岡鹿之助展開催

2008年04月

点描による温雅な画風で知られる岡鹿之助の作品70点により、その画業を再考する「岡鹿之助展」がブリヂストン美術館で26日から開催された(7月6日まで)。描かれた題材によって「海」「運河」「献花」「雪」「灯台」「発電所」「群落と廃墟」「城館と礼拝堂」「融合」という9つのテーマ別に作品を分類し、1924年の渡欧後、約3年で画風を確立してから、自身の作品の引用というべき制作を繰り返し、同じ題材によって造形を熟成させていく画業が新たな角度から跡づけられた。

「小袖―江戸のオートクチュール」展開催

2008年04月

松坂屋京都染織参考館の収蔵品のなかから小袖を中心に装身具や調度品など約300点を展観する「小袖―江戸のオートクチュール」展が26日から名古屋市博物館で行なわれた。1611(慶長16)年に呉服商として創業した松坂屋が意匠の参考品として収集してきたコレクションの一部が初めて公開されたもので、第一章「小袖もよう アートをまとう」、第二章「装いをめぐるとき 時間・季節・機会」、第三章「小袖へのまなざし」、第四章「コレクション探訪」の構成で秘蔵の優品が多数出品され、江戸期における絵画と工芸の関係を考える上でも重要な機会となった。同展はサントリー美術館(7月26日から9月21日)、大阪市立美術館(09年4月14日から5月31日)に巡回した。

源氏物語千年紀展開催

2008年04月

「紫式部日記」の1008(寛弘5)年の条に宮中でこの物語が広く知られていたことが初めて登場するところから、今年を源氏物語千年紀とし、関連する展覧会が各地で開催されたが、そのひとつとして絵画作品によって登場人物や名場面のみならず、創作の背景となった平安文化や、物語の成立から今日までの伝承過程を紹介する「源氏物語千年紀展」が京都府京都文化博物館で26日から開催された(6月8日まで)。プロローグ「源氏物語への誘い」、第一章「作者・紫式部」、第二章「源氏物語の世界」、第三章「写本 その営と美」、第四章「源氏物語の楽しみ 享受の歴史」、エピローグ「源氏物語の雅」の構成で、重要文化財約40点を含む157件の作品、資料が展示され、物語と人々との千年の関わりが示される充実した展観となった。

青森県十和田市現代美術館開館

2008年04月

美術館を中心に、十和田市内中心部の官庁街通り全体にアート空間を創出する「Arts Towada」(野外芸術文化ゾーン)計画のもとに、26日、十和田市現代美術館が開館した。西沢立衛の設計になり延べ床面積2078.38㎡、常設展示室、企画展示室のほか市民活動、屋外イヴェントのスペースを持つ。国内外の現代作家21名による22点を恒久設置し、現代アート作品を体験する場となる一方で、地域の文化活動を活性化する拠点となることをめざす。開館展は「オノ・ヨーコ 入り口」展で7月6日まで開催された。

重要文化財指定(建造物)の答申

2008年04月

文化審議会(石沢良昭会長)は18日、重要文化財の青井阿蘇神社(熊本県人吉市)を国宝に、シャトーカミヤ旧醸造施設(茨城県牛久市)など10件を重要文化財に指定するよう、渡海文部科学相に答申した。また、重要伝統的建造物群保存地区として長崎県平戸市大島村神浦地区など3箇所を新たに指定するよう答申した。

美術家たちの「南洋群島」展開催

2008年04月

第一次大戦勃発時に日本領となり「南洋群島」と呼ばれた島々に滞在し、島の風土や人々の暮らしに親しんで制作を行なった土方久功、杉浦佐助と杉浦の弟子である儀間比呂志に注目し、その作品と関連資料を展示する「美術家たちの『南洋群島』」展が町田市立国際版画美術館で12日から開催された(6月22日まで)。1990年代から盛んになった第二次世界大戦中の日本美術の研究によって当時の日本が植民地としていた地域の美術に関する研究が行なわれるようになったのを背景に、「南洋群島」での日本人作家による制作を調査し、表現の特質や時代精神に迫ろうとする意欲的な展観となった。同展は高知県立美術館(7月13日から9月15日)、沖縄県立博物館・美術館(11月7日から09年1月18日)に巡回した。

