特別展「写楽」開催

2011年05月

鮮烈なデビューからわずか10ヶ月で姿を消し、謎の絵師とされる東州斎写楽の版画142点を集め、その魅力に迫る特別展「写楽」が東京国立博物館で1日から6月12日まで開催された。当初4月5日から開催予定であったが、3月11日の東日本大震災により会期を遅らせた。第一章「写楽以前の役者絵」、第二章「写楽を生み出した蔦屋重三郎」、第三章「写楽の全貌」、第四章「写楽とライバルたち」、第五章「写楽の残影」という構成で、芝居番付との比較により描かれた役者と演目の同定を行い、上演日時に従って編年的に画業の変遷を跡づける展示となった。同じ役に取材した他の絵師の作品も出品され、写楽の造形の特色を浮かび上がらせる充実した企画となった。

「五百羅漢 増上寺秘蔵の仏画 幕末の絵師 狩野一信」展開催

2011年04月

幕末の絵師狩野一信が中心となって描き、増上寺に納められた百幅の五百羅漢図全点と一信による他の五百羅漢図を合わせて展示する「五百羅漢 増上寺秘蔵の仏画 幕末の絵師 狩野一信」展が29日から7月3日まで江戸東京博物館で開催された。当初3月15日からの開催予定であったが、3月11日の東日本大震災により会期を遅らせた。法然上人800回忌にちなんだ企画で、大幅のためこれまで一部のみが展示されてきた増上寺本の全貌が紹介され、西洋的な遠近法や陰影法を取り入れた濃密で個性的な一信の画業が印象付けられる貴重な機会となった。

文化財ドクター派遣事業の開始

2011年04月

文化庁は27日付けで「東日本大震災被災文化財建造物復旧支援事業実施要項」を発表。東日本大震災で被災した地域の教育委員会や日本建築学会ほか、関係団体等と協力し、被災文化財の建造物に対して専門職員等の派遣を行う「東日本大震災被災文化財建造物復旧支援事業」(文化財ドクター派遣事業)を開始した。

日本芸術院賞受賞者決定

2011年04月

日本芸術院(院長:三浦朱門)は26日、2010年度の芸術院賞受賞者を発表した。美術部門で山崎隆夫(日本画、日展出品作「海煌」に対して)が恩賜賞・日本芸術院賞を、同部門で黒田賢一(書、日展出品作「小倉山」に対して)、古谷誠章(建築、「茅野市民館」に対して)が日本芸術院賞を受賞した。

重要文化財(建造物)指定の答申

2011年04月

文化審議会(会長:西原鈴子)は15日、境内の建物配置や社殿の形式が特徴的な柞原八幡宮(大分市)や、明治神宮外苑の中心施設である聖徳記念絵画館(東京都新宿区)など8件の建造物を重要文化財に指定し、愛知県豊田市の足助地区など3地区を重要伝統的建造物群保存地区に選定するよう、高木義明文部科学相に答申した。

第25回平櫛田中賞受賞者決定

2011年04月

日本の彫刻界の振興と平櫛田中の業績の後世への継承を期して設けられた平櫛田中賞(主催:岡山県井原市)の第25回目の受賞者は小谷元彦に決定した。ヴェネツィア・ビエンナーレ日本代表など国際的な活躍に対して、新しい時代の彫刻の領域を開拓している点が評価された。

文化財レスキュー事業の開始

2011年04月

東日本大震災で被災した文化財を保護するため、文化庁が3月30日付けで発表した「東北地方太平洋沖地震被災文化財等救援事業(文化財レスキュー事業)実施要項」を受けて「東北地方太平洋沖地震被災文化財等救援事業」(文化財レスキュー事業)が開始、事務局が東京文化財研究所内に設置された。同事業は国・地方の指定等の有無を問わず、動産文化財及び美術品を対象として、これらを救出、応急処置し、所有者の手に戻るまでの一時保管のための措置を行うもので、国立文化財機構及び全国の文化財・美術関係団体が参加、被災した各県との共同による救援活動となった。

