「日本彫刻の近代」展開催

2007年08月

幕末明治期から1960年代までの日本の彫刻史を68名の作家による約100点の作品であとづける「日本彫刻の近代」展が7日から宮城県美術館で開催された(9月17日まで)。Ⅰ)「彫刻」の夜明け、Ⅱ)国家と彫刻、Ⅲ)アカデミズムの形成、Ⅳ)個の表現の成立、Ⅴ)多様性の時代、Ⅵ)新傾向の彫刻、Ⅶ)昭和のリアリズム、Ⅷ)抽象表現の展開の8章による編年的な構成で、近年の研究成果を反映し、西洋近代彫刻の素材となっているブロンズや土による造形物として明治初期の陶磁器や彫金、鋳金による立体物を再考し、「彫刻」概念の確立、同時代の西洋彫刻の受容など、日本近代の立体造形が取り組んできた課題を浮彫にする意義深い展観となった。同展はその後、三重県立美術館、東京国立近代美術館、鹿児島市立美術館、呉市立美術館、横須賀美術館に巡回した。

第2回西洋美術振興財団賞受賞者決定

2007年08月

優れた西洋美術展を企画、担当した個人と支援した団体を表彰する西洋美術振興財団賞の第2回目の受賞者は、学術賞に「ルソーの見た夢、ルソーに見る夢」展を担当した遠藤望(世田谷美術館)、蔦谷典子(島根県立美術館)、村上博哉(元愛知県美術館)、「エルンスト・バルラハ」展を担当した池田祐子(京都国立近代美術館)、薩摩雅登(東京芸術大学)、河合哲夫(朝日新聞社)に、文化振興賞は「シリン・ネシャット」展に協力した広島市文化財団に贈られた。

「日展100年」展開催

2007年07月

1907年秋に日本で初めての官立美術展として文部省美術展覧会(文展)が開催されて以降、帝展、新文展、日展と続くいわゆる官展は、日本美術のアカデミズムに深く関わってきた。文展開設から100年の官展の歴史を編年的に概観する「日展100年」展が、国立新美術館で25日から9月3日まで開催された。同展は東京会場の後、宮城県美術館、広島県立美術館、富山県立近代美術館に巡回し、日本画、洋画、彫刻、工芸、書を含め、総数約300点が出品される大規模な展観となった。

高松塚古墳解体作業完了

2007年07月

国宝の壁画を修復、保存するため、文化庁は奈良県明日香村の高松塚古墳の石室解体を4月3日から開始した。天井石、壁石、床石の16個の石のうち、北側天井石を5日にクレーンで搬出し、8月21日までに順次運び出した。4月17日には「玄武」が描かれた北壁石を、5月11日には女子群像が描かれた西壁石を取り外した。6月15日、南壁石を、同26日に男子群像が描かれている西壁石を取り外した。

人間国宝指定

2007年07月

文化審議会(石沢良昭会長)は20日、重要無形文化財保持者(人間国宝)にあらたに7人を認定するよう伊吹文部科学相に答申した。美術関係では、青磁を制作する陶芸家中島宏、友禅染めの染織家森口邦彦が選ばれた。また、重要無形文化財保持者団体の構成員として日本能楽会員など33名を追加認定すること、選定保存技術の保持者に表具用手漉和紙(補修紙)製作の江渕栄貴、表具用古代裂(金襴等)製作の広瀬賢治、保存団体に屋根瓦葺(本瓦葺)の日本伝統瓦技術保存会をそれぞれ認定すること、建造物装飾を初めて選定保存技術に選び、社寺建造物美術協議会を保存団体とすることも答申された。

「西洋の青―プルシアンブルーをめぐって―」展開催

2007年07月

1704年にベルリンで発見され、江戸時代に洋風画法とともに伝えられた合成顔料プルシアンブルーの受容の過程を追跡した「西洋の青―プルシアンブルーをめぐって―」展が21日から神戸市立博物館で開催された(9月2日まで)。Ⅰ)日本の青―さまざまな青、Ⅱ)西洋の青―プルシアンブルーの受容、Ⅲ)紺青―長崎貿易に見るプルシアンブルー、Ⅳ)殿様の絵具箱、Ⅴ)冨嶽三十六景―江戸のプルシアンブルー・デビューの5章により構成され、科学的分析や貿易関係の資料を駆使しながら、顔料をテーマに洋風画や浮世絵などの日本近世絵画史に切り込んだユニークな企画となった。

