名古屋城本丸御殿の復元

2018年06月

第二次世界大戦の空襲で焼失し、名古屋市が2009年より復元を進めてきた名古屋城本丸御殿(総面積3100平方メートル)が完成し、4日、内覧会が催された(一般公開は8日から)。復元に際しては木造で往時の姿を忠実に再現する技術を凝らし、狩野貞信や探幽といった狩野派の絵師による障壁画は、現存する襖等や焼失以前に撮影されたガラス乾板写真をもとに復元模写が行なわれた。

文化財保護法改正の成立

2018年06月

「文化財保護法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案」が、国会での審議を経て1日に成立、8日に公布された。過疎化や少子高齢化等により文化財の継承の基盤であるコミュニティーが脆弱化し、その減失や散逸の防止といった喫緊の課題をふまえたもので、①地域における文化財の総合的な保存・活用、②個々の文化財の確実な継承に向けた保存活用制度の見直し、③地方における文化財保護行政に係る制度の見直し、の三点が位置付けられた。これにより、都道府県は文化財の保存活用に係る総合的な施策の大綱を策定し、それを勘案して市町村は文化財保護活用地域計画を作成して国の認定を申請できることとなったほか、これまで地方公共団体の教育委員会が所管していた文化財保護の事務を条例により地方公共団体の長が担当できるようになった。

国宝・重要文化財(建造物)指定の答申

2018年05月

文化審議会は18日、伝統に近代的手法を巧みに融合させた昭和戦前期の和風建築として知られる旧遠山家住宅(埼玉県川島町)や旧川上家別邸(岐阜県各務原市)等、10件の建造物を重要文化財に指定するよう林芳正文部科学相に答申した。また「蔵の町」として知られる福島県喜多方市の小田付地区を重要伝統的建造物群保存地区に選定することも答申した。

ジャポニスム2018の開催

2018年05月

2018年から19年にかけて、日仏友好160年を記念して日本文化を紹介する一大イベント「ジャポニスム2018 響きあう魂」がパリを中心にフランス各地で開かれ、その皮切りとして「teamLab:Au―delà des limites(境界のない世界)」展が15日より2018年9月9日までパリのラ・ヴィレット公園内の会場で開催された。この「ジャポニスム2018 響きあう魂」では日仏両政府合意の下、主に国際交流基金が中心となって美術や演劇、映画、食文化等を紹介する催しが開かれ、美術関係では上記展覧会の他、「深みへ 日本の美意識を求めて」展(2018年7月14日~2018年8月21日、ロスチャイルド館)や「若冲 〈動植綵絵〉を中心に」展(2018年9月15日~2018年10月14日、パリ市立プティ・パレ美術館)等が開催された。

宇佐美圭司作品の廃棄

2018年05月

8日、東京大学と東京大学消費生活協同組合が、同大学の中央食堂壁面に飾っていた宇佐美圭司の大作「きずな」を、同食堂の改修工事に伴い2017年9月14日に廃棄処分していたことについてお詫びと経緯を公表した。同作品は1976年に東大生協創立30周年記念事業の一環として制作を依頼したもの。この事態を受け、同大学では2018年9月28日にシンポジウム「宇佐美圭司《きずな》から出発して」を開催、学内外の文化資源のあり方を問い直した。

読売あをによし賞受賞者決定

2018年05月

保存科学・修復の現場で優れた業績をあげた個人・団体を顕彰する読売あをによし賞(主催:読売新聞社、特別協力:文化財保存修復学会)の第12回目の受賞者として、本賞に菅笠をはじめとする伝統的な菅細工の製作技術を継承してきた深江菅細工保存会(島谷真由美会長、大阪市東成区)、奨励賞に高級畳の材料として知られる大分県国東地方の七島藺の存続を図るために活動しているくにさき七島藺振興会(林浩昭会長、大分県国東市)、特別賞に古代日本の中心だった奈良県飛鳥地方等に残る歴史遺産の保存、活用に取り組む公益財団法人古都飛鳥保存財団(和田林道宜理事長、奈良県明日香村)が決定した。

