- 本データベースは東京文化財研究所刊行の『日本美術年鑑』に掲載された彙報・年史記事を網羅したものです。
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2011年03月 明から渡来した隠元禅師による黄檗宗大本山萬福寺開創から350年になることを記念し15日から5月22日まで九州国立博物館で「黄檗 OBAKU 京都宇治・萬福寺の名宝と禅の新風」展が開催された。伝統的な中国臨済宗の法、仏教儀礼および明の生活文化をそのまま17世紀の日本にもたらした黄檗宗の寺に伝わる作品資料142点が、第1章「はじめての黄檗宗 身近な黄檗文化」、第2章「唐人たちの長崎」、第3章「隠元渡来」、第4章「萬福寺の開創と興隆」、第5章「黄檗文華」の構成で展観された。
2011年03月 2011年が浄土宗の宗祖法然800回忌と浄土真宗の宗祖親鸞の750回忌に当たるため、その記念展が相次いだ。17日から京都市美術館で「親鸞聖人750回忌宗教団連合40周年記念親鸞展 生涯とゆかりの名宝」(5月29日まで)、26日から京都国立博物館で「法然―生涯と美術」展(5月8日まで)が開催された。「親鸞 生涯とゆかりの名宝」では「親鸞聖人の教えと生涯」「浄土真宗のひろがり」「伝来の名宝と美術」の3章構成で国宝・重要文化財45点を含む約130点の作品資料が展観され、「法然―生涯と美術」展では、第一章「法然の生涯と思想」で国宝「法然上人絵伝」を軸に法然の生涯をたどり、第二章「法然への報恩と念仏の継承」で法然没後の信仰から生まれた作品を展観した。ゆかりの寺院に伝わった優品が一堂に会する貴重な機会となった。
2011年03月 東日本大震災に続く福島第一原子力発電所の事故で、海外から美術品を借りる展覧会の中止・延期が相次いだ。4月2日~6月26日に横浜美術館で開催予定だった「プーシキン美術館展」は展示環境の安全性が確保されていないとロシア側が判断したことなどから開催を延期した。また4月5日から広島県立美術館で開催予定だった「印象派の誕生」展も、フランス文化省美術館総局が日本への美術品貸与を一時見合わせるよう勧告したため中止となった。一方、4月9日~5月29日に目黒区美術館で開催予定だった「原爆を視る 1945-1970」は、目黒区および美術館を運営する同区芸術文化振興財団で協議し、被災者の心情に配慮して開催が見送られた。
2011年03月 文化庁は11日、2010年度の芸術選奨文部科学大臣賞と同新人賞の受賞者を発表した。芸術選奨文部科学大臣賞美術部門では、アーティストのオノデラユキ(「オノデラユキ 写真の迷宮へ」展に対して)、建築家の隈研吾(「梼原・木橋ミュージアム」に対して)、メディア芸術部門ではゲームクリエーターの宮本茂(「スーパーマリオギャラクシー2」に対して)が受賞。同新人賞美術部門では、現代美術家の束芋(「束芋:断面の世代」展に対して)、芸術振興の部門ではアーティストの中村政人(「アーツ千代田3331」の開館及びその運営に対して)、評論等の部門では戦後日本前衛美術研究家の黒ダライ児(著作『肉体のアナーキズム』に対して)、メディア芸術の部門ではメディア・アーティストのクワクボリョウタ(「10番目の感傷〈点・線・面〉」に対して)が受賞した。
2011年03月 18世紀後半に主に京都で活躍し、大胆な構図と筆致で眼を驚かせる作品を残した絵師長沢芦雪の作品資料110点を展観する「長沢芦雪 奇は新なり」展がMIHO MUSEUMで12日から6月5日まで開催された。第一章「応挙に学ぶ」では師円山応挙のもとでの修学を示す初期作品を、第二章「南紀へ向かう」では応挙の名代で出向いた南紀での制作を、第三章「奇は新なり」では南紀から京都へ戻った後の斬新な作品が集められ、第四章「芦雪をめぐる人々」では芦雪を取りまく環境に、第五章「光への関心」では近代にも通ずる光の表現に焦点を絞った展示がなされた。第六章では新たに所在が確認された「方寸五百羅漢図」が紹介された。師の画風を習得した上で型を破った芦雪の画業が再検証される展観となった。
