「生誕120年藤田嗣治」展開催

2006年03月

エコール・ド・パリの画家のひとりとして国際的に著名な画家藤田嗣治の生誕120年を記念し、その全画業を回顧する展覧会が3月28日から5月21日まで東京国立近代美術館で開催された。東京美術学校に学んだ後、フランスに留学し、フォーヴィスムなど色彩が多用される画界にあって、陶器のような独特の質感の白い下地に肥痩のない黒い線で対象を描く画風で1920、30年代にフランス画壇の寵児となった藤田の作品は、これまで、フランスで評価の高かった時代のものを中心に紹介されてきた。この展覧会では留学ののち画風を確立するまでの作品、第二次大戦中に軍の依頼を受けて描いた戦争記録画、戦後に再度フランスに渡って以降の宗教主題の作品を含む晩年の制作なども展示され、神話や伝説に満ちたこの画家の初期から晩年までの作品を見直す機会となった。本展は京都国立近代美術館(5月30日~7月23日)、広島県立美術館(8月3日~10月9日)に巡回した。

日本芸術院賞受賞者決定

2006年03月

日本芸術院(三浦朱門院長)は24日、卓越した芸術作品や芸術の進歩に顕著な業績があった人に贈る日本芸術院賞の2005年度の受賞者を発表した。第一部(美術)では村田省蔵(76)が洋画「春耕」(日展出品)で恩賜賞を、福田千恵(59)が日本画「ピアニスト」(日展出品)で、市村緑郎(69)が彫塑「間」(日展出品)で、原益夫(71)が工芸「エンドレス」(日展出品)で、劉蒼居(本名・振角昭彦、64)が書「袁枚詩」(日展出品)で、香山寿夫(69)が聖学院大学礼拝堂・講堂の建築で日本芸術院賞を受賞した。

国宝重要文化財の答申

2006年03月

文化審議会(阿刀田高会長)は17日、「福岡県平原方形周溝墓(ひらばるほうけいしゅうこうぼ)出土品」と「琉球国王尚家(しょうけ)関係資料」の2件の国宝への指定、田中久重製作の和時計「万年自鳴鐘」など美術工芸品47件を重要文化財に指定するよう、小坂憲次文部科学相に答申した。沖縄県からの国宝指定は1950年に施行された文化財保護法下では初めて。このほか、仙台市の街頭紙芝居師井上藤吉氏の街頭紙芝居コレクションを含む紙芝居資料など美術工芸品4件、旧関善酒店主屋(秋田県鹿角市)など建造物165件の登録有形文化財への登録を答申した。

第13回VOCA賞受賞者決定

2006年03月

第13回VOCA賞展が15日から30日まで上野の森美術館で開催された。VOCA賞(主催:財団法人日本美術協会、上野の森美術館ほか)は平面作品を対象に40歳以下の作家の支援を目指しており、今回は37名の推薦作家の中から小西真奈がVOCA賞を、佐伯洋江とロバート・プラットが奨励賞を、兼末希恵と髙木紗恵子が佳作賞を受賞。買い上げ賞である大原美術館賞に蜷川実花、府中市美術館賞に髙木紗恵子が選ばれた。

第56回芸術選奨受賞者決定

2006年03月

文化庁は15日、第56回芸術選奨受賞者を発表した。美術関係では、建築家・妹島和世(49)が「鬼石多目的ホール」「金沢21世紀美術館」に対して、洋画家・和田義彦(65)が個展「ドラマとポエジーの画家」に対して美術部門の文部科学大臣賞に、彫刻家・西雅秋(59)が個展「空と大地と記憶の造形」に対して美術部門の同新人賞、現代美術家・村上隆(44)が展覧会「リトルボーイ」に対して芸術振興部門の同新人賞に選ばれた。

「亜欧堂田善の時代」展開催

2006年03月

白河藩主松平定信に起用され19世紀初頭に西洋絵画、版画に学んだ洋風画を描いて活躍した亜欧堂田善の作品を中心に、洋風の表現や風景に対する興味など、同時代の画家たちが共有する造形感覚を概観する「亜欧堂田善の時代」展が府中市美術館で開催された(4日~4月16日)。田善の作品がこれまで西洋絵画技法の受容という視点に偏って評価されがちであったのに対し、田善がいかに自然と向き合い、いかに描こうとしたかという造形意識に焦点をあて、絵画表現への関心を促す展観となった。

「エルンストバルラハ」展開催

2006年02月

ドイツの国民的彫刻家でありながら、日本では1970年代になるまでほとんど紹介されてこなかったエルンスト・バルラハ(1870-1938)の木彫、ブロンズ、テラコッタ、陶磁器製彫刻、版画、素描など約180点を展示する本格的個展が京都国立近代美術館を皮切りに21日から開催された(4月2日まで)。若くして東洋美術に親近感を抱く一方、ゴシック美術の伝統に連なる作風を示すバルラハの作品を概観する貴重な機会となった。本展は「日本におけるドイツ年」の一企画として行われ、東京芸術大学大学美術館(4月12日~5月28日)、山梨県立美術館(6月3日~7月17日)に巡回した。

「神々と出逢う―神奈川の神道美術―」展開催

2006年02月

神奈川県神社庁設立60周年を記念して、同県の神道関係の文化財を展観する「神々と出逢う―神奈川の神道美術―」展が神奈川県立歴史博物館で18日から開催された(~5月7日)。「姿を顕した神々」「神々の物語」「仏と習合する神々」「神々の宝物」の4セクションで構成され、出品作の制作年代は古墳時代から江戸時代までに渡り、まとまって展示されることの少ない神道関係の文化財を体系的にとらえる充実した展観となった。

