「尾張徳川家の名宝―里帰りの名品を含めて」展開催

2010年10月

尾張徳川家第十九代義親の寄付による伝来品を根幹とする徳川美術館所蔵品に、現在は他所の所蔵となっているが来歴から尾張徳川家伝来品であったことがわかる作品を加え、同家伝来の品々を集めた「尾張徳川家の名宝―里帰りの名品を含めて」展が2日から11月7日まで徳川美術館で開催された。「伝来の名品」、「さまざまな名宝」「里帰りの名品」「新たに加えられた名宝―購入品と寄贈品」の分類で、同家に伝来した武具、刀剣、茶道具、書院飾り、能面・能衣装など290点が展示され、綿密な調査成果が示されるとともに江戸文化の粋をうかがわせる展観となった。

「隅田川 江戸が愛した風景」展開催

2010年09月

東京を流れる隅田川がどのように描かれてきたかを江戸時代から近代まで跡づける「隅田川 江戸が愛した風景」展が22日から11月14日まで東京都江戸東京博物館で開催された。歴史、民俗、考古、美術といった幅広い視点から隅田川と人々の関わりに迫り、約160点の作品をプロローグ「古典から現世へ」、第一章「舟遊びの隅田川」、第二章「隅田川を眺める」、第三章「隅田川の風物詩」、エピローグ「近代への連続と非連続」の構成で展観した。東京スカイツリー建設により隅田川沿いの景観の変化が注目されている中での意義深い企画となった。

ドガ展開催

2010年09月

印象主義の画家エドガー・ドガの画業を約120点の作品で跡づける「ドガ展」が18日から12月31日まで横浜美術館で開催された。オルセー美術館所蔵品46点を中心に国内外の作品を集め、1「古典主義からの出発」、2「実験と確信の時代」、3「綜合とさらなる展開」の構成で、フランスの造形伝統を踏まえながら近代化の進む時代と向き合い、独自の画風に至った足跡が油彩画、パステル画、彫刻、写真によって示された。

第22回世界文化賞受賞者発表

2010年09月

優れた芸術の世界的創造者たちを顕彰する高松宮殿下記念世界文化賞(主催:財団法人日本美術協会)の第22回受賞者が14日発表された。美術関係では、絵画部門でエンリコ・カステラーニ(イタリア)、彫刻部門でレベッカ・ホルン(ドイツ)、建築部門で伊東豊雄が受賞した。

「栄西と中世博多展」開催

2010年09月

1168年と1187年に二度宋に渡り、博多に日本最初の禅寺聖福寺を建立した栄西(1141-1215)の生涯と、対外交流の拠点として栄えた中世の博多について国宝、重要文化財を含む152点の作品資料によって紹介する「栄西と中世博多展」が11日から10月31日まで福岡市博物館で開催された。第一部「栄西の足跡」では風貌、信仰、茶の嗜み、塔頭建立の手腕という視点から栄西に迫り、第二部「聖福寺の創建と中世博多の繁栄」では考古歴史資料や請来美術品など、当時の舶載品によって中世の国際都市博多を浮かび上がらせた。近年、存在が明らかになった栄西史料の研究成果が反映され、充実した展観となった。

「古陶の譜 中世のやきもの―六古窯とその周辺―」展開催

2010年09月

中世から現在まで続く窯として知られる瀬戸・常滑・越前・信楽・丹波・備前の六古窯と、近年の調査で明らかになった各地の中世窯の作品を集めた「古陶の譜 中世のやきもの―六古窯とその周辺―」展がMIHO MUSEUMで4日から12月12日まで開催された。戦前に現業として存在している窯の来歴が調査され六古窯が紹介されたことにより古窯への興味が高まり、今日までの発掘によって猿投、美濃・美濃須衛、渥美、湖西、伊賀、加賀、珠州のほか全国約80箇所の中世窯の存在が明らかになった成果を踏まえ、各中世窯の作品約170点を展観。窯によって異なる土、技術、造形の多様性が紹介されるとともに、中世の窯業の広がりを示す充実した展観となった。同展は茨城県陶芸美術館(2011年1月2日―3月21日)、愛知県陶磁資料館(2011年4月2日―5月22日)、福井県陶芸館(2011年5月28日―7月31日)、山口県立萩美術館・浦上記念館(2011年8月13日―9月25日)に巡回した。

石上純也のヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展金獅子賞受賞

2010年08月

イタリアのヴェネツィアで開催された第12回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展の授賞式が28日行われ、建築家の石上純也が企画展示部門で最優秀賞の金獅子賞に選ばれた。カーボンファイバーと糸を素材とする作品で、「超軽量のもので建築の限界を追求した」点が評価された。また建築家の故篠原一男に特別記念金獅子賞が贈られた。