暁斎展開催

2008年04月

幕末明治期に東京で活躍した画家河鍋暁斎の没後120年を記念して、その画業を回顧する「絵画の冒険者 暁斎 近代へ架ける橋」展が京都国立博物館で8日から開催された(5月11日まで)。国内外に所蔵される暁斎の肉筆画135点を「「狂斎」の時代」、「冥界・異界、鬼神・幽霊」、「少女たつへの鎮魂歌」、「巨大画面への挑戦」、「森羅万象」、「笑いの絵画」、「物語、年中行事」、「暁斎の真骨頂」の8章に分けて展観し、幅広いモティーフを多様な画風で描きこなした暁斎の強い個性が際立つ展示となった。

滋賀県立琵琶湖文化館休館

2008年03月

1961(昭和36)年に滋賀県民や地元企業からの寄附によって総合博物館として開館し、仏教美術の優品を数多く所蔵することで知られる琵琶湖文化館は、2007年12月の滋賀県議会において県教育委員会から出された展示公開の中止(休館)の方針に従って、31日から休館することとなった。県財政事情の悪化、建物の老朽化、耐震性の問題、入館者数の減少などが理由としてあげられた。関連学会などから存続を求める要望書が提出されたが、収蔵品特別公開「近江の美術 第Ⅲ期仏教美術の精華」(3月4日から30日)が休館前の最後の企画展となった。しかし、従来行なってきた文化財講座を近隣の施設で開催するほか、ホームページ上に館蔵の名品を紹介するコーナーを新設するなど、展示を行なわない博物館としての活動を開始した。

生誕100年東山魁夷展開催

2008年03月

日展で活躍した日本画家東山魁夷の生誕100年を記念する展覧会が29日から5月18日まで東京国立近代美術館で開催された。東山の画業に迫ることを目指し、70年に渡る画業を7章に分けて展示。第1章「模索の時代」、第2章「東山芸術の確立」、第3章「ヨーロッパの風景」、第4章「日本の風景」、第5章「町・建物」、第6章「モノクロームと墨」、第7章「おわりなき旅」とし、これに加えて5つの特集展示「特集1ドイツ留学」「特集2〈自然の形象〉と〈たにま〉」「特集3白馬のいる風景」「特集4窓」「特集5唐招提寺の障壁画」を設け、造形の特色や特色ある主題などに迫る展観となった。同展は長野県信濃美術館(7月12日から8月31日)に巡回した。

日本芸術院賞受賞者決定

2008年03月

日本芸術院(三浦朱門院長)は28日、卓越した芸術作品や芸術の進歩に功績のあった人に贈る日本芸術院賞の2007年度の受賞者を発表した。美術関係では、清水達三(日本画、72、06年院展出品作「翠響」に対して)、藤森兼明(洋画、72、07年日展出品作「アドレーション サンビターレ」に対して)、神戸峰男(彫塑、63、07年日展出品作「朝」に対して)、杭迫柏樹(本名杭迫晴司、書、73、07年日展出品作「送茶」に対して)、鈴木了二(建築、63、04年完成の金刀比羅宮プロジェクトに対して)が受賞した。

国宝薬師寺展開催

2008年03月

710(和銅3)年の平城遷都から1300年を記念する催しの先陣を切って「国宝 薬師寺展」が25日から東京国立博物館で開催された(6月8日まで)。「薬師寺伽藍を行く」「草創期の薬師寺」「玄奘三蔵と慈恩大師」「国宝吉祥天像」の4章で構成され、薬師寺金堂の日光・月光菩薩が出品されて話題となった。

重要文化財指定(考古、美術工芸品)の答申

2008年03月

文化審議会(石沢良昭会長)は21日、島根県雲南市(旧加茂町)の加茂岩倉遺跡から出土した銅鐸39点を国宝に、岩佐勝以筆紙本著色梓弓図ほか31点の美術工芸品を重要文化財に指定するよう、渡海文部科学相に答申した。これで美術工芸品の重要文化財は1万311件、うち国宝は862件となった。

与謝蕪村展開催

2008年03月

18世紀に優れた俳句、書画を残した与謝蕪村のしごとを総合的にとらえようとする「与謝蕪村―翔けめぐる創意」展が15日からMIHO MUSEUMで開催された。第一章「芭蕉へのまなざし」、第二章「故郷への道行」、第三章「放浪の雲水」、第四章「新たな出発」、第五章「蕪村をめぐる人々」、第六章「翔けめぐる創意」の構成で、俳句にも書画にも秀でた多才な活動を約150点の作品、資料で跡づける充実した展観となった。