「足利義満600年御忌記念 京都五山 禅の文化」展開催

2007年07月

足利義満が1408年に51歳で死去してから600年に当たることを記念し、義満や義政の支持を得て隆盛した京都五山に伝わる頂相、高僧の袈裟、書画などを237件を展示する「京都五山 禅の文化」展が東京国立博物館で13日から開催された(9月9日まで、後、2008年1月1日から2月24日まで九州国立博物館で開催)。第一章「兼密禅から純粋禅へ」、第二章「夢窓派の台頭」、第三章「将軍家と五山僧」、第四章「五山の学芸」、第五章「五山の仏画・仏像」の構成で、国指定の国宝・重要文化財が百数十点出品され、充実した展観となった。

新潟県中越沖地震による文化財被害

2007年07月

7月16日に発生した新潟県中越沖を震源地とする地震(マグニチュード6.8)によって重要文化財「旧長谷川家住宅」(長岡市)土壁が崩落するなど新潟、長野両県で10件の国指定文化財が被害を被った。

石見銀山の世界遺産登録

2007年05月

ユネスコの第31回世界遺産委員会は28日、日本が推薦した「石見銀山遺跡とその文化的景観」(島根県大田市)の世界文化遺産への登録を決定した。諮問機関であるイコモス(国際記念物遺跡会議)から登録延期を勧告されていたが、2005年の知床(北海道)についで14番目、文化遺産では2004年の「紀伊山地の霊場と参詣道」(和歌山、奈良、三重県)以来11番目となる。

「金比羅宮 書院の美―応挙若冲岸岱」展開催

2007年07月

金比羅宮の襖絵130点を現地から移動し、書院を再現的に展観する「金比羅宮 書院の美―応挙・若冲・岸岱」展が7日から東京芸術大学大学美術館で開催された(9月9日まで)。近年、社寺の襖絵等の保存と公開を両立させる手段として、高精細デジタル画像による複製を公開し、実作品は保存に適する空間に移動する試みが行なわれるようになっているが、同展では、香川県の琴平山にある金比羅宮の書院を美術館内で追体験できるよう、同宮内を飾る近世絵画の優品と高精細デジタル画像による実物大の複製とを織り交ぜた新たな展示方法がとられ、注目された。同展は金比羅宮、三重県立美術館に巡回した後、2008年10月15日から12月8日までフランス国立ギメ東洋美術館で開催された。

史跡名勝、天然記念物、文化的景観の指定の答申

2007年05月

文化審議会(石沢良昭会長)は18日、茨城県常陸太田市の「水戸徳川家墓所」など9件を史跡に、「姫島の黒曜石産地」(大分県姫島村)を天然記念物に、「アイヌの伝統と近代開拓による沙流川流域の文化的景観」(北海道平取町)を重要文化的景観に指定するよう伊吹文部科学相に答申した。

「ルコルビュジエ展:建築とアート、その創造の軌跡」展開催

2007年05月

近代建築に大きな足跡を残した建築家ル・コルビュジエの生誕120年を記念する「ル・コルビュジエ展:建築とアート、その創造の軌跡」展が26日から森美術館で開催された(9月24日まで)。初期から晩年までを1「アートを生きる」、2「住むための機械」、3「共同体の夢」、4「アートの実践」、5「集まって住む」、6「輝ける都市」、7「開いた手」、8「空間の奇蹟」、9「多様な世界へ」、10「海の回帰へ」の10セクションによって跡づけ、300点の絵画、彫刻、家具、建築資料を展示。近代建築の要素として「ピロティ」「屋上庭園」「自由な平面」「水平に連続する窓」「自由なファサード」を提案し、住居、公共建築、都市計画など多様なしごとへ展開したコルビュジエが、追及していたものを再考する機会となった。

「鳥居清長」展開催

2007年04月

江戸時代、天明期(1781-89)を代表する浮世絵師鳥居清長の錦絵を中心に国内外の優品約270点を展示する「鳥居清長 江戸のヴィーナス誕生」展が千葉市美術館で28日から開催された(6月10日まで)。第一章「浮世絵デビュー」、第二章「江戸のヴィーナス誕生」、第三章「ワイド画面の美人群像」、第四章「江戸の粋」、第五章「役者絵と出語り図」という編年的な構成で、清長が錦絵の世界にデビューしてから、鳥居家の家業を継ぎ、絵看板や番付制作に力を注ぐようになる晩年までを、総合的にとらえる初めての試みとなった。

読売あをによし賞受賞者決定

2007年05月

先人の残したかけがえのない文化財を次代に継承する保存・修復家を顕彰するため、今年創設された「文化財保存・修復『読売あをによし賞』」の選考が23日に行なわれ、57件の応募から受賞者が選ばれた。本賞を財団法人文化財虫害研究所、奨励賞を模写制作家富沢千砂子、加藤純子が受賞した。

