第18回世界文化賞受賞者決定

2006年09月

優れた芸術の世界的な創造者たちを顕彰する「高松宮殿下記念世界文化賞」(主催・財団法人日本美術協会)の第18回受賞者が日本時間8日午前0時半、ニューヨークのロックフェラーセンターで発表された。美術関係では絵画部門で草間弥生(77)、彫刻部門でクリスチャン・ボルタンスキー(フランス、62)、建築部門でフライ・オットー(ドイツ、81)が選ばれた。授賞式は10月18日、東京・元赤坂の明治記念館で行われた。

人間国宝指定

2006年07月

文化審議会(阿刀田高会長)は21日、重要無形文化財保持者(人間国宝)の新たな認定について小坂憲次文部科学相に答申した。美術関係では?漆の小森邦衛視(本名邦博)(61)、鍛金の田口寿恒(66)が選ばれた。

国立博物館常設展入館料値上げ

2006年07月

独立行政法人国立博物館は25日、全国で4館ある国立博物館のうち、九州をのぞく、東京、京都、奈良の3館で常設展入館料を10月1日から値上げすると発表した。現行で個人一般420円、大学生・高校生130円の入館料は、東京が各々600円、400円に、京都、奈良は500円、250円に改定する。2001年の独立行政法人化以来、初めての値上げとなる。

「浅井忠と関西美術院」展開催

2006年08月

1906(明治39)年に京都に設立された関西美術院の創立100年を記念し、浅井忠、鹿子木孟郎ら初期の指導者から、同院に学んで活躍した画家たちの画業を、戦前期までに焦点をあてて跡づける展覧会が府中市美術館を皮切りに開催された(26日~10月9日)。戦前までの京阪地域の洋画を先導し、梅原竜三郎安井曽太郎などの巨匠を輩出した関西美術院の歩みを、第Ⅰ章「京都洋画の揺籃期:浅井忠上洛以前」、第Ⅱ章「京都洋画壇再興:浅井忠の上洛と関西美術院開院まで」、第Ⅲ章「関西美術院を支えた人々:草創期の賑わいと浅井忠の逝去まで」、第Ⅳ章「関西美術院から巣立った人々:浅井忠没後の展開と新世代の台頭」の構成により約240点の作品で振り返る充実した展観となった。同展は京都市美術館に巡回した(10月17日~12月3日)。

「森鴎外と美術」展開催

2006年07月

明治期の文豪として知られる森鴎外と美術との関係を、交遊のあった画家たちの作品、著作や手紙などの資料を含む約350点によって総合的に検証する「森鴎外と美術」展が、鴎外の生地にある島根県立石見美術館で開催された(7月14日~8月28日)。1884年、衛生学を学ぶために陸軍軍医としてドイツに留学した鴎外は、一方でハルトマンの哲学を学ぶとともに芸術にも親しみ、1888年に帰国の後、美術批評の分野でも活躍し、1917年に帝室博物館(現、東京国立博物館)総長となった。これまで原田直次郎との関係など一面のみが紹介されてきた鴎外と美術の関わりを、多角的に展観する試みとなった。同展は和歌山県立近代美術館(9月10日~10月22日)、静岡県立美術館(11月7日~12月17日)に巡回した。

芸術選奨選考審査体制見直し

2006年07月

3月の芸術選奨受賞者選考で選ばれた和田義彦が盗作を認定されて受賞を取り消されたことを受けて、小坂憲次文部科学相は選考審査体制の見直し策を発表。選考審査員を7人から11人に増員し、推薦委員も10人から15人に増強、委員の発令日を早期化させるなど再発防止を目指す。

青森県立美術館開館

2006年07月

7月13日、1990年に設置が検討され始め、昨年9月20日に竣工した青森県立美術館が開館(館長=三村申吾青森県知事)。敷地面積129,536平方メートル、延べ床面積21,133平方メートル、鉄骨鉄筋コンクリート作り地下2階地上3階からなる。設計者は青木淳で、隣の三内丸山遺跡発掘現場に着想を得、土の大きな溝に凹凸の白い構造体をかぶせるという設計になっている。開館記念展は「シャガール『アレコ』とアメリカ亡命時代」(~9月24日)。地域ゆかりの作家の作品を中心に収集し、常設展示では青森ゆかりの重要作家を一作家一部屋で展示する方針である。

