登録有形文化財登録の答申
2018年07月文化審議会は20日、ヨーロッパ中世の町家風に和風の表現を加味した万平ホテルアルプス館(長野県北佐久郡軽井沢町)や、1955年の建設時には東洋一の支間長を誇った大規模鋼橋の西海橋(長崎県佐世保市、西海市)等、209件の建造物を新たに登録有形文化財にするよう林芳正文部科学相に答申した。
文化審議会は20日、ヨーロッパ中世の町家風に和風の表現を加味した万平ホテルアルプス館(長野県北佐久郡軽井沢町)や、1955年の建設時には東洋一の支間長を誇った大規模鋼橋の西海橋(長崎県佐世保市、西海市)等、209件の建造物を新たに登録有形文化財にするよう林芳正文部科学相に答申した。
日本画家東山魁夷の業績を称え、次代を担う日本画家を表彰するために創設された東山魁夷記念日経日本画大賞の第7回大賞受賞作に浅見貴子の「桜木影向図」が選出、23日に発表された。同受賞作を含む入選作による展覧会は、5月18日から28日まで上野の森美術館で開催された。
日本の彫刻界の振興と平櫛田中の業績の後世への継承を期して設けられた平櫛田中賞(主催:岡山県井原市)の第29回目の受賞者は岩間弘に決定したことが27日に発表された。造形の本格的な展開を試み、持続的な意志をもって彫刻とは何かを問い続けてきた姿勢が評価された。
25日より六本木ヒルズの森美術館で「建築の日本展 その遺伝子のもたらすもの」が開催された(9月17日まで)。世界で注目される日本の現代建築が古代以来の伝統的建築から脈々と受け継いできたものを探る内容で、建築資料や模型、体験型インスタレーション等の展示を通して、縄文時代の住居から最新の建築案に至るまでの100プロジェクトを紹介した。
福島市が教育文化複合施設こむこむ館前に設置し、3日に除幕式を行なった現代美術家ヤノベケンジの作品「サン・チャイルド」(高さ約6.2m)が批判を受け、28日に木幡浩市長が記者会見で像を撤去する方針を明らかにした。同作品は東日本大震災を契機に2011年に制作された防護服姿の子供の立像で、原子力災害のない世界や希望を表現したものだったが、東京電力福島第1原発事故の風評被害を助長する等の批判が相次ぎ、撤去となった。作者も合意のもと、9月18日より撤去作業が行なわれた。
保存科学・修復の現場で優れた業績をあげた個人・団体を顕彰する読売あをによし賞(主催:読売新聞社、特別協力:文化財保存修復学会)の第12回目の受賞者として、本賞に菅笠をはじめとする伝統的な菅細工の製作技術を継承してきた深江菅細工保存会(島谷真由美会長、大阪市東成区)、奨励賞に高級畳の材料として知られる大分県国東地方の七島藺の存続を図るために活動しているくにさき七島藺振興会(林浩昭会長、大分県国東市)、特別賞に古代日本の中心だった奈良県飛鳥地方等に残る歴史遺産の保存、活用に取り組む公益財団法人古都飛鳥保存財団(和田林道宜理事長、奈良県明日香村)が決定した。
19日より千葉市美術館で「1968年 激動の時代の芸術」展が開催された。全共闘運動やベトナム反戦運動の盛り上がりで社会が騒然とし、アングラ、カウンターカルチャーのような過激でエキセントリックな文化が花開いた1968年前後に焦点をあて、その時代の前衛芸術運動と社会背景を約400点の作品・資料によって展観。赤坂にオープンしたアンダーグラウンド・ディスコMUGENのライトショーを再現するなど、当時の熱気を伝える試みもなされた。同展は北九州市立美術館分館(12月1日~2019年1月27日)、静岡県立美術館(2019年2月10日~3月24日)に巡回した。
2017年度朝日賞(主催:朝日新聞文化財団)の受賞者が決定した。美術関係ではアートディレクターの北川フラムが「里山や島々を舞台にした芸術祭での地域・文化の活性化」により受賞した。
8日、東京大学と東京大学消費生活協同組合が、同大学の中央食堂壁面に飾っていた宇佐美圭司の大作「きずな」を、同食堂の改修工事に伴い2017年9月14日に廃棄処分していたことについてお詫びと経緯を公表した。同作品は1976年に東大生協創立30周年記念事業の一環として制作を依頼したもの。この事態を受け、同大学では2018年9月28日にシンポジウム「宇佐美圭司《きずな》から出発して」を開催、学内外の文化資源のあり方を問い直した。
日本・東洋美術に関する優れた研究を対象とする第30回國華賞は田辺昌子「菱川師宣と浮世絵の誕生」(『國華』1465号、2017年)に、國華特別賞は有賀祥隆『日本絵画史論攷』(2017年)に贈られることが決定した。
芸術文化における優れた業績を顕彰する毎日芸術賞(主催:毎日新聞社)の第59回目の受賞者が1日に発表され、美術家・彫刻家の遠藤利克(埼玉県立近代美術館「遠藤利克展―聖性の考古学」に対して)が受賞した。
2018年から19年にかけて、日仏友好160年を記念して日本文化を紹介する一大イベント「ジャポニスム2018 響きあう魂」がパリを中心にフランス各地で開かれ、その皮切りとして「teamLab:Au―delà des limites(境界のない世界)」展が15日より2018年9月9日までパリのラ・ヴィレット公園内の会場で開催された。この「ジャポニスム2018 響きあう魂」では日仏両政府合意の下、主に国際交流基金が中心となって美術や演劇、映画、食文化等を紹介する催しが開かれ、美術関係では上記展覧会の他、「深みへ 日本の美意識を求めて」展(2018年7月14日~2018年8月21日、ロスチャイルド館)や「若冲 〈動植綵絵〉を中心に」展(2018年9月15日~2018年10月14日、パリ市立プティ・パレ美術館)等が開催された。
