新薬師寺金堂の基壇出土

2008年10月

奈良教育大学(奈良市高畑町)は、23日、同学構内で奈良時代に建立された新薬師寺の遺構が発見されたと発表した。現在の新薬師寺の南西に位置し、当時の絵図や文献の記述から、8世紀中ごろに光明皇后が聖武天皇の病気平癒を祈願して建立した新薬師寺の金堂(七仏薬師堂)の基壇と見られ、東大寺大仏殿に匹敵する規模であったことがわかるなど、古代史、古代建築史研究に資する重要な発見となった。

重要文化財(建造物)指定の答申

2008年10月

文化審議会(石沢良昭会長)は17日、石岡第一発電所施設(茨城県北茨城市、高萩市)や、石山寺(大津市)御影堂など建造物7件を新たに重要文化財に指定するよう塩谷文部科学相に答申した。また、本殿などが重要文化財に指定されている石清水八幡宮(京都府八幡市)について、周囲の摂社若宮社本殿など8棟を追加指定するよう答申した。

「崇高なる山水」展開催

2008年10月

五代・北宋初期の画家李成に始まり北宋中期に活躍した郭熙によって完成された大観的な山水画の誕生とその受容の諸相を約70点の作品によって跡づける「崇高なる山水―中国・朝鮮・李郭系山水画の系譜」展が11日から11月16日まで大和文華館で開催された。第一章「李郭派山水の誕生―宋から元へ」、第二章「李郭派山水の展開―高麗から朝鮮王朝へ」、第三章「李郭派山水の受容と復興―明清時代―」で構成され、東洋の山水表現の源とも言われ、我国の水墨画の展開においても重要な位置にあった李郭派を今日の視点からとらえる充実した展観となった。

第20回国華賞受賞者決定

2008年09月

日本および東洋美術に関する優れた研究に対して贈られる国華賞(主催:国華社、朝日新聞社)の第20回目の受賞者が発表された。推薦のあった単行図書、定期刊行物掲載論文、展覧会図録18件のなかから、相沢正彦・橋本慎司『関東水墨画―型とイメージの系譜』(国書刊行会)、日高薫『異国の表象―近世輸出漆器の創造力』(ブリュッケ)、浅野秀剛・田辺昌子『鳥居清長―江戸のヴィーナス誕生』(千葉市美術館)が受賞者に選ばれた。展覧会図録を対象とする受賞は今年度が初めてとなった。

メセナ大賞受賞者決定

2008年09月

企業メセナ協議会は29日、芸術文化振興に貢献した企業や団体を表彰する「メセナアワード2008」の受賞者を発表した。美術関係では、「サントリー美術館の運営と活動」がメセナ大賞を受賞した。

登録有形文化財(建造物)指定の答申

2008年09月

文化審議会(石沢良昭会長)は26日、明治期に来日して活躍した米国人建築家ヴォーリズ設計の日本福音ルーテル市川教会など、21都道府県に所在する110件の建造物を新たに登録有形文化財に登録するよう、塩谷文部科学相に答申した。これで有形登録文化財(建造物)の登録は1289件となった。

第20回世界文化賞受賞者発表

2008年09月

優れた芸術の創造者たちを顕彰する高松宮殿下記念世界文化賞(財団法人日本美術協会主催)の第20回目の受賞者が16日に発表された。美術関係では、絵画部門でリチャード・ハミルトン(イギリス、86)、彫刻部門でイリヤ・カバコフ(ロシア、74)とエミリア・カバコフ(62)、建築部門でピーター・ズントー(スイス、65)が選ばれた。授賞式は10月15日、東京赤坂の明治記念館で行なわれた。

