現代美術資料センター所蔵資料、東京国立文化財研究所に寄贈

1997年07月

東京都中野区の現代美術資料センター(主宰・笹木繁男)が所蔵資料すべてを東京国立文化財研究所に寄贈することとなった。同センターは主宰者の自宅の一部に資料を所蔵・保管し研究者に公開してきたが、資料の増加等にともない、利用者の便宜などにかんがみて、公立機関に寄贈することとしたもの。受贈する東京国立文化財研究所では、寄贈品の目録作成、公開システムの確立に向けて作業を進めている。

第9回世界文化賞受賞者決定

1997年07月

財団法人日本美術協会(総裁・常陸宮正仁殿下)が世界の芸術家の業績を讃えて毎年行っている「高松宮殿下記念世界文化賞」(プレミウム・インペリアーレ」の第9回目の受賞者が、ローマのコロンナ宮殿で9日午前11時(日本時間同日午後6時」に発表された。美術関係では、「絵画部門」にドイツのゲルハルト・リヒター(65)(多様なスタイルを駆使して絵画の本質を追究した)、「彫刻部門」に米国のジョージ・シーガル(72)(人体から直接型取りする技法によって現代彫刻の中でユニークな地位を占める)、「建築部門」で米国のリチャード・マイヤー(62)(開放的で詩的な「白い建築」で知られる)が選ばれた。受賞式は10月22日東京元赤坂の明治記念館で行われた。

第6回登録有形文化財

1997年07月

文化財保護審議会(会長・西川杏太郎会長)は18日、掬粋巧芸館本館・日本館(山形県東置賜郡川西町)、隆泉苑(静岡県三島市)など24件を登録有形文化財として登録するよう答申した。

「東南アジア―近代美術の誕生」展開催

1997年05月

19世紀末から1960年前後までの東南アジアにおける美術作品を紹介する「東南アジア―近代美術の誕生」展が、9日から福岡市美術館で開催された(~6月8日、その後広島県立美術館、静岡県立美術館、東京都庭園美術館を巡回)。これは数年来のアジア社会の発展の中で、西欧中心主義を見直し、非西欧世界の文化や芸術を公平な視線で評価しようとする試みであり、他にも東京都現代美術館で「東南アジア1997 来るべき美術のために」展(4月12日~6月1日)が開かれるなど、ともにアジアへの関心をうかがわせる展観となった。

人間国宝、選定保存技術認定

1997年05月

文化財保護審議会(西川杏太郎会長)は23日、重要無形文化財保持者(人間国宝)にあらたに11人を認定するよう小杉隆文相に答申した。美術関係では青磁の三浦小平二(64)、彩釉磁器の三代徳田八十吉(63)、綴織の細見華岳(74)、刺繍の福田喜重(64)、日本刀の天田昭次(69)および大隈俊平(65)、木工芸の大坂弘道(60)が認定された。これで現存の人間国宝は94人となる。また、選定保存技術保持者に木工品修理の桜井洋(47)、建造物彩色の川面稜一(83)、屋根瓦製作(鬼師)の小林平一(74)を認定した。

戦没画学生慰霊美術館“無言館”開館

1997年05月

2日、太平洋戦争で学徒出陣し、戦死した画学生の遺作を集めた“無言館”が開館(長野県上田市東前山300)。同館は信濃デッサン館館長の窪島誠一郎氏が、当時の東京美術学校の学籍簿を頼りに全国を回って作品を集めるという、多大な労のもとに開館の運びとなった。

若林奮作品をめぐる審理開始

1997年05月

8日、東京・日の出町のゴミ処分場予定地内にある若林奮の作品「緑の森の一角獣座」をめぐる審理が、東京千代田区の日比谷公会堂ではじまった。これは処分場建設に反対し、トラスト運動を展開する住民らに賛同した作家がトラスト地に庭の形をとった作品を制作、その後東京都収用委員会が住民らと処分建設を急ぐ事業者の双方から意見を聞くべく開いたものである。審理の結果、住民側が敗れた場合は作品は破壊される可能性があり、産業社会に抵抗する作品のあり方が問われることとなった。

NTTインターコミュニケーションセンター(ICC)開館

1997年04月

19日、デジタル技術の進歩とともに、形態を変えつつあるコミュニケーションを主眼に、科学技術と芸術文化の対話を試みるNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)が開館(東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー4~6階)。同センターは、新しい表現に挑むアーティストを支援するためのプログラムを展開するほか、電子図書館等の施設を備える、次世代型ミュージアムである。

神戸ファッション美術館開館

1997年04月

25日、ファッションをテーマとした日本初の美術館である神戸ファッション美術館が開館(兵庫県神戸市東灘区向洋町中2-9-1)。同館は展示スペースのミュージアムと20世紀初めからの主要ファッション書籍集を収集する図書館、人材交流のセミナー室等のリソースセンター、多目的ホール等からなる。また“神戸ファッション産業復興支援センター”として、阪神大震災で被害を受けた中小ファッション企業への支援も行う。