開館110周年記念特別展 「美のかけはし―名品が語る京博の歴史」開催

2006年07月

1897年5月に開館した京都国立博物館では、開館110年周年を記念して、同館の歩みを振り返る特別展「美のかけはし―名品が語る京博の歴史」を15日から開催(~8月27日)。国宝26件、重要文化財37件を含む120件の展示によって、前半は東山の地と関わりの深い後白河法皇、平清盛、豊臣秀吉関連の作品を展示し、後半は博物館誕生から現在に至る同館の歩みをふりかえる展観を行った。

登録文化財(有形)答申

2006年06月

文化審議会(阿刀田高会長)は16日、旧足尾銅山の迎賓館として建てられた古河掛水倶楽部新館・旧館(栃木県日光市)、芝川ビルディング(大阪市)など97ヶ所200件の建造物を新たに有形文化財として登録するよう小坂憲次文部科学相に答申した。登録有形文化財(建造物)はこれで計5807件となる。

高松塚損傷非公表問題で文化庁が処分発表

2006年06月

奈良県明日香村の特別史跡・高松塚古墳の国宝壁画損傷事故などを公表しなかった問題で、文化庁調査委員会(委員長、石沢良昭・上智大学長)は19日、情報公開に対する認識の甘さや同庁の体質を批判した報告書をまとめ、河合隼雄文化庁長官に提出した。これを受けて小坂憲次文部科学相、河合長官が国民の信頼を失ったことを謝罪。同省と文化庁が当時の美術学芸課長ら文化庁関係者4名に対し、減給等の処分を行うことを発表した。

芸術選奨文部科学大臣賞受賞取り消し

2006年06月

3月に芸術選奨文部科学大臣賞受賞者に選ばれた洋画家和田義彦の作品がイタリア人画家アルベルト・スギの絵画に酷似しているとの指摘を受け、文化庁は調査を進めてきたが、同庁の芸術選奨美術部門・臨時選考審査会は5日、和田の作品は盗作と認めざるを得ないとして賞の取り消しを決定した。

国立新美術館完成

2006年06月

国内で最大級の展示面積を持つ美術館として2007年1月に開館予定の国立新美術館(東京都港区六本木)の建物が完成し14日完工式が行われた。建築家黒川紀章の設計になり、総工費約350億円。地上4階、地下1階、14,000平方メートルの展示スペースを持つ。コレクションを持たず、多彩な展覧会の開催、美術に関する情報の収集と提供、教育普及を通して、人と作品が出会うためのアートセンター的役割を担う。開館記念展として「20世紀美術探検―アーティストたちの三つの冒険物語」展(1月21日~3月19日)「異邦人(エトランジェ)たちのパリ 1900-2005 ポンピドーセンター所蔵作品展」(2月7日~5月7日)が開催された。

重要文化財(建造物)指定の答申

2006年04月

文化審議会(阿刀田高会長)は21日、広島市の広島平和記念資料館(丹下健三設計)と世界平和記念聖堂(村野藤吾設計)、旧富岡製糸場繰糸所(群馬県富岡市)など12件を重要文化財に指定するよう小坂憲次文部科学相に答申した。広島の2件は戦後建築として初めての指定となる。これで建造物の重要文化財は2298件(うち国宝は213件)となった。

第10回手塚治虫文化賞受賞者決定

2006年05月

日本のマンガ文化の発展に寄与した手塚治虫の業績を記念する同賞(朝日新聞社主催)の第10回受賞者が決定。05年に発行された全てのマンガの中でもっとも優れた作品に贈る「マンガ大賞」には吾妻ひでお「失踪日記」が、清新な才能の作者に贈る「新生賞」にはひぐちアサが、短編賞には伊藤理佐が選ばれた。また、マンガ文化の発展に貢献した個人・団体に贈る特別賞は、長年海外コミックを日本に紹介してきた小野耕世が選ばれた。贈呈式は6月7日東京丸の内の東京会館で行われた。