2011年03月 前年に優れた成果を挙げた写真家に贈られる土門拳賞の第30回受賞者が石川直樹に決定した。受賞対象は『CORONA』(青土社)で、南太平洋のポリネシアを題材に、強大な一つの中央でなく無数の中心が共存する新しい世界のあり方を模索するという一貫したテーマと精力的な写真活動が高く評価された。
2011年03月 11日に発生した東日本大震災により、東北・関東地方の多くの文化財が損傷・倒壊等の被害を受けた。被災した国指定関係の文化財は744件にのぼり、宮城県松島町の瑞巌寺では庫裏(国宝)の壁の一部が崩落、茨城県水戸市の旧弘道館(特別史跡・重要文化財)では学生警鐘が全壊した。地震に伴い発生した津波による被害も甚大で、茨城県北茨城市の茨城大学五浦美術文化研究所六角堂(登録有形文化財)は土台のみを残し流失した。美術館・博物館も地震・津波による被害を受け、石巻文化センターでは津波の直撃により1階がほぼ壊滅、陸前高田市立博物館では建物の躯体のみを残した状態となり、所蔵品全てが津波により水損した。
2011年03月 1970年の大阪万博のシンボルとなった「太陽の塔」の制作などで知られる岡本太郎の生誕100年を記念し、約130点の作品によって、そのしごとの全貌をふりかえる「生誕100年 岡本太郎展」が8日から5月8日まで東京国立近代美術館で開催された。プロローグ「ノン!」、第1章「ピカソとの対決」、第2章「『きれい』な芸術との対決」、第3章「『わび・さび』との対決」、第4章「『人類の進歩と調和』との対決」、第5章「戦争との対決」、第6章「消費社会との対決」、第7章「岡本太郎との対決」、エピローグ「受け継がれる岡本太郎の精神」という構成で、一貫して既成の価値観への対決を挑んだ足跡が編年的に展観された。岡本太郎記念館の公開、川崎市岡本太郎美術館の開館など、近年再評価が盛んに行われている中で、岡本の今日的な位置を再考しようとする意欲的な企画となった。
2011年03月 写真家木村伊兵衛の業績を記念し、優れた新人写真家に贈られる木村伊兵衛写真賞(主催:朝日新聞社、朝日新聞出版)の第36回目の受賞者は9日、下薗詠子(写真集『きずな』と同名の写真展に対して)に決定した。同世代の女性や友人、家族を被写体とし、その不条理感漂う作風が高く評価された。
2011年01月 関西に所在する中国絵画のコレクションの全体像を紹介すべく、近隣の展示施設9館が連携して行う「関西中国書画コレクション展」が8日から2月20日まで京都国立博物館で開かれる「上野コレクション寄贈50周年記念 筆墨精神―中国書画の世界」展を皮切りに、澄懐堂美術館、黒川古文化研究所、観峰館、和泉市久保惣記念美術館、泉屋博古館、藤井斉成会有鄰館、大阪市立美術館、大和文華館で行われた。上野理一、阿部房次郎、山本悌次郎、黒川幸七、藤井善助、矢代幸雄、須磨弥吉郎、住友寛一、橋本末吉、原田観峰、林宗毅らのコレクションとなった中国美術の優品が一連の企画で展観される機会となった。近隣館が共同で行う企画としても注目された。
2011年02月 京都・高山寺が所有する「鳥獣人物戯画」(鳥獣戯画)四巻のうち丙巻が、本来は十枚の和紙の裏表に描かれていたのを一枚ずつ剥がして二十枚にし、絵巻物に仕立てていたことが、保存修理中の調査でわかった。15日に高山寺と京都国立博物館が発表したもので、同寺に伝わる記録から、絵巻に仕立てられたのは江戸時代初期とみられている。
2011年01月 芸術文化における優れた業績を顕彰する毎日芸術賞(主催:毎日新聞社)の第52回目の受賞者が発表され、美術関係では、陶芸家の秋山陽(大阪・アートコートギャラリーでの個展「秋山陽 展」に対して)、美術家の森村泰昌(東京都写真美術館等での個展「なにものかへのレクイエム―戦場の頂上の芸術」に対して)が受賞した。