「菊畑茂久馬回顧展 戦後/絵画」開催

2011年07月

日本の戦後美術の代表的作家のひとりである菊畑茂久馬のデビューから現在までのしごとを振り返る「菊畑茂久馬回顧展 戦後/絵画」が9日から8月28日まで福岡市美術館で、16日から8月13日まで長崎県美術館で行われた。オブジェ、絵画、ドローイング、テレビ番組等多岐にわたる菊畑のしごとの全貌を展観するため2館に分けられた同展は、323点の出品作を福岡市美術館がオブジェを中心に「戦後」の部分を、長崎県美術館が1980年代半ば以降の大作を含む「絵画」の部分を展観し、それぞれが独立した展覧会としても鑑賞可能なかたちで紹介する意欲的な企画となった。1950年代に「九州派」の旗手として注目された後、1960年代後半から約20年間、著作、テレビ番組制作などにたずさわっていわゆる美術界から距離を置き、1980年代半ばから大作の絵画作品を次々と発表する菊畑の足跡は、戦後、日本各地で起こった前衛的な動きが1970年の大阪万博や高度成長期を経て大都市を中心とする新たな美術界の秩序の中で変貌していくさまを映し出し、戦後美術の再考を促す問題を提起した。

第23回世界文化賞受賞者発表

2011年07月

優れた芸術の世界的創造者たちを顕彰する高松宮殿下記念世界文化賞(主催:財団法人日本美術協会)の第23回受賞者が11日発表された。美術関係では、絵画部門でビル・ヴィオラ(アメリカ)、彫刻部門でアニッシュ・カプーア(イギリス)、建築部門でリカルド・レゴレッタ(メキシコ)が受賞した。

美術品補償制度に関する法律の施行

2011年06月

4月4日公布の「展覧会における美術品損害の補償に関する法律」が1日に施行された。優れた美術品をより多くの国民が鑑賞できるよう、展示美術品の損害を政府が最大950億円まで補償するもので、美術品評価額の上昇や保険料の高騰を背景に1990年代から検討されてきた。同法律の施行を受け、9月には第1回対象の展覧会として、10月から開催の「ゴヤ―光と影」展(国立西洋美術館)と11月から開催の「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」(愛知県美術館)に適用されることとなった。

第6回西洋美術振興財団賞受賞者決定

2011年06月

西洋美術の理解や研究発表などに貢献した展覧会に携わった個人・団体を顕彰する西洋美術振興財団賞の第6回目の受賞者が17日に決定した。個人に贈られる学術賞は大屋美那(国立西洋美術館で開催の「フランク・ブラングィン」展に対して)、神谷幸江(広島市現代美術館で開催の「サイモン・スターリング 仮面劇のためのプロジェクト(ヒロシマ)」展に対して)が、団体に贈られる文化振興賞は三菱地所(三菱一号館美術館での「マネとモダン・パリ」展に対して)が受賞した。

平泉、世界遺産登録へ

2011年05月

世界遺産への登録の可否を事前に審査する国連教育科学文化機関(ユネスコUNESCO)の諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモスICOMOS)は7日、日本が再推薦した平泉(岩手県平泉町)について、世界文化遺産として登録を求める評価結果を勧告した。これを受けて6月26日、ユネスコ世界遺産委員会で世界文化遺産として登録することが決定した。平泉は2008年にイコモスが「記載延期」とし、世界遺産委員会も勧告を指示したために登録が見送られたが、日本政府は「浄土思想の表現」である点を明確化して再推薦していた。なお国立西洋美術館本館等、日本がフランス等と共同推薦した建築家ル・コルビュジエ設計の建築物については、イコモスが「不登録」を勧告し、世界文化遺産への登録は見送りとなった。

