本データベースは東京文化財研究所刊行の『日本美術年鑑』に掲載された彙報・年史記事を網羅したものです。
現在、2019年/平成31(令和元)年まで公開しています。(記事件数5,450 件)
ソート順を選択
記事番号昇順
記事番号降順
2005年06月 戦後のマンガ文化に大きな業績を残した手塚治虫 を記念する同賞の第9回受賞者が決定した。昨年発行されたすべてのマンガ単行本の中で最も優れた作品に贈られるマンガ大賞は、手塚治虫 の「鉄腕アトム」をリメイクした浦沢直樹(45)の「PLUTO」、清新な才能や斬新な表現に与えられる新生賞には、「夕凪の街 桜の国」のこうの史代(37)が選ばれた。また、マンガ文化の発展に貢献した個人・団体に贈られる特別賞には川崎市市民ミュージアムが選ばれ、同館のマンガ作品や資料の収集、企画展開催等の活動が評価された。6月7日、東京・丸の内の東京会館で贈呈式が行われた。
2005年06月 国内にとどまらず朝鮮半島、中国大陸にわたるまで踏査し、今日の建築史、考古学、美術史にわたって幅広く業績を残した関野貞 の収集した学術標本を中心にした展覧会が、6月4日より東京大学総合研究博物館で開催された。内容は、関野の幅広い関心を反映し、かつその先駆的な業績を検証するため、学際的で多面的な視点から見直されており、同展のために編集された図録は、その記録として貴重なものであった。(会期、9月4日まで。)
2005年05月 東アジアの海洋地域の美術、工芸作品を支える技術、意匠を海を通じての伝播から見直そうとするユニークな発想に基づく展覧会が、5月24日より愛知県美術館で開催された。内容は、歴史的、作品のジャンル的な分類からはなれ、「Ⅰ彫る」、「Ⅱ染める」、「Ⅲ型取る、肉づける」という人間と自然の素材との関係を三章によって分類構成し、土器、民俗遺品から現代美術作品まで網羅され、「海」で繋がり、交流した跡を大胆に提示した展覧となり、アジアの今日を考える上で、後に上げる「アジアのキュビスム」展とは対照的なアプローチであった。(会期、7月10日まで。)
2005年05月 文化審議会(阿刀田高会長)は、5月20日、旧富岡製糸場(群馬県富岡市)など15件を史跡に、香具山、畝傍山、耳成山の大和三山(奈良県橿原市)など3件を名勝に、ほかに草岡の大明神ザクラ(山形県長井市)を天然記念物に指定するように中山成彬文部科学大臣に答申した。
2005年04月 昨年一年間に作品を発表したプロ、アマを問わない写真家を対象とする同賞(毎日新聞社主催)の第24回受賞者に、「PIERCING THE SKY―天を射る」(東京都写真美術館、求龍堂より同名の写真集を刊行)を開催した坂田栄一郎(64)が決定した。同賞受賞作品展が、4月25日から5月14日まで銀座ニコンサロンで開催された。
2005年04月 文化審議会(阿刀田高会長)は、4月22日、建長寺(神奈川県鎌倉市)の山門と法堂など9件を重要文化財(建造物)に指定するように中山成彬文部科学大臣に答申した。また青森県黒石市の中町保存地区など3ヶ所を重要伝統的建造物群保存地区に選定するように答申した。
2005年04月 曽我蕭白は、近年の研究により、これまで伊勢出身といわれていたが、京都の商家の生まれであったことが判明した。その蕭白がなぜ伊勢及び播州を中心に創作活動をおこなったのか、その理由を明らかにすべく、蕭白芸術の全貌を見直す展覧会が、4月12日より京都国立博物館で開催された。内容は、山水、絵馬、花鳥、人物の4章から構成、122点が出品され、これまでと異なった画家像を検証する試みとなった。(会期、5月15日まで。)
2005年03月 日本芸術院(三浦朱門院長)は、3月24日、芸術の分野で顕著な功績のあった人に贈る平成16年度の日本芸術院受賞者を決定した。恩賜賞・日本芸術院賞の第1部(美術)受賞者には、日本画家川崎春彦(76)(日展出品作「朝明けの湖」に対して)、日本芸術院賞には、洋画家寺坂公雄(71)(日展出品作「アクロポリスへの道」に対して)、彫刻家能島征二(63)(日展出品作「慈愛―こもれび」に対して)、書家黒野清宇(74)(日展出品作「梅の花」に対して)が選ばれた。授賞式は、6月20日に東京・上野の日本芸術院会館で行なわれた。
2005年03月 「花魁(渓斎英泉による)」、「種まく人」、「夜のカフェテラス」、「子守女(ルーラン夫人の肖像)」、「糸杉と星の見える道」等、オランダのファン・ゴッホ美術館、クレラー=ミュラー美術館等の所蔵するゴッホの作品30点を中心とする展覧会が、3月23日より東京国立近代美術館で開催された。内容は、フィンセント・ファン・ゴッホの生涯と芸術を、歴史的、文化的背景から学術的に見直そうとするものであったが、東京展では、会期中に518,307人、大阪展では360,613人、愛知展では423,745人という、いずれも記録的な入場者数にのぼった。これは国内におけるゴッホに対する一般の人気だけではない、社会的な事象として記録されるべきであり、社会における美術愛好層の拡大と観客動員の今日における意味を考えさせる結果となった。(会期、5月22日まで。国立国際美術館、愛知県美術館に巡回。)
2005年03月 文化審議会(阿刀田高会長)は、3月18日、熊野速玉大社(和歌山県新宮市)の「木造熊野速玉大神坐像」4体を国宝に指定するように中山成彬文部科学大臣に答申した。また、曽我蕭白の「紙本著色群仙図六曲屏風」(文化庁所蔵)など46件を重要文化財(美術工芸品)に指定するように答申した。あわせて日本初のテレビ塔である「名古屋テレビ塔」など197件を登録有形文化財(建造物)にするように求めた。
