松樹路人

没年月日:2017/12/19
分野:, (洋)
読み:まつきろじん、 Matsuki, Rojin*

 独立美術協会の画家松樹路人は12月19日、肺炎のため死去した。享年90。
 1927(昭和2)年1月16日、北海道留萌支庁苫前郡に生まれる。本名路人(みちと)。小学校教員であった父の任地によって転居し、33年佐呂間の武士尋常小学校に入学、その後、女満別尋常高等小学校に転校する。1940年北海道立網走中学校に入学するが、翌年一家で上京。東京府立第十五中学校(現、都立青山高等学校)在学中に小林万吾の主宰する同舟舎絵画研究所に通う。44年東京美術学校油画科に入学し、45年から梅原龍三郎に師事。同年、三浦半島の長井にある武山海兵団に配属される。49年に東京美術学校を卒業し、梅ヶ丘中学校の図工教諭となり、53年まで勤務。この間の50年、連合国要人の夫人によって運営されていたサロン・ド・プランタンの第2回展に原爆と浮浪児を描いた「失われた世代」を出品して第3席に選ばれる。また、同年の第18回独立美術協会展に「S町の酒場付近」で初入選。53年第21回独立展に褐色系を基調色とし、人体を簡略な形でとらえ、着衣の女性像の背後に二人の男性像を描いた「三人」、および「秋」を出品してプールブー賞受賞。同年、網走中学校の先輩で独立美術協会会員であった居串佳一と出会い、交遊を始める。この頃、アンドレ・ドラン、ゲオルグ・グロス、ベン・シャーンに共感を抱く。54年第22回独立展に「家族」「行ってしまった小鳥」を出品して独立賞受賞。57年から60年3月まで鴎友学園女子高等学校教諭を務める。60年独立美術協会会員となる。この頃、「具体的なかたち」を求めて苦悩しつつ、人体を幾何学的形体に還元してから再構成し、白を背景に用いた作品を描く。64年、それまでの自作への不満から、初期以降の大作十数点を自ら焼却。これを機会に、少年時代から惹かれていた藤田嗣治の画風に学んだ静物画を多く描くようになる。66年から71年まで女子美術大学非常勤講師としてデッサンを指導。69年、第37回独立展に白いタイルを背景に、植物や陶器などを配置した「タイルの静物」を出品する。70年第5回昭和会に「木の実の静物」「車輪の静物」を出品して昭和会賞を受賞したほか、前年の独立展出品作「タイルの静物」ほかを第13回安井賞展に出品。同年、武蔵野美術大学講師となり、71年、同助教授となる。また、同年、東京都稲城市に転居しアトリエを構える。この家は「別れ道の白い家」(1977年)のモチーフとなり、その後も画中にしばしば登場することとなる。73年第16回安井賞展に白いタイルを背景に赤茶色のドラム缶と瓶などを描いた「ドラム罐」ほかを出品して佳作賞受賞。同年ヨーロッパに旅行しパリ、ローマ、トレドを訪れる。77年、武蔵野美術大学教授となる。79年、独立美術協会の有志と十果会を設立し、以後同展に出品を続ける。81年、前年の第48回独立展出品作「わが家族の像」(1980年)などにより第4回東郷青児美術館記念大賞受賞。また、同年第3回日本秀作美術展に横向きの少年とボクサー犬を描いた「少年とボクサー」を出品し、以後、2003(平成15)年第25回展まで同展に連続して出品。80年代半ばから、ポール・デルヴォー、ジョルジュ・デ・キリコなどシュール・レアリスムの作家の作風を取り入れる。86年イギリスへ旅行。87年、前年の第54回独立展出品作「美術学校―モデルの一日」により第5回宮本三郎記念賞受賞。同年、「第5回宮本三郎記念賞 松樹路人展」が開催され、学生時代の作品から独立展、十果会展等の出品作を中心に70点が展観される。また、同年より長野県茅野市蓼科のアトリエで秋の独立展に向けた制作を行うようになる。91年第41回芸術選奨文部大臣賞受賞。97年武蔵野美術大学を退任。98年『ミュージアム新書18 松樹路人-はるかへの想い』(苫名真著 北海道立近代美術館編)が刊行される。2002年に郷里北海道にて「北方風土記回顧録―地平線の彼方へ 松樹路人展」(網走市立美術館)、2011年に制作拠点のひとつであった茅野市にて「松樹路人展 終わりなき旅」(茅野市美術館)が開催される。年譜は同展図録に詳しい。「職人のようにひたすら描く」という言葉を好み、幼年期を過ごした北海道の広大な大地と空、清澄な空気を愛して、それらを絵画空間に表した。一貫して具象画を描き、日常生活に身近なものに取材して、70年代からは家族や自画像を主要なモチーフとしつつ、構成力の強い作品を描き続けた。

出 典:『日本美術年鑑』平成30年版(459頁)
登録日:2020年12月11日
更新日:2020年12月11日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「松樹路人」『日本美術年鑑』平成30年版(459頁)
例)「松樹路人 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/824376.html(閲覧日 2021-07-29)

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