「日本美術の19世紀」展開催
1990年09月江戸、明治という従来の時代区分にとらわれず、19世紀を通じて日本美術の変化をとらえようとする「日本美術の19世紀」展が1日より30日まで兵庫県立近代美術館で開かれた。現行の「美術品」の規定にとらわれず、舶来の概念である「美術」が定着していく過程を物でたどる展観として注目された。
江戸、明治という従来の時代区分にとらわれず、19世紀を通じて日本美術の変化をとらえようとする「日本美術の19世紀」展が1日より30日まで兵庫県立近代美術館で開かれた。現行の「美術品」の規定にとらわれず、舶来の概念である「美術」が定着していく過程を物でたどる展観として注目された。
イタリア文化に関する優れた研究に対して贈られるマルコ・ポーロ賞の第13回目の受賞者は、佐々木英也『ジョットの研究-スクロヴェーニ礼拝堂壁画を中心として』(中央公論美術出版)に決定した。
近年、海外での大規模な文化イベントに日本がテーマ国に選ばれる例があいついでいるが、美術界でも日本の作品が紹介される機会が多くなっている。西独のデュッセルドルフにあるフォルク・ウント・ヴィルトシャフト州立美術館では8月31日から9月29日まで「現代日本の屏風絵展」が開かれ、現存の日本画、洋画、彫刻作家による屏風絵43点が展観される。また、米国では重要文化財2件を含む若冲の優品を紹介する「若冲」展が、日本の文化庁との共催で10月5日よりニューヨーク市アジア・ソサエティー美術館で開かれ、12月6日よりロスアンゼルス・カウンティー美術館に巡回した。さらに10月17日よりボストン美術館において、東洋部創設100周年を記念して、日本の文化庁と共催で「王朝貴族の美術展」を開催。日本に所蔵される作品で構成される同展は、国宝11件、重要文化財25件を含む計60件を展観し、貴族の生活、宗教生活、源氏物語、武士の4部に分けて平安、鎌倉時代の貴族生活が紹介された。12月11日よりニューヨーク市IBMギャラリーで行なわれた文化庁、ジャパン・ソサエティー共催による「日本陶磁の源流」展は、土器から日本陶磁を紹介する特色ある企画となった。この他、「中世の絵画・書と刀剣」(2月1日より、ニューヨーク市ジャパン・ソサエティー・ギャラリー)「日本の刀剣」(12月4日より、大英博物館)等、多様な展観が行なわれた。
すぐれた彫刻活動を行なった作家を顕彰する朝倉文夫賞の選考委員会が24日に行なわれ、第3回目の受賞者に土屋公雄を選出した。受賞作は「レイ(磁気流)」(木彫)。
芸術を通じて日本とイギリスの相互理解を深めることを目的とする「英国祭・UK」が開幕、8月から11月にかけて東京をはじめとする各都市で約18の企画展が行なわれた。主要な展覧会として、現代英国美術展「イギリス美術はいま」(25日~10月7日、世田谷美術館)、ウィリアム・ブレーク展(9月22日~11月25日、国立西洋美術館)、ロセッティ展(9月22日~10月18日、Bunkamuraミューゼアム)、大英博物館展(10月20日~12月9日、世田谷美術館)、ビクトリア・アンド・アルバート美術館展(9月13日~10月16日、新宿伊勢丹)などが行われた。
真言律宗の総本山西大寺を復興した叡尊(興正菩薩)の入滅700年の遠忌を迎え、西大寺をはじめとする真言律宗寺院に伝わる仏教美術の優品を集めた「西大寺展」が、25日から10月7日まで奈良国立博物館で開催された。奈良時代と鎌倉時代の同寺復興期を中心に99点が出品された同展は、東京国立博物館(6月25日~8月4日)でも開催された。
世界有数の日本美術品コレクションで知られ、今年4月日本美術品を常設展示する「ジャパニーズ・ギャラリー」を設立した大英博物館から同館所蔵の日本絵画、版画、工芸など約430点が里帰りする「大英博物館秘蔵・江戸美術展」が9日より9月24日まで東京都美術館で開催された。日本美術に対する国内外の見方の相違を明らかにする展観となり、特に工芸の分野では牙彫、根付など国内では目にすることの珍しい作品が展示される貴重な機会となった。また、明治8年、明治政府の招聘で来日したイタリア人版画家エドワルド・キョソーネの日本美術品コレクションのなかから浮世絵など200点が、イタリア・ジェノヴァのキョソーネ東洋美術館から里帰りして、16日より9月4日まで東京・日本橋高島屋で展観された。
高村光太郎大賞展を発展的に解消して設立されたロダン大賞展の第3回展が8日より長野県美ケ原高原美術館で開かれ、31ケ国442点の応募作品の中から各賞の受賞者が選ばれた。大賞はギリシアの彫刻家フォティスの「両性をそなえたトルソ」、特別優秀賞はメキシコのエルネスト・アスカラテによる「女の習作」、ベルギーのトム・フランツェンによる「比喩1」、綿引道郎の「憩う時」、杉山惣二の「暦」がそれぞれ受賞。そのほか、優秀賞5点、彫刻の森美術館賞8点、美ケ原高原美術館賞8点、上野の森美術館賞8点が選ばれた。