「田中一村 新たなる全貌」展開催

2010年08月

生前はほぼ無名ながら、歿後にテレビ番組で紹介され一躍脚光を浴びた日本画家田中一村(1908-1977)の回顧展が、21日から9月26日まで千葉市美術館で開催された。奄美大島に在住し、南国特有の動植物を濃密に描いた晩年の作品群に評価が偏りがちだった一村の画業を、初期の作品や資料から検討し再顕彰する企画として注目を集めた。同展は鹿児島市立美術館(10月5日-11月7日)、田中一村美術館(11月14日-12月14日)に巡回した。

あいちトリエンナーレ2010開催

2010年08月

愛知エリアを文化芸術面でも日本や世界に貢献する地域とすることを目指して21日から10月31日まで、愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、長者町会場、納屋橋会場、名古屋城、オアシス21、中央広小路ビル等、名古屋市を中心とする複数の場所を会場として「あいちトリエンナーレ2010 都市の祝祭」が開催された。2008年3月に発表された基本構想に基づき、同年10月に「美術を中心として現代芸術の動向を国際的な視野に立って紹介すること―先端性」「都市の祝祭としての高揚感を演出すること―祝祭性」「現代美術を基軸にパフォーミング・アートをも積極的に取り込むこと―複合性」を方針とすることが決定。建畠晢を芸術監督に3年間の準備を経て、世界各国から約130組の作家が参加し、ひとつの都市で同時多発的に芸術空間が創出される展観となって注目された。

橋本平八と北園克衛展開催

2010年08月

彫刻家橋本平八(1897-1935)とその弟で前衛詩人として頭角を現し、文学、美術を横断する多様な活動を行った北園克衛(本名橋本健吉、1902-1978)の作品が一堂に会する初めての企画として「異色の芸術家兄弟 橋本平八と北園克衛展」が7日から10月11日まで三重県立美術館で開催された。石や木などの自然物に宿る霊的なものを木彫で表した平八と、未来派、ダダ、構成主義などを受容して詩作やデザインを行った克衛の一見対照的な制作が、生まれ育ちと時代の共有、および相互の情報交換と対話に根ざしていることを浮き彫りにする意義深い展観となった。同展は世田谷美術館に巡回した(10月23日-12月12日)。

韓国利川市の石塔返還要望

2010年07月

東京都港区の大倉集古館が所蔵する五重石塔をめぐり、韓国の市民団体が日韓併合100年を機に返還を求め、かつて石塔があった韓国利川市の趙炳敦市長らが21日、同館を訪れて返還の要望書や10万人を超える署名を手渡した。石塔は高麗時代初期のものと推定、日韓併合後に日本へ移され、1933年には国の重要美術品に認定された。要望に対して館側は、現段階では要望に応じられないとの立場を示した。

瀬戸内国際芸術祭2010の開催

2010年07月

瀬戸内海にある直島、小豆島など7つの島々とその母港となる香川県・高松港周辺を舞台とした現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭2010」が19日から10月31日まで開催された。総合プロデューサーを福武總一郎(財団法人直島福武美術館財団理事長)、綜合ディレクターを北川フラム(アートディレクター)が務め、18の国と地域から75組のアーティストとプロジェクト、16のイヴェントが参加。地域づくりに現代美術を活用する動きの中で、「あいちトリエンナーレ2010」とともに、新たに始められた国際展として衆目を集め、延べ約94万人の動員数を記録した。なお直島では芸術祭の開催に先立って、6月15日に直島福武美術館財団の運営、安藤忠雄の設計による李禹煥美術館が開館している。

人間国宝認定の答申

2010年07月

文化審議会(会長:西原鈴子)は16日、瀬戸黒の加藤孝道、紋紗の土屋順紀、友禅の二塚長生、蒔絵の中野孝一、鍛金の玉川宣夫の5名を新たに重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定するよう川端達夫文部科学相に答申した。紋紗での認定は初めて。これによって人間国宝は芸能、工芸技術の各分野で同数の58名、計116名となった。

第5回西洋美術振興財団賞受賞者決定

2010年07月

西洋美術の理解や研究発表などに貢献した展覧会に携わった個人・団体を顕彰する西洋美術振興財団賞の第5回目の受賞者が決定した。個人に贈られる学術賞は河本信治(京都国立近代美術館等で開催の「ウィリアム・ケントリッジ―歩きながら歴史を考える」展企画に対して)、荒屋鋪透(国立新美術館等で開催の「ルノワール 伝統と革新」展監修に対して)が、団体に贈られる文化振興賞は東急文化村(運営するBunkamuraザ・ミュージアムでの「レンピッカ展」等の開催に対して)が受賞した。