横浜トリエンナーレ2008開幕

2008年09月

日本最大級の現代アートの国際展として2001年に始まった横浜トリエンナーレ(主催:国際交流基金、横浜市、NHK、朝日新聞社、同展組織委員会)が横浜埠頭の新港ピア、日本郵船海岸通倉庫、三渓園など8箇所を会場に13日から11月30日までの会期で開かれた。水沢勉が総合ディレクターをつとめ、26カ国・地域から71名のアーティストが参加した。展覧会のテーマは「タイムクレヴァス(時の裂け目)」で、ビエンナーレ等の国際展に認められるようになった定型化を破り、「時間」に着目して、日常の時間に流されることなく、時間の裂け目を覗き込む体験の場を提示することが目指された。インスタレーション、映像作品が多く出展されたほか、パフォーマンスが数多く組み込まれていることが、シンガポール、上海、光州、釜山で同時期に開催されるビエンナーレと比較して、ひとつの特色となった。

「五姓田のすべて―近代絵画への架け橋」展開催

2008年08月

幕末期から横浜で活躍した初代五姓田芳柳に始まる洋風絵画の一派五姓田派を総合的にとらえようとする「五姓田のすべて」展が神奈川県立歴史博物館で9日から開催された(9月28日まで)。「五姓田派誕生」「五姓田家の絵師たち」「五姓田派を支えた絵師たち」「拡散する五姓田派」「技術伝承」の5章構成で、これまで個々に紹介されてきた五姓田派の画家たちの作品がデッサン、写生図から油彩画まで展示されたほか、絵手本や教科書等も紹介され、幕末明治初期の西洋絵画受容の一側面を浮彫にする展観となった。同展は岡山県立美術館に巡回した(10月7日から11月9日)。

東京都庭園美術館建て替え決定

2008年08月

都の文化振興策について検討する知事の付属機関「東京都芸術文化評議会」は27日、東京都庭園美術館新館(港区白金)の建て替えを決定した。同美術館には1933年に建築され、都の有形文化財となっている本館と1963年竣工の新館があり、建て替えられるのは事務室、ホールなどとして使用されている新館。耐震診断の結果、新館が耐震指標を下回ったためにこの決定となった。

西洋美術振興財団賞受賞者決定

2008年08月

国内の美術館で開催され、西洋美術の理解や研究発展に寄与した西洋美術展を企画した個人、団体を顕彰する西洋美術振興財団賞の受賞者が決定した。学術賞に千代章一郎・林美佐・山名善之「ル・コルビュジエ 建築とアート、その創造の軌跡」展(森美術館)、南嶌宏「ATTITUDE 2007 人間の家―真に歓喜に値するもの」展(熊本市現代美術館)が選ばれ、文化振興賞に淡交社美術企画部が「マルレーネ・デュマス ブロークン・ホワイト」展(東京都現代美術館、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)によって選ばれた。

人間国宝認定の答申

2008年07月

文化審議会(石沢良昭会長)は18日、6名を新たに重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定するよう渡海文部科学相に答申した。美術関係では、木版摺更紗の鈴木滋人(54)、蒔絵の室瀬和美(57)、?漆の増村紀一郎(66)、彫金の桂盛仁(63)が選ばれた。木版摺更紗での認定は初めて。これによって人間国宝は芸能58名、工芸技術59名の117名(重複認定者が1名いるため実質は116名)となった。

「石山寺と湖南の仏像」展開催

2008年07月

古来、近江と南都の文化をつなぐ役割を負ってきた石山寺を中心とする湖南地域、瀬田川流域、田原道沿道地域に現存する仏像や、石山寺本尊との関連が認められる諸像を集めた「石山寺と湖南の仏像―近江と南都を結ぶ仏の道―」展が13日から大津市歴史博物館で開催された(8月24日まで)。「古代の北陸道」「石山寺の仏像」「瀬田川・田原道(旧東山道)沿いの大津市南部の仏像」「瀬田川・田原道(旧東山道)の仏像」「奈良からの影響」の5章で構成され、飛鳥時代から江戸時代までの仏像、絵画、文書等101点が展観された。人と物の往来と文化の伝播を作品によって跡づける興味深い企画となった。 

