五島記念文化賞決定
1992年03月美術とオペラの分野での優秀な新人を顕彰し、助成する五島記念文化賞の第3回目の美術部門の受賞者は、彫刻家松井紫朗、日本画家坂本幸重、造形作家松本秋則に決定した。
美術とオペラの分野での優秀な新人を顕彰し、助成する五島記念文化賞の第3回目の美術部門の受賞者は、彫刻家松井紫朗、日本画家坂本幸重、造形作家松本秋則に決定した。
中国湖北省随州市擂鼓?付近で発見された中国戦国時代前期の曽国の君主乙の墓「曽侯乙墓」の発掘は、近年の中国考古学屈指の大発見といわれる。中国古代青銅器文化のひとつの頂点を示すその出土品を展示する「曽侯乙墓」展が、17日から東京国立博物館で開かれた(~5.10)。発掘時に話題となった65個の青銅製の鐘の編鐘の複製品も展示され、毎日演奏されて古代の音をしのばせた。
日本人の詩人野口米次郎を父に、米国人を母に持った20世紀彫刻界の巨匠イサム・ノグチの作品約100点により、その仕事を回顧する展観が14日から東京国立近代美術館で開催された(~5.10)。初期から晩年までを6部構成で系統だてた展示がなされ、没後4年にして開かれた本格的回顧展となった。同展は5月26日から7月5日まで京都国立近代美術館でも開かれた。
海外16ケ国41、国内51のギャラリーが参加し、約1500点の現代美術作品を展示した「国際コンテンポラリー・アートフェアNICAF YOKOHAMA’92」が、横浜のパシフィコ横浜を会場に開かれた。13日がグランド・オープニング、一般公開は14日から17日までで、現代美術に対する一般の関心を高めると共に、美術品流通に開かれた新しい場を提供するのがねらい。初日だけで15,152人の入場があり、盛況を呈した。
第42回芸術選奨受賞者が26日、文化庁から発表された。美術関係では、文部大臣賞15名の中に洋画家野見山暁治(「野見山暁治展」で発表された「1991年の夏」「冷たい夏」などに対して)、染色家森口邦彦(「第38回日本伝統工芸展」「森口邦彦の友禅着物展」の諸作品に対して)が選ばれ、新人賞11名の中に彫刻家安田侃(路上展「彫刻の道」、「15人の日本の現代彫刻家たち」での一連の作品に対して)が選ばれた。
明治時代末期に日本に紹介されて以来人気を博している画家ゴッホは、浮世絵等の日本美術を研究して新たな画風を獲得したことでも知られる。こうした日本との関係に注目し、油彩画・デッサン31点、ゴッホと弟テオの収集した浮世絵51点を含む100点あまりの作品を展観する「ゴッホと日本展」が、18日から3月29日まで京都国立近代美術館で開かれた。
東西ドイツ統一を記念して、旧西ドイツのベルリン東洋美術館の所蔵品に、旧東ドイツのベルガモン美術館所蔵の東洋美術品を加え、日本・中国の美術品約170点を展示する「ベルリン東洋美術館名品展」が、東京都庭園美術館で12日から開催された(~2.17)。中国殷代の青銅器から明・清の絵画・陶器、日本の鎌倉期から近代までの絵画が出品され、ヨーロッパでも有数の充実した東洋美術コレクションの一端が紹介された。同展は福岡市博物館(2.23~3.29)、名古屋市博物館(4.18~5.31)、京都国立博物館(6.30~8.2)、横浜美術館(8.11~9.23)を巡回した。
日本の国際貢献のひとつの柱として国際的文化財保護を掲げ、その方向をさぐろうとする「国際文化交流シンポジウム」(朝日新聞社主催、外務省・文化庁・文化財保護振興財団・芸術研究振興財団後援)が、15日、東京の青山スパイラルホールで開かれた。第1部「日本の文化的国際貢献を考える」、第2部「在外日本美術品の修復対策」の2部構成で、各部数人のパネリストにより現状、問題点が指摘され、有意義な企画となった。
昨年英国で行なわれた「ジャパン・フェスティヴァル1991」の企画のひとつ「JAPAN AND BRITAIN:AN AESTHETIC DIALOGUE 1850-1930」展の日本巡回展が8日から世田谷美術館で行なわれた(~3.22)。日英の美術交流を、建築、舞台美術を含む約400点の作品、資料でたどり、学術的にも内容の濃い展観となった。
