- 本データベースは東京文化財研究所刊行の『日本美術年鑑』に掲載された彙報・年史記事を網羅したものです。
- 現在、2019年/平成31(令和元)年まで公開しています。(記事件数5,450 件)
2004年08月 日本の近代彫刻及び工芸における立体造形表現を、伝統と洋風化の両面から見直そうとする展覧会が、8月24日より静岡県立美術館で開催された。内容は、「第1章 細工物の伝統」、「第2章 近代国家の彫刻―西洋との出会い・木彫からの出発」、「第3章 〈彫刻〉の確立と実際―ロダニズムの諸相」、「第4章 〈彫刻〉と〈工芸〉の豊かな狭間」から構成され、113点の作品により、ロダンに象徴されるヨーロッパ近代彫刻の受容と江戸時代以来つづく造形感覚との間で展開しながら、現代までの「一貫した伝統的な美意識」を見ようとする機会となった。(会期、10月24日まで。)
2004年08月 「琳派」及び「琳派」的と評される表現の今日的な意味を問い直す展覧会が、8月21日より東京国立近代美術館で開催された。内容は、「1 光琳」、「2 宗達・光悦」、「3 江戸から明治へ」、「4 琳派の近代」、「5 RIMPAの世界」の5章から構成され、国内外の作品81点によって「琳派」作品から近代以降の現代美術にいたるまでの絵画、平面表現まで、日本美術にとどまらず、海外まで影響を与えたその「装飾」性の意味を検証する意欲的な企画となった。(会期、10月3日まで。)
2004年07月 香川県香川郡直島町に地中美術館(財団法人直島福武美術館財団)が、7月18日に開館した。敷地面積は9,990平方メートル、施設は、すべて地下に設けられ、地下3階、延床面積2,573平方メートルで、設計は安藤忠雄による。「自然と人間を考える場所」をコンセプトとして、クロード・モネの「睡蓮」(1915~26年頃)をはじめ、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレルの作品が常設展示されている。また、自然と対話し、自然と芸術の関わりへと思いを促す場として、植物数百種を配した「地中の庭」が設置されている。
2004年07月 文化審議会(高階秀爾会長)は、7月16日、3人を重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定するように河村建夫文部科学大臣に答申した。「工芸技術の部」では、備前焼の伊勢崎淳(68、本名伊勢崎惇)、彫金の中川衛(57)、ほかに沖縄県久米島に伝承する「久米島紬」を新たに重要無形文化財に指定し、また「久米島紬保持団体」を認定するように答申した。これにより、現在の人間国宝は、115人となった。
2004年07月 2005年の日本万国博覧会(愛知万博)開催を記念して、19世紀の万国博覧会を美の側面から回顧する展覧会が、7月6日より東京国立博物館で開催された。内容は、「第Ⅰ部 万国博覧会と日本工芸」、「第Ⅱ部 万国博覧会の中の西洋美術」によって構成され、第Ⅰ部では日本が初めて参加した1867(慶応3)年のパリ万博から19世紀後半、世界各地で開催された万博において、日本が工芸作品を中心にどのように展示し、また海外からどのように評価されたかを当時の出品作品を中心に出品された。また第Ⅱ部では、それぞれの万博に出品された西洋絵画、彫刻等が展示され、当時各国の文化を代表する存在であった作家たちが一堂に会する展示となった。(会期、8月29日まで。大阪市立博物館、名古屋市博物館に巡回。)
2004年06月 奈良時代、全国各地に創建された国分寺のなかでも、今日まで創建期と同じ場所でほぼ規模を同じくする同寺の歴史を紹介する展覧会が、6月25日より山口県立美術館で開催された。同寺は、1997(平成9)年より金堂の解体修理をすすめていたが、同年9月の完成を記念した展覧会で、国指定重要文化財の「日光・月光菩薩立像」、「四天王立像」等をはじめ、山口県下の文化財も含めて仏教文化を紹介する展覧会となった。(会期、8月1日まで。)
2004年06月 文化庁と東京文化財研究所は、国特別史跡高松塚古墳(奈良県明日香村)の石室の壁画(国宝)のうち西壁に描かれた白虎が、1972年の発見当時より劣化していることを公表した。
2004年06月 いずれも熊本市出身で、幕末、明治期に「生人形師」として活躍した松本喜三郎と安本亀八が製作した「生人形」を一堂に紹介する展覧会が、6月5日より熊本市現代美術館で開催された。見世物興行の細工物のひとつとして人気を博しながら、今日では忘れ去られた「生人形」を日本の「近代」化が生んだ表現として見直すことを目的に企画されたものであった。そのリアリズム故に民衆的な見世物から医学的、民俗学的な資料と変化していき、いつしか忘れ去られてしまったが「美術」という既成の領域を見直すためにも、海外に流出した作品の里帰りをふくめて展示するという画期的な試みとなった。(会期、8月15日まで。大阪歴史博物館に巡回。)