開基足利義満600年忌記念 「若冲」展開催

2007年05月

相国寺を創建した足利義満の没後600年を記念し、近世の画家伊藤若冲が同寺に寄贈した「釈迦三尊像」と「動植綵絵」30幅を、同寺の承天閣美術館に展示する「開基足利義満600年忌記念 若冲展」が13日から開催された(6月3日まで)。「動植綵絵」は「釈迦三尊像」とともに若冲によって両親、弟および自らの永代供養を祈念して相国寺に寄贈され、毎年6月に同寺で行なわれる観音懺法会の折に掛けられていたとされる。1889年に明治天皇に献納された「動植綵絵」が約120年ぶりに「釈迦三尊像」とともに展示される稀少な機会となった。

重要文化財(建造物)指定の答申

2007年04月

文化審議会(石沢良昭会長)は20日、隅田川にかかる清洲橋、永代橋、勝鬨橋や現存最古の幼稚園建築である愛珠幼稚園園舎(大阪市)など11件を重要文化財に指定するよう伊吹文部科学相に答申した。

横須賀美術館開館

2007年04月

2007年に市制施行100周年を迎えた横須賀市がその記念事業として準備を進めてきた横須賀美術館(神奈川県横須賀市鴨居4-1、島田章三館長)が28日に開館した。山本理顕の設計になり、地下2階、地上2階、延床面積約1万2000平方メートル。環境と融合した美術館活動が目指された開放的な空間で、屋上庭園から建物後方の山と海が一望できる。横須賀ゆかりの作家、海を描いた作品、日本近現代美術を概観できる作品を収集対象とし、地元ゆかりの画家朝井閑右衛門の遺作が1996年に一括して寄贈されたことが美術館設置の契機となったのを記念して朝井閑右衛門記念室が設けられ、また、1998年にやはりゆかりの挿絵作家谷内六郎の作品が多数寄贈されたことからそれらの作品を常設展示する谷内六郎館も併設された。開館記念展は「近代日本美術を俯瞰する」展(28日から7月8日まで)。

「神仏習合―かみとほとけが織りなす信仰の美―」展開催

2007年04月

古代から自然の中に神を見出してきた日本人が、6世紀に大陸から伝来した仏教を受け入れ神仏習合というあらたな信仰世界を生み出し、広めていった過程を絵画、彫刻、書、金工品などで跡づける「神仏習合―かみとほとけが織りなす信仰の美―」展が4月7日から奈良国立博物館で開催された(5月27日まで)。第一章「神と仏の出会い」、第二章「神像の出現」、第三章「山神への祈り」、第四章「御霊信仰と神前読経」、第五章「社に参る僧侶たち」、第六章「本地垂迹―顕現する神と仏―」、第七章「宮曼荼羅の世界」、第八章「中世神道―伊勢をめぐる神仏習合―」、第九章「仏舎利を護持する神々」、第十章「神仏に捧げる芸能」の10章により構成され、4世紀から15世紀までを中心に205件の作品が出品された。神と仏の双方が信仰の対象であり続けてきた歴史を視覚的資料でたどる意義深い展観となった。

「モネ」展開催

2007年04月

パリのオルセー美術館との共同企画により97点のモネの作品と、モネの遺産を展開させた20世紀作家の26点の作品を展観する大規模な展覧会が4月7日から7月2日まで国立新美術館で開催された。モネ作品は第1章「近代生活」、第2章「印象」、第3章「構図」、第4章「連作」、第5章「睡蓮/庭」で構成され、編年的な作風の変化を踏まえながら、光、階調、色彩、簡素、ジャポニスム、平面的構成、リズム、形態、筆触といった造形的要素に注目したまとまりで展示され、第2部では、それらの造形要素の展開という視点から、モネの筆触や色面を展開させた抽象表現主義の作品や、連作に様々な表現を見出したジョゼフ・アルバースやリキテンスタインの作品などが展示された。

「生誕100年 靉光」展開催

2007年03月

1907年に広島に生まれた画家靉光の生誕100年を記念して、その画業を回顧する展覧会が東京国立近代美術館で30日から5月27日まで行なわれた。第1章「初期作品」、第2章「ライオン連作から≪眼のある風景」へ」、第3章「東洋画へのまなざし」、第4章「自画像連作へ」の構成で、初期から晩年まで119点の作品と34点の写生帖および資料を展観し、召集されて戦地で死去したことから神話化されてきた画業を再考する機会となった。

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