平成23年度文化庁予算決定

2011年03月

平成23年度予算案が29日、成立した。文化庁予算は1031億2700万円となり前年度より1.1%、11億300万円の増額となった。Ⅰ.豊かな文化芸術の創造と人材育成、Ⅱ.我が国のかけがえのない文化財の保存・活用・継承等、Ⅲ.我が国の優れた文化芸術の発信・国際文化交流の推進、の3つを柱とし、とくに「元気な日本復活特別枠」として、Ⅰでは「文化芸術による次世代人材育成プロジェクト」、Ⅱでは「文化遺産を活かした観光振興・地域活性化事業」、Ⅲでは「クリエイティブ・ニッポン発信!プロジェクト」に計133億円が計上された。

「青木繁展―よみがえる神話と芸術」開催

2011年03月

日本の浪漫主義美術に重要な足跡を残して1911年に死去した画家青木繁の没後100年を記念して、そのしごとの全容と今日までの評価の変遷をたどる「青木繁展―よみがえる神話と芸術」が25日から5月15日まで石橋美術館で開催された。224点の作品と61点の関連資料が第1章「画壇への登場」、第2章「豊饒の海」、第3章「描かれた神話」、第4章「九州放浪、そして死」、第5章「没後、伝説の形成から今日まで」の構成で展観され、青木繁研究の蓄積が傾注された企画となった。同展は京都国立近代美術館(5月27日~7月10日)、ブリヂストン美術館(7月17日~9月4日)に巡回した。

重要文化財指定の答申

2011年03月

文化審議会(会長:西原鈴子)は18日、日本画家上村松園が描いた「母子」(東京国立近代美術館蔵)など美術工芸品計43件を重要文化財に指定するよう高木義明文部科学相に答申した。同時に築地本願寺本堂(東京都中央区)など建造物194件と、美術工芸品2件を登録有形文化財として登録するよう答申した。

法然800回忌、親鸞750回忌にちなむ企画相次ぐ

2011年03月

2011年が浄土宗の宗祖法然800回忌と浄土真宗の宗祖親鸞の750回忌に当たるため、その記念展が相次いだ。17日から京都市美術館で「親鸞聖人750回忌宗教団連合40周年記念親鸞展 生涯とゆかりの名宝」(5月29日まで)、26日から京都国立博物館で「法然―生涯と美術」展(5月8日まで)が開催された。「親鸞 生涯とゆかりの名宝」では「親鸞聖人の教えと生涯」「浄土真宗のひろがり」「伝来の名宝と美術」の3章構成で国宝・重要文化財45点を含む約130点の作品資料が展観され、「法然―生涯と美術」展では、第一章「法然の生涯と思想」で国宝「法然上人絵伝」を軸に法然の生涯をたどり、第二章「法然への報恩と念仏の継承」で法然没後の信仰から生まれた作品を展観した。ゆかりの寺院に伝わった優品が一堂に会する貴重な機会となった。

「黄檗 OBAKU 京都宇治・萬福寺の名宝と禅の新風」展開催

2011年03月

明から渡来した隠元禅師による黄檗宗大本山萬福寺開創から350年になることを記念し15日から5月22日まで九州国立博物館で「黄檗 OBAKU 京都宇治・萬福寺の名宝と禅の新風」展が開催された。伝統的な中国臨済宗の法、仏教儀礼および明の生活文化をそのまま17世紀の日本にもたらした黄檗宗の寺に伝わる作品資料142点が、第1章「はじめての黄檗宗 身近な黄檗文化」、第2章「唐人たちの長崎」、第3章「隠元渡来」、第4章「萬福寺の開創と興隆」、第5章「黄檗文華」の構成で展観された。

「長沢芦雪 奇は新なり」展開催

2011年03月

18世紀後半に主に京都で活躍し、大胆な構図と筆致で眼を驚かせる作品を残した絵師長沢芦雪の作品資料110点を展観する「長沢芦雪 奇は新なり」展がMIHO MUSEUMで12日から6月5日まで開催された。第一章「応挙に学ぶ」では師円山応挙のもとでの修学を示す初期作品を、第二章「南紀へ向かう」では応挙の名代で出向いた南紀での制作を、第三章「奇は新なり」では南紀から京都へ戻った後の斬新な作品が集められ、第四章「芦雪をめぐる人々」では芦雪を取りまく環境に、第五章「光への関心」では近代にも通ずる光の表現に焦点を絞った展示がなされた。第六章では新たに所在が確認された「方寸五百羅漢図」が紹介された。師の画風を習得した上で型を破った芦雪の画業が再検証される展観となった。