日本芸術院賞受賞者決定

1997年03月

日本芸術院(犬丸直院長)は24日、芸術の各分野で顕著な功績があった人に贈る平成8年度(第53回)の日本芸術院賞受賞者を内定した。恩賜賞・日本芸術院賞の第1部(美術)受賞者には寺島竜一(78)(日展出品作「アンダルシア讃」に対し)、日本芸術院賞には日本画の中路融人(78)(日展出品作「映像」に対し)、彫塑の雨宮淳(59)(日展出品作「韻」に対して)、工芸の河合誓徳(69)(日展出品作「行雲」に対して)、書の甫田鵄川(73)(日展出品作「菜根譚」に対して)が選ばれた。授賞式は7月14日に東京・上野の日本芸術院会館で行われた。

“世界のタイル美術館”開館

1997年04月

12日、タイルに関する歴史や技法等を展示・公開する“世界のタイル美術館”が開館(愛知県常滑市奥栄町1-130)。世界有数のタイル収集家の一人、山本正之氏のコレクションでオリエント、イスラム、イギリス等世界25ヶ国のタイル約6,000点を収蔵し、そのうち800~1,000点を常設展示する。

国宝重要文化財指定

1997年04月

文化財保護審議会(西川杏太郎会長)は18日、正倉院正倉など2件を国宝に、重要文化財に司馬江漢筆「相州鎌倉七里浜図」等51件を、史跡5件、名勝1件を新たに指定するよう小杉隆文相に答申した。正倉院の国宝指定は、「古都奈良の文化財」の世界遺産への推薦に伴う措置で、宮内庁が所轄する皇室用財産の国宝指定は初めて。

重要文化財(建造物)指定

1997年03月

文化財保護審議会(西川杏太郎会長)は21日、重要文化財に明治生命保険本社本館など歴史的建造物8件を、また、伝統的な町並みを保存する「重要伝統的建造物群保存地区」1件、登録文化財52件を新たに指定するよう小杉隆文相に答申した。明治生命保険本社本館の指定については、近代文化遺産の保存策として対象を終戦時まで拡大するのに伴うもので、昭和期の建造物では初の重文指定となる。

宇都宮美術館開館

1997年03月

23日、宇都宮市の市制100周年記念事業で計画された“うつのみや文化の森”の主要施設の一つとして、宇都宮美術館が開館(栃木県宇都宮市長岡町1077番地)。“地域と美術”“生活と美術”“環境と美術”を作品収集のテーマとし、岡田新一設計による美術館建物は地上二階地下一階の低層構造で、展示室三室のほかに講義室、ミュージアムショップ、レストランなどが設けられている。開館記念展は「20世紀美術の冒険―セザンヌ、ファン・ゴッホから現在までアムステルダム市立美術館コレクション展」(23~5月18日)。

文化庁予算決まる

1997年02月

平成九年度の文化庁予算は、前年七月に文化庁がとりまとめた「文化立国21プラン」に基づき、前年度比10.4%増 の828億円とすることと決まった。新規事業としては、国内外の芸術家を招へいし、地域に一定期間滞在、創作活動等を行うことにより、高度で独創性にあふれた芸術文化の創造を図るアーティスト・イン・レジデンスに1億200万円、これまで十分な保護措置が講じられてこなかった近代文化遺産の保護施設の充実に4200万円などが計上されている。

芸術選奨受賞者決定

1997年03月

芸術の各分野で昨年一年間に優れた業績をあげた人々に贈られる芸術選奨の受賞者が、13日文化庁から発表された。美術関係では彫刻家江口週(64)(個展「記憶の解体 忘れられた廃屋から」などに対し)、洋画家三尾公三(73)(個展「心承空間への誘い 三尾公三展」に対し)、美術史家武田恒夫(71)(著作『狩野派絵画史』に対して)が芸術選奨文部大臣賞を、建築家村上徹(47)(公共建築「庵治町役場」に対し)が芸術選奨新人賞を受賞した。

VOCA賞受賞者決定

1997年02月

平面美術の分野で国際的に通用する若手作家を支援するVOCA賞が小池隆英「undercurrent」に贈られることになった。またVOCA奨励賞には上田奈保、善住芳枝、曽根裕、東郷靖彦の4名、選考委員特別賞に第1回VOCA賞受賞の福田美蘭が選ばれた。

第12回小山敬三美術受賞者決定

1997年02月

優れた作品を発表してきた中堅の具象画家に贈られる小山敬三賞の第12回目の受賞者は立軌会会員の福本章に決定した。また、「美術文化の国際交流事業に対する援助」により財団法人清春白樺美術館財団に140万円が贈られることとなった。

文化財建造物指定

1997年02月

文化財保護審議会(西川杏太郎会長)は21日、静岡県の「明治宇津ノ谷隧道」や宮崎県の「黒北発電所」など66の建造物を文化財建造物に登録するよう小杉隆文相に答申した。

毎日芸術賞受賞者決定

1997年01月

優れた芸術活動をした個人・団体を顕彰する1996年度(第38回)毎日芸術賞は六氏に贈られることとなった。美術関係ではグラフィックデザイナーの杉浦康平(『井上有一全書業』など一連のブックデザインに対して)、画家の野見山暁治(「野見山暁治展―その、動く気配の一瞬の形を」に対して)が受賞した。また今回は特別賞が一氏に贈られ、建築家の篠原一男(作品集『篠原一男』の刊行と一連の建築業績に対して)が受賞した。贈呈式は14日、ホテル・インターコンチネンタル東京ベイで行われた。

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