東京国立文化財研究所が新館建設に着手

1996年08月

東京・上野公園にある東京国立文化財研究所が19日、同公園内で新館建設に着手した。地上四階、地下一階、延べ床面積10515平方メートル。完成は5年後の2001年の予定。国連機関の国際文化財保存修復センター(ICCROM)が日本に要請している各国の技術研修者受け入れ施設も含んでいる。

中原悌二郎賞受賞者決定

1996年09月

国内の優れた彫刻作品に贈られる中原悌二郎賞の第27回目の受賞者は若林奮の「DaisyⅢ-2」に、中堅・若手作家を対象とした中原悌二郎賞優秀賞は岡本敦生の「地殻-鼓動」に贈られることとなった。

旧朝鮮総督府の壁画撤去へ

1996年07月

解体撤去が決まっているソウルの旧朝鮮総督府の建物(国立中央博物館)で、中央ホールの壁画として掲げられている洋画家和田三造の作品「羽衣」の撤去作業が1日から始まった。この壁画は縦5.5メートル、横4.75メートルで、キャンバスに四重の韓紙を張って天女と若者が南洋風に描かれており、総督府完成と同じ1926年に完成した。

岡崎市美術博物館開館

1996年07月

6日、岡崎市美術博物館(通称「マインドスケープ・ミュージアム」)が開館(愛知県岡崎市高隆寺町峠1岡崎中央総合公園内)。「心を語るミュージアム」と銘打ち、心をテーマにした美術品を収集・展示。また岡崎に生まれた徳川家康の時代、16世紀半ばにも焦点を当て、この時代をアジアとヨーロッパの文化が出会い融合した「ワールドバロック」の時代と位置付け、東西の美術を比較鑑賞できる企画展を行う。建物は地上二階地下一階、延べ床面積6444平方メートル。開館特別展は「天使と天女―天界からのメッセージ」(6~9.23)。

世界文化賞受賞者発表

1996年06月

芸術・文化分野で活躍する世界の芸術家の業績を讃える「高松宮殿下記念世界文化賞」(主催・財団法人日本美術協会、総裁・常陸宮正仁親王)の第8回受賞者の発表が4日パリのルーブル美術館で行われた。美術関係では、絵画部門でサイ・トゥオンブリー(68、アメリカ)、彫刻部門でセザール(75、フランス)、建築部門で安藤忠雄(54、日本)が受賞した。受賞式は10月25日に東京、元赤坂の明治記念館で行われる。

文化財保護法改正案成立

1996年06月

近代の文化財保護の必要性が認識されてきたため、1975年以来の大幅な見直しを盛り込んだ文化財保護法改正案が今通常国会で成立した。従来の指定制度では指定品の所蔵者に強い規制と手厚い保護を与えていたが、改正案ではあらたに文化財登録制度を導入し、文化庁長官は必要に応じ、登録文化財の所有者に指導・助言・勧告を行うという緩やかな規制と保護を行うこととし、保護方法の多様化を図ったものとなっている。重要文化財などの活用に関しても、従来よりも規制を緩和する内容となった。

秩父宮妃遺産の美術品約1050点、国に寄贈

1996年05月

昨年8月に逝去した秩父宮妃の親族が27日相続税を申告し、遺産の内、不動産を除く総額の約半分にあたる8億円相当が、「広く公益目的の活動に使ってほしい」という遺言により国や公益法人に遺贈されることとなった。国に遺贈される美術工芸品は約1050点で宮内庁が同庁三の丸尚蔵館に保存する。中には平安時代の歌集「堤中納言集」などの優品も含まれており、同庁ではいずれ展示公開する方針である。

明治村賞受賞者決定

1996年06月

明治時代を主題とする学術・芸術に関する業績を対象とした第22回明治村賞受賞者は神戸芸術工科大学図書館長の坂本勝比古に決まった。居留地異人館等、近代建築の研究と保存に関する業績が評価されたもの。

