新潟県立近代美術館開館

1993年07月

平成3年7月に着工され、昨年12月に建物が完成し、本年4月に新潟市の新潟県美術博物館から美術部門が正式に移行し、開館にむけて準備をすすめていた新潟県立近代美術館(新潟県長岡市宮関町居掛)が、15日に開館。延床面積10723㎡、地上一部2階、地下1階の建物で、常設展示室3室、企画展示室1室、個人、団体向けのギャラリーの他、ハイビジョンギャラリー、講堂などを備えている。開館記念展として、近現代美術作品の一部が同美術館に引き継がれた旧大光コレクションから約200点を集めて、「大光コレクション展」(15日~9月5日)が開催された。

アンゼルムキーファー展

1993年06月

社会への深い洞察を制作によって発表してドイツのみならず世界でも高い評価を得ているアンゼルム・キーファーの日本での初めての個展が3日から開催された。第1会場を東京・池袋のセゾン美術館とし、東京・江東区の佐賀町エギジビット・スペースを第2会場として、1969年から92年に制作された油絵37点、水彩16点、彫刻3点、インスタレーション1点、本15点が展示された。会期中、作家自身が来日し、「アンゼルム・キーファー-アーティスト・トーク」も行なわれ、キーファーの本格的な紹介がなされる機会となった。

MOA岡田茂吉賞決定

1993年06月

日本画と日本美術工芸の分野における業績を顕彰するMOA岡田茂吉賞(MOA美術館主催)の第6回受賞者は、大賞にガラス工芸の加藤卓男、優秀賞に陶芸の楽吉左衛門が選ばれた。同賞展は9月18日から10月13日までMOA美術館で開かれた。

ウィーン国立工芸美術館に狩野派筆の「唐獅子図」

1993年05月

オーストリアのウィーン国立工芸美術館に、江戸期に来日したシーボルトの次男ハインリヒ・フォン・シーボルト(1852-1908)の旧蔵品で「芝の寺から」と伝えられる「唐獅子図」2点が所蔵されていることが、欧州美術館所蔵日本美術品調査を行なっている講談社の調査団により確認された。木の板に金箔を貼り、岩絵具で描かれ、典型的な狩野派の画風を示す優品で、増上寺の徳川家霊廟壁画が廃仏毀釈などを背景に海外に流出したと見られる。

国際文化交流シンポジウム’93

1993年05月

昨年にひき続き、文化の国際協力の進路を検討する「国際文化交流シンポジウム’93」(主催=朝日新聞社、東京芸術大学、(財)芸術研究振興財団)が21日、東京・有楽町マリオンの朝日ホールで開かれた。「文化財の国際赤十字構想」の具体化を目指すもので、佐野文一郎(東京国立博物館)、ロバート・アダムス(米国スミソニアン研究所長官)、内田弘保(文化庁長官)など欧米・日本の美術館・博物館長ら10名がパネラーとなり、世界の文化財保護の状況、今後の課題等について協議した。

パリ日本文化祭

1993年04月

「文化間の対話-Dialogue of Cultures」をメインテーマに、日本の現代文化と世界各国の文化の相互作用を検証し、21世紀にむけて日本の役割をさぐろうとする多様な文化的催しが、パリで29日から5月15日まで行なわれた。勅使河原宏総合演出による「パリ大茶会」のほか、シンポジウム、絵画、書、写真、陶器、生花等の展観が行なわれ、大規模な文化交流の場となった。

明治村賞決定

1993年05月

明治時代を主題とする学術・芸術の功績を顕彰する明治村賞(財団法人明治村主催)の第19回の受賞者は、歴史家の萩原延寿、比較文化史研究家の芳賀徹に決まった。贈呈式は6月15日、東京・丸の内の東京会館で行なわれた。

