丹下健三

没年月日:2005/03/22
分野:, (建)
読み:たんげけんぞう

 建築家の丹下健三は3月22日午前2時、心不全のため東京都港区の自宅で死去した。享年91。ケンゾウ・タンゲとして日本のみならず世界でもトップクラスの建築家・都市計画家として知られた丹下健三は、1913(大正2)年大阪府堺市に生まれた。父親の転勤に伴って生後まもなく中国に移り、漢口を経て上海へ、20年上海日本人尋常小学校2年生の時に父親の出身地愛媛県今治市へ戻り、26年旧制今治中学入学、30年旧制広島高等学校理科甲類に進学。この旧制広島高校時代に芸術雑誌でみたフランス人建築家の巨匠ル・コルビジェの作品に感動したことが建築家を志すきっかけとなった。1935(昭和10)年東京帝国大学工学部建築学科入学、38年卒業、前川国男建築事務所に入る。41年東京帝国大学大学院入学、46年大学院修了、同年東京帝国大学工学部建築学科助教授。59年工学博士。大学院在学中の42年に大東亜建設記念営造計画コンペ、翌43年に在盤谷日本文化会館計画コンペで続けて一等入選。さらに49年広島市主催の広島平和記念公園コンペでも一等入選(55年完成)。51年ロンドンで開催された第8回CIAM(国際近代建築会議)に招待されて広島の計画を発表、日本を代表する建築家として海外でも知られるようになった。52年東京都庁舎コンペ一等入選(57年完成)、57年倉吉市庁舎、58年香川県庁舎、60年倉敷市庁舎。柱と梁、庇と縁の直線の構成から生まれる美、伊勢神宮や桂離宮などに代表される日本の伝統建築の美しさと力強さをモダニズムに融合させた斬新なデザインを次々と発表し、モダニズムを主導した欧米の建築界でも高い評価を受けてその一翼を担い、戦後日本の建築家の国際社会での地位確保に貢献した。関心は個別の建築デザインに止まらず、都市計画にも及んだ。61年1月「東京計画1960」発表。都市を有機体と考え、東京湾を横断する都市軸上に線上に発展する開いた都市を構想した。機能的アプローチから構造的アプローチへの転換であったと語る。61年丹下健三・都市建築設計研究所開設。64年東京大学工学部都市工学科新設、教授就任。64年東京オリンピック開催、代表作となる代々木の国立屋内総合競技場が完成した。吊り構造という新しい構造形式を採用し、構造力学者坪井善勝の協力を得て生み出された画期的で象徴的な造形の建築は世界の注目を集めた。この頃のテーマは「空間と象徴」であり、同様な造形美を誇る東京カテドラル聖マリア大聖堂、香川県立体育館が同じ年に完成している。67年山梨文化会館では、東京計画1960で試みた構造的アプローチを単体の建築で実現させて、有機的に成長する建築を提案した。70年日本万国博覧会会場マスタープランを手がけて、名実ともに日本の戦後復興と高度経済成長時代を支えた建築家となった。海外では、66年ユーゴスラビア・スコピエ都市再建震計画競技設計一等入選、その後、世界各地で数多くの建築・都市計画を手がける。主なものに、ネパール・ルンビニ釈尊生誕地聖域計画(69年~)、伊ボローニャ・フィエラ地区センター計画(71年~)、アルジェリア・オラン総合大学計画(71年~)、クウェート国際空港(79年)、伊ナポリ新都心計画(80年~)、ナイジェリア新首都都心計画(81年~)、シリア・ダマスカス国民宮殿(81年)、サウジアラビア王国国家宮殿・国王宮殿、同キングファイサル財団本部(82年)、シンガポール、マレーシアでの一連の作品などがある。また最近の作品としては、1991(平成3)年東京都新庁舎、96年フジテレビ本社ビル、05年癌研究会有明病院などが知られ、最後まで建築界に刺戟を与え続けた。74年東京大学定年退官、名誉教授。79年文化功労者。80年文化勲章。94年勲一等瑞宝章。海外では、76年西独プール・ル・メリット勲章、77年フランス国家功労勲章コマンドール、78年メキシコアギラ・アステカ勲章、79年イタリア国家有功勲章コメンダトーレ、83年フランス芸術アカデミー会員、ペルー太陽勲章グラン・オフィシェル、84年イタリア国家有功勲章グラン・オフィシェル、フランス文化芸術勲章コマンドール、89年イタリアサボイア文化勲章、96年フランスレジオン・ドヌール勲章コマンドールなど。また世界中の大学から多くの名誉博士号を受けた。62年ドイツ・シュツットガルト工科大学名誉工学博士、64年イタリア・ミラノ工科大学名誉建築学博士、70年イギリス・シェフィールド大学名誉文学博士、71年アメリカ・ハーバード大学名誉芸術博士、78年アルゼンチン・ベェノスアイレス大学名誉教授、97年中国・清華大学名誉教授、など。 

出 典:『日本美術年鑑』平成18年版(383-384頁)
登録日:2014年10月27日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「丹下健三」『日本美術年鑑』平成18年版(383-384頁)
例)「丹下健三 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/28324.html(閲覧日 2024-12-05)

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