第37回安井賞展開催

1994年03月

故・安井曽太郎を記念し、若手具象洋画家の育成、現代美術の振興を目的に1957年に設立された安井賞(主催・財団法人安井曽太郎記念会、毎日新聞社、セゾン美術館)の第37回目の受賞者発表が昨年12月21日に発表されたのを受けて、4日から東京の有楽町アートフォーラムで「安井賞」展が開催された(~3.28)。全国の推薦委員から推薦された223作家による365点の作品の中から入選作45点が選ばれ、「安井賞」は本田希枝「漂流者」、「佳作賞」は木津文哉「岐」が受賞した。同展はセゾン美術館の後、下館市文化ギャラリー、尼崎市総合文化センター、いわき市立美術館、尾道市立美術館、秋田市立千秋美術館、福岡県立美術館、帯広市藤丸に巡回した。 

「日本画の抽象」展開催

1994年02月

「日本画」とは何かを問う動きが高まるなか、西欧の抽象画に学び、日常的な視覚から遠くはなれる試みを行なった大正後期から1960年代までの日本画70点を集めた「日本画の抽象」展が11日から東京・大崎のO美術館で開かれた(前期~2.23、後期2.25~3.9)。一般に、伝統との結びつきを強調されがちな日本画の分野で、技法、様式の可能性を広げようとした作品群が並び、「日本画」の定着を再考させるとともに、制作の新たな展開を促す展観となった。

「戦後日本の前衛美術」展開催

1994年02月

戦後日本の前衛作家約100人による約200点の作品を「真夏の太陽に挑む:具体」「復讐の形態学:読売アンデパンダンと1960年代の社会的プロテスト」等、9セクションに分けて展示する「戦後日本の前衛美術」展が、5日から横浜美術館で行われた(~3.30)。米国からアレキサンドラ・モンローがゲスト・キューレイターに招かれ、その調査・研究によって日本の美術活動の自律性に注目すべく構成された。同展は同年9月から翌95年1月までニューヨークのグッゲンハイム美術館でも、内容を多少変更して展観され、日米の視覚の差異をうかがう意味でも興味深い企画となった。

’93メセナ大賞決定

1994年01月

企業および企業財団による優れた文化支援活動を顕彰する「メセナ大賞」(主催・社団法人企業メセナ協議会)の第3回目の受賞者が決定。従来強調されてきた継続性に加え、今回は「地域への貢献」と「国際性」が基準として重視されたのが特徴で、大賞にセゾングループ(セゾン美術館の運営に対して)が選ばれた。他に美術関係では財団法人東芝国際交流財団(国内および海外の美術館・博物館への助成)、フィリップ・モリス株式会社(日本美術修復計画への支援)がメセナ特別賞受賞者に選ばれた。

第9回小山敬三賞決定

1994年02月

これまでに優れた作品を発表してきた中堅具象洋画家の業績を顕彰する小山敬三賞の第9回目の受賞者は新作家美術会会員の中野淳に決定し、2日、発表された。油絵海外修復技術調査研究費助成の対象者には学校法人高沢学園創形美術学校修復研究所の伊藤由美、美術文化の国際交流事業に対する助成の対象者には、東南アジアからの美術留学生を援助する機関として清春白樺美術館が選ばれた。油絵等修復技術海外研修費助成の対象者には該当者がなかった。 

文化政策推進会議提言

1994年01月

文化庁長官の私的諮問機関で、文化振興のための統合的施策に関して検討している文化政策推進会議(会長・坂本朝一NHK名誉顧問)は、11日、国際社会の中で日本が文化創造に貢献していくための文化政策の具体的提言を公表した。提言は「文化発信社会」をめざして文化庁予算の拡大、芸術文化振興基金の財政基盤の確立、文化活動支援のための税制優遇策や個人・企業等の顕彰制度設立を求めている。このための文化庁の連絡調整体制の強化、文相と知事クラスの、国と地方の高レベル共同協議の場の設定が求められ、国際間の人的交流、情報交換の活性化のために国立美術館、博物館等の施設・機能を充実させることが要請された。また在外日本美術品の保存のために、それらに関する情報を総合的に調査・収集するほか、計画的に保存・修復を推進すること、国際的な保存修復協力の拠点として東京国立文化財研究所のセンター機能を強化すること等が示された。

バーンズコレクション展開催

1994年01月

目薬の新薬開発により財をなしたアルバート・クーン・バーンズ(1872―1951)の2500点以上にのぼる美術品蒐集品のうち、質・量ともに世界最大とも言われる後期印象派の作品を中心に同コレクション中の優品80点を展観する「バーンズ・コレクション展」が、22日から国立西洋美術館で開催された(~4.3)。遺言によりアメリカ・ペンシルヴェニア州メイオンにあるバーンズ財団の収蔵品は売却・貸与、カラー複製、展示位置の改変が禁止され、公開もほとんどされていなかったが、建物の老朽化や諸設備整備に対応するため、ワシントン・ナショナル・ギャラリー東館での展観を皮切りに、パリのオルセー美術館を経て来日する巡回展が実施のはこびとなった。「幻のコレクション公開」とあって連日多数の入場者があり、美術展への関心の高まりを印象づける企画となった。

第35回毎日芸術賞決定

1994年01月

平成6年度の毎日芸術賞の受賞者が1日に発表された。美術関係では平成6年9月から12月にかけて東京、京都の国立近代美術館で行なわれた「柳原義達展」などが評価され、彫刻家柳原義達が受賞した。

「小林古径」展、「川合玉堂」展、「山本丘人」展開催

1994年01月

「日本画」が再考されてきているなか、「近代日本画の巨匠」とされてきた画家の大規模な回顧展が相次いだ。生誕110年を記念して、明治期後半から昭和32年に没するまで、歴史画花鳥画の分野に優作を描き続けた小林古径の画業を本画70点、下絵類18点によって展観する「小林古径」展が4日より23日まで東京の小田急美術館で開かれた。また、画家の生誕120年を記念し、初期から晩年までの作品70点により自然の風物を情緒豊かに描いた60余年の画業を回顧する「川合玉堂」展が開かれた(東京、日本橋高島屋、1.27―2.8、大阪なんば高島屋、2.24―3.8)ほか、3月19日からは東京国立近代美術館で「山本丘人」展が開かれ、日本画の伝統主義、画壇の権威に迎合せず、現在の創画会の前身「創造美術」の創立等、現在に至る日本画の流れに大きな足跡を残す画業が回顧された(東京国立近代美術館、3.19~5.8)。

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