国宝重文の行方不明所有者変更など

記事番号:02922
年月:1971年09月

世界の三大聖旗の一と言われる天草四郎時貞の「陣中旗」(重文)が昭和39年頃から行方不明になっていることが判り既に海外に渡っている惧れもあると憂慮されている。また京都の教王護国寺は昭和34年頃から国宝・重文を含む50件の寺宝を文化庁(国宝十二天像)、天理図書館(国宝類聚名義抄など)、世界救世教(重文童子経曼荼羅など)、その他に経済的理由から売却していたことが明らかになった。更に図録「在外秘宝」(学習研究社)に東寺の秘本「九旺秘暦」(未指定)がニューヨーク市立図書館所蔵として紹介されて初めて売却されていたことが判り、未指定文化財の海外流出の危機が改めて強く叫ばれた。此等の文化財の売却はその量と質の高さと、連絡を受けなかった京都府教育委員会の東寺・文化庁に対する不満が伝えられて注目を集めたが、所有者の経済的内部事情と国民的視野からの文化財保護の立場との交錯による事態と、これを解決出来ない文化財購入予算の不足という現状を浮彫りにした。

登録日: 2014年04月14日
更新日: 2020年12月11日 (更新履歴)
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