名勝・史跡指定の答申

2011年05月

文化審議会(会長:西原鈴子)は20日、富士山の火山活動でできた湖「富士五胡」(山梨県)など4件を名勝に、7世紀築造とされる四国最大の長方形墳「宇摩向山古墳」(愛媛県四国中央市)など4件を史跡に指定するよう高木義明文部科学相に答申した。富士五湖は富士山信仰と深く関連し、また浮世絵など多くの芸術作品の題材になり、観賞上の価値も高いと評価されたもの。また日本最古の公園の一つで阪神大震災の慰霊式が行われる「東遊園地」(神戸市)など2件を登録記念物に、「佐渡西三川の砂金山由来の農山村景観」(新潟県佐渡市)など5件を重要文化的景観に選定するよう答申した。

山本作兵衛による炭鉱記録の世界記憶遺産登録

2011年05月

国連教育科学文化機関(ユネスコUNESCO)のボコバ事務局長は25日、山本作兵衛による筑豊炭鉱の記録画及び記録文書697点を「世界記憶遺産」に登録することを承認したと発表した。地元の福岡県田川市と福岡県立大学が推薦していたもので、日本での登録は初めてとなった。

岡本太郎壁画への画面張り付け行為

2011年05月

東京・渋谷駅構内に飾られている岡本太郎の壁画「明日への神話」の一角に、ベニヤ板に描かれた別の絵が張られていることが1日判明した。3月に起こった福島第一原子力発電所の事故をイメージさせる内容で、18日にはアーティスト集団のChim↑Pomが個展の内覧会で、壁画に絵を取りつけている映像作品と原画を公開し、その実行を表明。7月4日には警視庁渋谷署が軽犯罪法違反(はり札)容疑で、同集団の内リーダーを含む3名を書類送検した。

読売あをによし賞受賞者決定

2011年05月

保存科学・修復の現場で優れた業績をあげた個人・団体を顕彰する読売あをによし賞(主催:読売新聞社、特別協力:文化財保存修復学会)の第5回目の受賞者として、本賞に国指定文化財の甲冑修理に従事するただ一人の継承者である小澤正実、奨励賞に奈良・唐招提寺金堂等、様々な歴史的建造物の彩色復元図を手がけてきた奈良教育大学准教授の大山明彦、特別賞に岩手県二戸市で文化財修理に欠かせない国産漆の確保と、その採取技術の継承に尽力する日本うるし掻き技術保存会が決定した。

文化財ドクター派遣事業の開始

2011年04月

文化庁は27日付けで「東日本大震災被災文化財建造物復旧支援事業実施要項」を発表。東日本大震災で被災した地域の教育委員会や日本建築学会ほか、関係団体等と協力し、被災文化財の建造物に対して専門職員等の派遣を行う「東日本大震災被災文化財建造物復旧支援事業」(文化財ドクター派遣事業)を開始した。

「五百羅漢 増上寺秘蔵の仏画 幕末の絵師 狩野一信」展開催

2011年04月

幕末の絵師狩野一信が中心となって描き、増上寺に納められた百幅の五百羅漢図全点と一信による他の五百羅漢図を合わせて展示する「五百羅漢 増上寺秘蔵の仏画 幕末の絵師 狩野一信」展が29日から7月3日まで江戸東京博物館で開催された。当初3月15日からの開催予定であったが、3月11日の東日本大震災により会期を遅らせた。法然上人800回忌にちなんだ企画で、大幅のためこれまで一部のみが展示されてきた増上寺本の全貌が紹介され、西洋的な遠近法や陰影法を取り入れた濃密で個性的な一信の画業が印象付けられる貴重な機会となった。

特別展「写楽」開催

2011年05月

鮮烈なデビューからわずか10ヶ月で姿を消し、謎の絵師とされる東州斎写楽の版画142点を集め、その魅力に迫る特別展「写楽」が東京国立博物館で1日から6月12日まで開催された。当初4月5日から開催予定であったが、3月11日の東日本大震災により会期を遅らせた。第一章「写楽以前の役者絵」、第二章「写楽を生み出した蔦屋重三郎」、第三章「写楽の全貌」、第四章「写楽とライバルたち」、第五章「写楽の残影」という構成で、芝居番付との比較により描かれた役者と演目の同定を行い、上演日時に従って編年的に画業の変遷を跡づける展示となった。同じ役に取材した他の絵師の作品も出品され、写楽の造形の特色を浮かび上がらせる充実した企画となった。