「ロボットと美術」展開催

2010年07月

人型ロボットと美術の関係を跡づける「ロボットと美術 機械×身体のビジュアルイメージ」展が10日から8月29日まで青森県立美術館で開催された。序章「ロボット以前 動く「ひとがた」の夢」でロボットという言葉と概念が生まれる以前の文献資料を紹介し、第一部「戦前 ロボットの誕生と同時代文化」、第二部「戦後Ⅰ 大衆文化の興隆と戦後アートの動向」、第三部「戦後Ⅱ ロボット・イメージの現在 ロボティクスからアートまで」ではロボットの実物を展示するとともに、絵画をはじめ漫画、アニメーション、玩具にまで及んだロボット・イメージを展観する意欲的な企画となった。同展は静岡県立美術館(9月18日―11月7日)、島根県立石見美術館(11月20日―1月10日)に巡回した。

オルセー美術館2010「ポスト印象派」展開催

2010年05月

フランス近代美術のコレクションで知られるオルセー美術館の所蔵品115点によって、19世紀末から20世紀初頭の印象派以降のフランス美術を紹介する「オルセー美術館2010「ポスト印象派」」展が26日から8月16日まで、国立新美術館で開催された。1886年の最後の印象派展から1920年代のナビ派による作品までを、第1章「1886年-最後の印象派」、第2章「スーラと新印象主義」、第3章「セザンヌとセザンヌ主義」、第4章「トゥールーズ=ロートレック」、第5章「ゴッホとゴーギャン」、第6章「ポン=タヴェン派」、第7章「ナビ派」、第8章「内面への眼差し」、第9章「アンリ・ルソー」、第10章「装飾の勝利」の構成で編年的に追う大規模な展示となった。オルセー美術館が2010年に大規模改装されるのに伴い、同館の所蔵品115点が一括して海外に貸与されたもの。

史跡・名勝指定の答申

2010年05月

文化審議会(会長:西原鈴子)は21日、平城宮の東南部で発見・修復された平城宮東院庭園(奈良市)を特別名勝に、幕末の四国連合艦隊下関砲撃事件の舞台となった長州藩下関前田台場跡(山口県下関市)など8件を史跡に、万葉集にも詠まれた和歌の浦など2件を名勝に指定するよう川端達夫文部科学相に答申した。また小川氏庭園(鳥取県倉吉市)など2件を登録記念物、高島市針江・霜降の水辺景観(滋賀県高島市)など2件を重要文化的景観とするよう答申した。

読売あをによし賞受賞者決定

2010年05月

保存科学・修復の現場で優れた業績をあげた個人・団体を顕彰する読売あをによし賞(主催:読売新聞社、特別協力:文化財保存修復学会)の第4回目の受賞者として、本賞に油彩や水彩画など近現代絵画の修復に長年携わってきた山領まり、奨励賞に壁苆(すさ)を製造する北野一成、特別賞に出土木製品の優れた保存処理法の開発等に長年取り組んできた元興寺文化財研究所が決定した。

静岡市美術館開館

2010年05月

JR静岡駅北口前に新設された葵タワーの3階に1日、静岡市美術館(館長:田中豊稲)が開館した。財団法人静岡市文化振興財団が管理。展示室の広さは3室計1100㎡。3月に閉館した静岡アートギャラリーを前身とし、収蔵品を持たないため常設展は行わず、特定のジャンルに縛られない企画展を事業の柱とする。9月まではワークショップやトークイヴェント等を実施、10月より開館記念展として(Ⅰ)「ポーラ美術館コレクション展 印象派とエコール・ド・パリ」(10月2日~11月28日)、(Ⅱ)「家康と慶喜―徳川家と静岡」展(12月11日~2011年1月30日)、(Ⅲ)「棟方志功 祈りと旅」展(2011年2月11日~3月27日)を開催した。

国立文化財機構・国立美術館に対する事業仕分け

2010年04月

民主党の鳩山由紀夫政権による事業仕分けが4月26日、独立行政法人である国立文化財機構と国立美術館を対象に行われた。文化財・美術品の収集をめぐって、「事業規模は拡充」との評価結果を得たものの、国の負担は増えないため民間寄付やコスト縮減等、自助努力を求められる結果となった。これを受けて9月から12月にかけて、日本芸術文化振興会と国立科学博物館も含めて「国立文化施設等に関する検討会」(座長:福原義春・資生堂名誉会長)が開かれ、独立行政法人化後の在り方と今後の運営が討議された。

to page top