- 本データベースは東京文化財研究所刊行の『日本美術年鑑』に掲載された彙報・年史記事を網羅したものです。
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2007年04月 江戸時代、天明期(1781-89)を代表する浮世絵師鳥居清長の錦絵を中心に国内外の優品約270点を展示する「鳥居清長 江戸のヴィーナス誕生」展が千葉市美術館で28日から開催された(6月10日まで)。第一章「浮世絵デビュー」、第二章「江戸のヴィーナス誕生」、第三章「ワイド画面の美人群像」、第四章「江戸の粋」、第五章「役者絵と出語り図」という編年的な構成で、清長が錦絵の世界にデビューしてから、鳥居家の家業を継ぎ、絵看板や番付制作に力を注ぐようになる晩年までを、総合的にとらえる初めての試みとなった。
2007年04月 2007年に市制施行100周年を迎えた横須賀市がその記念事業として準備を進めてきた横須賀美術館(神奈川県横須賀市鴨居4-1、島田章三館長)が28日に開館した。山本理顕の設計になり、地下2階、地上2階、延床面積約1万2000平方メートル。環境と融合した美術館活動が目指された開放的な空間で、屋上庭園から建物後方の山と海が一望できる。横須賀ゆかりの作家、海を描いた作品、日本近現代美術を概観できる作品を収集対象とし、地元ゆかりの画家朝井閑右衛門の遺作が1996年に一括して寄贈されたことが美術館設置の契機となったのを記念して朝井閑右衛門記念室が設けられ、また、1998年にやはりゆかりの挿絵作家谷内六郎の作品が多数寄贈されたことからそれらの作品を常設展示する谷内六郎館も併設された。開館記念展は「近代日本美術を俯瞰する」展(28日から7月8日まで)。
2007年04月 文化審議会(石沢良昭会長)は20日、隅田川にかかる清洲橋、永代橋、勝鬨橋や現存最古の幼稚園建築である愛珠幼稚園園舎(大阪市)など11件を重要文化財に指定するよう伊吹文部科学相に答申した。
2007年04月 パリのオルセー美術館との共同企画により97点のモネの作品と、モネの遺産を展開させた20世紀作家の26点の作品を展観する大規模な展覧会が4月7日から7月2日まで国立新美術館で開催された。モネ作品は第1章「近代生活」、第2章「印象」、第3章「構図」、第4章「連作」、第5章「睡蓮/庭」で構成され、編年的な作風の変化を踏まえながら、光、階調、色彩、簡素、ジャポニスム、平面的構成、リズム、形態、筆触といった造形的要素に注目したまとまりで展示され、第2部では、それらの造形要素の展開という視点から、モネの筆触や色面を展開させた抽象表現主義の作品や、連作に様々な表現を見出したジョゼフ・アルバースやリキテンスタインの作品などが展示された。
2007年04月 古代から自然の中に神を見出してきた日本人が、6世紀に大陸から伝来した仏教を受け入れ神仏習合というあらたな信仰世界を生み出し、広めていった過程を絵画、彫刻、書、金工品などで跡づける「神仏習合―かみとほとけが織りなす信仰の美―」展が4月7日から奈良国立博物館で開催された(5月27日まで)。第一章「神と仏の出会い」、第二章「神像の出現」、第三章「山神への祈り」、第四章「御霊信仰と神前読経」、第五章「社に参る僧侶たち」、第六章「本地垂迹―顕現する神と仏―」、第七章「宮曼荼羅の世界」、第八章「中世神道―伊勢をめぐる神仏習合―」、第九章「仏舎利を護持する神々」、第十章「神仏に捧げる芸能」の10章により構成され、4世紀から15世紀までを中心に205件の作品が出品された。神と仏の双方が信仰の対象であり続けてきた歴史を視覚的資料でたどる意義深い展観となった。
2007年03月 1961年に「生活の中の美」を主要なコンセプトに東京・丸の内に開館したサントリー美術館が30日、六本木に移転してリニューアル・オープンした。隈研吾の設計により「都市の中の居間」を志向した建物で、地上6階、地下3階、展示室総面積約1000平方メートル。開館記念展は「日本を祝う」で6月3日まで開催された。
2007年03月 1907年に広島に生まれた画家靉光の生誕100年を記念して、その画業を回顧する展覧会が東京国立近代美術館で30日から5月27日まで行なわれた。第1章「初期作品」、第2章「ライオン連作から≪眼のある風景」へ」、第3章「東洋画へのまなざし」、第4章「自画像連作へ」の構成で、初期から晩年まで119点の作品と34点の写生帖および資料を展観し、召集されて戦地で死去したことから神話化されてきた画業を再考する機会となった。
2007年03月 3月25日午前9時41分の石川県輪島市近海を震源地に発生した能登半島地震(マグニチュード6.9)によって重要文化財武田家住宅(富山県高岡市)の壁が剥落するなど、13件の国指定文化財に被害があった。文化庁は4月5日から文化財調査官2名を派遣して被害状況を調査し、復元方法を地元担当者と協議した。
2007年03月 2006年度に優れた作品を発表した中堅の写真家に贈られる土門拳賞の26回目の受賞者は中村征夫に決まった。受賞作は写真展「海中2万7000時間の旅」(東京都写真美術館)と写真集『海中2万7000時間の旅』(講談社)で、環境破壊の激しい東京湾の海中を30年間定点観測して撮影した作品の集大成となるもの。生態系に対する深い洞察に基づき、写真の記録性を重視した作風が評価された。
