展覧会の中止・延期

2011年03月

東日本大震災に続く福島第一原子力発電所の事故で、海外から美術品を借りる展覧会の中止・延期が相次いだ。4月2日~6月26日に横浜美術館で開催予定だった「プーシキン美術館展」は展示環境の安全性が確保されていないとロシア側が判断したことなどから開催を延期した。また4月5日から広島県立美術館で開催予定だった「印象派の誕生」展も、フランス文化省美術館総局が日本への美術品貸与を一時見合わせるよう勧告したため中止となった。一方、4月9日~5月29日に目黒区美術館で開催予定だった「原爆を視る 1945-1970」は、目黒区および美術館を運営する同区芸術文化振興財団で協議し、被災者の心情に配慮して開催が見送られた。

東日本大震災による被害

2011年03月

11日に発生した東日本大震災により、東北・関東地方の多くの文化財が損傷・倒壊等の被害を受けた。被災した国指定関係の文化財は744件にのぼり、宮城県松島町の瑞巌寺では庫裏(国宝)の壁の一部が崩落、茨城県水戸市の旧弘道館(特別史跡・重要文化財)では学生警鐘が全壊した。地震に伴い発生した津波による被害も甚大で、茨城県北茨城市の茨城大学五浦美術文化研究所六角堂(登録有形文化財)は土台のみを残し流失した。美術館・博物館も地震・津波による被害を受け、石巻文化センターでは津波の直撃により1階がほぼ壊滅、陸前高田市立博物館では建物の躯体のみを残した状態となり、所蔵品全てが津波により水損した。

第30回土門拳賞受賞者決定

2011年03月

前年に優れた成果を挙げた写真家に贈られる土門拳賞の第30回受賞者が石川直樹に決定した。受賞対象は『CORONA』(青土社)で、南太平洋のポリネシアを題材に、強大な一つの中央でなく無数の中心が共存する新しい世界のあり方を模索するという一貫したテーマと精力的な写真活動が高く評価された。

第36回木村伊兵衛写真賞受賞者決定

2011年03月

写真家木村伊兵衛の業績を記念し、優れた新人写真家に贈られる木村伊兵衛写真賞(主催:朝日新聞社、朝日新聞出版)の第36回目の受賞者は9日、下薗詠子(写真集『きずな』と同名の写真展に対して)に決定した。同世代の女性や友人、家族を被写体とし、その不条理感漂う作風が高く評価された。

「生誕100年 岡本太郎展」開催

2011年03月

1970年の大阪万博のシンボルとなった「太陽の塔」の制作などで知られる岡本太郎の生誕100年を記念し、約130点の作品によって、そのしごとの全貌をふりかえる「生誕100年 岡本太郎展」が8日から5月8日まで東京国立近代美術館で開催された。プロローグ「ノン!」、第1章「ピカソとの対決」、第2章「『きれい』な芸術との対決」、第3章「『わび・さび』との対決」、第4章「『人類の進歩と調和』との対決」、第5章「戦争との対決」、第6章「消費社会との対決」、第7章「岡本太郎との対決」、エピローグ「受け継がれる岡本太郎の精神」という構成で、一貫して既成の価値観への対決を挑んだ足跡が編年的に展観された。岡本太郎記念館の公開、川崎市岡本太郎美術館の開館など、近年再評価が盛んに行われている中で、岡本の今日的な位置を再考しようとする意欲的な企画となった。

鳥獣戯画仕立て直しの判明

2011年02月

京都・高山寺が所有する「鳥獣人物戯画」(鳥獣戯画)四巻のうち丙巻が、本来は十枚の和紙の裏表に描かれていたのを一枚ずつ剥がして二十枚にし、絵巻物に仕立てていたことが、保存修理中の調査でわかった。15日に高山寺と京都国立博物館が発表したもので、同寺に伝わる記録から、絵巻に仕立てられたのは江戸時代初期とみられている。

「関西中国書画コレクション展」開催

2011年01月

関西に所在する中国絵画のコレクションの全体像を紹介すべく、近隣の展示施設9館が連携して行う「関西中国書画コレクション展」が8日から2月20日まで京都国立博物館で開かれる「上野コレクション寄贈50周年記念 筆墨精神―中国書画の世界」展を皮切りに、澄懐堂美術館、黒川古文化研究所、観峰館、和泉市久保惣記念美術館、泉屋博古館、藤井斉成会有鄰館、大阪市立美術館、大和文華館で行われた。上野理一、阿部房次郎、山本悌次郎、黒川幸七、藤井善助矢代幸雄、須磨弥吉郎、住友寛一、橋本末吉、原田観峰、林宗毅らのコレクションとなった中国美術の優品が一連の企画で展観される機会となった。近隣館が共同で行う企画としても注目された。

毎日芸術賞受賞者決定

2011年01月

芸術文化における優れた業績を顕彰する毎日芸術賞(主催:毎日新聞社)の第52回目の受賞者が発表され、美術関係では、陶芸家の秋山陽(大阪・アートコートギャラリーでの個展「秋山陽 展」に対して)、美術家の森村泰昌(東京都写真美術館等での個展「なにものかへのレクイエム―戦場の頂上の芸術」に対して)が受賞した。

第18回VOCA賞受賞者決定

2010年12月

平面美術の若手作家を奨励するVOCA賞の第18回目の受賞者は「或る惑星」を制作した中山玲佳に決定した。VOCA奨励賞は後藤靖香と森千裕、佳作賞は熊澤未来子と澤田明子、大原美術館賞は上田暁子にそれぞれ贈られることとなった。受賞作等を展示するVOCA展2011は2011年3月14日から3月30日まで東京都の上野の森美術館で開催された。

