- 本データベースは東京文化財研究所刊行の『日本美術年鑑』に掲載された彙報・年史記事を網羅したものです。
- 現在、2019年/平成31(令和元)年まで公開しています。(記事件数
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2008年03月 日本芸術院(三浦朱門院長)は28日、卓越した芸術作品や芸術の進歩に功績のあった人に贈る日本芸術院賞の2007年度の受賞者を発表した。美術関係では、清水達三(日本画、72、06年院展出品作「翠響」に対して)、藤森兼明(洋画、72、07年日展出品作「アドレーション サンビターレ」に対して)、神戸峰男(彫塑、63、07年日展出品作「朝」に対して)、杭迫柏樹(本名杭迫晴司、書、73、07年日展出品作「送茶」に対して)、鈴木了二(建築、63、04年完成の金刀比羅宮プロジェクトに対して)が受賞した。
2008年03月 日展で活躍した日本画家東山魁夷の生誕100年を記念する展覧会が29日から5月18日まで東京国立近代美術館で開催された。東山の画業に迫ることを目指し、70年に渡る画業を7章に分けて展示。第1章「模索の時代」、第2章「東山芸術の確立」、第3章「ヨーロッパの風景」、第4章「日本の風景」、第5章「町・建物」、第6章「モノクロームと墨」、第7章「おわりなき旅」とし、これに加えて5つの特集展示「特集1ドイツ留学」「特集2〈自然の形象〉と〈たにま〉」「特集3白馬のいる風景」「特集4窓」「特集5唐招提寺の障壁画」を設け、造形の特色や特色ある主題などに迫る展観となった。同展は長野県信濃美術館(7月12日から8月31日)に巡回した。
2008年03月 文化審議会(石沢良昭会長)は21日、島根県雲南市(旧加茂町)の加茂岩倉遺跡から出土した銅鐸39点を国宝に、岩佐勝以筆紙本著色梓弓図ほか31点の美術工芸品を重要文化財に指定するよう、渡海文部科学相に答申した。これで美術工芸品の重要文化財は1万311件、うち国宝は862件となった。
2008年03月 710(和銅3)年の平城遷都から1300年を記念する催しの先陣を切って「国宝 薬師寺展」が25日から東京国立博物館で開催された(6月8日まで)。「薬師寺伽藍を行く」「草創期の薬師寺」「玄奘三蔵と慈恩大師」「国宝吉祥天像」の4章で構成され、薬師寺金堂の日光・月光菩薩が出品されて話題となった。
2008年03月 写真家木村伊兵衛の業績を記念し、優れた新人写真家に贈られる木村伊兵衛賞(朝日新聞社主催)の第33回目の受賞者は岡田敦(28、写真集『I am』(赤々舎)に対して)と志賀理江子(27、写真集『Canary』(赤々舎)『Lilly』(アートビートパブリッシャーズ)に対して)の二人に決定した。
2008年03月 前年度に優れた作品を発表した写真家に贈られる土門拳賞の第27回目の受賞者は、土田ヒロミに決定した。1968年から現代に至る40余年の仕事を集大成した展覧会「土田ヒロミのニッポン」展(東京都写真美術館)が評価されたもの。
2008年03月 18世紀に優れた俳句、書画を残した与謝蕪村のしごとを総合的にとらえようとする「与謝蕪村―翔けめぐる創意」展が15日からMIHO MUSEUMで開催された。第一章「芭蕉へのまなざし」、第二章「故郷への道行」、第三章「放浪の雲水」、第四章「新たな出発」、第五章「蕪村をめぐる人々」、第六章「翔けめぐる創意」の構成で、俳句にも書画にも秀でた多才な活動を約150点の作品、資料で跡づける充実した展観となった。
2008年03月 与謝蕪村に学んで大津で活躍し近江蕪村と呼ばれた紀楳亭と横井金谷の画業を展観する「楳亭・金谷―近江蕪村と呼ばれた画家」展が大津市歴史博物館で6日から4月20日まで開催された。楳亭は松村呉春とならぶ蕪村の門弟であり、金谷は蕪村に私淑して地元に多くの作品を残した。楳亭、金谷の作品各約150点を集めた本展は、蕪村の画業が次世代にどのように受容されたかを考察する好機となった。
2008年03月 日本時間3月19日未明にニューヨークで開催されたクリスティーズの競売に鎌倉時代に活躍した仏師運慶の作と推定される大日如来坐像が出品され、過去最高の1280万ドルで日本の百貨店三越が宗教法人真如苑の依頼を受けて落札した。この作品は檜材、表面漆箔仕上げで、1190年代に運慶によって制作された可能性が高いとされる。文化庁はこの作品を重要文化財に指定しようとしたが、所蔵者の合意を得られず、指定されていなかったため海外市場に出たもので、文化財保護制度のあり方に疑問も呈せられた。真如苑はこの像を東京国立博物館に寄託し、同館で6月10日から9月21日まで公開された。