2004年06月 現代美術のひとつの表現としてすでに認知されている「引用と複製」をテーマにした展覧会が、6月5日より滋賀県立近代美術館にて、同美術館の開館20周年を記念して開催された。内容は、現代美術の多様な展開の跡を、「はじまりとしてのデュシャン」、「大衆文化からの引用」、「複製としての貨幣」、「盗め『日本美術史』」、「盗め『西洋美術史』」、「オリジナルなきコピー」の6章から構成し、国内外の作品137点が出品された。(会期、9月5日まで。)
2004年05月 文化審議会(高階秀爾会長)は、5月21日、韮山役所跡(静岡県韮山町)など17件を史跡に、また竹林寺庭園(高知県高知市)などを名勝に、ほかに4件を天然記念物に指定するよう、河村建夫文部科学大臣に答申した。
2004年04月 昨年一年間に作品を発表したプロ、アマを問わない写真家を対象とする同賞(毎日新聞社主催)の第23回の受賞者に、写真展「PERSONA」を開催した鬼海弘雄(59)が決定した。同賞受賞作品展が、4月26日から5月15日まで銀座ニコンサロンで開催された。
2004年04月 十二神将像の造形美と当時の文献等からうかがわれる信仰の諸相に焦点をあてた展覧会が、4月22日より神奈川県立金沢文庫で開催された。同文庫がある神奈川県金沢区の称名寺には、鎌倉時代に描かれたとされる十二神将の画像(12幅)が伝えられており、近隣の寺院にも十二神将の彫像や画像が残されている。近年の学術調査の成果をもとに、これらの文化財を一堂に展示する機会となった。(会期、5月30日まで。)
2004年04月 故木村伊兵衛の業績を記念して朝日新聞社が、昭和50年に創設した同賞は、沢田知子(個展「Costume」、大阪・サードギャラリーAya、2003年に対して)に決定した。授賞式は、4月20日に有楽町マリオン・朝日スクエアで行われた。
2004年04月 国内収蔵の南宋絵画に焦点をあてた初めての展覧会が、4月17日より根津美術館で開催された。固有の民族文化の大成につとめ、「才情雅致」と評された文人、士大夫階層に支えられて生まれた南宋絵画は、中国絵画史の上からも特筆すべき時代を形成した。鎌倉、室町時代に日本に舶載された優品が少なくないが、これら68件を一堂に展覧する画期的な機会となり、国内外の研究者の注目をあつめることとなった。(会期、5月16日まで。)
2004年04月 文化審議会(高階秀爾会長)は、4月16日、「出雲大社」(島根県大社町)、万代橋(新潟県新潟市)など、建造物10件を重要文化財に指定するように河村建夫文部科学大臣に答申した。
2004年03月 日本の伝統文化や現代芸術の分野での優秀な人材の顕彰と育成を目的にした同賞(財団法人日本文化芸術財団主催)の第11回の受賞者が決定した。同賞の日本現代芸術振興賞には、生け花作家中川幸夫(86)、奨励賞には、造形作家留守玲(28)、沖縄の染織文化研究の久貝典子(47)が選ばれた。3月31日、授賞式が元赤坂の明治記念館で行われた。
2004年03月 日本芸術院(犬丸直院長)は、3月25日、芸術の分野で顕著な功績のあった人に贈る平成15年度の日本芸術院賞受賞者を決定した。恩賜・日本芸術院賞の第1部(美術)受賞者には、書家新井光風(67)(日展出品作「明且鮮」に対して)、日本芸術院賞には、日本画家宇佐美江中(74)(日展出品作「暮れゆく函館」に対して)、洋画家山本貞(69)(二紀展出品作「少年のいる風景」に対して)、彫刻家山本真輔(65)(日展出品作「生々流転」に対して)、工芸家伊藤裕司(73)(日展出品作「スサノオ聚抄」に対して)、建築家宮本忠長(76)(松本市美術館の設計に対して)が選ばれた。授賞式は、6月7日に東京・上野の日本芸術院会館で行われた。
2004年03月 文化審議会(高階秀爾会長)は、3月19日、雪舟筆「紙本墨画淡彩彗可断臂図」(愛知県常滑市、斉年寺所蔵)など4件を国宝にするように河村建夫文部科学大臣に答申した。また、「木造大威徳明王像」(京都市、醍醐寺)など美術工芸品46件を重要文化財に指定するように答申した。あわせて近代建造物の保護を目的とした登録有形文化財(建造物)として、99件を登録するように求めた。
2004年03月 具象、抽象の区別なく、絵画、平面表現に取り組む40歳以下の作家を対象とした「VOCA展2004」(同展実行委員会、財団法人日本美術協会、上野の森美術館主催)の最高賞であるVOCA賞は、前田朋子の「it overlooks」に決定した。奨励賞には、小柳裕、HEARTBEAT DRAWING,SASAKIの2名。新設された佳作賞には中山ダイスケ、西沢千晴が選ばれた。なお展覧会は、3月13日から30日まで上野の森美術館で開催された。
2004年03月 芸術の分野で昨年一年間に優れた業績をあげた人々に贈られる芸術選奨の受賞者が、3月9日文化庁より発表された。美術関係では、彫刻家戸谷成雄(56)(愛知県美術館「戸谷成雄展 森の襞の行方」)、写真家川田喜久治(71)(東京都写真美術館「川田喜久治展 世界劇場」)が文部科学大臣賞、また岡村桂三郎(45)(新潟県立万代島美術館「絵画の現在」展出品作)、本江邦夫(55)(『オディロン・ルドン 光を孕む種子』、みすず書房刊)が同新人賞を受賞した。贈呈式は、3月16日に東京都内のホテルで行われた。