人間国宝、選定保存技術認定

1996年04月

文化財保護審議会(鈴木勲会長)は19日、重要無形文化財保持者(人間国宝)にあらたに12人を認定するよう奥田幹夫文相に答申した。美術関係では備前焼の藤原雄(ふじわら・ゆう、63)、民芸陶器(縄文象嵌)の島岡達三(73)、紅型の玉那覇有公(たまなは・ゆうこう、59)、茶の湯釜の高橋敬典(たかはし・けいてん、75)、刀剣研磨の藤代松雄(81)、衣裳人形の秋山伸子(本名・今井伸子、68)が認定された。これで現存の人間国宝は92人となる。また、美術関係の選定保存技術の選定・認定については本藍染の森義男、筬制作・修理の北岡高一、荒苧製造の矢幡左右見(やわた・さゆみ)、歌舞伎小道具製作の保存団体歌舞伎小道具製作技術保存会が選ばれ、表装建具製作の山岸光男、日本産漆生産・精製の日本うるし掻き技術保存会が追加認定された。

国宝重要文化財(美術工芸品)指定

1996年04月

文化財保護審議会(鈴木勲会長)は19日、美術工芸品の福島県河沼湯川村の勝常寺蔵木造薬師、徳川千代姫所用の婚礼樹調度類など3件を国宝に、重要文化財に長野県サンリツ服部美術館所蔵の「紙本墨画淡彩望海楼図」等46件を、また、建造物の重要文化財5件、伝統的な町並みを保存する「重要伝統建造物群保存地区」2件、史跡・天然記念物5件を新たに指定するよう奥田幹夫文相に答申した。

「シルクロード大美術展」開催

1996年04月

パリのギメ美術館とフランス国立図書館に秘蔵されていたポール・ぺリオ・コレクションを中心に、世界9ヶ国、15施設から優品約240点を集めた「大シルクロード展」が20日から東京都美術館で開催された(~7月7日)。同展は、昨年10月から今年2月までパリのグラン・パレで開催された「セランド-仏陀の地」を東京国立博物館の監修のもと再編にしたもので、西域における仏教美術の伝播と仏教美術の東西交流を跡づける充実した展観となった。

大山崎山荘美術館開館

1996年04月

アサヒビールの初代社長をつとめた山本為三郎(1893-1966)のコレクションを所蔵品の柱とする大山崎山荘美術館(京都市乙訓郡大山崎町字山崎小字銭原5-3)が7日に開館。本館は昭和初期の実業家加賀正太郎が自ら設計した英国風建築の山荘をアサヒビールが購入、修復したもので、これに安藤忠雄設計による新館が隣接している。柳宗悦らによる民芸運動を支援した山本為三郎は民芸派の作品のほか大津絵、泥絵、中国、李朝の古陶磁などを含む1200点におよぶ作品を収集しており、同館には民芸派の作品を展示する山本為三郎記念室が設けられている。

日本学士院賞受賞者決定

1996年04月

日本学士院(藤田良雄院長)は12日、総会を開き、学術の分野で優れた業績を上げた研究者11人に平成7年度日本学士院賞を贈ることに決めた。美術関係では長崎純心大学教授・九州大学名誉教授の平田寛(ひらた・ゆたか、65)が著書『絵仏師の時代』により日本学士院賞を受賞した。授賞式は6月上旬東京・上野の日本学士院で行われる。

日本芸術院受賞者決定

1996年03月

日本芸術院(犬丸直院長)は22日、芸術の各分野で顕著な業績があった人に贈る平成7年度(第52回)の日本芸術院賞受賞者を内定した。恩賜賞・日本芸術院賞の第1部(美術)受賞者には岡田新一(68)(宮崎県立美術館など一連の建築設計に対し)、日本芸術院受賞者には洋画の奥谷博(61)(第62回独立展出品作「月露」など深みのある世界へ到達した作品に対し)、彫塑の橋本堅太郎(65)(第27回日展出品作「竹園生」など清純な詩情を謳歌した作品に対して)、工芸の大塩正義(62)(第27回日展出品作「樹相」など総合的な技能と芸術感覚のある作品に対し)、書の榎倉香邨(本名弘、72)(第27回日展出品作「流翳」など時間性を表現した作品に対して)が選ばれた。授賞式は6月3日に東京・上野の日本芸術院会館で行われる。

