北斎の版木の裏から写楽の色版発見される

1987年08月

昨年夏ボストン美術館で発見された500余枚の北斎の版木の調査が進められ、北斎筆「絵本東都遊」の色版木4枚の裏に写楽筆「大童山土俵入り図」の色版の一部が彫られていることがわかった。謎の絵師写楽に関する資料として注目された。

モンドリアン展

1987年07月

幾何学的抽象画の先駆者ピエト・モンドリアンの本格的回顧展が開かれ、初期の具象絵画から晩年の作品まで約110点が出品された。同展は東京、池袋西武美術館(7.25~8.31)を皮切りに宮城県立美術館、滋賀県立近代美術館、福岡市美術館を巡回した。

「石造弥勒菩薩立像」真贋論争

1987年07月

大阪の亀広記念医学会蔵のインド・ガンダーラ仏「石造弥勒菩薩立像」の真贋をめぐり論争が繰り広げられ、専門家を集めた協議会等が開かれた。

パロディー訴訟和解

1987年06月

写真家の白川義員の山岳写真を無断利用したとして著作権侵害でグラフィック・デザイナーのマッド・アマノを相手として46年9月より争われていたパロディー写真訴訟は、16日三度目の控訴審が行なわれて和解が成立。写真家側の主張をほぼ認め著作者人格権を侵害した慰謝料が支払われることとなり、パロディーに一定の制約を加える法的判断が示された。

黒田清輝筆「木かげ」帰国

1987年06月

1900年パリ万国博に出品されたまま行方のわからなかった黒田清輝筆「木かげ」が、29日ロンドンのクリスティーズの競売で日本人によって落札され、帰国することとなった。

12回吉田五十八賞決定

1987年06月

建築美術を対象とする吉田五十八賞の建築の部、建築関連美術の部の本年度該当作品はなく、建築の部で石井修「目神山の家(8)」、重村力「脇町立図書館」、宮本忠長「小布施町街区整備修景」の3件が佳作賞に、吉田義男が建築ジャーナリスムを通じての建築界への貢献により特別賞に選ばれた。

奈良県桜井市上之宮で6世紀末の宮殿跡発掘

1987年06月

11日、奈良の上之宮で大規模な宮殿遺構が発掘され、17日桜井市教育委員会は「6世紀末の宮殿クラスの建築遺構群を確認した」と発表。上之宮は聖徳太子が32歳まで居住した上宮であるとする説もあり、遺跡の規模、『日本書紀』などの記述との異同などで論議をよんだ。

大英博物館蔵日本中国美術名品展

1987年05月

約6万点の東洋美術品を所蔵する大英博物館にジャパニーズ・ギャラリーが設立されることとなったことにちなみ、同館の日本・中国美術品の中からスタイン・コレクションを含む151件を出品する展覧会が28日から6月7日まで東京国立博物館で開催された。同展は奈良県立美術館(6.16~7.26)、名古屋市博物館(8.4~9.6)、福岡市美術館(9.20~10.25)を巡回した。

カンディンスキー展

1987年05月

20世紀、抽象絵画への扉を開いたカンディンスキーの油彩60点、水彩・素描約40点を展観する日本で初めての本格的な個展が、28日から8月9日まで東京国立近代美術館で開かれた。同展は京都国立近代美術館に巡回した。(8.18~10.4)

松田権六展

1987年04月

加賀蒔絵の伝統を今日に伝えた漆芸界の巨匠松田権六の回顧展が25日から5月24日まで郷里の石川県立美術館で開かれた。一周忌展として全貌を回顧する展観となり、5月29日から6月9日まで東京、有楽町アート・フォーラムに巡回した。

ボロフスキー展

1987年04月

カリフォルニア在住のアメリカ人作家ジョナサン・ボロフスキー展が11日より6月7日まで東京都美術館で開かれ、’84年に全米を巡回した回顧展以来注目を集めている現代作家を紹介する日本で初めての大規模な個展として反響をよんだ。同展はこののち滋賀県立近代美術館でも行なわれた。