重要文化財(建造物)新指定、「近代化遺産」を含む

1993年05月

文化財保護審議会(鈴木勲会長)は14日、青森県の長勝寺本堂、庫裏など10件を新たに重要文化財に指定するよう森山文相に答申した。その中の秋田市の藤倉水源地水道施設(秋田市水道局)と群馬県の碓氷峠鉄道施設(国鉄清算事業団)は、文化庁が平成元年から調査を進めてきた「近代化の遺産」としての初めての指定となる。今後も各都道府県1件程度、「近代化の遺産」を重要文化財に指定していく方針。また同時に、山岳信仰の宿場として知られる山梨県早川町赤沢伝統建造物群保存地区を重要伝統的建造物群保存地区に指定するよう答申がなされた。 

文化財新指定(美術工芸品、史跡、名勝)

1993年04月

文化財保護審議会(鈴木勲会長)は16日、奈良市円成寺の運慶作「木造大日如来坐像」を国宝に、京都国立博物館蔵の雪村筆「紙本墨画淡彩夏冬山水図」など38件を重要文化財に、史跡8件、名勝1件、天然記念物2件を新たに指定するよう森山文相に答申した。これで国指定の重要文化財は9684件(うち国宝は830件)となった。

文化財保護企画特別委員会中間報告

1993年04月

文化財保護の現状と指針を検討してきた文化財保護企画特別委員会(座長=加藤秀俊放送大学教育開発センター所長)は、16日、約1年間の成果を文化財保護審議会に中間報告した。この報告は「時代の変化に対応した文化財保護施策の改善充実」と題され、国の指定品以外の文化財を登録しておき、現状変更、処分に際して届け出を義務づける「登録制度」が提言されたほか、文化財保存修復士、文化財修理技能者(いずれも仮称)の資格制度の導入、「国際文化財保存修復協力センター(仮称)」設置構想等が提示された。

「パウルクレーの芸術」展

1993年04月

1987年にMoMA(ニューヨーク近代美術館)、クリーヴランド美術館、ベルン美術館で開催された回顧展以来、作品保存の見地からまとまった作品貸出を行なってこなかったパウル・クレー財団が、1991年に開始した全作品カタログ刊行事業に寄与するものとして十数年ぶりに多数の作品を出品する本格的回顧展「パウル・クレーの芸術」展が、2日から愛知県美術館で開かれた(~5.23)。油彩、水彩、素描等総計276点が展示され、制作の展開が跡づけられた。同展は山口県立美術館(6.1~7.25)、Bunkamuraザ・ミュージアム(7.31~9.21)に巡回した。

「大和古寺の仏たち」展、「鎌倉仏教高僧とその美術」展

1993年04月

日本の仏教美術の宝庫である大和諸寺から仏像42件を出品、展示する「大和古寺の仏たち」展が、13日より東京国立博物館で開かれた(~5.23)。飛鳥時代から鎌倉時代までの国宝、重要文化財が一堂に会する充実した展観となった。また、日本の仏教史上で画期的な一時期である鎌倉時代を、高僧の筆跡、肖像のほか関連する美術作品で跡づける「鎌倉仏教 高僧とその美術」展が24日から5月30日まで奈良国立博物館で開かれた。「南都仏教の復興」「新仏教の誕生と展開」「禅宗の受容と進展」の3部で構成し139点が展示された。

自治省、公立美術館の全国的ネットワーク後援

1993年03月

近年の相つぐ美術館新設に伴い、公立美術館相互の情報交換、作品貸借をより有効に行なうことを目指した全国的ネットワークづくりに自治省が乗り出した。同省ではすでに昨年12月に「公立美術館等の活性化に関する調査・研究会」(座長・前川誠郎新潟県美術博物館館長)を設置。85年末に131館であった公立館が90年末には180館にのぼり、同時期に相似た展覧会企画がかちあうようになったこと等の問題を解決し、複数館で資金等を負担する共同事業として大規模な展覧会を巡回する等の方向をさぐる。自治省では共同事業に地方交付税措置等の形で資金援助する制度も新設する意向である。

五島記念文化賞決定

1993年04月

美術、オペラの分野での新人の活躍を顕彰する五島記念文化賞(五島記念文化財団主催)の第4回目の受賞者が決定。美術関係では、美術新人賞に矢延憲司(彫刻)、岡村桂三郎(日本画)、土屋公雄(彫刻)、神内康年(陶芸)が選ばれた。