日本芸術院賞受賞者決定

2011年04月

日本芸術院(院長:三浦朱門)は26日、2010年度の芸術院賞受賞者を発表した。美術部門で山崎隆夫(日本画、日展出品作「海煌」に対して)が恩賜賞・日本芸術院賞を、同部門で黒田賢一(書、日展出品作「小倉山」に対して)、古谷誠章(建築、「茅野市民館」に対して)が日本芸術院賞を受賞した。

第25回平櫛田中賞受賞者決定

2011年04月

日本の彫刻界の振興と平櫛田中の業績の後世への継承を期して設けられた平櫛田中賞(主催:岡山県井原市)の第25回目の受賞者は小谷元彦に決定した。ヴェネツィア・ビエンナーレ日本代表など国際的な活躍に対して、新しい時代の彫刻の領域を開拓している点が評価された。

重要文化財(建造物)指定の答申

2011年04月

文化審議会(会長:西原鈴子)は15日、境内の建物配置や社殿の形式が特徴的な柞原八幡宮(大分市)や、明治神宮外苑の中心施設である聖徳記念絵画館(東京都新宿区)など8件の建造物を重要文化財に指定し、愛知県豊田市の足助地区など3地区を重要伝統的建造物群保存地区に選定するよう、高木義明文部科学相に答申した。

平成23年度文化庁予算決定

2011年03月

平成23年度予算案が29日、成立した。文化庁予算は1031億2700万円となり前年度より1.1%、11億300万円の増額となった。Ⅰ.豊かな文化芸術の創造と人材育成、Ⅱ.我が国のかけがえのない文化財の保存・活用・継承等、Ⅲ.我が国の優れた文化芸術の発信・国際文化交流の推進、の3つを柱とし、とくに「元気な日本復活特別枠」として、Ⅰでは「文化芸術による次世代人材育成プロジェクト」、Ⅱでは「文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業」、Ⅲでは「クリエイティブ・ニッポン発信!プロジェクト」に計133億円が計上された。

文化財レスキュー事業の開始

2011年04月

東日本大震災で被災した文化財を保護するため、文化庁が3月30日付けで発表した「東北地方太平洋沖地震被災文化財等救援事業(文化財レスキュー事業)実施要項」を受けて「東北地方太平洋沖地震被災文化財等救援事業」(文化財レスキュー事業)が開始、事務局が東京文化財研究所内に設置された。同事業は国・地方の指定等の有無を問わず、動産文化財及び美術品を対象として、これらを救出、応急処置し、所有者の手に戻るまでの一時保管のための措置を行うもので、国立文化財機構及び全国の文化財・美術関係団体が参加、被災した各県との共同による救援活動となった。

重要文化財指定の答申

2011年03月

文化審議会(会長:西原鈴子)は18日、日本画家上村松園が描いた「母子」(東京国立近代美術館蔵)など美術工芸品計43件を重要文化財に指定するよう高木義明文部科学相に答申した。同時に築地本願寺本堂(東京都中央区)など建造物194件と、美術工芸品2件を登録有形文化財として登録するよう答申した。

「青木繁展―よみがえる神話と芸術」開催

2011年03月

日本の浪漫主義美術に重要な足跡を残して1911年に死去した画家青木繁の没後100年を記念して、そのしごとの全容と今日までの評価の変遷をたどる「青木繁展―よみがえる神話と芸術」が25日から5月15日まで石橋美術館で開催された。224点の作品と61点の関連資料が第1章「画壇への登場」、第2章「豊饒の海」、第3章「描かれた神話」、第4章「九州放浪、そして死」、第5章「没後、伝説の形成から今日まで」の構成で展観され、青木繁研究の蓄積が傾注された企画となった。同展は京都国立近代美術館(5月27日~7月10日)、ブリヂストン美術館(7月17日~9月4日)に巡回した。

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