興賞受賞者決定

1994年04月

日本の伝統文化や現代芸術の保護・振興、国際交流の促進等を目的とした「日本文化芸術財団」(会長・瀬島竜三観光政策審議会会長)が設立した「日本文化芸術振興賞」の第1回の受賞者がこのほど決定。美術関係では、伝統文化部門で唐紙師の千田長次郎・堅吉父子が受賞し、若手を対象とする助成金の伝統芸術部門では左官の杉森義信が、現代芸術部門では建築家の妹島和世が対象者に選ばれた。

日本美術学校再開

1994年04月

1916年に東京・早稲田に設立され、1988年に閉校するまで林武、瑛久など数多くの作家を輩出した日本美術学校が、12日、埼玉県大宮市で再開された。同校は戦後、大学への移行措置をとらなかったことから経営悪化に陥り閉校したが、学校再建委員会を兼ねた校友会が中心となり、学校法人佐藤栄学園の出資により再開されることとなった。修了年限2年の専門学校で日本画、洋画、彫刻の3科が設置され、定員は40名。今後デザイン科の設置も予定されている。

「河鍋暁斎と江戸東京」展、「河鍋暁斎」展開催

1994年04月

美術受容の地域による差異への関心が高まっているが、日本国内に比較して欧米での評価の高い幕末、明治期の画家河鍋暁斎の作品や愛用品など約200点を展示し、激動の時代を生きた画家の姿を浮かび上がらせる「河鍋暁斎と江戸東京」展(江戸東京博物館、12~5.15)、肉筆画14点を含む160点の作品を展観する「福島太郎コレクションによる河鍋暁斎」展(笠間日動美術館、23~5.22)が開催された。昨年末から今年2月にかけて大英博物館でも大規模な暁斎展が開かれ、近年の近代日本美術史研究の成果をふまえ、従来見のがされてきた歴史の一面を再考する動きの一環となった。

鎌倉市に鏑木清方の遺品寄贈

1994年04月

幕末・明治期の風俗を描いた作品や美人画で知られる日本画家鏑木清方の旧作や遺作・遺品が、長く画家の住居のあった神奈川県鎌倉市に寄贈されることとなり、4日寄付目録が手渡された。寄贈される遺作・遺品は現在横浜美術館が保管し整理を進めている。「一葉女子の墓」「朝涼」等の代表作を含む日本画26点、下絵、日記、写生帖などあわせて数百点におよぶ作品・資料が寄贈されることとなり、鎌倉市はこれらを保管、公開する記念館を設立したいとする遺族の意向を汲んで積極的に検討していく予定である。

「モードのジャポニスム」展開催

1994年04月

19世紀の西欧で流行した日本趣味の衣服への反映を跡づける「モードのジャポニスム」展が5日から京都国立近代美術館で開催された(~6.19)。18世紀から現代までの衣装130点、テキスタイル、アクセサリー30点が展示され、日本の着物が18世紀のオランダで男性の部屋着として着用されていたこと、20世紀の女性の衣服におけるコルセットの不使用、ゆとりの重視に与えた影響などが示される興味深い展観となった。

足利市立美術館開館

1994年04月

栃木県足利市のJR足利駅前に2日、足利市立美術館(遠藤武幸館長)が開館した。市街地の区画整備事業の中核施設として、11階建て複合ビルの地下1階から地上3階までの延べ床面積3729平方メートルの美術館として設立され、同市に寄贈、寄託された両毛地域ゆかりの作家の作品を中心に収蔵。年一回の自主企画展のほか、他館との共同企画による巡回展を中心に行なっていく予定で、開館記念展は「印象派とフランス近代絵画の系譜」展(4.2~5.29、東京新聞主催)。

