国際美術史学会東京会議開催

1991年09月

1873年の開設から長い歴史を持つ国際美術史学会(CIHA)の東洋での初めての会議が18日から3日間、東京・上野の奏楽堂と東京国立博物館を会場として行なわれた。同学会は4年毎に大会を、その間の毎年1回、特定の主題に基づく会議を行なっており、東京会議(会議実行委員会代表高階秀爾)は後者にあたり「美術史における日本と西洋」がテーマ。「直接交流と影響」「芸術の時間=空間表現」「概念と方法」の3セクションから構成され、国内外の研究者の発表、交流を通じて国際的地平を開く場となった。

「ルーブル美術館特別展-肖像画の表現」「日本の肖像画」「特別展 日本の肖像画」「近世の肖像画」展開催

1991年09月

世界的に著名なルーブル美術館の30万点におよぶ収蔵品の中から、肖像画に焦点をあてて古代から19世紀までを総覧する「ルーブル美術館特別展-肖像画の表現」が18日から12月1日まで国立西洋美術館で開かれた。人間を描くことを重視してきた長い歴史を持つ西洋絵画の肖像表現の流れを示す充実した展観となった。同じ時期、東京国立博物館では「日本の肖像画」展が開かれ、国宝、重要文化財を数多く含む14点の精選作品で日本の肖像画の粋を展観。この後10月4日から大和文華館で「特別展 日本の肖像画」(11月10日まで)、10月9日から佐賀県立美術館で「近世の肖像画展」(11月4日まで)が開かれ、日本の肖像画に焦点をあてた展観があいついだ。

文化庁、日本近代化の文化遺産調査

1991年09月

文化庁はわが国の近代化の足跡を示す文化遺産の調査を行ない、その保護の範囲を探り、保存方法を検討する作業を5年がかりで行なうことを決め、5日までに提出する来年度予算の概算要求に織りこんだことが明らかになった。国産機関車第1号、「琵琶湖疎水」「富岡製糸場跡」などが現段階で調査対象の候補に上げられている。

ボストン美術館秘蔵フェノロサコレクション屏風絵名品展開催

1991年09月

海外所在の日本美術品が注目されている中で明治期に来日したアメリカ人アーネスト・フェノロサの収集品を蔵するボストン美術館の東洋部創立100年を記念して、フェノロサ・コレクションの中から屏風絵23件35点を選出した展観が14日より10月27日まで奈良県立美術館で行なわれた。伝尾形光琳「松島図」などを含む出品作の約半数は日本初公開のもので、収集者の特色ある視点をうかがわせる興味深い展観となった。同展は東京・日本橋高島屋(11.1~19)、広島県立美術館(92.2.18~3.22)を巡回した。

大英博物館で「鎌倉彫刻展」開催

1991年09月

国宝、重文を含む40件を日本から出品して日本の鎌倉時代の彫刻を展観する“Kamakura-The Renaissance of Japanese Sculpture 1185-1333”展(主催・文化庁、国際交流基金、大英博物館)が、17日より11月24日まで大英博物館で開かれた。今秋、英国では日本文化を紹介する様々な催しが行なわれており、本展もその一環をなす。

第4回朝倉文夫賞決定

1991年08月

過去2年間のすぐれた彫刻活動に対して贈られる朝倉文夫賞(東京都台東区芸術・歴史協会主催)の選考委員会が21日、台東区役所で行なわれ、篠田守男「TC5908-X」が受賞作に選ばれた。

政府、中国遺跡保存に協力表明

1991年08月

10日午前中国を訪問した海部首相は、同日夕、李鵬首相との会談で、中国の文化遺跡の保存に資金・技術面で協力する「シルクロード・プロジェクト」の実施や、外国人の青年指導者層を日本の地方自治体に招く国際交流事業「JETプロジェクト」の対象に中国を加える等、日中文化交流の強化を表明した。

能登にガラス美術館開館

1991年07月

石川県鹿島郡能登町に、石川県能登島ガラス美術館が、29日開館した。ガラス専門の美術館としては公立で初めての美術館となった。

「フィレンツェルネサンス芸術と修復展」開催

1991年07月

湾岸戦争の影響で開催を延期されていた「フィレンツェ・ルネサンス 芸術と修復展」が、京都国立近代美術館(16~9.1)を皮切りに、世田谷美術館(9.14~11.4)、名古屋市美術館(11.23~12.23)で開かれた。イタリア・ルネサンスの発祥地フィレンツェのウフィッツィ美術館、ピッティ美術館などからフレスコ画、テンペラ画、彫刻、金銀細工などを含む約80点が出品され、ボッティチェルリ、ミケランジェロ等ルネサンスの巨匠の作品が展示される充実した展観となった。伝統あるイタリアの修復技術もあわせて公開され、文化財保存のあり方にも一石を投じた。

国際日本文化研究センターで在外日本美術品研究開始

1991年07月

文部省所管の大学共同利用機関である国際日本文化研究センター(梅原猛所長)は、長谷工コーポレーションの寄附により本年4月から平成8年3月までの5年間、在外日本美術品の所在を確認し、資料の収集、整理、蓄積を行ない活用に供することとし、「海外日本美術情報(長谷工)寄附研究部門を設立した。