ルーブル美術館200年展

1993年03月

今年で開館200年を迎えるルーブル美術館の30万点におよぶ所蔵品の中からヨーロッパ絵画の精華を示す95点を展示する「ループル美術館200年展」が20日から神戸市立博物館で開かれた(~5.9)。「王室コレクション」「フランス革命から第2帝政末にいたる芸術政策」「大コレクター、ルーブル友の会による寄贈」「歴代学芸部長の選択と代物弁済」「描かれたルーブルの歴史」の5部で構成し、ルーブル美術館の足跡と、16世紀から19世紀に至る西欧絵画の流れを展観する充実した展覧会となった。

日本芸術院賞決定

1993年03月

日本芸術院(犬丸直院長)は24日、1992年度(第49回)の日本芸術院賞に10名を内定。美術関係では恩賜賞・日本芸術院賞に洋画家の藤本東一良(第24回日展出品作「展望台のユーカリ」に対して)、日本芸術院賞に日本画の岩沢重夫(第24回日展出品作「溪韻」に対して)、工芸の中井貞次(第23回日展出品作「原生雨林」に対して)、書の尾崎邑鵬(第24回日展出品作「杜少陵詩」に対して)、建築の安藤忠雄(姫路文学館などのコンクリートの素材を生かした一連の建築設計に対して)が選ばれた。授賞式は5月31日、東京・上野の日本芸術院会館で行なわれた。

江戸東京博物館開館

1993年03月

27日、東京・両国に江戸東京博物館が開館。地下1階地上7階で建築物の復元展示など大がかりな展示を特色とする。建設費約590億円、敷地面積約3万平方メートル、延べ床面積は48000平方メートルで、所蔵品公開や企画展のための展示室のほかに映像ライブラリー、映像ホール、伝統芸能鑑賞ホール、江戸東京ひろばなど多様な機能をあわせ持つ。「江戸から東京へ続く歴史と文化の移り変わりを一望できる」施設をめざす。近年、江戸時代への関心が高まっているのに加え、同館開館を記念して「21世紀東京新聞フォーラムシンポジウム」等も開かれ、28日の一般公開開始から1週間の入場者は83500人にのぼった。

平木浮世絵美術館オープン

1993年03月

浮世絵専門の美術館として親しまれてきたリッカー美術館(運営・平木浮世絵財団)が東京・銀座のリッカービルから横浜そごう百貨店内に移転し、平木浮世絵美術館としてオープン。故・平木信二の蒐集品に戦前の三原、斎藤コレクションを加えた平木コレクションを所蔵する。開館記念展は「ドイツ ノイエ・ピナコテーク帰朝記念-浮世絵名品展」(3.4~4.12)。

人間国宝指定

1993年03月

文化財保護審議会(鈴木勲会長)は19日、新たに3名を重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定するよう森山文相に答申した。美術関係では練上手の松井美明(本名松井康成)、鋳金の斎藤明が認定されることとなり、これで人間国宝は49分野の70名となった。また、工芸技術の部として伊勢型紙を指定し、伊勢型紙技術保存会を保持団体として認定すること、規矩術を選定し、その保持者に持田武夫を認定、また、既に選定されている檜皮葺、柿葺の技術保持者に村上栄一を追加認定することもあわせて答申された。

芸術選奨文部大臣賞受賞者決定

1993年02月

平成4年度(第43回)芸術選奨文部大臣賞、同新人賞の受賞者が26日、文化庁によって発表された。美術関係では文部大臣賞にグラフィックデザイナー勝井三雄(ポスター「アイムヒア」の作風に対して)、美術史家森洋子(著作「ブリューゲルの諺の世界」に対して)、新人賞に内藤広(三重県鳥羽市の海の博物館に対して)、木下長宏(著作「思想史としてのゴッホ-複製受容と想像力」に対して)が選ばれた。

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