戦後、書が造形美術を志向して行なった前衛的な試みを、書を強く意識したアンフォルメルの動きや長谷川三郎、菅井汲らの同時代作家の作品の中で検証しようとする「書と絵画の熱き時代・1945-1969」展が、25日から東京のO美術館で開催された(~2.26)。明治期に書画分離がなされ、美術の枠から疎外された書の近代の足跡を示し、現代に問題を提起する好企画となった。
若手具象作家の育成を目的とする安井賞の35回目の受賞者が17日に決定し、安井賞には奥山民枝「山夢」、佳作賞には星憲司「Layer 91038」が選ばれた。第35回安井賞展は3月6日から4月5日まで東京のセゾン美術館で開かれた後、尼崎市、いわき市、尾道市、帯広市を巡回した。
1900年から1945年までの日本美術を「表現の影としての『趣味』」「アール・ヌーヴォーと浪漫主義」「装飾とエロティシズム」の3部構成で展観し、外来の美術様式と「日本的なるもの」との相関を検証しようとする「日本の眼と空間Ⅱ」展が2日から東京のセゾン美術館で開かれた(~1.27)。昨年の同題の企画に続くもので、工芸、建築を含む約80作家300余点が出品されて興味深い展観となった。
インドの仏教遺跡アジャンタとエローラの壁画を保存するため、日本が海外経済協力基金(OECF)を通じて円借款を供与することとなり、10日にアスラニ駐日インド大使と西垣OECF総裁が東京で借款契約に調印。今年度分として37億4500万円が供与される予定で、交通網を含めた基盤整備への協力も予定されている。
平成3年度の朝日賞6件が1日発表され、美術関係では「大規模遺跡の調査発掘法と考古学における学際・国際研究の推進」により大阪文化財センター理事長の坪井清足が選ばれた。
第33回毎日芸術賞受賞者4氏1団体が1日発表された。美術関係では「画業50年工藤甲人展」により日本画家の工藤甲人、「八代市立博物館・未来の森ミュージアム設計」により建築家伊藤豊雄、「大平山涛書展」により書家大平山涛が選ばれた。
菱田春草の「落葉」などを含む29件の作品を日本から出品し、戦前までの日本画の流れを追うNihonga:Traditional Japanese Painting 1900-1940展(主催・文化庁、東京国立近代美術館、山種美術館、国際交流基金、大英博物館)が19日から、大英博物館で開催された(平成4年3月1日まで)。会期中、約37,000名が入場し、日本の近代美術への興味を喚起する展観となった。
織維商社会長木田敏男が40年にわたって収集した日本の近代洋画を中心とするコレクション約200点が、宝塚市に寄贈された。コレクションには、1900年パリ万博に出品された黒田清輝「木かげ」のほか、青木繁、岸田劉生、またブランクーシの作品なども含まれる。また同市が建設計画中の美術館の運営基金として、30億円も合わせて寄付された。
1992年4月からスペインのセビリアで開かれるセビリア万博出品のため、準備が進められてきた安土城の再現障壁画が完成、17日東京上野の寛永寺で公開された。再現されたのは34枚。歴史考証に基づき、東京芸術大学、京都市立芸術大学などで1年がかりで制作が行なわれた。
昨年度中に優れた芸術文化支援活動を行なった企業に贈られるメセナ大賞(企業メセナ協議会主催)の第1回授賞式が16日、東京・赤坂の草月ホールで行なわれ、大賞は「林原グループ」(国際シンポジウム「林原フォーラム」、国内外で伝統芸術の継承に努める若手芸術家への「国際芸術・文化振興奨学金制度」、林原美術館の運営等に対して)が受賞。特別賞にINAX、コニカ、新日本製鉄が選ばれたほか、5社が入賞企業となった。
’89年から講談社が実施している在外日本美術品調査により、チェコスロバキア・プラハの国立美術館・博物館、ハンガリー・ブダペスト応用美術館、ポーランド・クラクフ国立美術館に、浮世絵など日本美術品がまとまって所蔵されていることが確認された。プラハ所在品はジョー・フロウハ、ブダペストのものはバイ・ペーター、クラクフ所在品はフェリクス・ヤシェンスキの収集になる。