「建築の日本展 その遺伝子のもたらすもの」の開催

2018年04月

25日より六本木ヒルズの森美術館で「建築の日本展 その遺伝子のもたらすもの」が開催された(9月17日まで)。世界で注目される日本の現代建築が古代以来の伝統的建築から脈々と受け継いできたものを探る内容で、建築資料や模型、体験型インスタレーション等の展示を通して、縄文時代の住居から最新の建築案に至るまでの100プロジェクトを紹介した。

第7回東山魁夷記念日経日本画大賞決定

2018年04月

日本画家東山魁夷の業績を称え、次代を担う日本画家を表彰するために創設された東山魁夷記念日経日本画大賞の第7回大賞受賞作に浅見貴子の「桜木影向図」が選出、23日に発表された。同受賞作を含む入選作による展覧会は、5月18日から28日まで上野の森美術館で開催された。

「リーディング・ミュージアム」構想

2018年04月

文化庁は17日、未来投資会議構造改革徹底推進会合「地域経済・インフラ」(中小企業・観光・スポーツ・文化等)第4回会合に「アート市場の活性化に向けて」と題する資料を提出した。その中で言及された「リーディング・ミュージアム」の構想をめぐり、美術館は市場への関与を目的とした活動を行なうべきではないとして6月19日に全国美術館会議が声明を出すなど、美術界で大きな波紋を呼んだ。

国立映画アーカイブの設置

2018年04月

東京・京橋の東京国立近代美術館フィルムセンターは1日、独立行政法人国立美術館の映画専門機関である国立映画アーカイブ(館長:岡島尚志)となった。これは他の国立美術館と同格の機関とした改組で、日本の映画文化振興のためのナショナルセンターとして一層の機能強化を進めることとなった。

平成30年度文化庁予算決定

2018年03月

平成30年度国家予算が28日、成立した。文化庁予算は1077億2900万円となり前年度より3.3%、34億5700万円の増額となった。Ⅰ.文化芸術の創造・発展と人材育成、Ⅱ.かけがえのない文化財の保存、活用及び継承等、Ⅲ.文化資源を生かした社会的・経済的価値の創出、Ⅳ.日本ブランド向上に向けた多彩な文化芸術の発信、Ⅴ.文化発信を支える基盤の整備・充実の5つを柱とし、美術に関する主な新規項目として、Ⅲの「アート市場活性化事業」に5000万円が計上された。

日本芸術院賞受賞者決定

2018年03月

日本芸術院(院長:黒井千次)は22 日、2017年度の芸術院賞受賞者を発表した。第一部(美術)で田渕俊夫(日本画、再興第100回院展出品作「渦潮」に対して)、第二部(文芸)で芳賀徹(評論・翻訳、『文明としての徳川日本 一六〇三―一八五三年』に対して)が恩賜賞・日本芸術院賞を、第一部(美術)で湯山俊久(洋画、改組新第3回日展出品作「l’Aube(夜明け)」に対して)、三田村有純(工芸、改組新第3回日展出品作「月の光 その先に」)、土橋靖子(書、改組新第4回日展出品作「かつしかの里」に対して)が日本芸術院賞を受賞した。

中之島香雪美術館開館

2018年03月

朝日新聞社の創業者である村山龍平が収集した日本・東洋古美術品を所蔵する公益財団法人香雪美術館は開館45周年を記念し、神戸市東灘区御影の本館に次ぐ中之島香雪美術館(大阪市北区中之島)を21日にオープンした。大阪のビジネス街にある中之島フェスティバルタワー・ウエストの4階に位置し、重要文化財の旧村山家住宅に建つ茶室玄庵を再現した中之島玄庵や、創業者の生涯を紹介する村山龍平記念室が設けられている。開館記念展として「珠玉の村山コレクション~愛し、守り、伝えた~」が、3月21日から2019年2月11日にかけて5期にわたりテーマ別に開催された。

第37回土門拳賞受賞者決定

2018年03月

前年に優れた成果を挙げた写真家に贈られる土門拳賞(主催:毎日新聞社)の第37回受賞者が潮田登久子に決定したことが16日に発表された。受賞対象は写真集『本の景色 BIBLIOTHECA』。