文化庁予算決定

2006年02月

平成18年度の文化庁予算は「国内外の人々を魅了する『文化力』の向上」をテーマに1,006億4,800万円に決定した。前年度よりも95,700万円減少し、0.9%のマイナス成長となった。「文化芸術創造プランの推進」「『日本文化の魅力』発見・発信プランの推進」を重点事項とする「文化芸術立国プロジェクトの推進」、「文化財の次世代への継承と国際協力の推進」、「文化芸術振興のための文化拠点の充実」を3本の柱とし、「明日の日本文化を担うこどもを育む」ことで日本文化の裾野を拡大することを謳っている。

第47回毎日芸術賞受賞者決定

2006年01月

優れた芸術活動を行った個人、団体に贈られる同賞の受賞者が決定し、美術関係では、李禹煥(横浜美術館で開催された「余白の芸術」展など)が選ばれた。贈呈式は30日、東京丸の内の東京会館で行われた。

「No Border「日本画」から/「日本画」へ」展開催

2006年01月

「日本画とは何か」という明治期から問われ続けている問題を、1960年代末から70年代生まれの画家7名の制作によって考え、絵画の現在に切り込もうとする「No Border「日本画」から/「日本画」へ」展が、東京都現代美術館で21日から開催された(~3月26日まで)。毎年行われる「MOTアニュアル」の一環としての企画。1990年代に美術の制度史が盛んになったのに連動し、「日本画」という既成のボーダーの見直しを試みた気鋭の画家たちが、膠、岩絵具、墨といった材料へのこだわりを見せたのに対し、次世代の画家が余白、描線、情緒といった表現の要素を取り入れ、描く行為を重視している点を浮かび上がらせた。

「書の至宝 日本と中国」展開催

2006年01月

漢字文化圏で文字が始まってから19世紀までの多用な書の展開を、甲骨文字から19世紀の中国、日本の優品で跡づける展観が11日から東京国立博物館で行われた(~2月19日)。中国の古代から清朝に至る書の流れと、遣隋使や遣唐使の派遣と停止、鎌倉期に再び始まる日宋貿易といった大陸との交流による日本の奈良時代から江戸時代までの書の流れを189点の作品で跡づける大規模な展観となった。

第17回倫雅美術奨励賞受賞者決定

2005年12月

新鋭の美術評論家や美術史家を顕彰する倫雅美術奨励賞(同基金主催)の第17回目の受賞者が決定した。「美術評論部門」では「滝口修造―夢の漂流物」展の企画及びカタログ中の論文により杉山悦子(世田谷美術館)に、「美術史研究部門」では「安井仲治―写真のすべて」展の企画及びカタログ中の論文により光田由里(渋谷区立松涛美術館)が選出された。授賞式は、12月12日、東京、赤坂プリンスホテルで行われた。 

日本芸術院新会員決定

2005年11月

日本芸術院(三浦朱門院長)は、11月29日、新会員9人を発表した。第一部(美術)では、洋画家寺坂公雄(72)、彫塑の蛭田二郎(72)、陶芸家の河合誓徳(78)が選ばれた。これにより、現在の定員120名に対して、今回の補充により会員数は114人となった。

重要文化的景観の指定答申

2005年11月

文化審議会(阿刀田高会長)は、11月18日、文化財保護法の改正(2005年4月1日施行)に伴い、新たに設けられた「重要文化的景観」に近江八幡の水郷(滋賀県近江八幡市)の選定を小坂憲次文部科学大臣に答申した。また、同法改正で所有者の自主的な保護に期待する登録制度を建造物以外の記念物(名勝地)にも広げ、函館公園(北海道函館市)など3件が答申された。

第27回サントリー学芸賞受賞者決定

2005年11月

サントリー文化財団主催の同賞の受賞者が、11月10日に発表された。「芸術・文学部門」では、宮下規久朗(神戸大学)『カラヴァッジョ』(名古屋大学出版会)が選出された。贈呈式は、12月9日、東京丸ノ内の東京会館で行われた。

キトラ古墳の保存検討

2005年11月

国の特別史跡であるキトラ古墳(奈良県明日香村)の壁画保存策を検討している文化庁の調査研究委員会(座長、藤本強・国学院大学教授)は、11月14日に奈良県で会議を持ち、壁画を石壁ごと取り出す部分解体も視野に入れて検討することを確認した。

国立博物館と文化財研究所の統合の勧告

2005年11月

総務省に設置されている政策評価・独立行政法人評価委員会(丹羽宇一郎委員長)は、11月14日、独立行政法人の改廃に関する「勧告の方向性」をまとめ、関係する9府省の閣僚に通知した。ここで、文部科学省所管の国立博物館と文化財研究所の統合が求められた。

文化人による国立博物館美術館文化財研究所の独立行政法人見直しに対する危惧の声明

2005年11月

独立行政法人の見直しを進める政府の有識者会議(座長、飯田亮セコム最高顧問)が、10月28日、小泉純一郎首相に提出した指摘事項の中に、国立博物館、国立美術館、文化財研究所の3法人の統合が求められていた。これに対して、平山郁夫(東京芸術大学学長)、高階秀爾(大原美術館長)が呼びかけ人となり、「効率性追求による文化芸術の衰退を危惧する」との声明書を、36人の文化人賛同者を加えて、11月9日、小坂憲次文部科学大臣と河合隼雄文化庁長官に手渡した。

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