厳島神社の修復完了

1994年04月

1991年9月の台風19号で大被害を受けた安芸の宮島の厳島神社(広島県佐伯郡宮島町の能舞台、能楽屋などが修復を終え、5日に完工式を行なった。国、広島県、宮島町が文化財補助事業として修復したもの。本社の朝座屋(ルビ あさざや)や島に点在する摂社、末寺の復旧のめどはまだ立っていない。

第50回日本芸術院賞受賞者発表

1994年03月

芸術の各分野で大きな業績のあった人に贈る日本芸術院賞の平成5年度(第50回)の受賞者は洋画家の芝田米三(67)(第61回独立展出品作「楽聖賛歌」に対して)、彫刻家の吉田鎮雄(63)(第25回日展出品作「遊憩」に対して)、工芸家の井波唯志(71)(第25回日展出品作「晴礁」に対して)、書家の栗原蘆水(62)(第25回日展出品作「菜根譚一節」に対して)に決定。また日本芸術院賞・恩賜賞第一部美術の受賞者には日本画家の白鳥映雪(81)(第25回日展出品作「菊慈童」に対して)が選ばれた。授賞式は5月30日東京上野の日本芸術院会館で行なわれた。

斎藤記念川口現代美術館開館

1994年04月

1970年代以降の日本の現代美術品を収集・展示する私立美術館「斎藤記念川口現代美術館」(須賀忠治館長)が2日、開館。美術篤志家の斎藤規子の「美術を通じて公益に資したい」とする意志を受けて、親戚関係にあたる株式会社ローザ社長、同社専務で彫刻家の建畠覚造らが中心となり、平成元年2月に準備室を発足。現代作家の作品を収集することにより、美術活動を支援していく方針で、今後は収蔵コレクション展を中心に開催していく予定である。開館記念展は「土屋公雄―来歴―」(4.2~5.29)。 

第44回芸術選奨受賞者発表

1994年03月

芸術の各分野で昨年1年間に優れた業績をあげた人に贈られる芸術選奨の受賞者が9日、文化庁から発表された。美術部門では彫刻家土谷武(67)(「土谷武展」特に「植物空間」シリーズに対して)、陶芸家中村錦平(58)(「東京焼・中村錦平展―メタセラミックスで現代をさぐる」に対して)が受賞。また新人賞には写真家大石芳野(49)(写真集「カンボジア苦界転生」に対して)が選ばれた。授賞式は17日、東京・上野の日本芸術院会館で行なわれた。

静岡県立美術館にロダン館完成

1994年03月

静岡県立美術館にフランスの彫刻家オーギュスト・ロダンの代表作「考える人」「地獄の門」などを展示するロダン館、通称ロダン・ウィングが22日開館。総工費34億1600万円、鉄筋コンクリート一部鉄骨造り2階建て、延べ床面積約3000平方メートルの建物内に、ロダンの作品のほか、カミーユ・クローデル、ブールデルらの弟子の作品などを展示する。同館のロダン・コレクションは国立西洋美術館の50余点に次ぐ我国最大規模のものである。

松伯美術館開館

1994年03月

上村松園、松篁、淳之の三世代の日本画家の作品を収蔵・展示する松伯美術館が奈良市登美ヶ丘に22日に開館。近畿日本鉄道株式会社が、松篁、淳之両氏により上村家三代の作品の寄贈を受け、近鉄の寄付による10億円を基金に設立され、故・佐伯勇近鉄名誉会長旧邸の敷地内に建てられている。建物は鉄筋コンクリート(一部鉄骨)地上2階地下1階、延べ床面積約1520平方メートル、総事業費は約14憶円。寄贈された作品は草稿、写生等を含めて92点で、松園の作品3点、下絵61点、松篁の作品は20点、淳之の作品は8点となっている。

第16回マルコポーロ賞受賞者決定

1994年02月

イタリア文化の普及に尽くした著作に与えられるマルコ・ポーロ賞(イタリア文化会館主催)の第16回目の受賞者は、小佐野重利『記憶の中の古代』(中央公論美術出版)に決定した。

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