2008年02月 福田新内閣での初めての予算編成により2008(平成20)年度の文化庁予算が決定した。前年度より0.1%増、1億円増額の1017億5500万円で、「文化芸術立国プロジェクトの推進」「文化財の次世代への継承と国際協力の推進」「文化芸術拠点の充実」を3大項目とし、「舞台芸術振興の先導モデル推進事業」「アートマネジメント人材の育成」「戦略的二国間文化遺産国際交流推進事業」「アジア美術館長会議」に新規に予算が組まれたほか、「メディア芸術振興総合プログラム」「感性豊かな文化の担い手育成プランの推進―こどもの芸術文化体験活動の推進」などが大幅に増額となった。
2008年03月 愛と美の女神ヴィーナスが造形物にいかにあらわされてきたかを古代ローマからルネサンスまで跡づける「ウルビーノのヴィーナス―古代からルネサンス、美の女神の系譜」展が4日から5月18日まで国立西洋美術館で開催された。フィレンツェをはじめとするイタリア各地の美術館、博物館等から約80点の絵画、彫刻、工芸作品が出品され、ティツィアーノの「ウルビーノのヴィーナス」が初めて欧州以外の地で展示された。「ヴィーナスの誕生―古代ギリシアとローマ」、「ヴィーナスの復興―15世紀イタリア」、「《ウルビーノのヴィーナス》と“横たわる裸婦”の図像」、「“ヴィーナスとアドニス”と“パリスの審判”」、「ヴィーナス像の展開―マニエリスムから初期バロックまで」の5章で構成され、それぞれの作品においてヴィーナスに託された「美」の多様性が示される意義深い展観となった。
2008年01月 明治中期から昭和33(1958)年に没するまで日本画界を牽引した横山大観の没後50年を記念し、その画業を回顧する大規模な展覧会が23日から国立新美術館で開催された(3月3日まで)。東京美術学校の卒業制作「村童観猿翁」から最晩年まで、「屈原」「流燈」「瀟湘八景」「生々流転」などの代表作を含む75点が展示され、明治期の朦朧体による日本画の革新から戦後に至る画業を再考する機会となった。
2008年01月 文化庁は25日、奈良県明日香村の国特別史跡であるキトラ古墳の石室天井に描かれた天文図から太陽を表す「日像」とその近くの「星宿」など3星座、あわせて5箇所を剥ぎ取ったと発表した。微生物の影響により下地のしっくいの劣化が周囲に及んだため、この処置が行われたもの。
2008年01月 「源氏物語」以前に成立した「伊勢物語」を主題とする絵画と書63件を展示する展覧会が9日から出光美術館で開催された(2月17日まで)。国指定重要文化財「伊勢物語絵巻」(和泉市久保惣記念美術館蔵)のほか、1608(慶長13)年に版本として「嵯峨本 伊勢物語」が刊行されて以降、公家のみならず幅広い読者を得たことを背景に描かれた岩佐又兵衛、俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一などによる江戸期の作品が多数出品されたほか、中村岳陵、小杉放庵ら昭和期の画家の作例も含み、物語成立後、千年におよぶ絵画との関係が跡づけられる展観となった。
2008年01月 宮内庁は歴代天皇や皇族を埋葬した陵墓の調査を「御霊の安寧と静謐を守るため」として許可してこなかったが、17日、奈良市の神功皇后陵(五社神ゴサシ古墳)の立ち入り調査を許可することを決め、日本考古学協会に通達した。1979年から年1回ペースで宮内庁が補修の際に行う発掘調査を学会などに見学させてきたことなどを踏まえ、昨年1月に陵墓管理に関する内規を改定し、研究テーマを問わず、申請があれば審査の上で調査を受け入れる方針としたことを受けたもの。同調査は2月22日に行われたが、発掘は許可されず、目視での確認、写真撮影を約2時間半かけて行なった。
2008年01月 若手作家の登竜門で平面作品を対象に40歳以下の作家の奨励を目指すVOCA展2008の第15回の受賞者が決定した。VOCA 賞には横内賢太郎、奨励賞に川上幸之介と笹岡啓子、佳作賞に伊藤雅恵、藤原裕策が選ばれた。
2008年01月 毎日芸術賞(毎日新聞社主催)の受賞者が1日に発表された。美術関係では生と死、身体をテーマとしてきた写真家の細江英公(74歳)が受賞した。舞踏家大野一雄を撮り続けた成果として刊行された写真集『胡蝶の夢』、「球体写真二元論 細江英公の世界」展(東京都写真美術館)が評価されたもの。授賞式は28日、都内の東京プリンスホテルで行なわれた。
2008年01月 政府の世界遺産条約関係省庁連絡会議は7日、フランスの建築家ル・コルビュジエの設計になる国立西洋美術館本館を世界遺産(文化遺産)に推薦することを決定した。これを受けて、フランスが同月中に日本、フランス、スイスなど7カ国にあるル・コルビュジエの23件の作品を「ル・コルビュジエの建築と都市計画」としてユネスコに推薦書を提出した。23件中、公共建築は国立西洋美術館のみである。