文化審議会は19日、琉球王国の国王の陵墓である玉陵(那覇市)を国宝に、17世紀末から18世紀初めにかけて建造され、社殿の柱や壁を幾何学文様で飾った大前神社(栃木県真岡市)等8件の建造物を重要文化財に指定するよう柴山昌彦文部科学相に答申した。沖縄県内の建造物が国宝に指定されるのは初めて。
クロード・モネの連作「睡蓮」の中の一点で、実業家の松方幸次郎が収集した「睡蓮、柳の反映」がパリのルーヴル美術館で見つかったことを、国立西洋美術館が26日に発表した。同作品は1921年に松方がモネから直接購入したもので、2016年9月にルーヴル美術館内の倉庫部屋にて、木枠から外され筒状に巻かれた状態で発見された。その後フランス政府から松方家へ同作品は返還され、2017年11月に同家を通じて国立西洋美術館に寄贈。同美術館はその修復作業を行ない、2019年6月11日から9月23日に開催の「松方コレクション展」で公開した。
文化審議会は18日、伝統に近代的手法を巧みに融合させた昭和戦前期の和風建築として知られる旧遠山家住宅(埼玉県川島町)や旧川上家別邸(岐阜県各務原市)等、10件の建造物を重要文化財に指定するよう林芳正文部科学相に答申した。また「蔵の町」として知られる福島県喜多方市の小田付地区を重要伝統的建造物群保存地区に選定することも答申した。
建造物、伝統的建造物群、文化的景観、遺跡である記念物と歴史風土の保存、保全、活用の振興を図る日本イコモス賞2018・日本イコモス奨励賞2018の受賞者が19日に発表され、松隈章(一般社団法人聴竹居倶楽部代表理事)が聴竹居の長年の保存活動と研究・著作実績に対して、加藤友規(植彌加藤造園株式会社代表取締役社長)が文化遺産としての日本庭園の保全研究とその活用についての現代的方策と実践に対して日本イコモス賞2018を、惠谷浩子(奈良文化財研究所文化遺産部景観研究室研究員)が文化的景観の調査研究・普及・保全に関する取り組みに対して日本イコモス奨励賞2018を受賞した。
文化庁は7日、2017年度の芸術選奨文部科学大臣賞と同新人賞の受賞者を発表した。芸術選奨文部科学大臣賞美術部門では美術家の杉戸洋(「杉戸洋 とんぼとのりしろ」展の成果に対して)、現代美術家の西野達(「西野達 in 別府」展他の成果に対して)、評論等の部門では美術史家、筑波大学特命教授の五十殿利治(『非常時のモダニズム』の成果に対して)、美術評論家の椹木野衣(『震美術論』の成果に対して)、メディア芸術部門ではアニメーション作家の山村浩二(「山村浩二 右目と左目でみる夢」の成果に対して)が受賞。同新人賞の美術部門ではアーティストの岩崎貴宏(「逆さにすれば、森」展の成果に対して)、芸術振興の部門ではNPO法人クリエイティブサポートレッツ代表理事の久保田翠(「表現未満、実験室」他の成果に対して)、メディア芸術部門ではアーティストの和田永(「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」の成果に対して)が受賞した。
「文化財保護法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案」が、国会での審議を経て1日に成立、8日に公布された。過疎化や少子高齢化等により文化財の継承の基盤であるコミュニティーが脆弱化し、その減失や散逸の防止といった喫緊の課題をふまえたもので、①地域における文化財の総合的な保存・活用、②個々の文化財の確実な継承に向けた保存活用制度の見直し、③地方における文化財保護行政に係る制度の見直し、の三点が位置付けられた。これにより、都道府県は文化財の保存活用に係る総合的な施策の大綱を策定し、それを勘案して市町村は文化財保護活用地域計画を作成して国の認定を申請できることとなったほか、これまで地方公共団体の教育委員会が所管していた文化財保護の事務を条例により地方公共団体の長が担当できるようになった。
政府は26日、2018年度の文化勲章受章者5名と文化功労者20名を決定した。美術関係では、技術的に難しいとされる象嵌技法を広い面に展開する面象嵌に発展させ、陶芸に新しい可能性を切り開いた陶芸家の今井政之が文化勲章受章者に、斬新な散らし書きが伝統の品格と現代の造形感覚を兼ね備え、高く評価された書家の井茂圭洞、「建築を軽く」という方法論で注目を集め、日本各地でプロジェクトを展開し、現代建築の発展に寄与した建築家の伊東豊雄、地域創生に至るアートプロジェクトという前人未到の領域で第一人者として活躍するアートディレクターの北川フラムが文化功労者に選ばれた。
文化審議会は9日、紙本著色日月四季山水図・六曲屏風(大阪・天野山金剛寺)、木造千手観音立像・蓮華王院本堂安置(京都・妙法院)、木造四天王立像(奈良・興福寺)、紺紙金字大宝積経巻第三十二・高麗国金字大蔵経(京都国立博物館)、菅浦文書・菅浦与大浦下庄堺絵図(滋賀・須賀神社)の5件を国宝に、キトラ古墳(奈良県明日香村)の彩色壁画等50件を重要文化財に指定するよう林芳正文部科学相に答申した。あわせて岸田日出刀の設計によるモダニズム建築の旧東照宮宝物館(栃木県日光市)等196件の建造物を登録有形文化財にするよう答申した。