18回現代日本美術展

1987年04月

隔年で行なわれる現代日本美術展のコンクール部門には、863作家1640点の応募があり、この中から211作家211点が入選。大賞にはハイテクノロジーを駆使した村松泰三「スペース・サイクロイド」、美術文化振興協会賞に金昌永「SAND・PLAY」、佳作賞には平面の分野で黒木重雄、サカイトシノリ、福田美蘭、立体の分野で神山明、渡辺明節が選ばれた。同展は23日より東京都美術館で開催され、本年より現代作家の近作を作家ごとにまとめて展示する企画部門が設けられた。

O美術館、町田市立国際版画美術館開館

1987年04月

品川区が設立した財団法人品川文化振興財団(理事長=区長)の運営するO美術館が、4日に開設された。コンピュータ・グラフィックスの制作スタジオを持ち、ハイテクノロジー・アートに目を向けた美術館として注目される。また、18日、わが国で初めての版画美術館として町田市立国際版画美術館が開館。延床面積7840.22平方メートル、アトリエ等を含む充実した普及教育施設をそなえ、国際的な版画美術館を目ざして活動を開始した。

ゴッホの「ひまわり」58億円で落札

1987年03月

30日ロンドンで行なわれたクリスティーズの競売でゴッホの「ひまわり」が絵画取引での最高値であったマンテーニャの「三博士の礼拝」(約19億5百万円)を上回る58億円で安田火災によって落札された。同作品は10月13日より安田火災東郷青児美術館で一般公開された。

9回山種美術館賞決定

1987年04月

46年以降隔年ごとに行なわれてきた山種美術館賞の第9回受賞者は、大賞が浅野均「静かな地平」、優秀賞が大野俊明「東風」と岡村桂三郎「オオカミ」と決定した。山種美術館賞展は、同美術館での4月4日から5月24日までの展観を皮切りに全国を巡回した。

文化財の新指定(美術工芸品)、選定保存技術保持者認定

1987年03月

文化財保護審議会(斎藤正会長)は28日、美術工芸品54件を新たに国の重要文化財として指定するよう塩川文相に答申した。源平合戦で使われたという「那須与一の太刀」、冷泉家時雨亭文庫の源俊頼「散木奇歌集」など、絵画10、彫刻5、工芸8、書籍・典籍11、古文書5、考古資料10、歴史資料5が答申され、この結果、美術工芸品関係の重要文化財は計9403件、うち国宝は827件となった。また、同審議会は同日、文化財保存のために必要な「選定保存技術」として唐紙製作の千田長次郎、蒔絵筆製作の村田九郎兵衛を認定するよう答申した。

「西洋の美術」展開催

1987年03月

「空間表現の流れ」をテーマに(1)古代ギリシャ(2)古代エトルリア・ローマ(3)中世(4)イタリア・ルネサンス(5)北方ルネサンス(6)17・18世紀(7)19世紀(8)20世紀の8部門で構成し、西洋美術(絵画、彫刻)を広く見渡した大規模な展観が、28日より6月14日まで国立西洋美術館で行なわれた。欧米の美術館から名品を集めた質の高いもので、これに伴い欧米の研究者を招いたシンポジウムも開かれた。

人間国宝認定

1987年03月

文化財保護審議会は26日、重要無形文化財保持者(人間国宝)として新たに4氏を認定するよう塩川文相に答申した。美術関係では備前焼の山本陶秀、木象嵌の秋山逸生が認定された。木象嵌の分野での認定は初めてのことである。

43回日本芸術院賞受賞

1987年03月

日本芸術院(有光次郎院長)は27日、第43回日本芸術院賞に12名を内定した。第一部(美術)では、書の今井凌雪(61年日展出品「桃花瞼薄」に対して)が恩賜賞、日本画の堂本元次(61年日展出品「懸空寺」に対して)、彫刻の中村博直(58年日展出品「静秋」に対して)、建築の谷口吉生(土門挙記念館に対して)が芸術院賞に選ばれた。これで芸術院賞受賞者は355人、恩賜賞受賞者は45人となる。

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