佐藤雅晴

没年月日:2019/03/09
分野:, (映C)
読み:さとうまさはる

 映像作家の佐藤雅晴は、3月9日に死去した。享年45。
 ビデオカメラやスチールカメラで撮影した風景を、パソコン上でトレースしてアニメーション化する技術「ロトスコープ」による映像作品を制作し、国内外で発表した。また同様の手法による精緻な静止画を制作し「フォトデジタルペインティング」と名付けた。代表作「東京尾行」(2015―6年)では、実写映像の一部をトレースし、アニメーションに置き換えた90の場面が12台のモニター(あるいはプロジェクター)で映し出される。実写映像とアニメーションとの併存は、虚実の両極を行き来するような感覚を与え、作品空間を多義的にしている。また本作は自動ピアノによる「月の光」の演奏を伴う。インスタレーションのような展示を希望したといわれる佐藤は、映像作品を単なる動画ではなく、平面として空間に存在するあり方を含めて構想し、制作したと考えられえる。
 2010(平成22)年、ドイツから日本に本帰国した直後に上顎癌が発見され、手術に成功するも15年に再発、18年9月には余命宣告を受けるという、病と闘いながらの制作でもあった。
 1973(昭和48)年10月11日、大分県臼杵市に生まれる。96年東京藝術大学油画専攻を卒業、99年同大学大学院修士課程修了。幼い頃より絵を描くのが得意で、藝大受験を控え毎日描いた時期もあったが、在学中はコンセプチュアル・アートやインスタレーションに傾倒した。99年にドイツに渡り、2000年より国立デュッセルドルフ・クンストアカデミーに研究生として在籍(~2002年)。09年、第12回岡本太郎現代芸術賞特別賞受賞。16年、個展「ハラドキュメンツ10 佐藤雅晴―東京尾行」開催。17年にはシドニーで個展「TOKYO TRACE2」を開催。闘病による視力の衰えなどにより、映像制作が困難になる中、19年2月、画廊KEN NAKAHASHIで絵画作品の個展「死神先生」を開催。トーキョーアーツアンドスペースの「霞はじめてたなびく」(~3月24日)、森美術館の「六本木クロッシング2019」(~5月26日)にも参加した。2021(令和3)年、没後初の回顧展となる「佐藤雅晴 尾行―存在の不在/不在の存在」(大分県立美術館、水戸芸術館現代美術ギャラリー)開催。

出 典:『日本美術年鑑』令和2年版(485頁)
登録日:2023年09月13日
更新日:2023年09月13日 (更新履歴)

引用の際は、クレジットを明記ください。
例)「佐藤雅晴」『日本美術年鑑』令和2年版(485頁)
例)「佐藤雅晴 日本美術年鑑所載物故者記事」(東京文化財研究所)https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/2040966.html(閲覧日 2024-04-28)

外部サイトを探す
to page top