史跡名勝、天然記念物、文化的景観の指定

2006年05月

文化審議会(阿刀田高会長)は19日、緑色凝灰岩からなる「大谷の奇石群」(宇都宮市)、二見浦(三重県伊勢市)などを新たな名勝とするなど計5件を名勝や天然記念物に、浜尻屋貝塚(青森県東通村)など13件を史跡にするよう、小坂憲次文部科学相に答申した。また、一関本寺の農村景観(岩手県一関市)の重要文化的景観への選定、第二次大戦時に沖縄戦最大の激戦地となった喜屋武(きやん)海岸および荒崎(あらさき)海岸(沖縄県糸満市)の名勝地の登録など3件の登録記念物への登録などを答申した。

第25回土門拳賞受賞者決定

2006年03月

昨年一年間に発表された写真を対象とする土門拳賞(毎日新聞社主催)の第25回目の受賞作品は、内山英明による、地下空間を撮り続けたシリーズの完結編「JAPAN UNDERGROUND Ⅲ」(アスペクト、2005年)、夜の東京を8年間写し続けた「東京デーモン」(アスペクト、2005年)に決定した。

「書の国宝 墨跡」展開催

2006年04月

鎌倉時代以降、中国の禅宗社会との交流が盛んになり、禅宗の高僧たちによって書かれた書「墨蹟」が遺されることとなった。夢窓疎石ら来朝した中国の宋・元時代の高僧、一休宗純などの日本高僧、約80名による墨蹟を、禅宗の宗派別に展観する「書の国宝 墨蹟」展が大阪市立美術館(4月18日~5月28日)、五島美術館(6月17日~7月23日)で開催された。国宝16件、重要文化財130件を含む195件が展示され、当初においては、書風などの芸術性よりも、禅宗社会での教えの系譜の正統性を裏付けるものとして価値付けられた墨蹟を、系統立てて概観する機会となった。

日本芸術院賞受賞者決定

2006年03月

日本芸術院(三浦朱門院長)は24日、卓越した芸術作品や芸術の進歩に顕著な業績があった人に贈る日本芸術院賞の2005年度の受賞者を発表した。第一部(美術)では村田省蔵(76)が洋画「春耕」(日展出品)で恩賜賞を、福田千恵(59)が日本画「ピアニスト」(日展出品)で、市村緑郎(69)が彫塑「間」(日展出品)で、原益夫(71)が工芸「エンドレス」(日展出品)で、劉蒼居(本名・振角昭彦、64)が書「袁枚詩」(日展出品)で、香山寿夫(69)が聖学院大学礼拝堂・講堂の建築で日本芸術院賞を受賞した。

「生誕120年藤田嗣治」展開催

2006年03月

エコール・ド・パリの画家のひとりとして国際的に著名な画家藤田嗣治の生誕120年を記念し、その全画業を回顧する展覧会が3月28日から5月21日まで東京国立近代美術館で開催された。東京美術学校に学んだ後、フランスに留学し、フォーヴィスムなど色彩が多用される画界にあって、陶器のような独特の質感の白い下地に肥痩のない黒い線で対象を描く画風で1920、30年代にフランス画壇の寵児となった藤田の作品は、これまで、フランスで評価の高かった時代のものを中心に紹介されてきた。この展覧会では留学ののち画風を確立するまでの作品、第二次大戦中に軍の依頼を受けて描いた戦争記録画、戦後に再度フランスに渡って以降の宗教主題の作品を含む晩年の制作なども展示され、神話や伝説に満ちたこの画家の初期から晩年までの作品を見直す機会となった。本展は京都国立近代美術館(5月30日~7月23日)、広島県立美術館(8月3日~10月9日)に巡回した。

第13回VOCA賞受賞者決定

2006年03月

第13回VOCA賞展が15日から30日まで上野の森美術館で開催された。VOCA賞(主催:財団法人日本美術協会、上野の森美術館ほか)は平面作品を対象に40歳以下の作家の支援を目指しており、今回は37名の推薦作家の中から小西真奈がVOCA賞を、佐伯洋江とロバート・プラットが奨励賞を、兼末希恵と髙木紗恵子が佳作賞を受賞。買い上げ賞である大原美術館賞に蜷川実花、府中市美術館賞に髙木紗恵子が選ばれた。

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