対決―巨匠たちの日本美術展開催

2008年07月

日本美術の研究誌『国華』が岡倉天心らによって1889(明治22)年に創刊されて今年で120年になるのを記念して、「創刊記念『国華』120周年・朝日新聞130周年」と銘打ち、中世から近代に至る日本美術の巨匠たちをその作品によって「対決」させる展覧会が東京国立博物館で開催された。運慶と快慶、伊藤若冲と曽我蕭白、池大雅と与謝蕪村、喜多川歌麿と東洲斎写楽など同時代に活躍した作家だけでなく、後代の絵師が先達に私淑して学んだ雪舟等楊と雪村周継、俵屋宗達と尾形光琳、また、師弟関係にあった円山応挙と長沢芦雪なども含む12組24名による110件の作品で構成され、国宝10件、重要文化財39件を含む大規模な展観となった。近年行方不明ながら狩野永徳筆の可能性が指摘され、当年に改めて所在が確認されて注目を集めていた原三渓旧蔵「松に叭叭鳥・柳に白鷺図屏風」が出陳されたことでも話題となった。

登録有形文化財(建造物)指定の答申

2008年06月

文化審議会(石沢良昭会長)は20日、丹下健三設計による「墨会館」(愛知県一宮市)など23都道府県に所在する170件の建造物を登録有形文化財に指定するよう渡海文部科学相に答申した。これによって建造物の登録有形文化財は7179件となった。

岩手宮城内陸地震による文化財被害

2008年06月

14日午前8時43分に岩手県内陸南部で発生したマグニチュード7.2の地震により仙台市の陸奥国分寺薬師堂の欄間が落ちるなど国指定の重要文化財や史跡など24件に被害が生じたことが両県の教育委員会の調査で判明した。

重要文化財指定(史跡)の答申

2008年05月

文化審議会(石沢良昭会長)は16日、金沢城跡(金沢市)など8件を史跡に、蕨野の棚田(佐賀県唐津市)など2件を重要文化的景観に、長崎市の平和公園など12件を登録記念物に指定するよう、渡海文部科学相に答申した。

狩野永徳筆の屏風確認される

2008年05月

狩野派二代目の絵師元信の作品とされ、数十年にわたり行方不明であった「松に叭叭鳥・柳に白鷺図屏風」の存在が確認され、再調査によって安土桃山時代の代表的絵師である狩野永徳の作品と判明した。実業家原三渓の旧蔵品で原家の売立目録「松風閣蔵品展観図録」に掲載されて以降、行方不明となっていた。

読売あをによし賞受賞者決定

2008年05月

文化財保存・修復に優れた業績を残した人を顕彰するあをによし賞の第二回目の受賞者に、茅葺き棟梁でこの分野では唯一の国選定保存技術保持者の岡田隆蔵(81)、和紙の調査や復元を行ってきた和紙技術研究者の大川昭典(65)が選ばれた。また、財団法人中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所が特別賞を受賞した。海外遺跡での発掘調査や現地の人たちと進める保存活動が認められたもの。

コロー展開催

2008年04月

19世紀半ばに活躍し、印象派や立体派の画家たちにまで連なる絵画の変革をもたらしたカミーユ・コローの油彩画約80点を展観する「コロー 光と追憶の変奏曲」展が14日から国立西洋美術館で開催された。1章「初期の作品とイタリア」、2章「フランス各地の田園風景とアトリエでの制作」、3章「フレーミングと空間、パノラマ風景と遠近法的風景」、4章「樹木のカーテン、舞台の幕」、5章「ミューズとニンフたち、そして音楽」、6章「私は目も心も使って解釈する」の構成で、ルーブル美術館をはじめ、欧米各国から作品が集められ、アカデミックな画風から、写実と詩情が融合された画風への展開が跡づけられる展観となった。同展は神戸市立博物館に巡回した(9月13日から12月7日)。

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