1960年代から現代までに活躍した国内外の作家69名の作品200余点による「ファルマコン’90幕張メッセ現代の美術展」が28日より千葉市の幕張メッセで行なわれた。作家の選定には同展実行委員会が当たり、総面積13500平方メートルの大会場に特定のテーマや企画性を持たせずに作品を展示する方針で構成。大規模な絵画・彫刻・インスタレーション等が出品され、現代美術の一断面を示す展観となった。
「鉄腕アトム」「火の鳥」などで知られる漫画家手塚治虫の仕事を1500点の原画によって回顧する「手塚治虫展」が20日より9月2日まで東京国立近代美術館で開かれた。国立の美術館が漫画展を開催するのは初めてで、視覚芸術の分野の多様化を反映した試みである。同展はこの後、愛知県文化会館美術館(9.8-25)、神戸市立博物館(10.6-11.12)、福岡市美術館(91年4.3-5.6)を巡回した。
文化財保護審議会(斉藤正会長)は20日、建造物関係の重要文化財として新たに次の12件32棟を国の重要文化財に指定するよう、保利耕輔文相に答申した。これによって建造物の重要文化財は2061件3367棟となる。洋風建築-旧金沢陸軍兵器支廠(金沢市)、寺院建築-正法寺(岩手県水沢市)、昆沙門堂(同東和町)、天台寺(同浄法寺町)、生善院観音堂(熊本県水上村)、神社建築-日高神社本殿(岩手県水沢市)、老神神社(熊本県人吉市)、山田大王神社(同山江村)、民家建築-多聞院伊沢家住宅(岩手県和賀町)、上芳我家住宅(愛媛県内子町)、本芳我家住宅(同)、大村家住宅(同)。
9日午前3時20分ごろ、秋田市寺内大畑68、秋田県護国神社から出火し木造の本殿3棟約300平方メートルを全焼した。また、31日未明、奈良県大和高田市片塩町の石園座多久虫玉神社の木造平屋建て拝殿、本殿、付属施設計約170平方メートル、同県御所市室1332の室・八幡神社の木造平屋立て本殿約20平方メートル、同県橿原市見瀬町庄屋垣内718の牟佐坐神社本殿、木造社など2棟約4平方メートルが全焼した。いずれも皇室ゆかりの神社であることから、今秋の即位の礼、大嘗祭との関連が指摘されている。
現代の美術の発展に寄与する目的で設立された岡田茂吉賞の第3回目の受賞者が選ばれ、その業績を発表する展覧会が14日よりMOA美術館で行なわれた。大賞は、絵画部門(日本画)が下保昭、工芸部門が織物作家の北村武資、優秀賞は日本画家の土屋礼一と陶芸家の滝口和男が、それぞれ受賞した。
第15回吉田五十八賞の選考が行なわれ、79件の推薦作品の中から受賞者が選ばれた。建築の部は柳沢孝彦の「真鶴町立中川一政美術館」、特別賞は伝統建築や大工道具を撮影し続けている写真家の岡本茂男が受賞。建築関連美術の部は該当者がなく、賞与は行なわれなかった。
天台寺門宗の祖智証大師円珍の入寂1100年を記念し、三井寺(園城寺)の秘宝を出陳した展覧会が、12日から7月22日まで京都国立博物館で開催された。同展には、黄不動尊をはじめとする彫刻、仏画、障屏画、書籍、工芸など100余点が展示された。なお同展は、名古屋市博物館(4月21日~5月27日)東京国立博物館(8月7日~9月16日)でも開催された。
昭和から平成に変わり、歴史を見直す機運の高まる中、6日、講談社(『日本美術全集』全24巻)、小学館(『新編・名宝日本の美術』全33巻)がともに大型の美術全集の配本を開始。学習研究社も昨年11月から『人間の美術』(全10巻)を刊行しており、美術全集が新たなブームを迎えている。
平成5年の総合開館に向け、昭和63年から現在までの収集作品約6000点を一般公開するため、東京都写真美術館が1日、暫定開館した。建物は東京恵比寿のサッポロビール催事施設「ファクトリー2」を改修したもの(東京都渋谷区恵比寿4-19-24)で、写真専門の公立美術館としては初めてのものとなる。 また彫刻家佐藤忠良が寄贈した代表作品群ほかの資料を展示する佐藤忠良記念館も、同じく1日、宮城県美術館に隣接して開館した。
百貨店高島屋は、美術振興と国際文化への寄与を目的に、公益信託「タカシマヤ文化基金」を設立した。基本財産は8億円で、新鋭作家、シンポジウムなどの助成や、内外美術文化の発掘・振興への支援を行なう予定。
5月20日、日本画壇の長老奥村土牛のデッサンを集めた奥村土牛記念美術館(長野県南佐久郡八千穂村大字穂積1429-1)が開館した。
バブル経済による日本企業の絵画購入がとり沙汰される中、15日ニューヨーク・クリスティーズの競売会で、ゴッホが死の6週間前に描いた「医師ガシェの肖像」が、史上最高の125億円で日本人に落札された。 絵画がついに100億円をこえたことと共に、金余り現象の日本企業が、投機目的で絵画市場に参入するケースの増えていることが、新たな問題として浮上しつつある。