日本モンゴル学術調査団、着々と成果

1991年07月

チンギス・ハーン陵墓の探索(ゴルバン・ゴル計画)を続ける日本・モンゴル学術調査団は、6日までに、オノン川流域の岩面に、タタールと明の永楽帝が戦った「オノン河畔の戦い」(1410年)を実証する墨書を発見した。同14日までには、同川流域で181基の匈奴時代(紀元前3~2世紀)の墳墓群を発見。さらに11月には、ウランバートルの東方400キロ、ヘンティー県バヤンホタク・ソムで、12世紀末、チンギス・ハーンの応援でタタールを討伐した金軍の戦勝記念の碑文が、発見された。いずれも「元朝秘史」を裏づける貴重な発見となった。

第7回ヘンリームーア大賞決定

1991年07月

抽象彫刻を対象とする国際コンクール展であるヘンリー・ムーア大賞展(彫刻の森美術館主催)の審査が8日に行なわれ、各賞の受賞者が決定した。招待部門4作品と、コンクール部門への応募作740点の中から選ばれた入選作21点の計25点のうち、ヘンリー・ムーア大賞はオランダのマルゴット・ザンストラ「幻の宮殿」、優秀賞はピーター・ローガン(英)「平和のためのパイプ」、岡本勝利「単体から」、河原良行「風のスイング」、ハリトーン・アカラパット(タイ)「彫刻家の墓」、ゲオルギ・チャプカノフ(ブルガリア)「×+」が受賞することになった。

第5回本郷新賞決定

1991年07月

野外彫刻を対象に贈られる本郷新賞(財団法人札幌彫刻美術館主催)の第5回受賞者は、簑田哲日児「Commencement  and Pease」に決定。受賞記念展は9月12日から10月13日まで札幌彫刻美術館で開かれる。

「戦後洋画と福島繁太郎展」「昭和の絵画」展開催

1991年06月

蒐集家福島繁太郎の足跡を追い、彼の紹介したエコール・ド・パリの作品と彼の支援を受けた日本の作家の作品を展示する「戦後洋画と福島繁太郎展」(28~8.4 山口県立美術館)と、第1部「戦前-伝統と近代」(7.13~8.11)、第2部「戦争と美術」(8.15~9.16)、第3部「戦後美術-その再生と展開」(9.21~10.20)で構成される「昭和の絵画」展(宮城県立美術館)がそれぞれ開かれ、日本近代の後半部60余年にわたる昭和の絵画史を検証する充実した展観となった。

近現代作家の個人美術館開設あいつぐ

1991年07月

現存の洋画家脇田和の作品を展示する脇田美術館(長野県北佐久郡軽井沢町)が2日、放浪の詩人画家佐藤渓の遺作を所蔵する佐藤渓美術館を拡張、改築した由布院美術館(大分県由布院町)が21日にオープン。前者は脇田和の別荘の敷地内に建てられ鉄筋コンクリート2階建て、延べ床面積1100平方メートルで、脇田自身が基本設計に当たった。後者は地域環境、自然との共生をめざす象設計集団の設計になるユニークな建物で、染色工房、野外劇場などを備え、美術展示だけでなく幅広い活動をめざしていく。 また、11月23日には現存の洋画家猪熊弦一郎の画業を讃え、その芸術を永く伝承することを柱に丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(地上3階地下1階、延床面積7840平方メートル)が開館し、開館記念展として「猪熊弦一郎展」を行なうこととなった。

大正の新しき波展

1991年06月

1910~20年代の日本画変革の様子を、再興日本美術院、国画創作協会を中心に、東西両画壇の比較的視点から捉える展覧会が、14日から7月7日まで栃木県立美術館で行なわれた。大正期日本画の見直しの気運が高まる中での好企画となった。

第14回マルコポーロ賞決定

1991年06月

イタリア文化に関する前年度刊行の単行本を対象とするマルコ・ポーロ賞(イタリア文化会館主催)の第14回受賞者に青柳正規『古代都市ローマ』(中央公論美術出版)が選ばれ、21日、東京九段のイタリア文化会館で贈呈式が行われた。

第16回吉田五十八賞決定

1991年06月

吉田五十八記念芸術振興財団の主催する建築賞、吉田五十八賞の第16回受賞者は、建築の部=出江寛「東京竹葉亭」(大阪ロイヤルホテル内)、特別賞=山田脩二「伝統的な素材『瓦』の新しい使い方による、一連の創作活動に対して」、吉田桂二「『飛騨の匠文化館』他一連の修景計画に対して」、に決定した。建築関連美術の部は該当作がなく今年の授賞は行われない。表彰式は7月4日、東京丸の内の東京会館で行われる。

「日本をかざる」展開催

1991年06月

日本美術への有効な視点として注目されている「かざり」をテーマに「荘厳-神仏の世界のかざり」「祭祀-祭礼、儀式のかざり」「装身-人間を装うかざり」「調度-身のまわりのかざり」の4部構成で、平安時代から江戸時代後期にかけての絵画、工芸約120点を展示する「日本をかざる」展が、サントリー美術館で11日から7月21日まで同館開館30周年記念展第2弾として行なわれた。

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