2005年03月 具象、抽象の区別なく、絵画、平面表現に取り組む40歳以下の作家を対象とした「VOCA」展(同展実行委員会、財団法人日本美術協会、上野の森美術館主催)の最高賞であるVOCA賞は、日野之彦の「あおむけ」、「口に両手」に決定した。奨励賞には、居城純子、中川トラヲの2名、佳作賞に手塚愛子、羽毛田優子の2名が選ばれた。なお展覧会は、3月15日から30日まで上野の森美術館で開催された。
2005年03月 「自然の叡智」をメインテーマとする「愛・地球博」(2005年日本国際博覧会)開催を記念して、同テーマのもとに日本美術の歴史と伝統をふりかえる展覧会が、3月11日より愛知県美術館で開催された。内容は、「第一章 聖なる自然」、「第二章 理想の風景」、「第三章 季節の中で」、「第四章 動植物へのまなざし」、「第五章 実在の場所―名所絵から風景画へ」の5章から構成され、8世紀の「過去現在因果経」(国宝)から近代美術までの日本の絵画の優品156点が出品された。(会期、5月8日まで。)
2005年03月 芸術の分野で昨年一年間に優れた業績をあげた人々に贈られる芸術選奨の受賞者が、3月8日文化庁より発表された。美術関係では、日本画家中野嘉之(59)(個展「天空水」)、写真家宮本隆司(57)(世田谷美術館での個展「壊れゆくもの・生まれいずるもの」)が文部科学大臣賞、また建築家青木淳(48)(作品集『青木淳 JUN AOKI COMPLETE WORKS1 1991-2004』に収められた建築群)、「芸術振興」として三鷹の森ジブリ美術館長宮崎吾朗(38)(同美術館の企画展等)が同新人賞を受賞した。贈呈式は、3月15日に都内のホテルで行われた。
2005年02月 平成17年度の文化庁予算が発表され、前年度より0.01%プラス、1200万円増額の1016億500万円となった。項目別では「文化財の保存整備・活用」の一環として、高松塚古墳、キトラ古墳の保存修理等のための予算が増額された。また、昨年の文化財保護法の一部改正により重要文化的景観や民俗技術を新たな保護の対象とし、登録文化財制度の範囲を美術工芸品、記念物、有形民俗文化財に拡大したことに伴う新規事業「重要文化的景観保護推進事業」に1億円、「登録記念物保存修理」に5,000万円があてられた。また、「新たな文化拠点の整備」として来年度開館の国立新美術館、今年度開館の九州国立博物館にそれぞれ整備費がついた。一方、独立行政法人国立美術館、同国立博物館、同文化財研究所に対する運営交付金は昨年よりそれぞれ減額された。
2005年02月 詩人であり、美術評論家であった滝口修造(1903-1979)の多岐にわたる活動を網羅的に回顧する展覧会が、2月5日より世田谷美術館で開催された。内容は、戦前期にシュルレアリズムと出会い、以来、詩作、美術評論、翻訳等の活動をつづけ、生涯にわたり美術、文学、音楽、舞踏、映像等芸術全般にわたって「前衛」を見つめ続け、独自に思索を深めつづけた滝口のもとに集まった芸術家の作品、さらに自ら描いた作品、身近に置かれていたオブジェ、資料等700点余りが出品され、近現代の芸術界にとって大きくも稀有な存在であった「思索家」の全貌を見渡すための意欲的な展示となった。(会期、4月10日まで。富山県立近代美術館に巡回。)
2005年01月 優れた芸術活動をした個人、団体に贈られる同賞の今年度の受賞者が決定した。美術関係では、「金沢21世紀美術館」を共同設計した妹島和世、西沢立衛が選ばれた。1月28日、東京のパレスホテルで贈呈式が行われた。
2004年12月 新鋭の美術評論家や美術史家を顕彰する倫雅美術奨励賞(同基金主催)の第16回目の受賞者が決定した。「美術評論部門」では、「地平線の夢―昭和10年代の幻想絵画」展の企画及びカタログ中の論文により大谷省吾(35、東京国立近代美術館)に、「美術史研究部門」では「金色のかざり」展の企画及びカタログの論文により久保智康(46 、京都国立博物館)が選出された。授賞式は、12月10日、東京、赤坂プリンスホテルで行なわれた。
2004年11月 日本芸術院(三浦朱門院長)は、11月29日、新会員4人を発表した。第一部(美術)では、洋画家山本貞(70)、彫刻家川崎普照(73)、同じく澄川喜一(73)、建築家岡田新一 (76)が選ばれた。これにより、現在の定員120人に対して、今回の補充により会員数は110人となった。
2004年11月 1954年に国際美術評論家連盟(AICA)の日本支部として設立された美術評論家連盟は、創立50周年を迎えて、その記念事業としてシンポジウム「日本の美術批評のあり方」を11月20日に開催した。(会場、東京国立近代美術館)。同連盟は、164人からなる。
2004年11月 大阪府吹田市の万博公園内にあった国立国際美術館(1977年開館、2004年1月18日に移転のため閉館)が移転し、11月3日に開館した(住所:大阪市北区中之島4-2-55)。新施設は、完全地下型で地下2階に常設展示室、地下3階に企画展示室4室があり、述べ床面積は、13,486平方メートル。開館記念展として「マルセル・デュシャンと20世紀美術」展が翌年12月19日まで開催された。