2007年03月 日本芸術院(三浦朱門院長)は23日、卓越した芸術作品や芸術の進歩に貢献した人に贈る日本芸術院賞の2006年度の受賞者10人を発表した。美術関係では、日本画家の土屋礼一(日展出品作「軍鶏」に対して)、洋画家の大津英敏(独立展出品作「朝陽巴里」に対して)、彫塑家の瀬戸剛(日展出品作「エチュード」に対して)、工芸家の森野泰明(日展出品作、扁壷「大地」に対して)、恩賜賞に書家の池田桂鳳(日展出品作「三諸」に対して)が選ばれた。
2007年03月 平成10年に神奈川県の称名寺子院光明院で発見された大威徳明王坐像が鎌倉時代の仏師運慶の作であることが確認された。この像は破損部分が多かったため、県立金沢文庫で調査、解体修理が進められていた。X線撮影などにより像内納入物が確認され、納入されていた文書に建保4(1216)年に鎌倉の将軍御所で養育係をつとめた「源氏大弐殿」が運慶に制作させた旨が記されており、面貌や作風などからも運慶の晩年の作と認められた。鎌倉幕府が運慶に仏像を制作させたことは記録上、確認されていたが、この像により作品の存在も明らかとなった。同作品は4月19日から金沢文庫で開催された「金沢文庫の仏像」展で初公開された。
2007年03月 ウフィツィ美術館が所蔵するレオナルド・ダ・ヴィンチ筆「受胎告知」を展示するとともに、手稿に関する近年の研究成果をパネルや映像で紹介する「レオナルド・ダ・ヴィンチ―天才の実像」展が20日から東京国立博物館で開催された(6月17日まで)。同館では1974年に「モナ・リザ」が展観されて以来のダ・ヴィンチ作品の展示となった。絵画制作の背景となったダ・ヴィンチのルネサンス人としての知的探求の様を手稿から分析し、天文学、物理学、解剖学、建築学など多くの分野で今日に連なる新たな知見を得ていたことを、模型や映像で多角的に検証し、会期中79万6000名にのぼる入場者数を記録した。
2007年03月 写真家木村伊兵衛の業績を記念し、優れた新人写真家に贈られる木村伊兵衛賞(朝日新聞社主催)の第32回目の受賞者に本城直季(写真集『small Planet』(2006年リトルモア刊)に対して)、梅佳代(写真集『うめめ』(2006年、リトルモア刊)に対して)が選ばれた。
2007年03月 文化庁は16日、芸術分野で優れた業績を上げた人に贈る2006年度芸術選奨受賞者27名を発表した。美術分野では洋画家遠藤彰子(作品「見しこと」)、彫刻家遠藤利克(作品「Trieb―振動(Rain Room)」、芸術振興分野でアートディレクター北川フラム(「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2006」)、文部科学大臣新人賞に美術分野で書家土橋靖子(本名呉靖子、「夏目漱石の句」)、芸術振興分野で空間デザイナー吉岡徳仁(Tokujin Yoshioka× Lexus L-finesse)が選ばれた。贈呈式は22日、都内のホテルで行なわれた。
2007年03月 文化審議会(石沢良昭会長)は16日、北海道函館市著保内野遺跡の土偶を国宝に、尾形光琳、乾山が合作した「銹絵松鶴図六角皿」など30件の美術工芸品を重要文化財に指定するよう伊吹文明文部科学相に答申した。北海道所在の文化財が国宝になるのは初めて。また、文化審議会は、登録有形文化財の建造物分野に209件、美術工芸品分野に2件を新規に登録するよう答申した。これにより建造物の登録文化財は6273件、美術工芸品では6件となる。
2007年03月 平面美術の若手作家を対象に40歳以下の将来性ある作家の支援を目指したVOCA展が15日から上野の森美術館で開催された(30日まで)。同展第14回目の受賞者として、最高賞のVOCA賞に山本太郎「白梅点字ブロック図屏風」が、奨励賞に池田光弘、傍嶋崇が、佳作賞に田口和奈、中岡真珠美がそれぞれ選ばれた。
2007年02月 政府は9日、独立行政法人国立博物館法の一部を改正する法案を閣議決定した。この決定により、4月1日より国立博物館と文化財研究所の2法人が統合され独立行政法人国立文化財機構が誕生した。
2007年02月 特別史跡キトラ古墳(奈良県明日香村)の壁画保存問題で、文化庁の調査委員会は7日、石室南壁の朱雀を剥ぎ取ることを正式に決定した。作業は15日に実施された。
2007年02月 文化庁の平成19年(2007)度予算は、前年よりも1.0%(10億700万円)増額の1016億5500万円となった。昨年9月に発足した安倍晋三内閣の「美しい国」創り政策のもと、「文化力による地域づくり・国づくり」を目標に、1「文化芸術立国プロジェクトの推進」、2「文化財の次世代への継承と国際協力の推進」、3「文化芸術振興のための文化拠点の充実」を3大項目に掲げている。第1の大項目の内容として「文化芸術創造プランの推進」「日本文化の魅力発見・発信プランの推進」があげられ、アニメ、映画などのメディア芸術の振興等が具体的に盛り込まれている。第2の大項目は「文化財の保存整備・活用」「文化財の国際協力の推進」を柱としており、文化遺産保護国際貢献事業のための予算が倍増されている点が注目される。第3の大項目は「新たな文化拠点の整備」として京都国立博物館平常展示館建替、国立新美術館整備推進等を、「美術館・博物館等活動の推進」として国立美術館運営、日本芸術文化振興会運営等を主な事業にあげている。
2007年01月 井原市出身の木彫家平櫛田中の100歳を記念して井原市が創設し、優れた彫刻を制作した作家に隔年で贈られる平櫛田中賞の第23回目の受賞者に保田春彦が選ばれた。過去2年間に発表された作品が高く評価されたもの。