ナショナルギャラリー構想具体化

1996年03月

平成7年6月に提起された国立美術展示場の建設案を受けて、文化庁に設置された「ナショナル・ギャラリー(仮称)調査研究会」(平山郁夫座長)は、27日基本構想案をまとめた。我国の美術創造活動、および国際的な美術交流の拠点を目指し、公募団体展、国立館が企業と共同で主催する大型美術展などに使用するほか、国内外の美術情報収集と公開、教育普及活動の機能も合わせ持つ施設とする方針。建設予定地としては東京大学生産技術研究所、同物性研究所移転跡地が最有力候補としてあげられている。

芸術選奨受賞者決定

1996年03月

芸術の各分野で昨年一年間に優れた業績をあげた人々に贈られる芸術選奨の受賞者が13日文化庁から発表された。美術関係では建築家高松伸(47)(「植田正治写真美術館」に対し)、立体造形作家滝川嘉子(「滝川嘉子・彫刻個展」などに対し)が芸術選奨文部大臣賞を、洋画家辰野登恵子(46)(本名 中登恵子)(個展「辰野登恵子 1986-1995」などに対し)、美術史家今橋理子(31)(著作『江戸の花鳥画 博物学をめぐる文化とその表象』に対し)が芸術選奨新人賞を受賞した。

九州国立博物館(仮称)設立構想

1996年03月

文化庁は現行の東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館の三国立博物館に加え、新たに国立博物館を設立する方針で「新構想博物館の整備に関する調査委員会」(座長・上山春平京都市立芸術大学学長)を中心に構想を固めてきたが、同委員会が14日に打ちだした「アジア諸地域との相互理解を文化財を通じて担うための拠点となる博物館として、九州に設置することが望ましい」とする中間報告を受けて、文部省は22日福岡県太宰府市を新博物館建設予定地に正式決定した。九州国立博物館(仮称)は「日本文化の形成をアジアの観点から捉える」ことを目指していく方針である。

安井賞受賞者決定

1996年02月

画家安井曽太郎の画業を顕彰し具象的油彩画を対象に贈られる安井賞(安井曽太郎記念会など主催)の第39回目の選考が行われ、安井賞を小林裕児の「夢酔」が受賞することとなった。佳作賞は一居孝明「GOOD LEGEND(Ⅱ)」が受賞。「安井賞展」は東京池袋のセゾン美術館で開催された後、尼崎、尾道、秋田、帯広、福岡に巡回した。

第11回小山敬三美術賞受賞者決定

1996年02月

優れた作品を発表してきた中堅の具象画家に贈られる小山敬三賞の第11回目の受賞者は独立美術協会会員で女流画家協会会員の原光子に決定した。また、「美術文化の国際交流事業に対する援助」により清春白樺美術館財団に140万円が贈られることとなった。

文化庁予算決まる

1996年02月

平成8年度の文化庁予算は「新しい文化立国をめざして(21世紀に向けて)」をテーマに、前年度比82億3800万円(12.3%)増の750億300万円とすることと決まった。阪神・淡路大震災を受けて、被害のあった重要文化財建造物、重要伝統的建造物保存地区の災害復旧に180億、耐震性能に関する具体的な指針の策定や文化財建造物の調査に4400万、地方公共団体が行う調査や発掘の一部補助に62億300万などが計上されている。また、今年度の特色として、文化による国際貢献および文化発信の推進を目指す諸事業を重視しており、具体的には国際的学術交流、海外での美術展、在外日本古美術品の修復協力などがあげられている。「新しい美術展示施設(仮称・ナショナル・ギャラリー)」の構想については、調査段階から基本計画の策定へ進められることとなった。

to page top