第27回土門拳賞受賞者決定

2008年03月

前年度に優れた作品を発表した写真家に贈られる土門拳賞の第27回目の受賞者は、土田ヒロミに決定した。1968年から現代に至る40余年の仕事を集大成した展覧会「土田ヒロミのニッポン」展(東京都写真美術館)が評価されたもの。

第33回木村伊兵衛賞受賞者決定

2008年03月

写真家木村伊兵衛の業績を記念し、優れた新人写真家に贈られる木村伊兵衛賞(朝日新聞社主催)の第33回目の受賞者は岡田敦(28、写真集『I am』(赤々舎)に対して)と志賀理江子(27、写真集『Canary』(赤々舎)『Lilly』(アートビートパブリッシャーズ)に対して)の二人に決定した。

運慶の木造大日如来坐像競売に付される

2008年03月

日本時間3月19日未明にニューヨークで開催されたクリスティーズの競売に鎌倉時代に活躍した仏師運慶の作と推定される大日如来坐像が出品され、過去最高の1280万ドルで日本の百貨店三越が宗教法人真如苑の依頼を受けて落札した。この作品は檜材、表面漆箔仕上げで、1190年代に運慶によって制作された可能性が高いとされる。文化庁はこの作品を重要文化財に指定しようとしたが、所蔵者の合意を得られず、指定されていなかったため海外市場に出たもので、文化財保護制度のあり方に疑問も呈せられた。真如苑はこの像を東京国立博物館に寄託し、同館で6月10日から9月21日まで公開された。

楳亭金谷展開催

2008年03月

与謝蕪村に学んで大津で活躍し近江蕪村と呼ばれた紀楳亭と横井金谷の画業を展観する「楳亭・金谷―近江蕪村と呼ばれた画家」展が大津市歴史博物館で6日から4月20日まで開催された。楳亭は松村呉春とならぶ蕪村の門弟であり、金谷は蕪村に私淑して地元に多くの作品を残した。楳亭、金谷の作品各約150点を集めた本展は、蕪村の画業が次世代にどのように受容されたかを考察する好機となった。

「ウルビーノのヴィーナス」展開催

2008年03月

愛と美の女神ヴィーナスが造形物にいかにあらわされてきたかを古代ローマからルネサンスまで跡づける「ウルビーノのヴィーナス―古代からルネサンス、美の女神の系譜」展が4日から5月18日まで国立西洋美術館で開催された。フィレンツェをはじめとするイタリア各地の美術館、博物館等から約80点の絵画、彫刻、工芸作品が出品され、ティツィアーノの「ウルビーノのヴィーナス」が初めて欧州以外の地で展示された。「ヴィーナスの誕生―古代ギリシアとローマ」、「ヴィーナスの復興―15世紀イタリア」、「《ウルビーノのヴィーナス》と“横たわる裸婦”の図像」、「“ヴィーナスとアドニス”と“パリスの審判”」、「ヴィーナス像の展開―マニエリスムから初期バロックまで」の5章で構成され、それぞれの作品においてヴィーナスに託された「美」の多様性が示される意義深い展観となった。

文化庁予算決定

2008年02月

福田新内閣での初めての予算編成により2008(平成20)年度の文化庁予算が決定した。前年度より0.1%増、1億円増額の1017億5500万円で、「文化芸術立国プロジェクトの推進」「文化財の次世代への継承と国際協力の推進」「文化芸術拠点の充実」を3大項目とし、「舞台芸術振興の先導モデル推進事業」「アートマネジメント人材の育成」「戦略的二国間文化遺産国際交流推進事業」「アジア美術館長会議」に新規に予算が組まれたほか、「メディア芸術振興総合プログラム」「感性豊かな文化の担い手育成プランの推進―こどもの芸術文化体験活動の推進」などが大幅に増額となった。

キトラ古墳「日像」剥ぎ取り

2008年01月

文化庁は25日、奈良県明日香村の国特別史跡であるキトラ古墳の石室天井に描かれた天文図から太陽を表す「日像」とその近くの「星宿」など3星座、あわせて5箇所を剥ぎ取ったと発表した。微生物の影響により下地のしっくいの劣化が周囲に及んだため、この処置が行われたもの。

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