- 本データベースは東京文化財研究所刊行の『日本美術年鑑』に掲載された彙報・年史記事を網羅したものです。
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2006年03月 文化審議会(阿刀田高会長)は17日、「福岡県平原方形周溝墓(ひらばるほうけいしゅうこうぼ)出土品」と「琉球国王尚家(しょうけ)関係資料」の2件の国宝への指定、田中久重製作の和時計「万年自鳴鐘」など美術工芸品47件を重要文化財に指定するよう、小坂憲次文部科学相に答申した。沖縄県からの国宝指定は1950年に施行された文化財保護法下では初めて。このほか、仙台市の街頭紙芝居師井上藤吉氏の街頭紙芝居コレクションを含む紙芝居資料など美術工芸品4件、旧関善酒店主屋(秋田県鹿角市)など建造物165件の登録有形文化財への登録を答申した。
2006年03月 白河藩主松平定信に起用され19世紀初頭に西洋絵画、版画に学んだ洋風画を描いて活躍した亜欧堂田善の作品を中心に、洋風の表現や風景に対する興味など、同時代の画家たちが共有する造形感覚を概観する「亜欧堂田善の時代」展が府中市美術館で開催された(4日~4月16日)。田善の作品がこれまで西洋絵画技法の受容という視点に偏って評価されがちであったのに対し、田善がいかに自然と向き合い、いかに描こうとしたかという造形意識に焦点をあて、絵画表現への関心を促す展観となった。
2006年03月 文化庁は15日、第56回芸術選奨受賞者を発表した。美術関係では、建築家・妹島和世(49)が「鬼石多目的ホール」「金沢21世紀美術館」に対して、洋画家・和田義彦(65)が個展「ドラマとポエジーの画家」に対して美術部門の文部科学大臣賞に、彫刻家・西雅秋(59)が個展「空と大地と記憶の造形」に対して美術部門の同新人賞、現代美術家・村上隆(44)が展覧会「リトルボーイ」に対して芸術振興部門の同新人賞に選ばれた。
2006年02月 神奈川県神社庁設立60周年を記念して、同県の神道関係の文化財を展観する「神々と出逢う―神奈川の神道美術―」展が神奈川県立歴史博物館で18日から開催された(~5月7日)。「姿を顕した神々」「神々の物語」「仏と習合する神々」「神々の宝物」の4セクションで構成され、出品作の制作年代は古墳時代から江戸時代までに渡り、まとまって展示されることの少ない神道関係の文化財を体系的にとらえる充実した展観となった。
2006年02月 ドイツの国民的彫刻家でありながら、日本では1970年代になるまでほとんど紹介されてこなかったエルンスト・バルラハ(1870-1938)の木彫、ブロンズ、テラコッタ、陶磁器製彫刻、版画、素描など約180点を展示する本格的個展が京都国立近代美術館を皮切りに21日から開催された(4月2日まで)。若くして東洋美術に親近感を抱く一方、ゴシック美術の伝統に連なる作風を示すバルラハの作品を概観する貴重な機会となった。本展は「日本におけるドイツ年」の一企画として行われ、東京芸術大学大学美術館(4月12日~5月28日)、山梨県立美術館(6月3日~7月17日)に巡回した。
2006年02月 平成18年度の文化庁予算は「国内外の人々を魅了する『文化力』の向上」をテーマに1,006億4,800万円に決定した。前年度よりも95,700万円減少し、0.9%のマイナス成長となった。「文化芸術創造プランの推進」「『日本文化の魅力』発見・発信プランの推進」を重点事項とする「文化芸術立国プロジェクトの推進」、「文化財の次世代への継承と国際協力の推進」、「文化芸術振興のための文化拠点の充実」を3本の柱とし、「明日の日本文化を担うこどもを育む」ことで日本文化の裾野を拡大することを謳っている。
2006年01月 優れた芸術活動を行った個人、団体に贈られる同賞の受賞者が決定し、美術関係では、李禹煥(横浜美術館で開催された「余白の芸術」展など)が選ばれた。贈呈式は30日、東京丸の内の東京会館で行われた。
2006年02月 王立英国建築家協会が優れた建築家を毎年一人選んで表彰する「ロイヤルゴールドメダル」の受賞者に伊東豊雄が選ばれた。日本人では丹下健三、磯崎新、安藤忠雄に次いで4人目の受賞となった。
2006年01月 漢字文化圏で文字が始まってから19世紀までの多用な書の展開を、甲骨文字から19世紀の中国、日本の優品で跡づける展観が11日から東京国立博物館で行われた(~2月19日)。中国の古代から清朝に至る書の流れと、遣隋使や遣唐使の派遣と停止、鎌倉期に再び始まる日宋貿易といった大陸との交流による日本の奈良時代から江戸時代までの書の流れを189点の作品で跡づける大規模な展観となった。
2006年01月 「日本画とは何か」という明治期から問われ続けている問題を、1960年代末から70年代生まれの画家7名の制作によって考え、絵画の現在に切り込もうとする「No Border「日本画」から/「日本画」へ」展が、東京都現代美術館で21日から開催された(~3月26日まで)。毎年行われる「MOTアニュアル」の一環としての企画。1990年代に美術の制度史が盛んになったのに連動し、「日本画」という既成のボーダーの見直しを試みた気鋭の画家たちが、膠、岩絵具、墨といった材料へのこだわりを見せたのに対し、次世代の画家が余白、描線、情緒といった表現の要素を取り入れ、描く行為を重視している点を浮かび上がらせた。