芸術選奨文部科学大臣賞受賞者決定

2011年03月

文化庁は11日、2010年度の芸術選奨文部科学大臣賞と同新人賞の受賞者を発表した。芸術選奨文部科学大臣賞美術部門では、アーティストのオノデラユキ(「オノデラユキ 写真の迷宮へ」展に対して)、建築家の隈研吾(「梼原・木橋ミュージアム」に対して)、メディア芸術部門ではゲームクリエーターの宮本茂(「スーパーマリオギャラクシー2」に対して)が受賞。同新人賞美術部門では、現代美術家の束芋(「束芋:断面の世代」展に対して)、芸術振興の部門ではアーティストの中村政人(「アーツ千代田3331」の開館及びその運営に対して)、評論等の部門では戦後日本前衛美術研究家の黒ダライ児(著作『肉体のアナーキズム』に対して)、メディア芸術の部門ではメディア・アーティストのクワクボリョウタ(「10番目の感傷〈点・線・面〉」に対して)が受賞した。

展覧会の中止・延期

2011年03月

東日本大震災に続く福島第一原子力発電所の事故で、海外から美術品を借りる展覧会の中止・延期が相次いだ。4月2日~6月26日に横浜美術館で開催予定だった「プーシキン美術館展」は展示環境の安全性が確保されていないとロシア側が判断したことなどから開催を延期した。また4月5日から広島県立美術館で開催予定だった「印象派の誕生」展も、フランス文化省美術館総局が日本への美術品貸与を一時見合わせるよう勧告したため中止となった。一方、4月9日~5月29日に目黒区美術館で開催予定だった「原爆を視る 1945-1970」は、目黒区および美術館を運営する同区芸術文化振興財団で協議し、被災者の心情に配慮して開催が見送られた。

東日本大震災による被害

2011年03月

11日に発生した東日本大震災により、東北・関東地方の多くの文化財が損傷・倒壊等の被害を受けた。被災した国指定関係の文化財は744件にのぼり、宮城県松島町の瑞巌寺では庫裏(国宝)の壁の一部が崩落、茨城県水戸市の旧弘道館(特別史跡・重要文化財)では学生警鐘が全壊した。地震に伴い発生した津波による被害も甚大で、茨城県北茨城市の茨城大学五浦美術文化研究所六角堂(登録有形文化財)は土台のみを残し流失した。美術館・博物館も地震・津波による被害を受け、石巻文化センターでは津波の直撃により1階がほぼ壊滅、陸前高田市立博物館では建物の躯体のみを残した状態となり、所蔵品全てが津波により水損した。

第30回土門拳賞受賞者決定

2011年03月

前年に優れた成果を挙げた写真家に贈られる土門拳賞の第30回受賞者が石川直樹に決定した。受賞対象は『CORONA』(青土社)で、南太平洋のポリネシアを題材に、強大な一つの中央でなく無数の中心が共存する新しい世界のあり方を模索するという一貫したテーマと精力的な写真活動が高く評価された。

第36回木村伊兵衛写真賞受賞者決定

2011年03月

写真家木村伊兵衛の業績を記念し、優れた新人写真家に贈られる木村伊兵衛写真賞(主催:朝日新聞社、朝日新聞出版)の第36回目の受賞者は9日、下薗詠子(写真集『きずな』と同名の写真展に対して)に決定した。同世代の女性や友人、家族を被写体とし、その不条理感漂う作風が高く評価された。

「生誕100年 岡本太郎展」開催

2011年03月

1970年の大阪万博のシンボルとなった「太陽の塔」の制作などで知られる岡本太郎の生誕100年を記念し、約130点の作品によって、そのしごとの全貌をふりかえる「生誕100年 岡本太郎展」が8日から5月8日まで東京国立近代美術館で開催された。プロローグ「ノン!」、第1章「ピカソとの対決」、第2章「『きれい』な芸術との対決」、第3章「『わび・さび』との対決」、第4章「『人類の進歩と調和』との対決」、第5章「戦争との対決」、第6章「消費社会との対決」、第7章「岡本太郎との対決」、エピローグ「受け継がれる岡本太郎の精神」という構成で、一貫して既成の価値観への対決を挑んだ足跡が編年的に展観された。岡本太郎記念館の公開、川崎市岡本太郎美術館の開館など、近年再評価が盛んに行われている中で、岡本の今日的な位置を再考しようとする意欲的な企画となった。

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