登録有形文化財登録の答申

2010年12月

文化審議会(会長:西原鈴子)は10日、華やかな装飾が施された外観を持つ南海電鉄難波駅のターミナルビル「南海ビル」(大阪市)や1940年に建設された鉄道橋「天竜浜名湖鉄道天竜川橋梁」(浜松市)など、28都府県の建造物209件を新たに登録有形文化財にするよう高木義明文部科学相に答申した。これで登録有形文化財は8,348件となった。

キトラ古墳壁画のはぎ取り終了

2010年11月

国特別史跡キトラ古墳(奈良県明日香村)の壁画を保存するため、2004年8月に始めたしっくいのはぎ取り作業で、壁画が描かれている可能性のある部分の作業が全て終了したと、文化庁が25日発表した。さらに同庁は辰(東壁)、巳(南壁)、申(西壁)が残存している可能性のある部分をエックス線撮影で調べた結果、壁画は確認できなかったことを翌12月15日に発表、同月24日にははぎ取ったしっくいを覆う泥を当面取り除かないまま保存する方針を、「古墳壁画の保存活用に関する検討会」で決定した。

芸術院新会員決定

2010年11月

日本芸術院(院長:三浦朱門)は29日、芸術活動に顕著な功績があったとして新たに5名を同院新会員に選出したと発表、日本画家の福王寺一彦、洋画の山本文彦、工芸の武腰敏昭、森野泰明、評論・翻訳の粟津則雄が選ばれた。12月15日付で高木義明文部科学相により発令された。

第22回倫雅美術奨励賞受賞者決定

2010年11月

優れた美術評論や美術史の研究を顕彰する倫雅美術奨励賞(主催:公益信託倫雅美術奨励基金)の第22回目の受賞者が発表され、豊田市美術館の天野一夫チーフキュレーター(「近代の東アジアイメージ―日本近代美術はどうアジアを描いてきたか」展に対して)と、宇都宮美術館の前村文博学芸員(「杉浦非水の眼と手」展に対して)が受賞者となった。

第32回サントリー学芸賞受賞者決定

2010年11月

サントリー文化財団は10日、第32回サントリー学芸賞受賞者を発表した。美術関係では芸術・文学部門で古田亮『俵屋宗達』(平凡社)が受賞した。

「歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎」展開催

2010年11月

18世紀後半の江戸で、浮世絵の喜多川歌麿・東洲斎写楽、戯作の山東京伝、狂歌の大田南畝らの作品を巧みに売り出し、江戸文化の最先端を演出・創造した版元、「蔦重」こと蔦屋重三郎の営みを紹介する「歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎」展が3日から12月19日までサントリー美術館で開催された。江戸吉原の案内書である『吉原細見』等を手がけて経営の安定を図る一方で、人気狂歌師や戯作者の作を次々に刊行してブランド化を図り、さらには葛飾北斎や十返舎一九、曲亭馬琴など新人発掘に力を注いだ名プロデューサーぶりをうかがう企画として注目された。

文化勲章受章者、文化功労者決定

2010年10月

政府は26日、2010年度の文化勲章受章者7名と文化功労者17名を決定した。美術関係では、建築家の安藤忠雄、服飾デザイナーの三宅一生が文化勲章受章者に、書家の古谷蒼韻、写真家の細江英公、漫画家の水木しげるが文化功労者に選ばれた。

正倉院宝剣、1250年ぶり確認

2010年10月

奈良市の東大寺大仏殿内須弥壇から明治時代に出土した国宝の鎮壇具のうち2本の金銀荘大刀が、約1250年間所在が確認されていなった正倉院宝物の大刀「陽寶劔」「陰寶劔」であることが判明し、同寺と元興寺文化財研究所が25日、発表した。保存修理に伴うエックス線調査で、刀身から「陽劔」「陰劔」の象嵌銘文が発見されたことによる。同大刀は光明皇后が大仏に献納した聖武天皇の遺品目録「国家珍宝帳」に「除物」の付箋があり、別の正倉院文書から759(天平宝字3)年に持ち出された記録が残るが、その後の所在は不明だった。

国宝・重要文化財指定の答申

2010年10月

文化審議会(会長:西原鈴子)は15日、久能山東照宮本殿と石の間、拝殿を国宝に、池上本門寺宝塔など建造物9件を重要文化財に指定するよう高木義明文部科学相に答申した。これで建造物分野の重要文化財は2,374件(うち国宝216件)となった。また江戸期以降の重厚な町家が多数現存する奈良県五條市の約7haを重要伝統的建造物群保存地区に新規選定することも答申した。

第22回国華賞受賞者決定

2010年10月

日本・東洋美術に関する優れた研究を対象とする第22回国華賞は、古原宏伸『米芾「画史」註解』(中央公論美術出版)、内藤栄『舎利荘厳美術の研究』(青史出版)に贈られることが決定した。

「高僧と袈裟」展開催

2010年10月

無準師範や夢窓疎石など中国、日本の仏教史に名を残す僧侶たちが着用した袈裟を展観し、それらの仏教的、交流史的意味や染織品としての価値などを紹介する「高僧と袈裟」展が9日から11月23日まで京都国立博物館で開催された。第1章「袈裟のはじまり 律衣と糞掃衣」、第2章「天皇家と袈裟」、第3章「鎌倉仏教と袈裟」、第4章「伝法衣にみる東アジア交流Ⅰ」、第5章「道教・神道と袈裟」「6章「伝法衣にみる東アジア交流Ⅱ」第7章「袈裟と名物裂」、第8章「伝法衣にみる東アジア交流Ⅲ」の構成で、袈裟を多角的に見る意欲的な試みとなった。

to page top