第43回木村伊兵衛写真賞受賞者決定

2018年03月

写真家木村伊兵衛の業績を記念し、優れた新人写真家に贈られる木村伊兵衛写真賞(主催:朝日新聞社、朝日新聞出版)の第43回目の受賞者が16日に発表され、小松浩子と藤岡亜弥に決定した。対象作は小松が展示「人格的自律処理」他、藤岡が写真集『川はゆく』他。

文化庁メディア芸術祭、受賞作品決定

2018年03月

文化庁は16日、国内外の優れた映像作品などを表彰する第21回文化庁メディア芸術祭の受賞作品を発表した。アート部門はチュニジアのヘイサム・ザカリアによる映像インスタレーション「Interstices/OpusⅠ―OpusⅡ」、エンターテインメント部門は『人〓いの大鷲トリコ』開発チーム(代表:上田文人)のゲーム「人〓いの大鷲トリコ」、アニメーション部門は片渕須直の劇場アニメーション「この世界の片隅に」、マンガ部門は池辺葵の「ねぇ、ママ」がそれぞれ大賞を受賞した。

国宝・重要文化財指定の答申

2018年03月

文化審議会は9日、紙本著色日月四季山水図・六曲屏風(大阪・天野山金剛寺)、木造千手観音立像・蓮華王院本堂安置(京都・妙法院)、木造四天王立像(奈良・興福寺)、紺紙金字大宝積経巻第三十二・高麗国金字大蔵経(京都国立博物館)、菅浦文書・菅浦与大浦下庄堺絵図(滋賀・須賀神社)の5件を国宝に、キトラ古墳(奈良県明日香村)の彩色壁画等50件を重要文化財に指定するよう林芳正文部科学相に答申した。あわせて岸田日出刀の設計によるモダニズム建築の旧東照宮宝物館(栃木県日光市)等196件の建造物を登録有形文化財にするよう答申した。

芸術選奨文部科学大臣賞受賞者決定

2018年03月

文化庁は7日、2017年度の芸術選奨文部科学大臣賞と同新人賞の受賞者を発表した。芸術選奨文部科学大臣賞美術部門では美術家の杉戸洋(「杉戸洋 とんぼとのりしろ」展の成果に対して)、現代美術家の西野達(「西野達 in 別府」展他の成果に対して)、評論等の部門では美術史家、筑波大学特命教授の五十殿利治(『非常時のモダニズム』の成果に対して)、美術評論家の椹木野衣(『震美術論』の成果に対して)、メディア芸術部門ではアニメーション作家の山村浩二(「山村浩二 右目と左目でみる夢」の成果に対して)が受賞。同新人賞の美術部門ではアーティストの岩崎貴宏(「逆さにすれば、森」展の成果に対して)、芸術振興の部門ではNPO法人クリエイティブサポートレッツ代表理事の久保田翠(「表現未満、実験室」他の成果に対して)、メディア芸術部門ではアーティストの和田永(「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」の成果に対して)が受賞した。

松方コレクションのモネ「睡蓮、柳の反映」発見

2018年02月

クロード・モネの連作「睡蓮」の中の一点で、実業家の松方幸次郎が収集した「睡蓮、柳の反映」がパリのルーヴル美術館で見つかったことを、国立西洋美術館が26日に発表した。同作品は1921年に松方がモネから直接購入したもので、2016年9月にルーヴル美術館内の倉庫部屋にて、木枠から外され筒状に巻かれた状態で発見された。その後フランス政府から松方家へ同作品は返還され、2017年11月に同家を通じて国立西洋美術館に寄贈。同美術館はその修復作業を行ない、2019年6月11日から9月23日に開催の「松方コレクション展」で公開した。

毎日芸術賞受賞者決定

2018年01月

芸術文化における優れた業績を顕彰する毎日芸術賞(主催:毎日新聞社)の第59回目の受賞者が1日に発表され、美術家・彫刻家の遠藤利克(埼玉県立近代美術館「遠藤利克展―聖性の考古学」に対して)が受賞した。

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